準々決勝:山本 賢太郎(埼玉) vs. 市川 ユウキ(Magic Online)

晴れる屋

By Daisuke Kawasaki

 今回のThe Last Sunの決勝ラウンドは、スイスラウンドで上位だったプレイヤーが対戦するフォーマットを選択できるというルールで開催されていて、その選択は実際の対戦が始まるまでは公開されないのだが、すでに昨日のRound 8ですでに対戦している二人は考えるまでもなくどのフォーマットにするかは決まっているようなものだった。

 スイスラウンドで上位なのは、2位の市川。レガシーのデッキは前述のマッチカバレージにあるように市川がBUGデルバーで山本がスニークショウ。スタンダードは共に青白コントロール。

市川 「そもそも、MOPTQの決勝戦、トリコフラッシュの同型対決で僕、山本さんに負けてますからね。青系の同型対決とか、厳しいですよ」

山本 「まだ、青白同型なら可能性はあるんですけど……昨日の最終戦見てもらったと思いますけど、レガシーは相当勝てないマッチアップですよ……」

 というわけで、二人は対戦前に配られたお互いのデッキリストもレガシーだけを食い入るように確認し、そして、サイドボーディング時に確認するためにライフ用紙の裏に相手の重要なカードの枚数をメモするのだった。



Game 1


 先手の山本は《沸騰する小湖》《島》をフェッチし、《定業》をプレイ。占術で《島》を下に送ると、トップに《定業》を残してこれをドローする。

 対して、市川は《汚染された三角州》から《Underground Sea》をフェッチして《死儀礼のシャーマン》を召喚。もちろん、《死儀礼のシャーマン》は自分側、土地が対戦相手側だ。市川は自分のスタイルを守ることに強いこだわりがあるのだろう。

 山本は《沸騰する小湖》をセットすると、先ほど手に入れた《定業》をプレイ。占術で見た2枚は《渦まく知識》《騙し討ち》で、この2枚をこの順番で山札に積み込み、《渦まく知識》をドローする。

 《霧深い雨林》から《Bayou》をフェッチして《タルモゴイフ》をクロックとして追加する市川。墓地にフェッチランドが2枚あるので、実質《死儀礼のシャーマン》によって1マナ残った状態でターンを返す。

 先ほど積み込んだ《騙し討ち》をドローした山本は、手札を見ながら長考し、《山》をセットしてターンを終了。市川は《Underground Sea》をセットした後、2/3の《タルモゴイフ》でアタックして山本のライフを17としてターンを終了。ターンエンドに山本は《渦まく知識》をプレイし、《沸騰する小湖》から《Volcanic Island》をフェッチして山札をシャッフルする。

 このシャッフルした山札からドローしたのが《エムラクール》。山本は《沸騰する小湖》《Volcanic Island》をフェッチすると《水蓮の花びら》をプレイし、《騙し討ち》をプレイする。

 これには《Force of Will》《目くらまし》コストでプレイする市川なのだが、山本も《目くらまし》コストの《Force of Will》で対抗。まずは両カウンターが墓地に置かれる。

 追加のカウンターを持たない市川は、《騙し討ち》が着地する前に《ヴェンディリオン三人衆》をキャストして、山本の手札を確認する。山本の手札は先ほどトップデックした《エムラクール》と……《グリセルブランド》

 市川は「うわぁ」と小さく呻く。まずは《エムラクール》を山札の下に送り込み山本はドロー、そして《騙し討ち》の着地を許可。山本は少考の末に、《水蓮の花びら》を使わずターンを返す。

 この時点で山本のライフは14。市川のコントロールするクロックは3/4のタルモゴイフに3/1の《ヴェンディリオン三人衆》。そして《死儀礼のシャーマン》。この2体でアタックした市川に対して山本は《騙し討ち》《グリセルブランド》を呼び出し、《タルモゴイフ》をブロック。

 絆魂で差し引き4点のライフを得た上で、市川のターンエンドに《グリセルブランド》の能力を起動してカードを7枚引く。だが、この中に《騙し討ち》で打ち込む有効な弾がなかった山本は、さらに《グリセルブランド》の能力を起動して、自身のライフを4とする。

 今度引いた7枚の中には、《グリセルブランド》と《エムラクール》の姿があった。



山本 1-0 市川

 昨日の対戦では、ゲームとゲームの合間、サイドボーディングの最中は談笑をしていた二人なのだけれども、今日のこのマッチではお互いに黙ったままサイドボーディングを終わらせ、シャッフルを開始する。決勝ラウンドともなれば真剣勝負ということなのだろうか。昨日のマッチが真剣じゃなかったというわけではないのだろうけれども、やはりマッチに流れる空気は違う、ような気はする。

 例えば、市川は、プレイ中、対戦相手が長考している時などは特に、睨むように相手を見るのだが、その目つきにもさらに殺気がこもっているかのよう感じられる。

Game 2


 先手の市川は《秘密を掘り下げる者》《思考囲い》《呪文貫き》《不毛の大地》と、クロック・妨害手段が揃い、強いて難を言うならピッチのカウンターが無いくらいか、という手札をキープ。

 山本も初手をキープしたのでゲームがスタート。市川はまず、《Underground Sea》をセットして《秘密を掘り下げる者》をプレイする。対して山本は《霧深い雨林》から《島》をフェッチして《思案》をプレイし、トップを残してドローする。

 市川のアップキープ。ここで《ゴルガリの魔除け》がめくられ、《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》がその姿を表し、山本に3点のダメージ。さらに《思考囲い》をプレイ。だが、公開された山本の手札を見て市川は頭を悩ます。

 《渦まく知識》《騙し討ち》《エムラクール》《思案》《水蓮の花びら》《古えの墳墓》《沸騰する小湖》という完璧に近い山本の手札から、市川は熟考の末に《エムラクール》をディスカードさせ、山札をシャッフルさせる。市川は《汚染された三角州》をアンタップ状態で残してターンを終了する。

 山本のターン。山本は《沸騰する小湖》セットから《渦まく知識》をプレイ。これを通す市川。山本はこの《渦まく知識》で2枚の《騙し討ち》《グリセルブランド》を手に入れると、上から《思案》《騙し討ち》の順番で山札に戻してターンを終える。

 市川は《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》でアタックして山本のライフは13。《思案》をプレイすると、シャッフルしてドロー。《Underground Sea》をセットしてターンを返す。

 山本は《思案》をドローすると、少し考えたのか間をあけて《古えの墳墓》をプレイした後に《沸騰する小湖》を起動し《山》をフェッチ。《水蓮の花びら》を戦場に出し《騙し討ち》のプレイを宣言する。

 市川はまずは《目くらまし》。山本はこれにたいして《水蓮の花びら》を生贄にささげてマナを出して支払いに充てる。これで余りマナを使わせた市川は《騙し討ち》が戦場にでることを許可し、《汚染された三角州》から《Tropical Island》をフェッチしてターンエンドに《ゴルガリの魔除け》をプレイする。

 そして、自身のターンに《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》でアタックして、《不毛の大地》《古えの墳墓》を破壊する。

 山本は《思案》をプレイし、山札をシャッフルしてターンエンド。このエンドで市川は《渦まく知識》をプレイし、土地を山札に戻す。そして《汚染された三角州》をセットしてターンを終了した。山本は《霧深い雨林》から《Volcanic Island》をフェッチして青マナを確保すると《渦まく知識》

 そして、自身のターンに山本は《沸騰する小湖》セットから《実物提示教育》。これに《呪文貫き》をあわせる市川だが、山本は《実物提示教育》をコストにして《Force of Will》でカウンターする。市川はさらに《目くらまし》をプレイするが、山本は《沸騰する小湖》の能力を起動して《Volcanic Island》をフェッチし、1マナをまかなう。

 これで山本は戦場に《グリセルブランド》を着地させる。市川は土地なのにもかかわらず、だ。自分のターン、必至に解決策を模索する市川だが《思案》でシャッフルしても引いてくるのは土地。セットしてターンを返す。

 山本の《グリセルブランド》がアタックし、山本のライフは8で市川のライフは9に。山本はそのままターンを終了する。市川はドローすると、《渦まく知識》をプレイ。《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》でアタックすると、引いてきた2体の《死儀礼のシャーマン》をプレイする。

 ここで山本も《渦まく知識》をプレイし、手札を充実させようとするのだが、中々意味のあるカードを引かず、ターンエンド。だが、市川もビジネスなカードをトップデック出来なかったので、ついに《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》をチャンプブロック要員としなければならなくなってしまう。

 《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》がチャンプブロックして山本のライフのみ回復して19に。そして、その回復した7点で7枚のカードを引く山本。《古えの墳墓》をセットすると、3マナ残した状態で《血染めの月》をプレイ。これをマナを支払った《Force of Will》でカウンターしようとする市川だったが、手札が潤沢な山本は《Force of Will》をコストに《Force of Will》を打ち込む。

 そして、残ったマナを使って山本がプレイしたスペルは《実物提示教育》。手札から出されたのは《エムラクール》。



山本 2-0 市川

 対戦終了後に、市川が山本に確認する。

市川 「やっぱ、あそこで《思案》打っておくべきでしたね……」

 山本が《実物提示教育》をプレイする前のターン。山本のライフが2になっており、山本からすれば仕掛けるしかないターンだった以上、最大限に《実物提示教育》に対応できる体制をつくるべきだったと市川は考える。

市川《呪文貫き》ケアするためにマナを残したかったけど、《思案》《死儀礼のシャーマン》でも見つかれば、《グリセルブランド》でても戦闘しないで最後のライフを削れてたんだし、そっちのが正しいプレイだったかも」

山本 「でも、最初の《思案》の返しの《思考囲い》で《エムラクール》を捨てさせてシャッフルさせた時、あの時トップ《実物提示教育》だったからね。わかってるなぁって思ったよ」

市川 「トップ、そのままにしてましたからね」

 2013年のレガシー選手権の決勝で見て以来(正確にはそのほんの少し前からなのだが)、少なくともプレイヤーとしての市川に僕は興味を持っていて、その興味の大半は市川の向上心にある。

 それが飽くなき反省から来ているのかは僕にはわからないのだけれども、市川の向上心の高さは、ちょっと珍しいくらいのものだと考えていて、だからこそ最近市川はメキメキと頭角を表しているのだろうと思う。相手のプレイヤーがうまいプレイをした時は、必ずそこから吸収しようと、技を盗もうと考えている。

 ひとしきりマッチについて話し合った所で、市川が席を立つ。

市川 「じゃあ、優勝するまで待ってますから」

 どうやら、本当に今日、二人は飲みに行くようだ。

 市川のカードの置き方ではどうやってもレッドゾーンにクリーチャーを送り込めないし、市川の殺気に満ちた目は勝負師の顔でもなんでもないので、結局、僕の書くことなんて大体嘘ばかりなのだけれども、二人が実際に談笑する関係になったことと、昨日に引き続いて二人のマッチを書いたことを僕がそれなりに誇りに思っていることは、一応本当のことだ。