第4ラウンドのビデオマッチ。
黒タッチ白コントロールを使用する三原がフィーチャリングエリアに呼ばれ、「魔王」とまで呼ばれる元世界王者のプレイが中継される……と思われたが、そこで行われていたのは一方的な虐殺劇と言っていい状況だった。
土地に触ることのできない三原の前で《迷路の終わり》が次々と門を揃え、三原のクロックに対しては《濃霧》系呪文が時間を稼ぐ。
そして、10枚揃ってしまえば、本当の本当に終わり。
衝撃的なマッチアップによって今大会での存在があらわとなった《迷路の終わり》デッキ。中継を見た人々の中には、このデッキについて知りたいと思った人も少なく無いだろうと思う。
というわけで、今回、《迷路の終わり》デッキを持ち込んできた佐々木 康裕(埼玉)にインタビューをしてみたいと思う。
まずは、デッキリストを見ていただこう。
3 《セレズニアのギルド門》 3 《シミックのギルド門》 2 《アゾリウスのギルド門》 2 《ボロスのギルド門》 2 《ディミーアのギルド門》 2 《ゴルガリのギルド門》 2 《グルールのギルド門》 2 《イゼットのギルド門》 2 《オルゾフのギルド門》 2 《ラクドスのギルド門》 4 《迷路の終わり》 -土地(26)- 4 《門を這う蔦》 -クリーチャー(4)- |
4 《濃霧》 4 《拠点防衛》 4 《ドルイドの講話》 4 《暴動鎮圧》 2 《予言》 3 《骨読み》 4 《至高の評決》 4 《都の進化》 1 《次元の浄化》 -呪文(30)- |
2 《強迫》 2 《古代への衰退》 2 《殺戮遊戯》 1 《次元の浄化》 2 《無慈悲な追い立て》 2 《拘留の宝球》 2 《真髄の針》 1 《不死の霊薬》 1 《漸増爆弾》 -サイドボード(15)- |
■使用に対する動機
川崎 「まず、今回《迷路の終わり》デッキを使用することにした理由を教えていただいてよろしいですか?」
佐々木 「いつもはレガシーメインでやっていて、今回のThe Last Sunがスタンダードとの混合フォーマットだって権利をとってから知ったんです。なので、スタンダードのデッキが必要になって、Happymtgなどでスタンダードのデッキリストを見ていて、《迷路の終わり》が最強だなという結論になったんです」
川崎 「かなりレアなデッキだとは思うんですが、これが最強だと感じた理由を教えていただいてよろしいですか?」
佐々木 「見ていただければわかると思うんですが、対コントロールは基本的に有利です。あと、今はビートダウンが多いんだとは思うんですが、ビートダウンに対しても有利なので……」
川崎 「たしかに、あれだけ《濃霧》系を連打していると、ビートダウンにも負けなさそうにみえますよね」
佐々木 「そうですね。このデッキがテーロス参入で強くなったなと感じたのは《拠点防衛》なんですよね。これによって《濃霧》系カードを16枚いれられるようになったので」
川崎 「なるほど。そうきくと弱点がなさそうに感じますが、厳しい相手はいますか?」
佐々木 「《悪夢の織り手、アショク》や《記憶の熟達者、ジェイス》のように山札を削ってくるデッキ相手に2枚の門が山札から排除されてしまうと厳しいんですが……あまりメインとして使われている印象が無かったので。あと、土地破壊も厳しいですが、土地破壊もそこまでは多くないので」
川崎 「なるほど。環境のほとんどのデッキ相手に有利で、苦手なカードがそこまで多くなかったということですね」
■デッキ構築の過程
川崎 「さて、デッキを構築する上で参考にしたデッキがあったかと思うんですが、最初に参考にしたリストってどんなリストだったんですか?」
佐々木 「参考にしたのは、《迷路の終わり》デッキじゃなくて、昔あったターボフォグなんですよね。それこそMTG WIKIに載っているようなリストですね」
川崎 「なるほど。とにかくフォグ戦略で時間をかせぐことを主眼にしたわけですね。そう言われてみると、アドバンテージカードと《濃霧》系だけで構築されているから構造はまったく一緒ですよね。山札を削るカードが《迷路の終わり》になったというわけですね」
佐々木 「そうですね。とにかく、《濃霧》は16枚いれようっていうのは最初から決めていました」
川崎 「全体除去が5枚なのは《至高の評決》が4枚だけでは足りなくて、1枚足したって感じでしょうか?」
佐々木 「いや、むしろ単純な全体除去でしたら《至高の評決》は3枚でも足りてるかもしれません。基本的には《濃霧》で耐え切れますし、《濃霧》で耐え切れないなら負けていると思います。《次元の浄化》は、むしろパーマネントに触れるという部分を重視して採用しています」
川崎 「結局、《至高の評決》が4枚になったのはどのような理由ですか?」
佐々木 「システムクリーチャーに触れないと辛いこともありますんで。《審判官の使い魔》などで《濃霧》をカウンターされて得意なはずの青単相手にきついこともありますし、そういう場合も考えての《至高の評決》4枚ではあります」
川崎 「ちなみに、門を使った勝ち手段には《迷路の終わり》以外にもたとえば《はじける境界線》などもあったと思うんですが、《迷路の終わり》だけに絞った理由を教えていただいていいですか?」
佐々木 「うーん……結局《はじける境界線》が必要になるのって、《迷路の終わり》で勝てなくなった状況だと思うんですが、その状況って、《迷路の終わり》を《真髄の針》で封じられるか、《悪夢の織り手、アショク》などで門を2枚抜かれている状況だと思います。だったら、パーマネント破壊や手札破壊、《殺戮遊戯》などで対策していった方が勝てるという判断ですね」
川崎 「《迷路の終わり》が勝てない状況じゃないと無駄カードに近い《はじける境界線》よりは、《迷路の終わり》の勝ち筋を補強する方向にサイドボード含めてデッキ全体を構築しているということですね。たしかに、触りにくい土地と手札で完結しているというメリットが《はじける境界線》で失われてしまったりもしますしね」
佐々木 「えぇ。あと、こういった対策を取ってくるデッキって、基本的にエスパー系のコントロールになると思うんですが、《スフィンクスの啓示》を撃たれてしまうんで、《はじける境界線》じゃ削り切れないんですよね」
川崎 「なるほど。話を聞いていると、かなり練り込んだ調整が行われているように感じられますが、普段、どのように調整をしているのですか?」
佐々木 「実は、スタンダードの大会ってこのデッキでは3回しか出られていなくて。友人でスタンダードをやっているヤツがいないんで、あとは一人回ししながら、例えば3ターンに1回手札破壊をされるとかといった状況を想定しながら調整していましたね」
川崎 「さきほど少し話題に出ましたが、友人の皆さんはレガシープレイヤーということですか」
佐々木 「そうですね。休みがあった友人と晴れる屋のレガシートーナメントに出たり、友人の家で遊んでいたりしますね。晴れる屋さんは毎日トーナメントしているから助かります」
川崎 「話をデッキの調整に戻させていただきますが、苦手なデッキタイプなどはないですか?」
佐々木 「戦闘に頼らないでライフを削ってくるデッキ、赤単とかはかなり厳しいですし、例えば《燃えさし呑み》などが入っているとコロッサルグルールも厳しくなります。このへんのデッキは、なんとかすることもできるのかもしれませんが、サイドに枠をどれだけとっても有利にはならなかったので、いっそ、バッサリ切って別のデッキに勝てるように調整しました」
川崎 「赤単以外のデッキには五分から五分以上ある感じですか?」
佐々木 「三原さんの黒単の話があったかと思うのですが、《アスフォデルの灰色商人》が多めに取られている黒単相手だと、メインは有利だとしてもサイド後は五分以下になることもあります。あとは、五分以上とれるんじゃないでしょうか」
川崎 「さきほど、テーロスから入ったカードで《拠点防衛》があるというお話がありましたが、他に《骨読み》が入っていますよね。これの使用感覚はどうでしたか?」
佐々木 「最初は赤単相手の相性を諦めてはなかったので、2点のダメージは大きいなと思っていたんですが、赤単に勝つことを諦めてからは非常に強いカードだということがわかりました」
川崎 「具体的にはどのあたりが強力でしたか?」
佐々木 「最大4枚まで山札を掘れるので、キーカードを探しにいく目的では《都の進化》よりもよいですね。あと《反論》でカウンターされないドローなのは強力です」
川崎 「なるほど。たしかに《反論》されないのは《予言》や《都の進化》にはないメリットですね」
■サイドボード
川崎 「続いて、サイドボードについて解説していただいてよいですか?」
川崎 「まず、この4枚の枠は、単体除去としてサイドインされるのだと思うのですが……」
佐々木 「そうですね。主な役割は先程も言った詰みのパターンである《真髄の針》を割ることですね」
川崎 「《拘留の宝球》はさらにプレインズウォーカー対策も兼ねてますね」
佐々木 「そうですね。こちらもサイドボードから《真髄の針》は《悪夢の織り手、アショク》《記憶の熟達者、ジェイス》対策で投入します。あと《燃えさし呑み》だったり、とにかく負けパターンを潰すために投入するカードです」
川崎 「ちなみに、特に《古代への衰退》と《拘留の宝球》の役割が近いように感じますが、《拘留の宝球》の方が受けは広くは感じます。《拘留の宝球》より《古代への衰退》が優位な点はなんでしょうか?」
佐々木 「《拘留の宝球》は結局《真髄の針》が復活する可能性があるのと、やはり《反論》されないってのは大きいと思います」
川崎 「やはり、《反論》ですか」
川崎 「《強迫》はコントロール対策ですか?」
佐々木 「そうですね。コントロール相手には抜くカードも多いので、効果が大きいカードを用意しておきたいです。そもそもの相性はいいんですけどね」
川崎 「続いて、全体除去の追加……の枠ですかねここは?あとは万能でパーマネント除去にもなるカードですが」
佐々木 「《次元の浄化》は、《太陽の勇者、エルズペス》をトークンごと破壊できるのでエスパー用のサイドですね。エスパー相手に《太陽の勇者、エルズペス》がトークンを生み出して、《濃霧》がカウンターされるパターンは負ける可能性があるので」
川崎 「《無慈悲な追い立て》はどうでしょう?」
佐々木 「追放できるのが大きいんですよね。《ザスリッドの屍術師》が静岡で流行っていたので、とにかく追放できる除去を投入しようと考えて選択しました」
川崎 「先程少し名前が出ましたが《殺戮遊戯》もプレインズウォーカー対策ですか」
佐々木 「そうですね。あと、黒単相手にも負けパターンとなる《アスフォデルの灰色商人》を抜くために投入します」
川崎 「今は赤黒という色を効果的に使えるデッキが少ないので、不意をつかれた形になることも多そうですね」
佐々木 「あと、サイドボード後に相手のデッキの中身を見れるのもよいです。メインでは赤単以外にはほぼ勝てるので、サイド後のゲームが優位に進められる可能性があるのはよいですね」
佐々木 「《漸増爆弾》は、とりあえず便利なので、色々な相手に対して汎用的に使えるカードとして1枚採用しています」
川崎 「えっと……この《不死の霊薬》は?」
佐々木 「これは《記憶の熟達者、ジェイス》相手にワンチャンスでも作れるようにいれるカードですね」
川崎 「赤単相手に入れたりは?」
佐々木 「いれませんね。そういうゲームになりませんし」
■まとめ
川崎 「最後に、このデッキを使おうという方にメッセージはありますか?」
佐々木 「とりあえず、赤単には現状かなり勝てないので、圧倒的に不利なデッキがあるデッキが嫌な人にはオススメできません」
川崎 「他に、今回で使っていての感想などありますか?」
佐々木 「これも、使おうという人に声を大にして言いたいのですが、このデッキ、使ってる側はともかく使われてる側は非常につまらないデッキなので、例えば友人とのフリープレイで使うのはあまりオススメできません……レガシーでベルチャーを使うような感じですね。今回のようにガチで勝ちにいくならともかく、そうでない時は使わないほうが……」
川崎 「なるほど。最後に一言お願いいたします」
佐々木 「みなさん、レガシーでは忍者デッキを使ってください!」
スタンダードでは《迷路の終わり》、レガシーでは忍者と独創的なデッキを今回持ち込んできた佐々木。残念ながら、スタンダードラウンド自体は、不運や赤単との遭遇もあり4勝3敗という成績ではあったが、迷路走者を目指す方は試してみてはいかがだろうか?