スタンダード4回戦目。
すなわち、ここさえ過ぎればプレイヤーたちは、いよいよレガシーという名の大海へと漕ぎ出すことになる。
全勝街道をひた走るか、1敗で折り返すか。
その瀬戸際に、3戦全勝で堂々の1番テーブルからフィーチャーマッチへと呼ばれたのは。
さすがの貫禄。
プロツアー参加経験もある強豪の吉森と、グランプリチャンピオンの石井だ。
やはりスタンダードラウンドはスタンダード勢の庭ということなのだろうか。
吉森 「モバマス勢対決ですねw」
石井 「(都道府県のところに)921プロって書いてもいいのかなw」
と、知り合い同士気さくによくわからない会話を交わしつつ、互いのデッキをシャッフル。
無敗のままレガシーラウンドへと折り返すことができるのは、はたしてどちらのプレイヤーか。
Game 1
ダイスロールで3回も引き分けた激戦のあと、石井がようやく先手をとる。この環境ではありがちな《静寂の神殿》での『占術』スタートに対して吉森が置いたのは《沼》。同型対決を彷彿とさせる土地の並びだ。
対戦相手が同型とみるや早速仕掛けたのは吉森。後手2ターン目の《群れネズミ》に《英雄の破滅》を使わせると、続けて《夜帷の死霊》を送り出す。
するとここで石井、この《夜帷の死霊》を除去することができない。
やむなく《地下世界の人脈》を置くが、石井のライブラリーから《夜帷の死霊》が奪い取ったのはあろうことか《群れネズミ》!!
しかも、一発逆転に賭けてプレイした《ヴィズコーパの血男爵》も、返すターンに一瞬にして《肉貪り》されてしまう。
石井 「あぎゃー」
一匹見れば百匹いると考えた方がいい……かどうかは定かではないが。
ついに《群れネズミ》が増殖し始めると、基本的に単体除去しか入っていないメインボードでは手がつけられない。
続けて2体目の《ヴィズコーパの血男爵》も《肉貪り》されてしまうと、《変わり谷》も合わせた強烈なネズミビートが石井のライフを見る間に削っていき。
そのまま石井はネズミの群れに埋もれてしまった。
吉森 1-0 石井
吉森 「黒白コン相手だとサイドが難しいんですよね……」
石井 「(《ヴィズコーパの血男爵》がいるせいで)《肉貪り》をサイドアウトできないからねー」
Game 2
吉森の後手1ターン目《思考囲い》が、
《群れネズミ》
《ヴィズコーパの血男爵》
《ヴィズコーパの血男爵》
《闇の裏切り》
《英雄の破滅》
という石井の手札から《群れネズミ》を落とし、先手2キルのイージーウィンをまずは防ぐと、さらに《生命散らしのゾンビ》《思考囲い》とプレイして《ヴィズコーパの血男爵》の降臨を許さない。
一方、完全に身がなくなったように見えた石井だが、《地下世界の人脈》をトップデッキ。手札を拡充しにかかる。
対する吉森、こちらも最序盤としてはまずまずの攻防から《地下世界の人脈》プレイにまでつなげたはいいものの、土地が4枚から一向に伸びない。
カードを引き増しながらの石井の猛攻を《闇の裏切り》などを駆使しながら捌きつつ、懸命に5枚目の土地を求めるが、なかなかたどり着くことができない。
ここで《思考囲い》で公開されたそんな吉森の手札は、当然ながら
《アスフォデルの灰色商人》
《アスフォデルの灰色商人》
《夜帷の死霊》
《死者の神、エレボス》
《英雄の破滅》
《肉貪り》
《群れネズミ》
というハイカロリー。
吉森 「どれでもいいですよw」
石井 「地味に難しいな……w」
石井は悩んだ末に《死者の神、エレボス》を落としつつ、《アスフォデルの灰色商人》で攻めたてる。
と、ここでようやく5枚目の土地を引き込んだ吉森だが、寸秒が惜しいこの局面でタップインの《静寂の神殿》で、いまいち噛み合わない。
《罪の収集者》で《肉貪り》を追放した後、石井がようやく引き込んだ《群れネズミ》をプレイし、吉森に回答を迫ったところで、返す吉森は満を持して《群れネズミ》プレイからの《アスフォデルの灰色商人》!!
《地下世界の人脈》2枚をコントロールしているため、何もなければ一挙7点ドレインというところ。
だが。
これに対し石井が4マナからプレイしたのは、《闇の裏切り》+《今わの際》+《損耗/Tear》!!
吉森 「7点くらいいいじゃないですかw」
石井 「いや、死ぬがなw」
予想外の一挙3行動で『信心』を2にまで落とし込む好プレイにより、吉森の逆転の目を潰しにいく。
そうして1ゲーム目とは対照的に、ついには石井がネズミビートを開始してしまい。
ブロッカーとして《夜帷の死霊》を出してはみるものの、あまりに暴力的なネズミの群れを押しとどめることができず。
吉森は3ゲーム目に進むことを選択した。
吉森 1-1 石井
吉森 「引けば勝てるカードあったのに……クソみたいなミスしたなー」
そう、実は吉森はこのゲームで、石井の《アスフォデルの灰色商人》を《闇の裏切り》するとき、『信心』のドレイン能力にスタックするべきところ、それを失念し、余分なダメージを負った結果、死ぬターンが1ターン分縮まってしまっていた。
もちろん、それくらいで結果は変わらなかったかもしれない。
だが、ひょっとしたら変わっていたかもしれないのだ。
このミスが、どう響いてくるか。
Game 3
吉森の1ターン目《思考囲い》で石井の《思考囲い》が墓地送りとなると、さらに《群れネズミ》は《肉貪り》で屠り、《生命散らしのゾンビ》で石井に3点クロックを突きつける。
これに対し石井、落ち着いて《地下世界の人脈》でアドバンテージを取りにいくが、《変わり谷》まで含めた吉森の全力のアタックでライフが詰まっていく。
《英雄の破滅》で《生命散らしのゾンビ》を、《今わの際》2枚で《群れネズミ》を処理するが、吉森のコントロールしている《変わり谷》2体が厳しい。
もっとも、苦しいのは吉森も同様だった。《変わり谷》2体によるライフ攻めにすべてを賭けるしかないほどに、スペルを全く引いていないのだ。
ブロッカーとして立ちはだかろうとした石井の《変わり谷》を《肉貪り》してまで戦線をこじ開けるが、石井の残りライフ5点を残して既に吉森に他のリソースはない。
石井が盤面を止めるか。吉森が刺しきるか。
何か引っけ!
と念じたかどうか、はたして石井のドローは《群れネズミ》!!
これはトークン含めて2体の《変わり谷》と刺し違えるが。
ついに。
ついに吉森の場に残されたパーマネントは大量の《沼》のみ。
だが、石井のライフもわずかに1。
すなわち、トップデッキ対決に突入する。
吉森がいきなり《夜帷の死霊》で王手をかけるが、これは石井の《漸増爆弾》でケアできている。
そして。その時は訪れた。
石井が力強く引き込んだのは、《アスフォデルの灰色商人》!
これによりわずかとはいえライフを引き戻した石井、《死者の神、エレボス》でさらなるリソースを獲得していく。
対して。
2ゲーム目のプレイミスを黒の神、《死者の神、エレボス》が咎めた……のかは知らないが。
吉森のドローは、最後の最後まで《沼》なのだった。
吉森 「さすがに何も引かなさすぎでしょ……w」
苛立たしそうにめくったライブラリートップ3枚には、そんな吉森を嘲笑うかのように《アスフォデルの灰色商人》《エレボスの鞭》《群れネズミ》と並んでいたのだった。
吉森 1-2 石井