ひとえにレガシーの強豪といっても色々なプレイヤーがいる。
例えば川北 史朗(東京)。
残念ながら今回は欠席となってしまったが、毎年開催されているレガシーのビッグイベント【Eternal Festival Tokyo 2014】を優勝、【レガシー神決定戦】を2勝中と、確かな実力を持ったプレイヤーである。
また【こちら】に紹介されているプレイヤーたちもまた、その実力が周知されている言わば「レガシーのプロ」。
そんな彼らのデッキ選択で、目立ったのは奇跡コントロール-ミラクルだった。
斉藤 伸夫(東京)や安田 昌幸(大阪)が選択し、また高橋 優太(東京)、日下部 恭平(東京)らが相棒に選んだのもまたミラクル。
もし川北が参加していたとしたら、川北が選んでいたのもミラクルだったのではないか、そんな気がする。
ミラクルについての話は、ある意味手垢にまみれた話かもしれない。
だがレガシーに多くの時間を費やしてきた彼らが、この大舞台であえて選択するということ。
それには確かな理由があるはずだ。
渡辺 雄也(神奈川)にも「勝つだろうプレイヤー」と言わせた、斉藤 伸夫に話を聞いてみた。
◆デッキ決定までの過程について
――「ミラクルですか」
斉藤 「ミラクルです」
――「斉藤さんといえばミラクルというイメージが強そうですが。最終的にミラクルに決めたのはいつぐらいになるんでしょうか」
斉藤 「大体2週間前ですね。それまでは環境に存在する大抵のデッキを一通り回してみました」
――「事前にミラクルを使うことになりそう、という漠然としたイメージがあったりはしましたか?」
斉藤 「いえ、そういうことは全くなく、先入観を持たずに調整しています」
―― 「それではミラクルに決めた決め手は何だったんでしょうか」
斉藤 「マッチ勝率の統計を取り、その高さから決めています。実のところミラクルより高い勝率を出したデッキもあったのですが、トータル15ラウンドということもありミラクルに決めました」
―― 「勝率の高いデッキというと誰もが知りたい話題ですよね。具体的に何のデッキかお聞かせ下さい」
斉藤 「まず青黒オムニテルです。《リム=ドゥールの櫃》が強力でコンボ成立が早く、ヘイトベアー対策としてサイドボードの《虐殺》も強力です。」
―― 「目下最強デッキ候補として挙げられるオムニテルのアップデートバージョンですね。聞いた限りでは自分でも使いたいくらいなんですが(笑)」
斉藤 「まず《殺戮遊戯》を使われると詰みです。それからサイド後に手札破壊を積めるのはメリットなんですが、序盤を捌く力に欠けるため、苦手なデッキの不利要素を改善出来ません」
(青黒オムニテル参考レシピ:http://www.happymtg.com/decks/view/D077558)
―― 「なるほど、それでは他の候補は何でしょうか」
斉藤 「グリクシスコントロールも勝率8割を叩き出しました。ただこのデッキも青黒オムニテルと同様の問題を抱えていて、良く言えばドロースペルの多さから安定感がありますが、悪く言えばドローにマナを費やすので序盤に難がありました。カナスレに押し負けたり、土地単のDDコンボ(《暗黒の深部》《演劇の舞台/Thespian’s Stage》)だけで負けたりとか」
(グリクシスコントロール参考レシピ:http://www.happymtg.com/decks/view/D079852)
―― 「欠点を克服できそうにないと」
斉藤 「ミラクルを選ぶにあたってはメタゲーム上特別なデッキがいないというのも大きいです。予想外のデッキというのがほとんど居ないので」
―― 「コントロールを使うなら正確なメタ読みが必要になりますしね。大体いつ頃からグランプリ・京都に向けて調整を始めたんでしょうか」
斉藤 「レガシーをメインで遊んでいるプレイヤーは、大体新セットが出るたびに色々な試行錯誤をするのですが、グランプリ自体を意識して調整を始めたのは大体二ヶ月前からですね。《宝船の巡航》が禁止になって以降です。土屋(洋紀)と10時間マッチしたり、高野(成樹)君や川北(史朗)君とも調整したり、青柳(元彦)君の家で統計とったり」
――「かなりデータをとっているんですね」
斉藤 「色々なサイトで情報収集して一通りのカードは試しています。ただ唯一《卓絶のナーセット》だけは持っていなかったため試すのが間に合いませんでした。デッキに入れてみた知り合いも、結局一度も使わなかったと言っていたのでまあいいかなと」
◆カード選択について
―― 「デッキの構成について、工夫したところがあれば教えて下さい」
斉藤 「以前(カナスレやスニークショウが強かった頃)は《罠の橋》のようなキラーカードを採用していたのですが、グランプリのように何にでも当たる環境ではとにかく丸い(無難な)構成を目指しました。全方位戦略的な感じです」
―― 「《Force of Will》3枚が目を引きますが、これはどういった理由なのでしょうか」
斉藤 「元々《Force of Will》の枚数は3と4を行き来していました。特にフェアデッキが多い期間によく使われていた手法で、《Hymn to Tourach》《ヴェールのリリアナ》パッケージを相手にしている時には、《Force of Will》の4枚目より《誤った指図》を優先していた時もあったくらいです」
―― 「今はかつてのメタゲームと異なっているわけですが、このタイミングで《Force of Will》を3枚に減らした理由は?」
斉藤 「まず今のコンボデッキが黒いコンボ(リアニ、ストーム)より青寄りなので(オムニテル)、《紅蓮破》が《Force of Will》の代替になります。それに《Force of Will》を2枚引くより《紅蓮破》と1枚ずつ引ける方が強いので」
―― 「《Force of Will》4枚と《紅蓮破》2枚というレシピも見かけますが」
斉藤 「レシピを丸く寄せた結果《対抗呪文》が2枚になっているので、カウンター枠としてはこれで十分です」
―― 「そもそも《思案》が入っているので、実質的なカウンター割合は大きいですしね。では《思案》を採用した理由は?」
斉藤 「メタゲーム上にURデルバー、エルフがいるので、初手からアクションが起こせないリスクが大きいです。ランドセットゴーで勝てる環境では無いので」
―― 「あとミラクルといえばメインボードのクリーチャー構成に個性が出ると思うのですが、この構成にした理由を教えてください」
斉藤 「クリーチャーを多めにしたり、完全に0にしてみたり色々なバージョンをテストしました。ただクリーチャーレスにしてしまうと、独楽相殺が決まっているにも関わらず勝てないといった状況が起こりえます。また《瞬唱の魔道士》は1枚だけ使うなら《神秘の教示者》のようなものなので入れ得なんです」
―― 「《神秘の教示者》?」
斉藤 「《渦まく知識》との組み合わせと、今は《時を越えた探索》があるので1枚差しのカードを使い回せるところが素晴らしいです」
―― 「サイドボードは《ヴェンディリオン三人衆》の枚数と《僧院の導師》が目を引きますね」
斉藤 「《ヴェンディリオン三人衆》は対コントロール、コンボにはとにかく強いです。ミラクルのアグロサイドといえば《石鍛冶の神秘家》が定番だったのですが、《僧院の導師》の登場により状況が変わりました」
―― 「ということは《石鍛冶の神秘家》を使うメリットは無い?」
斉藤 「いえ、意見が分かれるところです。そもそも《石鍛冶の神秘家》の方が2マナと軽く、手札も増やせるので《渦まく知識》と相性がいい。ただ《僧院の導師》の方がコントロールとコンボに強く、3マナのカードを増やせることも《相殺》で《実物提示教育》をカウンター出来る可能性が高まるため、今回のグランプリでは価値が高いと判断しました」
―― 「ミラクルとオムニテルを選ぶ有力プレイヤーは多いでしょうしね」
◆ずばり今回の目標は?
―― 「グランプリ・京都2015という今回のイベントに期するところは色々あると思いますが、具体的な目標はありますか?」
斉藤 「75枚同じデッキで他に二人出ているので、揃ってベスト16に残りたいと思っています」
―― 「ベスト16というところが現実的な話ですね、頑張ってください!」
4 《島》 2 《平地》 3 《Tundra》 2 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 2 《乾燥台地》 1 《Karakas》 -土地(22)- 1《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(1)- |
4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 3 《思案》 1 《紅蓮破》 2 《対抗呪文》 2 《天使への願い》 1 《議会の採決》 1 《至高の評決》 3 《Force of Will》 3 《終末》 2 《時を越えた探索》 4 《相殺》 4 《師範の占い独楽》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(37)- |
3 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《僧院の導師》 2 《狼狽の嵐》 1 《摩耗+損耗》 1 《紅蓮破》 1 《赤霊破》 1 《外科的摘出》 1 《議会の採決》 1 《Force of Will》 1 《安らかなる眠り》 1 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード(15)- |