週刊デッキウォッチング vol.13 -夜明けの中隊 etc.-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【happymtgのデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 緑白ビートダウン



Koizumi Ryousuke「緑白ビートダウン」
平日スタンダード14時の部(3-0)

6 《森》
2 《平地》
4 《吹きさらしの荒野》
1 《進化する未開地》
2 《マナの合流点》
4 《豊潤の神殿》
4 《花咲く砂地》

-土地(23)-

4 《鱗の召使い》
4 《羊毛鬣のライオン》
4 《毅然さの化身》
3 《族樹の精霊、アナフェンザ》
4 《クルフィックスの狩猟者》
4 《アブザンの鷹匠》
3 《恭しき狩人》

-クリーチャー(26)-
4 《ドロモカの命令》
2 《勇敢な姿勢》
4 《集合した中隊》
1 《城塞の包囲》

-呪文(11)-
3 《スズメバチの巣》
3 《正義のうねり》
3 《鼓舞する呼び声》
2 《セテッサ式戦術》
2 《異端の輝き》
2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》

-サイドボード(15)-
hareruya



毅然さの化身集合した中隊アブザンの鷹匠



 『タルキール龍紀伝』にはアブザンのキーワード能力「長久」は登場しないが、「+1/+1カウンター」自体は新キーワード能力「鼓舞」により依然としてフィーチャーされている。だから『タルキール覇王譚』の「長久」カードがここにきて新たなシナジーを得て活躍しても、何ら不思議なことではない。

 《アブザンの鷹匠》は、このデッキだと《不可思議》のようにクリーチャー全員を飛ばすことができる。あるいは、飛ばないやつには《族樹の精霊、アナフェンザ》《ドロモカの命令》でカウンターを乗っけてしまえばいい。《集合した中隊》からめくれれば奇襲性抜群だ。

 またサイドボードの《鼓舞する呼び声》《対立の終結》《命運の核心》に対してのキラーカードになるし、《正義のうねり》は素晴らしい赤単対策になる。

 デッキ名が「鱗レス鱗」ということで、《硬化した鱗》を使ったデッキを作ろうとしたら《硬化した鱗》が弱すぎて自然と抜けていった、という悲しいストーリーが透けて見えるが、それで3-0を勝ち取れたのだとしたら、デッキビルダーとしては一歩前に進んだ、大人になったということになるのかもしれない。


【「緑白ビートダウン」でデッキを検索】





■ モダン: 白黒緑ジャンク



Max Brown「白黒緑ジャンク」
SCG Modern Premier IQ Syracuse(11位)

2 《森》
2 《平地》
2 《草むした墓》
2 《寺院の庭》
1 《神無き祭殿》
4 《吹きさらしの荒野》
3 《新緑の地下墓地》
4 《剃刀境の茂み》
3 《ガヴォニーの居住区》

-土地(23)-

4 《極楽鳥》
4 《貴族の教主》
1 《臓物の予見者》
3 《復活の声》
1 《漁る軟泥》
1 《クァーサルの群れ魔道士》
1 《呪文滑り》
1 《シルヴォクののけ者、メリーラ》
1 《族樹の精霊、アナフェンザ》
4 《台所の嫌がらせ屋》
3 《ちらつき鬼火》
2 《罪の収集者》
1 《永遠の証人》
1 《調和スリヴァー》
1 《オルゾフの司教》
1 《修復の天使》

-クリーチャー(30)-
3 《夜明けの集会》
4 《集合した中隊》

-呪文(7)-
3 《思考囲い》
2 《流刑への道》
2 《突然の衰微》
1 《ブレンタンの炉の世話人》
1 《コーの火歩き》
1 《呪文滑り》
1 《弁論の幻霊》
1 《エイヴンの思考検閲者》
1 《調和スリヴァー》
1 《鷺群れのシガルダ》
1 《ヴィズコーパの血男爵》

-サイドボード(15)-
hareruya



夜明けの集会集合した中隊族樹の精霊、アナフェンザ



 《集合した中隊》とメリーラコンボとの相性の良さに着目したデッキが、海の向こうで早速活躍している。

 《夜明けの集会》はライブラリトップにクリーチャーを3枚まで好きに積めるため、エンド前に《夜明けの集会》を撃ってから自分のターンのアップキープやメインに《集合した中隊》とつなげれば、事実上2枚の(3マナ以下の)クリーチャーを《召喚の調べ》したのと同じ効果が得られる。

 メリーラコンボは構成パーツ(《臓物の予見者》《シルヴォクののけ者、メリーラ》 or 《族樹の精霊、アナフェンザ》《台所の嫌がらせ屋》)が全て3マナ以下のクリーチャーであるため、サーチ先としてうってつけというわけだ。

 《残忍なレッドキャップ》すらも廃した結果実に29枚もの3マナ以下クリーチャーを搭載しており、いくら何でもこれなら《集合した中隊》を外さないだろうというその徹底ぶりは《ガヴォニーの居住区》があればこその荒業だが、生まれ変わった《出産の殻》デッキとしてモダン環境に新風を巻き起こすことが期待される。


【「白黒緑ジャンク」でデッキを検索】





■ レガシー: 実物提示教育



Houseki Hisayuki「実物提示教育」
第3期レガシー神挑戦者決定戦(16位)

5 《島》
2 《Tundra》
4 《沸騰する小湖》
2 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《Karakas》
2 《裏切り者の都》
1 《水晶鉱脈》

-土地(19)-

1 《瞬唱の魔道士》
1 《グリセルブランド》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(3)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
3 《ギタクシア派の調査》
3 《定業》
2 《狼狽の嵐》
1 《有毒の蘇生》
4 《実物提示教育》
2 《狡猾な願い》
3 《けちな贈り物》
4 《Force of Will》
1 《堀葬の儀式》
4 《時を越えた探索》
3 《全知》

-呪文(38)-
3 《僧院の導師》
2 《翻弄する魔道士》
1 《すべてを護るもの、母聖樹》
1 《大修道士、エリシュ・ノーン》
1 《流刑への道》
1 《剣を鍬に》
1 《白鳥の歌》
1 《拭い捨て》
1 《蟻の解き放ち》
1 《エラダムリーの呼び声》
1 《けちな贈り物》
1 《仕組まれた爆薬》

-サイドボード(15)-
hareruya



けちな贈り物グリセルブランド僧院の導師



 【第3期レガシー神挑戦者決定戦】はリアニメイトの勝利で終わったわけだが、レガシーのコンボといえば《実物提示教育》も外せない。

 オムニテル勢では最上位入賞となったこのデッキは、白をタッチすることにより《直観》のスロットにどちらかといえばモダンでお馴染みの《けちな贈り物》《堀葬の儀式》コンボを搭載し、必ずしも《実物提示教育》に頼らない構造となっている。

 だが白をタッチしたことによる最大の恩恵はやはりサイドボードにあるだろう。《僧院の導師》《思案》《定業》を連打できるレガシーにおいては単体で盤面を制圧できるフィニッシャーだし、《翻弄する魔道士》はコンボ同型戦に特に強い。

 【グランプリ京都】までいよいよあと一週間ほど。はたして国内初となるレガシーグランプリの覇者は、どのようなデッキになるのだろうか?


【「実物提示教育」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【happymtgでデッキを検索する】