週刊デッキウォッチング vol.10 -ネザーゴー etc.-

伊藤 敦

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【happymtgのデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 緑信心





Yoshida Kai「緑信心」
フライデーナイトマジック20時の部(3-0)

14 《森》
2 《吹きさらしの荒野》
2 《樹木茂る山麓》
4 《ニクスの祭殿、ニクソス》

-土地(22)-

4 《エルフの神秘家》
4 《ケンタウルスの武芸者》
4 《起源のハイドラ》
4 《クルフィックスの狩猟者》
4 《フィーリーズ団の戦長》
3 《ナイレアの信奉者》
4 《囁きの森の精霊》

-クリーチャー(27)-
4 《レインジャーの悪知恵》
1 《セテッサ式戦術》
2 《宿命的介入》
2 《タルキールの龍の玉座》
2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》

-呪文(11)-
3 《再利用の賢者》
3 《スズメバチの巣》
2 《霧裂きのハイドラ》
2 《高木の巨人》
2 《自然に帰れ》
1 《狩人狩り》
1 《セテッサ式戦術》
1 《巫師の天啓》

-サイドボード(15)-
hareruya



レインジャーの悪知恵フィーリーズ団の戦長タルキールの龍の玉座



 単一種族のクリーチャーデッキといえば「ゴブリン」「マーフォーク」や「スリヴァー」が有名だが、その理由はいわゆる「ロード」が存在するからだ。《ゴブリンの王》《アトランティスの王》のような、同一種族のクリーチャーを強化する「ロード」がいるからこそ、クリーチャー・タイプを揃えるメリットが発生する。

 かつて「ロード」は一部の種族の特権だった。だがクリーチャー・タイプに着目した「ローウィン」ブロックを経て以降は、様々なマイナー種族にも「ロード」が登場するようになった。

 「ニクスへの旅」で登場した《フィーリーズ団の戦長》は「ケンタウルス」の「ロード」だ。ならば「ケンタウルス」デッキを作る理由は十分と言える。強力な「ケンタウルス」は限られているが、その中に《クルフィックスの狩猟者》がいたのは僥倖だった。「緑信心」のコンセプトとハイブリッドしてしまえばいいのだ。

 《タルキールの龍の玉座》《ニクスの祭殿、ニクソス》からの有り余るマナを注ぎ込む先として最適で、単なるバニラクリーチャーになりがちな《起源のハイドラ》にトランプルを与えてくれる。《囁きの森の精霊》で「予示」した先に《フィーリーズ団の戦長》がいれば、対戦相手を驚愕させつつ強烈な一撃をお見舞いできるだろう。


【「緑信心」でデッキを検索】





■ モダン: 小悪疫





Kanaoka Yoshihiko「小悪疫」
晴れる屋モダン杯4-1

4 《沼》
3 《神無き祭殿》
2 《血の墓所》
2 《聖なる鋳造所》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《トロウケアの敷石》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(20)-

2 《大爆発の魔道士》
3 《グルマグのアンコウ》

-クリーチャー(5)-
4 《葬送の魔除け》
4 《コジレックの審問》
4 《脅迫状》
4 《大地割り》
4 《小悪疫》
4 《未練ある魂》
4 《無駄省き》
4 《彩色の星》
1 《光と影の剣》
2 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(35)-
4 《猿人の指導霊》
2 《大爆発の魔道士》
2 《摩耗+損耗》
2 《盲信的迫害》
2 《仕組まれた爆薬》
2 《大祖始の遺産》
1 《死の支配の呪い》

-サイドボード(15)-
hareruya



グルマグのアンコウ小悪疫大地割り



 《小悪疫》というカードは性質上、そのまま使うと必ず自分が《小悪疫》の分だけアドバンテージを失ってしまう。そのため自陣にクリーチャーがいない状況で相手のクリーチャーを巻き込む形でプレイするのが常道だが、他にもアドバンテージを補填する方法は存在する。

 例えば《未練ある魂》。「フラッシュバック」を持つこのカードを《小悪疫》の効果で捨てれば、カード0.5枚分の働きを墓地から担うことができる。あるいは《トロウケアの敷石》《小悪疫》の効果で生け贄に捧げることができれば、自分だけ土地を減らさずに済む。肥えた墓地を《グルマグのアンコウ》の「探査」に充てるのも、擬似的なアドバンテージ補填方法と言えるかもしれない。

 いずれにせよ、このあたりまでは《小悪疫》ユーザーならばとっくに通過した地点だろう。だが《大地割り》という、「5~8枚目の《小悪疫》」を採用しているとなればどうだろうか?

 《トロウケアの敷石》を必要とする性質上、2ターン目に《小悪疫》を撃つためには《彩色の星》のようなマナフィルターか《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》の力を借りるしかない。だがどうせ《彩色の星》が入るのなら、他の使い道があってもよさそうなものだ。それが《大地割り》ということなのだろう。いっそ《大いなるガルガドン》を入れてみるというのも面白い。

 《小悪疫》に依存しないための《無駄省き》もしっかりと搭載し、ロマンに溢れながらも実用性を兼ね備えたデッキとなっている。


【「小悪疫」でデッキを検索】





■ レガシー: 黒単コントロール





Takahashi Kenta「黒単コントロール」
晴れる屋レガシー杯 どすエクスプレス京都優勝

13 《沼》
4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
4 《不毛の大地》
4 《ミシュラの工廠》

-土地(25)-

1 《冥界のスピリット》

-クリーチャー(1)-
4 《暗黒の儀式》
4 《コジレックの審問》
3 《無垢の血》
2 《外科的摘出》
4 《小悪疫》
4 《Sinkhole》
3 《Hymn to Tourach》
2 《Nether Void》
2 《呪われた巻物》
1 《世界のるつぼ》
1 《ファイレクシアのトーテム像》
4 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(34)-
3 《仕組まれた疫病》
3 《罠の橋》
2 《苦花》
2 《地獄界の夢》
2 《真髄の針》
1 《無垢の血》
1 《Hymn to Tourach》
1 《悪疫》

-サイドボード(15)-
hareruya



冥界のスピリットミシュラの工廠呪われた巻物



 《冥界のスピリット》《呪われた巻物》がフィニッシャーのデッキと聞くと「一体いつの時代のデッキだ」とツッコみたくもなるだろうが、これは紛れもなく現代のデッキである。

 晴れる屋レガシー杯、どすエクスプレス京都。京都までの往復新幹線がかかったこの戦いで優勝したのは、何と黒単のコントロール。《実物提示教育》《秘密を掘り下げる者》が鎬を削る、《渦まく知識》《Force of Will》が飛び交う「青い環境」と呼ばれるレガシーでまさかの黒単が優勝となれば、快挙といって差し支えないだろう。

 《冥界のスピリット》といえば「ネザーゴー」が有名だが、このデッキはパーミッションではなく積極的に対戦相手のリソースを削りにいく消耗戦略を採っている。ただ《Nether Void》を貼れば擬似的な「ネザーゴー」も可能だ。

 【グランプリ京都】まであと1か月。日本中のプレイヤーが本気で調整している今、レガシー環境は急速に進化を遂げつつあるのかもしれない。


【「黒単コントロール」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【happymtgでデッキを検索する】