津村健志のプロツアー『ニクスへの旅』レポート

津村 健志



 こんにちは!

 5/16-19にアトランタで開催されたプロツアー『ニクスへの旅』に参加してきました。


 が、ががががが。


 結果は1勝5敗で初日落ちとこれ以上ない惨敗でした……。これほどまでに負けたプロツアーは、黒田 正城さんが優勝したプロツアー神戸04(0勝4敗ドロップ)以来です。

 負けたレポートを読みたいという方はいらっしゃらないかと思いますが、次回の調整に生かすためにも、この度の調整過程を記していきたいと思います。少し長くなってしまいますが、最後までお付き合いの方よろしくお願いいたします。



〇調整開始前

 今回のプロツアーに向けての調整は、基本的に晴れる屋トーナメントセンターで行いました。メンツはマッキー(三原 槙仁)さん、なべ(渡辺 雄也)君、やまけん(山本 賢太郎)さん、彌永(淳也)君といったプロツアー常連組から、仲田 涼君、中島 一君、市川 ユウキさんのような新進気鋭のプレイヤーたちを加えた大所帯です。

 今年の4月までは大阪で大学に通っていましたが、その間はプロツアーに参加するにしても調整はMagic Online(以下MO)でやるくらいのもので、誰かとチームを組んだり一緒に調整したりということはしませんでした。

 そのため、このプロツアーは久しぶりに「チーム」らしき活動をするという意味合いでも、個人的に特別なものでした。前回のプロツアー『神々の軍勢』ではチーム「ChannelFireball.com」のみなさんのお世話になりましたが、言語の壁もあってなかなかうまくいかなかったので、期するものは大きかったです。(前回のプロツアーレポートは【こちら】からどうぞ。)


 調整内容を簡潔にまとめると、以下のような流れで行われました。


1.『ニクスへの旅』発売まではブロック構築を少しずつ (4月下旬~5月2日)
2.『ニクスへの旅』発売から1週間ほどはドラフトに全力投球 (5月2日~5月7日)
3.再びブロック構築に全力投球 (5月7日~5月14日)


 1.『ニクスへの旅』発売まではブロック構築を少しずつ、とありますが、完全なスポイラーリストが出るまでは調整を始められなかったこと、就職したばかりで仕事の方もドタバタしていたこともあり、そこまで多くの時間を割けませんでした。

 ただし、この間に色々な方と出会えて、「プロツアー参加者で集まって晴れる屋で調整する」という流れができたのは本当にありがたかったです。おそらく、調整メンツの中には遠方からいらっしゃってくださる方もいたと思いますが、僕個人としては仕事後すぐに練習ができる環境を作って頂けて助かりました。

 また、そこで仲田君、中島君というグランプリ静岡14トップ8コンビと一緒に調整させて頂いたのですが、彼らと調整できたことはとても良い刺激になりました。この二人の技術と熱意は本物なので、これからの日本マジック界を背負って立つ存在になるんじゃないかと密かに期待していたり。


期待の若手。左が仲田君、右が中島君。



 仲田君のプロツアーレポートはMTG公式サイトに掲載されているので、ぜひそちらもご覧になってみてください。


『仲田涼の「はじめてのプロツアー」(前編)』
http://mtg-jp.com/reading/special/0010592/

『仲田涼の「はじめてのプロツアー」(後編)』
http://mtg-jp.com/reading/special/0010726/


 さてさて、少し脱線してしまいましたが、そんなこんなで本格的な調整をスタートさせたのは5月の頭くらいからです。

 ドラフトの調整は、「菊名合宿」と呼ばれる集まりで4日間みっちりと練習してきました。「菊名合宿」とは、新セットが発売される毎に行われるドラフト練習会で、KAKAO(中村 肇)さん夫妻のお宅で開催されています。(いつも大変お世話になってます!)メンツは半分ほどは日替わりだったものの、マッキーさん、なべ君、井川(良彦)君、KAKAOさん、僕は4日間フル参戦でした。

 上記メンバーに加え、やそ(八十岡 翔太)さん、やまけんさん、彌永君、ライザ(石村 信太朗)君、そして今回見事にトップ8入賞を果たした市川ユウキさん、その他にもたくさんの豪華メンツが訪れた、非常に密度の濃い調整会となりました。

 各人の成績などは【こちら】でご覧頂けます。



一緒に練習した市川“瀬畑”ユウキさんがトップ8!おめでとうございます!




〇調整記・「ニクスへの旅・神々の軍勢・テーロス」ドラフト編  ~弱くなった「英雄的」、変化の求められる白いデッキ~

 『ニクスへの旅』の入ったドラフトのファーストインプレッションとして、大幅に弱体化してしまった白が印象的でした。白が弱くなったその理由としては、「英雄的」カードが圧倒的に弱くなった点が挙げられます。

 これは『ニクスへの旅』のコモンに「授与」カードが存在しないことに起因していて、「授与」カードは以前よりも手に入りづらくなりました。それにより「英雄的」クリーチャーの点数は必然的に下がることとなり、それが最も顕著に表れたカードは《アクロスの空護衛》でした。

アクロスの空護衛


 『神々の軍勢・テーロス×2』ドラフトでは初手でも全く問題のなかった《アクロスの空護衛》ですが、現在では初手はおろか3~4手目でもあまり喜べないカードに成り下がってしまいました。もしも最終的に「授与」カードが少ないデッキになってしまった場合、元のサイズが1/1というのはあまりにも非力で、何を突破するにもコンバットトリックが必要なクリーチャーは、お世辞にもビートダウンデッキに適しているとは言えません。

 以上の理由から、白いデッキは以前のような「英雄的」+「授与」をかき集める戦略から変化が求められました。『ニクスへの旅』の白は、他色と比べて優秀なコモンが多いので、以前にも増して混みやすくなったこともまた、白いデッキが勝ちづらくなった要因のひとつだと思います。

 調整会の残り2日間は、白が空いている気配を察知したら意識的に白いデッキを作るようにしていましたが、その成績はほとんどが1勝2敗でした。そんな中で他の白いプレイヤーの成績を見ていると、「白赤ビートダウン」「白黒エンチャント」系のデッキはきちんと組めれば強そうだ、という結論にいたりました。

 前者は《サテュロスの重装歩兵》を筆頭とした、評価が下がったはずの「英雄的」クリーチャーたちを主軸としたもので、遅い順手で拾える《群衆の決起》《定命の者の強情》で道を切り開くアーキタイプです。とにかく軽く組むことが重要で、マナカーブの頂点に《双角の連続襲撃》なんかがあるのが理想です。

 後者はその名の通り《厳かな守護者》《戦慄運びのランパード》といったエンチャント軍団で攻めるデッキで、《収穫守りのアルセイド》《闇への投入》を絡めて攻撃を継続していきます。このアーキタイプは、《グリフィンの夢掴み》《回帰の泉》コンボで長期戦に強くできる点も魅力的でした。

 白いデッキ以外の成績は2勝1敗が多かったので、白さえ上手く扱えればなんとかなりそうな手応えを得て合宿は終了。合宿終了から出発までは一週間ほどありましたが、そこからはプロツアーのもう一種目である「テーロスブロック構築」の調整ばかりしていました。

 その後のドラフトの練習は晴れる屋で2回、MOで1回やったのみで、それ以外はなべ君や行弘(賢)君がMOでドラフトしているのを眺めながら意見交換をしたりといった程度でした。(齋藤)友晴さんや高桑(祥広)さんと点数表を作成したりもしましたが、基本的には構築重視の調整へと移っていきました。

 理由としては、「菊名合宿」で十分な練習ができたという自負があったことと、ブロック構築により多くの時間を割きたかったためです。プロツアーまでの残り時間はあと一週間程度。ここまではドラフトの合間に少し触る程度だった「テーロスブロック構築」に本腰を入れて挑みます。



〇調整記・「テーロスブロック構築」編  ~構築フォーマットの難しさ~

◆まずは環境理解から

 『ニクスへの旅』加入前のメタゲームは、「黒単ビートダウン」「緑黒白リアニメイト」の2強状態といった様子でした。「黒単ビートダウン」は環境に《闇の裏切り》という強力な対策カードがあったおかげで歯止めがかかっていましたが、「緑黒白リアニメイト」は環境に墓地対策カードが1枚もなかったため、『ニクスへの旅』で墓地対策が登場しなかった場合はどうなってしまうのかと不安視していました。

 幸いにも、『ニクスへの旅』には《苦悶の神、ファリカ》《エレボスの代行者》と2種類の墓地対策があったため、僕の不安は杞憂に終わりました。それに加え、「緑黒白リアニメイト」は各種ビートダウンデッキのスピードについていくことが難しいことも発覚したので、サイドボードでしっかりとしたビートダウン対策を施す必要があることも分かりました。

 また、毎年ブロック構築のプロツアーに継続参戦しているプレイヤーたちに伺ったところ、ブロック構築のプロツアーの傾向として、調整段階で多少ビートダウンが強く感じようとも、本戦では少ないことがほとんどだそうです。つまりメタるべきはミッドレンジ・コントロールといった遅いデッキであり、それら中速以降のデッキといかに差を付けられるかが勝敗を分かつとのこと。

 それらの情報をもとに始まった調整会。実際に調整を始めるにあたって、僕たちの出発地点はなべ君が作ってくれた4つの単色デッキからでした。

 《闇の裏切り》さえなければ間違いなく環境トップのデッキであろう「黒単」
 《予言の炎語り》《モーギスの軍用犬》が加入した「赤単」
 《夜帷の死霊》こそいないものの、見た目以上の強さを誇る「青単」
 安定性には問題あれど、爆発力は十分な「白単」

苦痛の予見者予言の炎語り波使い密集軍の指揮者


 「緑単」デッキだけはデッキパワーが不十分だという理由で作らなかったそうですが、そこに「緑黒白リアニメイト」や、各々が閃いた新しいアイディアの詰まったデッキを持ち込んで、デッキのポテンシャルを試していきました。

 そこで僕が最も注目したデッキは、中島君の持ち込んだ「緑黒星座+<最悪の恐怖>」デッキでした。デッキの大部分をエンチャントで占められたそのデッキは、《開花の幻霊》《破滅喚起の巨人》を上手く活用することができ、なおかつ《ケイラメトラの指図》からの《最悪の恐怖》という奇襲性抜群のフィニッシュブローをも持ち合わせていました。そのデッキはビートダウン態勢や安定性の欠落といった問題から没になったようですが、その奇抜な発想力にはただただ驚くばかりでした。

ケイラメトラの指図最悪の恐怖


 なべ君がビートダウンデッキを一通り作ってくれていたこともあり、僕は自分の好みもあってミッドレンジやコントロールデッキを担当することに。「エスパー(青白黒)コントロール」「青黒コントロール」と順に試していった結果、それらのデッキはマナベースの脆弱さもあって、あまり好ましい結果を得ることはできませんでした。仮に「青黒」2色でデッキを組んだとしても、(青)(青)・(黒)(黒)を要求するカードばかりで、マナ基盤は非常にタイトでした。2色のデッキであろうとも、デッキの安定性を向上させるために10枚に近い、またはそれ以上の占術ランドを使用することになるので、それならば敢えて2色のコントロールデッキを使用することはないと結論付けしました。



◆「緑+α」の模索

 環境的にマナベースがタイトであること。それゆえに、この環境の遅めのデッキは<森の女人像>と<クルフィックスの狩猟者>を軸に据えた構成で間違いないだろうと考え、そこからはひたすらに「緑+α」のデッキを作り続けました。

森の女人像クルフィックスの狩猟者

結果的に、2種類ともプロツアーのトップ8に28枚という暴れっぷり。



 最初に作ったのは「バント(緑白青)」で、リストは大体こんな感じでした。



「バント・ミッドレンジ」

6 《森》
6 《平地》
2 《島》
4 《豊潤の神殿》
4 《神秘の神殿》
4 《啓蒙の神殿》

-土地(26)-

4 《森の女人像》
4 《クルフィックスの狩猟者》
4 《オレスコスの王、ブリマーズ》
3 《世界を喰らう者、ポルクラノス》
4 《予知するスフィンクス》

-クリーチャー(19)-
2 《神討ち》
4 《払拭の光》
3 《荒ぶる波濤、キオーラ》
2 《英雄の導師、アジャニ》
4 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(15)-

-サイドボード(0)-
hareruya



オレスコスの王、ブリマーズ世界を喰らう者、ポルクラノス荒ぶる波濤、キオーラ


 このリストは個人的にそこそこ良い感触を得ることができましたが、この時点では《マナの合流点》を使う発想がなかったためにマナベースに問題があったこと、メタゲームの本命である「黒単」の《モーギスの匪賊》がどうしようもなかったことで、比較的早い段階でお蔵入りしてしまいました。


 ただし、早々にこのデッキを諦めたのには理由があって、2色目を白ではなく黒にした方が良いと判断したからです。というわけで、続いては「緑黒青」のバージョンを試してみました。



「緑黒青コントロール」

6 《森》
6 《沼》
1 《島》
4 《疾病の神殿》
4 《神秘の神殿》
4 《欺瞞の神殿》

-土地(25)-

4 《森の女人像》
4 《クルフィックスの狩猟者》
4 《予知するスフィンクス》

-クリーチャー(12)-
4 《思考囲い》
4 《胆汁病》
4 《悲哀まみれ》
4 《信者の沈黙》
4 《悪夢の織り手、アショク》
3 《荒ぶる波濤、キオーラ》

-呪文(23)-
4 《流浪》
4 《市場の祝祭》
3 《最悪の恐怖》
2 《闇の裏切り》
2 《啓示の解読》

-サイドボード(15)-
hareruya



クルフィックスの狩猟者悪夢の織り手、アショク悲哀まみれ


 このリストはビートダウンとミッドレンジに強そうだったので、思い付いた時には大きな期待を抱いていました。「バント」とこの「緑黒青」バージョンを見て、どうして青に固執するのか疑問を持った方もいらっしゃるかと思いますが、それは対ミッドレンジ、対コントロール戦において、《予知するスフィンクス》以上に頼りになるカードがなかったからです。


予知するスフィンクス



 「テーロスブロック構築」環境には、スタンダードでも絶賛大活躍中の《太陽の勇者、エルズペス》さんもいますが、《太陽の勇者、エルズペス》には《払拭の光》《英雄の破滅》などの対処法があるのに対し、《予知するスフィンクス》一度着地さえしてしまえば、ほとんど対処されることがないという明確な強みがあります。それこそ《全希望の消滅》《宿命的報復》のような、重くて使い勝手の悪いカードでしか対処することができないので、遅めのデッキなら可能な限りこのカードを使いたいと思うほどでした。

 また、ミッドレンジ・コントロールデッキの多くが《悪夢の織り手、アショク》を苦手としていたため、ビートダウンデッキが少ないという予想のもとならば、このデッキは良い選択だろうという手応えを感じていました。

 「バント」でも採用していた《荒ぶる波濤、キオーラ》は、想像していたよりも遥かに強かった1枚で、《悲哀まみれ》と組み合わせることで、一段と使いやすく、頼れるカードとなりました。

 ビートダウンデッキにも勝とうと欲張ったあまり、《英雄の破滅》よりも《悲哀まみれ》を優先してしまったのはやり過ぎでしたが、デッキの構想自体には手応えを得ていたので、しばらくはこのデッキを調整することに。しかしながら、ここでも問題となったのはやはりと言いますかマナベースでした。3ターン目までに(緑)(緑)、(黒)(黒)を要求し、なおかつ5ターン目までには(青)(青)もほしいデッキ。《森の女人像》を引かない状況下での動きが歪すぎるという事実が、このデッキの評価を著しく下げていたのです。《マナの合流点》を数枚入れるプランも考えましたが、そうしてしまうと対ビートダウンデッキに弱くなってしまうというジレンマがあり、最終的には諦めることとなりました。



◆魅力的な三原ナヤ

 この時点で、三原さんは本選で日本人の多くが使用することになる「ナヤ(緑白赤)・ミッドレンジ」の雛形を作り上げていました。もとより三原さんの構築能力がずば抜けていることもあり、サイドボードも含めた完成度が高かった「ナヤ・ミッドレンジ」を超えることは相当に難しいと誰もが感じていました。



「ナヤ・ミッドレンジ」

8 《山》
4 《森》
4 《奔放の神殿》
4 《豊潤の神殿》
1 《静寂の神殿》
3 《マナの合流点》

-土地(24)-

4 《森の女人像》
3 《旅するサテュロス》
4 《クルフィックスの狩猟者》
3 《予言の炎語り》
2 《世界を喰らう者、ポルクラノス》
2 《都市国家の破壊者》
4 《嵐の息吹のドラゴン》

-クリーチャー(22)-
2 《マグマの噴流》
2 《破壊的な享楽》
4 《岩への繋ぎ止め》
3 《払拭の光》
2 《英雄の導師、アジャニ》
1 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(14)-
4 《狩人狩り》
2 《マグマのしぶき》
2 《破壊的な享楽》
3 《歓楽者ゼナゴス》
2 《太陽の勇者、エルズペス》
2 《最悪の恐怖》

-サイドボード(15)-
hareruya



予言の炎語り世界を喰らう者、ポルクラノス最悪の恐怖


 三原さんのリストの特徴は、サイドボードに仕込まれた<最悪の恐怖>です。対ミッドレンジ・コントロール戦で絶大な効果を発揮するこのカードは、間違いなく色を足す価値のあるものでした。《精神隷属器》系のカードには、「ある程度盤面が強いデッキの方が使いやすい」という共通点があるのですが、「ナヤ・ミッドレンジ」はそれをクリアできていますし、対戦相手に《最悪の恐怖》をキャストされてもあまり大きな問題にならなかったこともこのデッキの長所でした。

 なぜならば、《岩への繋ぎ止め》《払拭の光》《英雄の導師、アジャニ》といったカードは、全て「対戦相手のカードしか対象に取れない」ので、このデッキはターンを奪われたとしても、大損してしまうことがほとんどなかったのです。

 結局「緑黒青」は、デッキの総合力で三原さんの「ナヤ・ミッドレンジ」に遠く及ばなかったため没に。マナベースの問題点さえ克服できればぜひとも使いたいデッキだったのですが、長丁場になればなるほど安定性は重要になるので仕方のないところです。


◆行弘インパクト

 出発までは残すところあと3日。誰もが三原さんの「ナヤ・ミッドレンジ」に心を決めようとしてしていたその最中、和歌山から合流した行弘君の「白単信心ビートダウン」が、僕たちの調整グループを大いに驚かせてくれました。



「白単信心ビートダウン」

19 《平地》
3 《ニクスの祭殿、ニクソス》

-土地(22)-

4 《万神殿の兵士》
4 《忠実なペガサス》
3 《恩寵の重装歩兵》
4 《密集軍の指揮者》
4 《ブリマーズの先兵》
3 《オレスコスの王、ブリマーズ》
2 《万戦の幻霊》

-クリーチャー(24)-
4 《船団の出航》
2 《侍祭の報賞》
3 《払拭の光》
1 《ヘリオッドの槍》
3 《ヘリオッドの指図》
1 《凱旋の間》

-呪文(14)-

-サイドボード(0)-
hareruya



船団の出航ヘリオッドの指図侍祭の報賞


 圧倒的で感動的な速度。11枚もの1マナ域から始まる怒涛の攻勢を、豪華5枚の全体強化呪文で後押しし、早ければ4~5ターン目にゲームを決めてしまえます。《船団の出航》《侍祭の報賞》のような突然死を演出するカードも強力で、特に後者は予想していてもどうしようもない場面が多く、高評価でした。デッキの安定性に多少の難はあったものの、それを考慮しても十分に魅力的なデッキでした。

 実を言うと、このデッキは直前まで使用候補に残っていました。しかしながら、サイドボードに高確率で飛んでくるであろう《悲哀まみれ》をどうしても乗り越えることができなかったので、僕たちの調整はまたしても暗礁に乗り上げてしまうことに。

 ここから残りの時間は僕の家でなべ君、行弘君と3人で調整をしていました。「白単信心」をアップデートしたり、「シミック(緑青)・ミッドレンジ」を組んだりと、いくつかの新デッキも試してみましたが、どれも上手くいきませんでした。



 今度こそ「ナヤ・ミッドレンジ」で決定か。
 
 そんな空気の漂う中で、行弘君のアイディアで<森の女人像>と<クルフィックスの狩猟者>を抜いたコントロールバージョンを試してみることにしました。



「ナヤ・コントロール」

10 《山》
3 《平地》
1 《森》
4 《凱旋の神殿》
4 《奔放の神殿》
4 《豊潤の神殿》

-土地(26)-

4 《都市国家の破壊者》
4 《嵐の息吹のドラゴン》

-クリーチャー(8)-
3 《マグマの噴流》
2 《破壊的な享楽》
4 《神々の憤怒》
4 《宿命的火災》
4 《岩への繋ぎ止め》
3 《払拭の光》
2 《英雄の導師、アジャニ》
4 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(26)-

-サイドボード(0)-
hareruya



都市国家の破壊者神々の憤怒宿命的火災


 《神々の憤怒》を筆頭に、除去が満載のこのリストは、見た目通りビートダウン全般に強く、サイドボード後にそれ以外のデッキに勝とうとするデッキでした。実のところ、僕の中で「本当に本戦でビートダウンデッキは少ないのか?」と疑問に感じていたこともあり、この手のアプローチも悪くないように思えました。

 このデッキを1日中試したところで出発の時間になってしまったので、なべ君とは一旦お別れして行弘君と空港へ向かいました。僕たち二人は水曜日に到着の便だったので、行弘君とアメリカに着いてからデッキを仕上げようと話して出発。

 しかしここで痛恨の飛行機トラブルにより、僕だけシカゴに1泊させられる羽目に……。しかもホテル代は1泊200ドルというアメイジング価格。翌朝には飛行機が飛ぶため、滞在時間にして僅か6時間に対して200ドルを支払うことになったのでした。



 そんなこんなで、アトランタに到着したのはプロツアー前日の木曜日でした。受付を済ましてから、デッキを決めるべく最後の調整会へ。前述の通り、「白単」は《悲哀まみれ》がどうしても克服できなかったので没。となると、僕たちに残された選択肢は「ナヤ・ミッドレンジ」にするか「ナヤ・コントロール」にするかでした。
 手広い「ナヤ・ミッドレンジ」か。それともクリーチャーにすこぶる強い「ナヤ・コントロール」か。

 
 結局、僕たちが選んだデッキは「ナヤ・コントロール」でした。他のプレイヤーの「プロツアーは結局ミッドレンジとコントロールが多い」という金言を信じるのであればこの選択は矛盾していますが、ビートダウンもそこそこいるだろうと判断したこと、なべ君と行弘君とで行った最後の調整を無駄にしたくなかったということでこちらを選びました。もし仮に今回負けたとしても、その方が今後のためになるだろうという意図もありました。



行弘 賢・津村 健志 「ナヤ・コントロール」 プロツアー『ニクスへの旅』

10 《山》
3 《平地》
1 《森》
4 《凱旋の神殿》
4 《奔放の神殿》
4 《豊潤の神殿》

-土地(26)-

4 《都市国家の破壊者》
4 《嵐の息吹のドラゴン》

-クリーチャー(8)-
3 《マグマの噴流》
2 《破壊的な享楽》
4 《神々の憤怒》
4 《宿命的火災》
4 《岩への繋ぎ止め》
3 《払拭の光》
2 《英雄の導師、アジャニ》
4 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(26)-
4 《予言の炎語り》
4 《歓楽者ゼナゴス》
3 《復仇》
2 《鍛冶の神、パーフォロス》
1 《稲妻の一撃》
1 《英雄の導師、アジャニ》

-サイドボード(0)-
hareruya



 なべ君は最終的に三原さんの「ナヤ・ミッドレンジ」を選択しました。僕個人は前回のプロツアーと同様に直前までバタバタしてしまったので、次回は最低でもプロツアーの5日前にはデッキを決めようと決心しつつ、本戦の朝を迎えました。



〇プロツアー『ニクスへの旅』・本戦

◆ファーストドラフト

 いよいよ本戦のスタートです。ファーストポッドで知っている顔は古豪のRobert Jurkovicと、最近絶好調のSam Pardeeくらい。

 初手は《マグマのしぶき》《刃牙の猪》を流して《印章持ちのヒトデ》から。アンコモンやレアを引けなかったのは残念ですが、《印章持ちのヒトデ》は環境でナンバー1のコモンと評されるカードなので一安心。

印章持ちのヒトデ

安定感抜群のヒトデさん。


 2手目は地味ながら堅実な仕事をしてくれる《厳かな守護者》を、続く3~4手目で《戦慄運びのランパード》《脳蛆》を確保して黒に狙いを定めていきます。5手目に《印章持ちのヒトデ》が流れてきて嬉しさのあまり飛び跳ねそうになりましたが、ここまでの流れでどう見ても青は枯れていたので流すことに。

 MOのドラフトでも散見されましたが、《擬態するセイレーン》などを優先して《印章持ちのヒトデ》を流すプレイヤーが思いのほか多いため、流れに従うべく黒いカードをピックしました。後で確認したところ、僕の上家は初手《果敢な泥棒》から「青白」に一直線だったようなので、この選択自体は間違っていなかったと思います。そこからはひたすらに黒いカードを取り続け、赤と緑の流れが良かったので「黒緑」を意識して1パック目を終えました。


槌の一撃ケラノスの稲妻

赤は『神々の軍勢』が強い。


 1パック目の流れだけ見ると、明らかに「黒赤」に進むべきでしたが、初手で《マグマのしぶき》《刃牙の猪》しか取るもののないパックを流したため、僕の下家かその下がほぼ確実に赤いことを考慮して赤はやめようと決めていました。普段なら最も流れが良い色をするのがセオリーですが、「ニクスへの旅・神々の軍勢・テーロス」ドラフトにおける赤は『神々の軍勢』に強いカードが集中しているので、いかに自分の下に赤をやらせないかが重要になります。つまり僕は初手の段階で、「赤をやる権利」を放棄していたようなものです。

 と言うわけで、赤以外を2色目にすると決めて2パック目を開封。初手は《狼育ち》以外何もないパック。これ幸いと、2色目は緑に決定し、2手目は《金箔付け》でホクホク。そこから《窒息死》×2、《悲哀まみれ》と強調の成果は感じるものの、その以外はあまりパッとせず最終パックへ。

金箔付けクルフィックスの預言者


 3パック目の初手は《クルフィックスの預言者》でした。他に黒か緑の単色のカードがあればそちらを優先したのですが、大したカードがなかったことと、《市場の祝祭》が取れていたのでタッチできそうだったこともあって素直にこれをピック。そこから《葉冠のドライアド》×2、《悪意の幻霊》《ネシアンのアスプ》とゴキゲンな流れ。遅い順手で《ファリカの療法》も拾えたりで、そこそこのデッキが組めました。



津村 健志 「ファーストドラフト:黒緑」 プロツアー『ニクスへの旅』

9 《沼》
6 《森》
1 《豊潤の神殿》
1 《未知の岸》

-土地(17)-

1 《ファリカに選ばれし者/Pharika’s Chosen》
2 《葉冠のドライアド》
1 《脳蛆》
1 《血に狂った重装歩兵》
1 《蘇りし者の密集軍》
1 《厳かな守護者》
1 《血集りのハーピー》
1 《腐敗した大男》
1 《戦慄運びのランパード》
1 《ネシアンのアスプ》
1 《クルフィックスの預言者》
1 《ファリカの癒し人》
1 《定命の者の大敵》

-クリーチャー(14)-
1 《エレボスの加護》
1 《ファリカの療法》
2 《窒息死》
1 《金箔付け》
1 《職工の悲しみ》
1 《闇への投入》
1 《市場の祝祭》
1 《狼育ち》

-呪文(9)-
1 《セテッサの星砕き》
1 《見捨てられし流れ者》
1 《黄金の木立ちの蛇》
1 《悲哀まみれ》
1 《死の国の重み》

-主なサイドボード-
hareruya






Round 1 vs青黒コントロール除去祭りwith《トロモクラティス》  0-2
Round 2 vs赤白ビートダウン   2-1
Round 3 vs青白英雄的(上家)  1-2


成績:1勝2敗


 結果の方は1勝2敗と良いとこなし。1回戦目は単純にあちらの方がデッキが強く、除去とフィニッシャーの質の差で負けてしまいました。こちらの《金箔付け》と、対戦相手の《信者の沈黙》を見比べて、本当に同じレアかとWizardsさんに問い詰めたくなりました(涙)

 2回戦目はサイドボードの戻し忘れでゲームロスをもらってしまったものの、何とか勝利。この日は構築デッキを仕上げるために朝食を取れず、いまいち集中できていなかった原因も多少はそこにあったような気がします。体調を整えるのもプロツアーで勝つために必要なことなので、やはりデッキを早く完成させるに越したことはないですね。

 3回戦は1-1で迎えた3本目にダブルマリガンして負け。2ターン目の《脳蛆》で対戦相手の手札が「《島》《平地》《セテッサのグリフィン》《アジャニの存在》《空中隊形》《保護色》」だった時はいけるかと思いましたが、次のターンにキャストした《血集りのハーピー》《阻まれた希望》でカウンターされてしまい、続くターンに《果敢な泥棒》を引かれて終戦。



◆テーロスブロック構築

Round 4 vs「緑白黒星座」     0-2
Round 5 vs「緑黒星座」      1-2
Round 6 vs「緑単タッチ白信心」 0-2

成績:0勝3敗


総合成績:1勝5敗


 ここで2日目進出の可能性が途絶えたのでドロップ…。Round 4と5で「星座」に負けてしまったのは相性が悪かったので、納得のいく敗戦でした。今回のプロツアーで最大の失敗は、<開花の幻霊>を過小評価していたことでした。

開花の幻霊

脅威のアドバンテージ。


 中島君が早期の段階で「緑黒星座」デッキの雛形を作ってくれていたにも関わらず、僕は《開花の幻霊》の強さに気付くことができませんでした。それに、みんなから散々「本戦はミッドレンジとコントロールしかいない」とアドバイスをもらっていたのに、結局はビートダウンに強く、それ以外に弱いデッキを選んでしまいましたし、色々と悔いの残る敗戦となりました。


 今回は調整段階でもたくさんの反省材料がありました。ただし、なべ君や行弘君、マッキーさんといった方々を含め、今回初めて一緒に調整したプレイヤーばかりだったので、ある程度は仕方のないことかなとも思います。この調整でポジティブに捉えられるものがあるとするならば、今後も一緒に調整させて頂くであろうみなさんの、マジック感を多少なりとも把握できたことです。

 個人的には、相変わらず消極的で発言が少なかったことも大きな反省点ではありますが、この調整を経て、次回はもう少し積極的に主張していけるような気がしています。調整方法云々はさておき、しばらくはもっとミスを減らせるように特訓しなければダメですね。幸いにもマジック熱は最高潮なので、帰国後は毎日MO漬けの生活が続いてます。

 その模様はこちらでご覧頂けますので、お時間のある方はぜひ!


『happymtg・ニコニコ動画コミュニティページ』
http://ch.nicovideo.jp/happymtg

 と、最後に強烈なダイレクトマーケティングをかましたところで今回はお別れです(笑)

 あまりに不甲斐ない成績が続くと色々な方に申し訳ないので、次の大会はいつも以上に全力でがんばります!

 それでは、また次回の記事で!




※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『グランプリ・名古屋2014/トップ8プレイヤープロフィール』
http://coverage.mtg-jp.com/gpnag14/article/008781/

『プロツアー「ニクスへの旅」/トップ8プレイヤープロフィール』
http://coverage.mtg-jp.com/ptjou14/article/010693/