こんにちは。この度happymtgで記事を書かせてもらうことになった津村と申します。
happymtgをご覧の皆さんは既にご存じかもしれませんが、今年から晴れる屋専属のプロプレイヤーとして、プロシーンに復帰することになりました。
それに伴い今後は色々な連載だけでなく、プロツアーの調整記やレポートなどもお届けする予定です。これからも津村 健志と晴れる屋をよろしくお願いいたします。
今回は、先月に開催されたプロツアー『神々の軍勢』の調整記と、簡単な大会レポートをお送りします。こういった形式は初めてなので、至らぬ点も多いかと思いますが、最後までお付き合いの方よろしくお願いいたします。
1.出発前(1月30日~2月14日)
プロツアー『神々の軍勢』の調整に関しては、ナック(中村 修平)さんのご厚意もあってChannelFireballのチーム練習に参加させてもらえることになっていました。プロツアーの1週間前には全員が現地入りして調整することになっていましたが、それまでの期間は東京のみなさんと練習させてもらいました。
しかしここでネックとなったのが、当初の予定から1週間ほど延期された禁止改訂です。いくつかの禁止カードの追加、そして禁止解除が施行されるであろうことは誰もが予想していたことなので、禁止改訂の発表までの練習期間は必然的にドラフトに注力することに。
ドラフトで印象的だったことは、圧倒的なまでの黒の不人気っぷりでした。
初手で取られてもなんら驚きのない《運命をほぐす者》や《胆汁病》が4~6手目まで回っていたりと、異様なまでに黒は毛嫌いされていました。
これは『神々の軍勢』の黒のコモンが弱いことが原因で、初手でピックしてもいいと許容できるカードが《窒息死》のみであり、その《窒息死》ですら他の色のトップコモンの《アクロスの空護衛》や《ケラノスの稲妻》に点数で劣るとあれば、黒の不人気も納得というもの。
逆に、『テーロス』×3のドラフトから大きく評価を上げたのが赤です。
コモンに《槌の一撃》《ケラノスの稲妻》という優良除去があることに加え、対処されなければ簡単にゲームを決めてしまえる《恐るべき気質》までもが控えるこの色は、多くの人が「神々の軍勢」内の最強色だという評価を下しています。
練習中は1-2と0-3が多く、お世辞にも感触が良かったとは言えませんが、「ChannelFireballの調整でも黒が不人気かどうかは絶対に確かめよう」と決心して、いよいよ出発の日がやってきました。
黒の人気の是非を確認したかった理由としては、ひとつの調整グループ内の練習だけではどうしても人々の思想が似通ってしまい、自ずと人気、不人気色が固まってしまう傾向があるからです。
今回の黒に関しては、「コモンが弱い」という明確な理由があるため、「反対に海外では黒が人気」というような事態はないだろうと予想はしていましたが、それ次第で黒を積極的に狙うかどうかの分かれ目になるので、それだけはしっかり確認するようにと決めていました。
こういった場合、自分たちとは違う思想を持った多くの人とドラフトができるMagic Onlineは非常に便利なツールなのですが、まだMagic Online上では「神々の軍勢」がリリースされていなかったので仕方のないところ。
この間モダンの練習はほとんどと言っていいほど出来ませんでしたが、モダンの方はプロツアーに備えて2ヵ月ほどMagic Onlineで練習していたので、モダンのゲーム感覚は十分養えていたつもりですし、ドラフトの練習に集中できる環境は個人的にありがたかったですね。
2.禁止改定の影響
プロツアーのおよそ1週間前、いよいよChannelFireballとの調整会が始まりました。
実はかねてから、「世界最強と評される彼らの調整会に参加してみたい」と思っていて、今回の件は念願叶ったりといった感じでした。Frank Karstenが寝坊して飛行機に乗り遅れ、合流が一日遅れるハプニングはあったものの、無事に全員が揃っていざ調整開始。
基本的な練習スタンスは、「1日にドラフトを0~2回やって、残った時間は全てモダンの調整にあてる」というものでした。
ここで、本格的な調整記に入るその前に、今回の禁止改定が実際の参加者にどのような変化を与えたかを簡単に振り返っておきましょう。
2月3日付けで施行されたモダンの禁止改定は以下の通りです。
・《死儀礼のシャーマン》の禁止
・《野生のナカティル》及び《苦花》の禁止解除
このカードが禁止カード入りしたことで、モダン環境を牽引し続けてきた「ジャンド(緑黒赤)」デッキに終幕の時が訪れました。《死儀礼のシャーマン》の代替品は簡単に見つかる類のものではなく、例えば《極楽鳥》を入れたり、同じ1マナ圏の《コジレックの審問》や《思考囲い》を増量することで解決する問題ではありません。王者の没落、これはプロツアー参加者にとって最も大きなニュースでした。
また、《死儀礼のシャーマン》がいなくなったことで、墓地を活用する「青赤ストーム」デッキや、「頑強」能力を持つ《台所の嫌がらせ屋》《残忍なレッドキャップ》擁する「メリーラポッド」デッキは、以前よりも露出の機会が増えるのではないかと予想されていました。
この2枚の禁止解除のうち、より大きなインパクトを与えたのは、間違いなく《野生のナカティル》です。
《野生のナカティル》を使った「Zoo」デッキは、初期のモダン環境や、在りし日のエクステンデッドでビートダウンデッキの代表格として認知されていましたが、それはこの偉大なる猫の存在があってこそです。
実際に数年ぶりに対峙した《野生のナカティル》のインパクトは相当なもので、この時点で「青黒フェアリー」デッキは選択肢にないと判断してしまうほどに、《野生のナカティル》、そして「Zoo」の強さは際立っていました。
一方の《苦花》に関しては、全くもって強いという感想を抱きませんでした。近代の「クリーチャーが強くそれ以外の呪文が弱い」というトレンドは「青黒フェアリー」にとって決して良いものではなく、主戦力をクリーチャー以外の呪文と、「フェアリー」という限られた種族に大きく依存したこのデッキは、それこそ時代錯誤という言葉がぴったりあてはまってしまうほどに色褪せてしまいました。
《復活の声》のような強力なアンチテーゼも登場しており、「青黒フェアリー」は以前のように「どんなデッキにも勝てるデッキ」ではなく、「コントロールデッキやコンボデッキを食い物にするデッキ」に成り下がってしまったという印象です。
この禁止改定の影響を簡潔にまとめると、「ジャンド」の没落と「Zoo」の復権、というふたつのトピックに集約されるでしょう。
前述の通り「青黒フェアリー」は予想していたよりもデッキ自体が弱く、「Zoo」が多いと読むのであれば選択肢にすら入りづらいため、相当に数は少ないだろうと予想されました。これからの調整記にはこのような背景があるという前提で読み進んでいただければ幸いです。
それでは、ChannelFireballとのモダン調整記をご覧ください。
3.調整初日(2月15日)
調整初期は、「各々好きなデッキを使用し、各マッチアップを10戦ずつやって勝率を出す」というスタイルでした。
この時点ではサイドボードなどは一切考慮せずに、メインボードの構成であったり単純なデッキの強さをテストする意味合いが強かったように思います。僕自身はこれと言って好きなデッキもなかったので、誰かしらのテストパートナーに徹してひたすら試合をやり続けていました。
Josh Utter-Leytonはこれくらい早期の段階で、最終的に多くのメンバーが本選で使用することになる「赤緑ヴァラクート」の調整を始めており、「Zoo」対策のメインの数枚を《クルフィックスの狩猟者》にするか《神々の憤怒》にするかで悩んでいるような状況でした。《クルフィックスの狩猟者》は当初予想していたほどの成果はあげられず、土地が28枚近く入ったこのデッキでダメなのであれば、その他のデッキでも良い働きは期待できないだろうと結論付けされました。
その他にはOfelia(Patrick DickmannのMagic Onlineアカウント。今回のプロツアーで見事にトップ4入賞)作の《タルモゴイフ》の入った「Tarmo-Twin」などを試しているうちに初日の調整会はあっという間に終了。全員で晩ご飯を食べに近くのショッピングモールへと出かけることになりました。
ここで僕にとって文字通り大きな障壁となったのが、言語の壁でした。
試合がメインの調整の間こそ全く問題にならなかったものの、意見交換がメインとなる食事中となれば話は全くの別物。
大学で英語を専攻していたことに加え、英語の読み書きはだいぶ上達しているという自負もあったので、リスニングに関してもある程度の自信はあったのですが、情けないことに話題についていくのがやっとという有様で、ほとんど会話に参加することができませんでした。
結局これは調整末期になっても解決することがなく、ただでさえ消極的な姿勢に拍車がかかってしまい、他の面々には本当に迷惑をかけてしまったと反省しています。リスニングに関しては、やはり実践を積むのは一番だと思うので、今後はマジックだけでなく、英語ももっともっと伸ばしていきたいですね。
4.調整2日目~3日目(2月16日~2月17日)
そんな決心を胸に調整は2日目を迎えました。
調整会という観点で見るとまだ2日目ではありますが、プロツアーまでに残された調整期間はあと5日のみ。
そろそろデッキを決めたいなと思いながら、僕たちが主に力を注いでいたのは、Karstenが持ち込んだこのデッキでした。
2 《島》 1 《山》 1 《湿った墓》 1 《血の墓所》 1 《蒸気孔》 4 《沸騰する小湖》 1 《霧深い雨林》 4 《闇滑りの岸》 4 《黒割れの崖》 1 《宝石鉱山》 -土地(20)- 1 《猿人の指導霊》 4 《グリセルブランド》 4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(9)- |
4 《思考囲い》 4 《血清の幻視》 4 《信仰無き物あさり》 4 《御霊の復讐》 4 《イゼットの魔除け》 2 《差し戻し》 2 《交錯の混乱》 3 《裂け目の突破》 4 《五元のプリズム》 -呪文(31)- |
2《稲妻の斧》 2《ハーキルの召還術》 2《神々の憤怒》 2《粉砕の嵐》 2《撤廃》 2《倦怠の宝珠》 2《すべてを護るもの、母聖樹》 1《裂け目の突破》 -サイドボード(15)- |
デッキの動きは至極単純なもので、《思考囲い》、《信仰無き物あさり》、または《イゼットの魔除け》で《グリセルブランド》か《引き裂かれし永劫、エムラクール》を捨てて、《御霊の復讐》で釣り上げるというダイナミックなデッキです。
《裂け目の突破》は追加の《御霊の復讐》といった役割ですが、墓地対策が施されるサイドボード後には、墓地を活用しない勝ち手段として重宝します。
このデッキは「Zoo」や「Affinity(親和)」のようなビートダウンデッキにすこぶる強く、「メリーラポッド」のような比較的遅めのコンボデッキに対しても有利に戦うことができます。《御霊の復讐》で釣ったクリーチャーをタップしてくる《詐欺師の総督》と《やっかい児》の入った「《欠片の双子》デッキ」にこそ苦戦するものの、それ以外にはこれといって苦手なデッキも少なく、デッキの感触は良好でした。
僕とKarsten以外にも、Martin Juza、そして実は「《御霊の復讐》デッキ」の大ファンだというPaulo Vitor Damo da Rosa(以下PV)もこのデッキに興味を示していました。
僕たちのグループはこの2日間のほとんどの時間を「《御霊の復讐》デッキ」のデータ収集に費やし、残る3日間でサイドボード後のプランを検討する方向で調整は進んでいきました。
5.調整4日目~5日目(2月18日~2月19日)
Karstenたちがやってくれていたサイドボード後の調整結果を聞いてみると、「《御霊の復讐》デッキ」はサイドボードから投入される墓地対策を乗り越えられる強さを持ち合わせていないという結論に至ったとのこと。
ただしこの時は対戦する全てのデッキが3~4枚の墓地対策を入れる前提で調整をしていたらしく、本当にそこまで多くの枚数を墓地対策に割けるのかどうかは皆が疑問視していました。
モダンは様々なデッキが混在するフォーマットであり、たった15枚という限られたサイドボードの中で、墓地対策用に3枚ものスペースを割くことは決して容易な選択ではありません。
しかしながら、《死儀礼のシャーマン》禁止の影響で増加するであろう「青赤ストーム」と「メリーラポッド」に有効な《墓掘りの檻》は、多くの人が採用するだろうというKarstenの意見に説得力があったことに加え、「《御霊の復讐》デッキ」を使えば使うほどに動きの不安定さが露呈してきたことも相まって、このタイミングでこのデッキはお蔵入りしてしまうことに。
この時点でメンバーの多くは「赤緑ヴァラクート」を使うと決めており、PVの「これほどまでに相手に干渉しないコンボデッキは弱いと思う」という意見を取り入れ、《差し戻し》や《イゼットの魔除け》のために青を足すなど、メインボードの最後の数枚とサイドボードの最終調整に入っていました。
僕自身はここまで「《御霊の復讐》デッキ」の調整にほとんどの時間を費やしていたこともあり、「赤緑ヴァラクート」の使用経験は出発前のMagic Onlineで数回使用した程度しかありませんでした。そもそもあまりにも「赤緑ヴァラクート」にはノータッチだったため、いかに同じチームといえど使わせてもらうのが少し申し訳ないという気持ちもありました。
他にはMagic Online上で比較的調子の良かった「青赤ストーム」を試したかったものの、このデッキもサイド後の墓地対策などを乗り越えられそうにないという理由で没に。
「赤緑ヴァラクート」以外のその他の面々はと言いますと、「ミスター《野生のナカティル》」ことBrian KiblerとPat Coxが「Zoo」デッキを、調整2日目にはデッキを決めていたBen Lundquistが「Affinity(親和)」を、といった具合でした。
特にKiblerは「他の面子が何を使おうとも俺は<野生のナカティル>を使うぜ!」と爽やかに語っており、自身のキャラクターと《野生のナカティル》愛を貫くその姿勢には尊敬の念すら覚えました。
あとは「どうしても『赤緑ヴァラクート』を好きになれない」というJuzaが、「トリコロール(青白赤)デッキ」や「《欠片の双子》デッキ」を試していたくらいで、デッキが決まっていないのはそのJuzaと僕のみという状況に。
と、ここで仮眠というにはあまりにも長すぎる睡眠をとってしまって午後の練習に参加できないという大失態……。せっかく参加させていただけた調整会なのに本当に申し訳ないと思いつつ、いよいよ調整最終日へ。
6.調整最終日(2月20日)
そんなわけで本格的にデッキをどうしようか悩んでいると、Juzaが調整していた「トリコロール(青白赤)デッキ」を一緒に使わないかと申し出てくれました。
2 《島》 1 《平地》 1 《山》 2 《蒸気孔》 1 《神聖なる泉》 1 《聖なる鋳造所》 4 《沸騰する小湖》 3 《乾燥台地》 3 《硫黄の滝》 1 《氷河の城砦》 4 《天界の列柱》 3 《地盤の際》 -土地(26)- 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 3 《修復の天使》 1 《雷口のヘルカイト》 -クリーチャー(14)- |
4 《流刑への道》 4 《稲妻》 3 《呪文嵌め》 4 《稲妻のらせん》 2 《マナ漏出》 3 《謎めいた命令》 -呪文(20)- |
3 《石のような静寂》 2 《対抗変転》 2 《神々の憤怒》 1 《エイヴンの思考検閲者》 1 《払拭》 1 《摩耗/Wear》 1 《否認》 1 《疑念の影》 1 《神の怒り》 1 《大祖始の遺産》 1 《殴打頭蓋》 -サイドボード(15)- |
「Zoo」が多いと予想される中で、《聖トラフトの霊》を主軸としたデッキは危険な気もしましたが、ありがたくこの申し出を受けることに。Juza自身も「トリコロール」に自信があるというよりかは、「赤緑ヴァラクート」が本当に使いたくなくて仕方なく、というのが本音だったようです。
そこからプロツアーの受付を済ませて、急いでサイドボードの構築に取りかかりました。この日はずっと調整やらで疲れていたので、絶対に使うであろう13枚だけ決めて、残りは当日の朝に決めることにして就寝。
7.プロツアー初日(2月21日)
ドラフト前にJuzaとサイドボードの最後の2枚を決めて、互いの健闘を祈りながらドラフトテーブルに向かいました。
僕がドラフトテーブルに着くと、すでに6名のプレイヤーは着席していたので、残る1人を待ちながらデッキリストに記入ミスがないか入念にチェック。
……していると、なぜかJuzaが僕のドラフトテーブルに向かってくるじゃありませんか。「サイドボードが気に入らなかったのかな?」などとのんきなことを考えていると、Juzaから「同卓だよー(笑)」と衝撃の一言が発せられました。
まさか会場で唯一、75枚同じデッキのプレイヤーと同卓になるなんて……。
◆ファーストドラフト
ファーストドラフトは《アクロスの空護衛》と《収穫の神、ケイラメトラ》の2択から。
《収穫の神、ケイラメトラ》は練習で1回も遭遇したことがありませんでしたが、なべ(渡辺 雄也)君から弱いと聞いていたことと、初手から2色のカードを取るリスクを回避したかったので、素直に《アクロスの空護衛》をピック。
2手目は《オレスコスの太陽導き》と《散兵の精鋭》の2択で前者を。3手目は《ケンタウルスの武芸者》と《トロモクラティス》で悩むものの、初手パックで緑のカードが帰ってきそうだったことを加味して《ケンタウルスの武芸者》を取りました。
その後はほぼ白単まっしぐらのピックを続け、9手目で《セテッサの誓約者》を、10手目で《太陽神の一瞥》を拾って1パック目は終了。
2パック目では幸運にも《太陽の勇者、エルズペス》を引くことができ、更には4手目か5手目に《密集軍の指揮者》がまわってきたことで、卓全体に白いプレイヤーがほとんどいないことが判明しました。
3パック目でも2手目に《ヘリオッドの槍》をパスしてもらえる好展開で、少し重いカードが足りないものの、それなりに満足のいくデッキが組めました。
10 《平地》 7 《森》 -土地(17)- 1 《忠実なペガサス》 1 《ニクス生まれの盾の仲間》 2 《旅する哲人》 1 《乗騎ペガサス》 1 《アクロスの空護衛》 1 《密集軍の指揮者》 1 《旅するサテュロス》 1 《レオニンの投網使い》 1 《オレスコスの太陽導き》 1 《葉冠のドライアド》 2 《セテッサの誓約者》 1 《目ざといアルセイド》 1 《フィーリーズ団の精鋭兵》 1 《セテッサのグリフィン》 -クリーチャー(16)- |
1 《定命の者の熱意》 1 《太陽神の一瞥》 1 《蛮族の血気》 2 《ヘリオッドの選抜》 1 《ヘリオッドの槍》 1 《太陽の勇者、エルズペス》 -呪文(7)- |
1《エファラの管理人》 1《解消の光》 -サイドボード(2)- |
デッキが相当に軽いため《旅するサテュロス》はデッキに合っていませんが、7枚の《森》から《セテッサの誓約者》を出すための苦肉の策です。前述の通り少し重いところが足りませんが、卓に出ていたカードが全体的に弱かった印象もあり、そこそこの手応えはありました。
Round 1 vs青緑タッチ赤 2-1
Round 2 vs青赤 2-1
Round 1と2はダイスで先手を取れたことが功を奏し、先手で迎えた1本目と3本目を勝利することができました。
思っていた以上にクリーチャーの線が細く、後手だと押し切るのは難しかったですが、なんとか2-0できたのでJuzaに成績を聞いてみると、Juzaも無事に2-0できたとのこと。
Juzaは僕が《密集軍の指揮者》を取ったパックに同封されていた《威名の英雄》をピックしたところから白を始めたそうで、急な色替えゆえに少しカードは足りないものの、卓に白が2人だけだったこともありデッキには自信があるようでした。
フィーチャーマッチは開始までに少し時間があったので、せっかくなので仲良く記念撮影をして試合開始。
試合の方は、両ゲームともJuzaがその《威名の英雄》を3ターン目に引き当てて圧殺されました。Juzaが2本目に《威名の英雄》をキャストする際に、申し訳なさそうに「ごめん」と言っていたのが印象的でした。
結局8ゲームやって《太陽の勇者、エルズペス》を1回も引けない悲しい結末でしたが、練習では2-1もなかなかできなかったので、個人的には上々の立ち上がりだったと言えます。
Round 3 vs白赤 0-2(Martin Juza)
総合成績:2-1
◆モダン初日
Round 4 vs「<死せる生>」 0-2
Round 5 vs「Affinity(親和)」 2-0
Round 6 vs「<欠片の双子>」 2-1
Round 7 vs「青赤ストーム」 2-1(Kai Budde)
Round 8 vs「メリーラポッド」 1-2
総合成績:5-3
モダンラウンドはいきなり「《死せる生》」デッキにあたる多少アンラッキーなスタートとなりました。「青赤ストーム」などの存在も考慮して、墓地対策は少なくとも2枚は入れるべきだったとは思いますが、できれば他のデッキと当たりたかったというのが本音です。
試合内容とは全く関係ありませんが、この日はとにかく対戦相手が良い人ばかりで、「プロツアー復帰おめでとう」と多くの方から労いの言葉をいただけたのが嬉しかったです。Round 5であたったPark Jun-Youngさんもその一人だったのですが、実は彼とは7年前のグランプリ北九州でも対戦した経験があり、7年越しに異国の地で再び対戦できるなんて、と改めてこのゲームの素晴らしさを実感しました。
試合内容で最も印象深かったのは、やはりと言いますか、憧れのKai BuddeとマッチアップされたRound 7です。1本目は《聖トラフトの霊》を出した返しのターンであっさりコンボを決められたものの、2本目3本目はBuddeの引きが芳しくなく辛勝。
特に3本目は、Buddeが3枚もの《紅蓮術士の昇天》をコントロール(内2枚はカウンターがすでに1つ、墓地にはスペルがたんまり)している状況で、そこからBuddeが《ゴブリンの電術師》を2連続で引く幸運に助けられてなんとか勝利といった具合でした。
これまでにBuddeとは3回対戦したことがあったのですが、今回は試合開始前にあちらから話しかけてくれて、試合中にも冗談を言ってくれたりと終始リラックスして試合に臨むことができました。
僕のデッキをカットして返す際にも、デッキの向きが悪かったと知るやいなや「ごめん」と謝ってくれたりと、試合内外を問わず本当に見習うべきところの多いプレイヤーだと思いました。
これはKai BuddeだけでなくJon Finkelもそうですが、伝説と言われるプレイヤーはマジックが上手いだけでなく、常に紳士的で多くの人の模範となる人柄も持ち合わせていると思います。戦績で彼らに追いつくのは相当に困難ですが、僕もそういった態度や人柄だけでも学んでいきたいなぁと、そんなとりとめもないことを考えつつ初日は終了。
8.プロツアー2日目(2月22日)
◆セカンドドラフト
今度はJosh Utter-Leytonが同卓のセカンドドラフト。初手は《金箔付け》からのスタートとなりました。
2手目はあまり良い黒いカードもなかったので、単純なカードパワー重視で《狼育ち》を。3手目には《モズのハーピー》が、そして4手目には《胆汁病》がまわってきたので、黒を独占できそうな手応えを感じつつピックを進めていきます。
ところが5、6手目はまたしても黒いカードがなかったので《ネシアンのデモロク》を取ってお茶を濁すことに。その後《悪魔の皮の喧嘩屋》と《湿原霧のタイタン》は1周してきたものの、序盤に流した2枚の《窒息死》は当然ながら帰ってこなかったので、卓にもう1人は黒が居そうな雰囲気で1パック目を終えます。
2パック目の初手は、黒単路線の僕にとって文句なしの《アスフォデルの灰色商人》。同封されていた《ファリカの癒し人》が帰ってくるといいなと思いながら、《アスフォデルの灰色商人》をピックしました。
問題は続く2手目で、僕に与えられた選択肢は《ネシアンのアスプ》、《航海の終わり》、《ファリカの療法》の3択でした。黒のアピールをする、または2色目を保留するという意味合いで《ファリカの療法》は優れていますが、カードパワー的に見れば《ネシアンのアスプ》か《航海の終わり》の2択と言っていいでしょう。
時間いっぱいまで悩んで、最終的に《ネシアンのアスプ》を取ることにしましたが、ここまでで既にデッキに入るであろう5マナ圏が3枚(《モズのハーピー》、《アスフォデルの灰色商人》、《狼育ち》)も取れていたことを加味すると、ここは《ネシアンのアスプ》以外のカードをピックすべきでした。
例え《ファリカの癒し人》が1周したとしても、5マナ圏が多すぎるデッキになってしまうことは明白なので、カードパワー的に多少損をしても2色目を保留できる《ファリカの療法》をピックすればよかったと思います。
3パック目の初手は再び《アスフォデルの灰色商人》。2手目は取るものがなかったので《嵐の息吹のドラゴン》をヘイトドラフトし、そこから《悪意の幻霊》、《形見持ちのゴルゴン》と流れてきて上に黒がいないと分かり一安心。
しかしこの間に《アナックスとサイミーディ》を2枚流しており、卓に最強の赤白デッキが出来てしまうことは懸念材料でした。
《血集りのハーピー》が残り4手に、《運命の三人組》が残り3手までまわっていたように、終始黒の流れ自体はよかったものの、攻めるのか守るのかどっちつかずの中途半端なデッキになってしまいました。
11 《沼》 6 《森》 -土地(17)- 3 《悪魔の皮の喧嘩屋》 1 《悪意の幻霊》 3 《血集りのハーピー》 1 《アショクの心酔者》 1 《悪魔の皮のミノタウルス》 1 《ネシアンの狩猟者》 1 《フィナックスの信奉者》 1 《モズのハーピー》 2 《アスフォデルの灰色商人》 1 《形見持ちのゴルゴン》 1 《ネシアンのアスプ》 1 《湿原霧のタイタン》 -クリーチャー(17)- |
2 《エレボスの加護》 1 《胆汁病》 1 《金箔付け》 1 《災いの印》 1 《エレボスの試練》 -呪文(6)- |
6 《平地》 2 《ネシアンのデモロク》 1 《菅草の蠍》 1 《運命の三人組》 1 《エレボスの加護》 1 《古代への衰退》 1 《職工の悲しみ》 1 《残忍な発動》 1 《狼育ち》 -サイドボード(15)- |
このドラフトでは色々と構築ミスをしてしまったことが悔やまれます。
緑のカードは最終的に2枚まで減ってしまったので、タッチするのならば緑ではなく、《アスフォデルの灰色商人》と相性の良い《運命の三人組》にすべきだったことが最も大きな構築ミスです。これはピック終了時の段階から「自分のデッキは黒緑だ」と思い込んでしまったことが原因で、1回戦終了後にかっちん(森 勝洋)たちからアドバイスをもらうまで全く気付きませんでした。
また、仮に緑のままだとしても、《狼育ち》は入れるべきだったと思います。メインボードに入れなかった理由として、《森》が6枚だけだったこと、5マナ圏が多かったことが挙げられますが、カードパワー的に入れないのは少しもったいなかったですね。
Round 9 vs緑黒タッチ白 0-2
Round 10 vs赤単 0-2
Round 11 vs白黒 2-0
総合成績:6-5
Round 9はこちらよりも重いカードの多い緑黒が相手でした。
1本目はこちらの方が軽い点を生かして積極的にビートダウン。《アスフォデルの灰色商人》の力も借りて、一時はライフが21対4まで押し込むも、そこから盤面が膠着してしまい逆転負け。2本目は5枚目の土地を引けば《アスフォデルの灰色商人》で勝ち!というところで引くことが叶わず、《宿命的介入》のトークンに押し切られてしまいました。
Round 10でも悪い流れを断ち切ることができず、2本とも土地が3枚で止まってあっさりと敗北。
Round 11こそ勝利できたものの、この時点でトップ8の目はなく、追加のプロポイントと賞金がもらえる10勝6敗以上を目指して最後のモダンラウンドへ。
◆モダン2日目
Round 12 vs「白緑呪禁オーラ」 1-2
Round 13 vs「赤緑トロン」 1-2
総合成績:6-7
なんとか踏ん張りたかったところですが、ポンポンポンと負けてドロップしてしまいました。
久しぶりのプロツアーは結果こそ残せませんでしたが、マジックの楽しさを再認識できる素晴らしい大会でした。
ただし調整会に関しては個人的な反省点が多く、今回の調整会はナックさんを筆頭に多くの方々のご厚意で参加させていただけただけに、何も貢献できなかったことが心苦しい限りです。
昼寝で半日タイムワープしてしまったのは論外として、それ以外でも、もっともっと積極的に発言していかなければいけない点などは、今後日本で調整する際にも重要だと思いますし、今回の反省を次のプロツアーにぜひ生かしていきたいと思います。
9.プロツアーのその後
プロツアー終了後は、もう1週間滞在してグランプリ・バルセロナ(チーム・リミテッド)になべ君と(斎藤)友晴さんと参加してきました。
こちらは最後勝てば初日突破というところで負けてしまって、最終成績は5-3-1と振るわずでした。
このグランプリに向けてチームメイト+行弘(賢)君とで一週間みっちり練習しただけに、2日目に残れなかったのが悔やまれます。
その後はせっかくの機会なので、FCバルセロナのホームスタジアムでサッカー観戦。
マジックは負けっぱなしでしたが、最後に良い思い出ができました。
最後になりますが、調整会の参加を快く承諾してくれたチームChannelFireballのみなさん、ホテルや旅券の手配をしてくれたナックさん、チームを組んでくれたお2人、一緒に調整してくれた行弘君、この度は本当にお世話になりました。
プロツアー『神々の軍勢』レポートはこれにて終了です。
今回は調整部分が長くなってしまったので省略させていただきましたが、次回のレポート以降は使用するデッキのサイドボードプランなんかにも焦点を当てていきたいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
それでは、また次回の記事で。