津村健志のモダン・タイムズ 第5回横浜前の環境整理

津村 健志

津村 健志


 こんにちは。いよいよグランプリ横浜まで残り1ヵ月を切りました。先月には日本全国でモダンフォーマットを用いたPTQが行われ、さらに20を超える数のGPT横浜が開催されるようです。

 そんな大盛り上がりのモダン環境なんですが、今回はGPT横浜、そして本戦のグランプリ横浜に向けて、メタゲームを整理してみたいと思います。膨大なカードが使えるモダン環境では、実に様々なデッキが活躍していますが、その中でも比較的数の多いデッキというものは存在します。今回の記事では、みなさんがモダン環境を把握するお手伝いができればと思い筆を取らせていただきました。メタゲームをチェックしたあとは、いつものように各地の大会結果から選りすぐりのデッキをご覧いただきましょう。

 それでは、まずはメタゲームの整理から。


~モダンのメタゲーム~

・Tier1
「ジャンド(黒緑赤)」第2回
「赤緑トロン」    第3回
「Delver(主に青緑赤、次いで青白赤)」
「Affinity/親和」   第2回
「Caw-Blade」     第3回


・Tier2
「メリーラ頑強」    第2回
「青赤《欠片の双子》」   第3回
「青赤ストーム」    第3回


 本当に多くのアーキタイプが凌ぎを削るモダン環境。アーキタイプ数だけで見ると20~30種類以上は悠にありますが、そんな中でもTier1のデッキは大会に出れば必ず見かけるほどのデッキであり、できることならきちんとサイドボードカードを用意しておきたい相手ですね。Tier1のデッキは、他のデッキに比べて安定性の面で優れていることもあって数が多いのでしょうが、しかしながらTier2~3、またはそれよりも数が少ないデッキにも十分に王座を狙える力があると感じています。

 実際にMagic Online(以下MO)上でも様々なデッキとあたりますし、その中で楽だと感じるマッチアップはほとんどありません。そして4月1日に終了したグランプリ・トリノで準優勝を果たしたこのデッキもまた、どのデッキにもチャンスがあるという事実を証明するのにうってつけのデッキだったと思います。


「Soul Sisters」/ Michael Thiel
Grand Prix Turin 2012 -準優勝

14 《平地》
3 《風立ての高地》
2 《トロウケアの敷石》
2 《地盤の際》

-土地(21)-
4 《セラの高位僧》
4 《魂の管理人》
3 《魂の従者》
3 《砂の殉教者》
4 《戦隊の鷹》
4 《アジャニの群れ仲間》
4 《イーオスのレインジャー》
1 《月皇ミケウス》
-クリーチャー(27)-
3 《流刑への道》
3 《清浄の名誉》
4 《幽体の行列》
2 《再誕の宣言》

-呪文(12)-
4 《外科的摘出》
3 《墓掘りの檻》
1 《流刑への道》
4 《解呪》
1 《漸増爆弾》
2 《亡霊の牢獄》

-サイドボード(15)-
hareruya




 ちょうど2年ほど前にスタンダードで話題になったデッキがこちらの「Soul Sisters」。デッキ名にもなっている《魂の管理人》《魂の従者》を筆頭としたカードでガンガンライフを回復していき、それを《セラの高位僧》《アジャニの群れ仲間》で攻撃力へと変換していくのが基本的な動きになります。

 《魂の管理人》《魂の従者》の能力は相手のクリーチャーでも誘発しますし、複数枚重なった時の回復量は驚異的で、それゆえに《セラの高位僧》《アジャニの群れ仲間》もすぐに手の付けられないサイズへと成長します。《魂の管理人》たちで《セラの高位僧》を6/6にするのには少し時間がかかりますが、そんな時は《砂の殉教者》の出番です。これさえあれば2ターン目にライフが30を超えることも珍しくありませんし、対ビートダウン戦ではこのライフ回復量は決定的なものになりえます。これらのカードをサーチできる《イーオスのレインジャー》のおかげで安定性も高いですし、《戦隊の鷹》《イーオスのレインジャー》のおかげで《砂の殉教者》には安定した回復量が見込めます。

砂の殉教者イーオスのレインジャーセラの高位僧



 その《砂の殉教者》とセットで使われることの多い《再誕の宣言》は、もちろんこのデッキにも採用されています。本来であれば「予見」能力により《砂の殉教者》を使いまわすのが一般的ですが、このデッキは土地が少ないこともあり、普通にキャストすることが多いですね。《セラの高位僧》《砂の殉教者》を戻せば一瞬で攻守が入れ替わったりもしますし、除去を多用してくる「ジャンド」のようなデッキ相手に重宝する1枚。サイド後に《墓掘りの檻》を入れる場合にはサイドアウトしますし、あくまで補助的なカードなので2枚に抑えられています。

 このデッキは普通に動いていくだけでライフを回復できる性質上、対ビートダウン戦に優れ、それ以外にも除去の少ないデッキ、例えば「Caw-Blade」なんかにも好勝負が期待できます。《魂の管理人》系のカードが複数枚並べば《やっかい児》+《欠片の双子》コンボにすら負けることはありませんし、ビートダウンデッキに強く、それでいて意外と苦手なデッキが少ないことがこのデッキの長所と言えるでしょう。

 逆に相性が悪いデッキは、《残忍なレッドキャップ》を駆使してこちらの生物を全滅させた上での無限ダメージを叩き込んでくる「頑強メリーラ」や、少々のライフゲインをものともせずライフを削り切ってくる「青赤ストーム」などが挙げられます。ただしそのふたつのデッキは墓地を使うデッキということで、サイドボードから《外科的摘出》《墓掘りの檻》を大量に投入すれば相性は改善されますね。

 正直に申し上げますと、つい最近実際にこのデッキを使ってみるまでは、僕はこのデッキをあまり評価していませんでした。しかし実際に試してみると想像していたよりも遥かに強いデッキで、このデッキのおかげで改めてモダン環境の奥深さを学ぶ結果となりました。この「Soul Sisters」の準優勝という結果や、グランプリ・トリノで2日目進出を果たしたアーキタイプ数が38種類だったことを踏まえると、今の環境はどんなデッキとあたるか予想しづらい、非常に難しい環境だと言えます。



~過去の事例から見るプロたちのデッキ選択~

 それでは、こういった状況でプロプレイヤーたちはどんなデッキを選ぶのでしょうか?現在とは禁止カードの枚数に大きな差がありますが、参考までに昨年に行われたプロツアー・フィラデルフィアのメタゲームブレークダウンから、上位デッキを抜粋してみました。なぜ今更このプロツアーなのかと疑問に思う方も多いかと思いますが、このプロツアーの前もメタゲームが定まっておらず、雑多な環境という意味合いでは現環境に通ずるものがあると思うためです。



 ここで注目していただきたいデッキが、初日で全体の15%で3位、2日目では全体の約20%を占め1位を記録した「Zoo」デッキです。当時の「Zoo」は《野生のナカティル》《タルモゴイフ》といった低マナ高打点のクリーチャー陣を、カウンター呪文、手札破壊、または土地破壊でサポートする戦略が主流でした。特に「Zoo」にカウンター呪文を搭載するこの戦略は、モダンの前身であるエクステンデッドでもよく使われていた手法で、環境に色々なデッキが混在する場合や、コンボデッキやコントロールデッキが多い場合に重宝されていました。ちょうど第1回の連載でお伝えした「Counter Cat」と呼ばれる「Zoo」がこれにあたります。

 先ほど前置きしたように、当時と今では禁止カードが大きく異なるものの、共通しているのは多種多様なデッキが混在し、メタゲームが読みづらい環境であるということです。そんな中で、軽いクロック(ダメージソース)を各種妨害手段でバックアップする戦略を用いた「Zoo」デッキが、2日目の最大勢力になったという事実は今の環境でも参考になるデータだと思います。今となっては《野生のナカティル》が禁止になってしまったために、「Zoo」デッキは大幅に数を減らしてしまいましたが、現在では「ジャンド」デッキが手札破壊で、「Delver」や「Caw-Blade」はカウンター呪文で低マナ域のダメージソースをサポートする戦略を取り結果を残しています。

 そしてグランプリ・トリノで優勝したデッキは、そのうちのひとつである「青緑赤Delver」でした。これはこのような雑多な環境において、軽いクロックをなにかしらの手段でバックアップする手法が、ひとつの正着だと示す結果になったのではないかと感じています。



「青緑赤Delver」/ Antonino De Rosa
Grand Prix Turin 2012 -優勝

6 《島》
1 《森》
1 《山》
4 《霧深い雨林》
4 《沸騰する小湖》
2 《繁殖池》
2 《蒸気孔》
1 《踏み鳴らされる地》

-土地(21)-
4 《秘密を掘り下げる者》
4 《瞬唱の魔道士》
4 《タルモゴイフ》
2 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《ファイレクシアの変形者》
-クリーチャー(15)-
4 《血清の幻視》
4 《稲妻》
2 《噴出の稲妻》
2 《呪文貫き》
1 《呪文嵌め》
3 《マナ漏出》
2 《剥奪》
2 《ヴィダルケンの枷》
1 《電解》
2 《謎めいた命令》
1 《情け知らずのガラク》

-呪文(24)-
3 《高原の狩りの達人》
2 《大祖始の遺産》
1 《呪文貫き》
2 《古えの遺恨》
1 《焼却》
1 《否認》
3 《血染めの月》
2 《不忠の糸》

-サイドボード(15)-
hareruya



 《秘密を掘り下げる者》《タルモゴイフ》。モダンを象徴する優秀な低マナクロックを主戦力とし、それらをカウンターと除去でサポートするのがこちらの「青緑赤Delver」。残る《瞬唱の魔道士》《ヴェンディリオン三人衆》も隙の少ないアタッカーとして機能するだけでなく、前者はカウンターや除去の水増しとして、後者は相手の手札を確認しつつ最も危険なカードを取り除いてくれます。

 このリストの特徴としては、ある程度長期戦を意識していることが挙げられるでしょう。クリーチャーの入ったデッキ相手に劇的な効果を発揮する《ヴィダルケンの枷》や、除去+継続的にトークンを生み出せる《情け知らずのガラク》などはその最たる例ですし、カウンター呪文も《呪文嵌め》《剥奪》を加えることで、ゲームが長引いた場合でも戦えるように工夫されています。1枚だけ採用された《ファイレクシアの変形者》は、特に《タルモゴイフ》《ヴィダルケンの枷》になることが多いですが、《シルヴォクののけ者、メリーラ》《聖トラフトの霊》といった伝説のクリーチャー対策としての活躍も見込めます。《ファイレクシアの変形者》と同じく1枚だけ採用された《電解》も、実に多くのデッキ相手に効果的なカードで、《秘密を掘り下げる者》《闇の腹心》《ヴェンディリオン三人衆》などが幅を利かすモダン環境において非常に優秀な除去として機能します。

秘密を掘り下げる者タルモゴイフヴェンディリオン三人衆



 サイドボードで要注目なカードは《高原の狩りの達人》。消耗戦に強いこのカードは、対クリーチャーデッキだけでなく、「ジャンド」デッキにもよく効きます。単純に「ジャンド」や「RDW(赤単バーン)」をメタる場合は、《ヴェールのリリアナ》に強く、回復量の多い《強情なベイロス》の方が良いでしょうが、《秘密を掘り下げる者》の入ったデッキや「親和」デッキなんかを相手取る場合は、戦況に大きなインパクトを与える《高原の狩りの達人》の方が強いですね。

 《秘密を掘り下げる者》を使用したリストは、今現在最もポピュラーな「クロックパーミッション」の形のひとつですが、日本ではこのようなリストも結果を残しています。


「青黒クロックパーミッション」/ Takuya Okada
優勝

4 《沼》
2 《島》
4 《忍び寄るタール坑》
4 《闇滑りの岸》
4 《涙の川》
3 《沈んだ廃墟》
3 《幽霊街》

-土地(24)-
4 《闇の腹心》
3 《瞬唱の魔道士》
4 《ファイレクシアの十字軍》
2 《吸血鬼の夜鷲》
-クリーチャー(13)-
3 《呪文嵌め》
3 《見栄え損ない》
3 《コジレックの審問》
3 《思考囲い》
3 《対抗突風》
2 《喉首狙い》
1 《骨断ちの矛槍》
1 《火と氷の剣》
4 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(23)-
2 《誘惑蒔き》
3 《真髄の針》
2 《虚無の呪文爆弾》
2 《海賊の魔除け》
1 《見栄え損ない》
1 《思考囲い》
1 《対抗突風》
1 《剥奪》
1 《喉首狙い》
1 《残響する真実》

-サイドボード(15)-
hareruya




 こちらは《ファイレクシアの十字軍》を用いて「毒殺」することを念頭においた「クロックパーミッション」。《ファイレクシアの十字軍》はモダンを代表する除去、《流刑への道》《稲妻》《稲妻のらせん》などが効かないことに加え、戦闘能力の高さも魅力的な1枚。

 そんなただでさえ対処しづらい《ファイレクシアの十字軍》を、各種手札破壊やカウンター呪文でサポートしていき、必要とあらば装備品の力を借りて道を切り開いていきます。「ジャンド」デッキ必殺の動きである、手札破壊からの《闇の腹心》という流れはこのデッキでも健在ですし、手札破壊から《闇の腹心》《ヴェールのリリアナ》などに繋げてマウントを取りやすいのもこのデッキの長所のひとつです。

吸血鬼の夜鷲対抗突風ヴェールのリリアナ



 比較的珍しい《対抗突風》はこの時期のメタゲームを象徴する1枚で、これは「赤緑トロン」を強く意識しての採用だと思われます。一度「ウルザトロン」が揃ってしまうと、《マナ漏出》《差し戻し》では効果が薄いため、ある程度ゲームが長引いてもきっちりと仕事を果たすカードを、という思想は「青赤緑Delver」の《剥奪》に通ずるものがありますね。

 これらの「クロックパーミッション」系のデッキが、同時期に結果を残したのは決して偶然ではないと思いますし、Magic Online上で目覚ましい活躍を見せる「Caw-Blade」も「クロックパーミッション」に分類されるデッキです。先ほども少し触れましたが、「ジャンド」デッキも軽いクロックを手札破壊でサポートする戦略ですし、どんなデッキとあたるか予想しづらい今のような雑多な環境では、軽いクロック+妨害手段という手法は環境を紐解くひとつの鍵と言えるでしょう。


 「クロックパーミッション」系統のデッキは、「Zoo」や「親和」のような真っ当なビートダウンデッキを苦手としているのですが、《野生のナカティル》の禁止により「Zoo」が減ってしまったことも、「クロックパーミッション」デッキにとって大きな追い風になっています。とは言え、「赤緑トロン」のように大味なデッキもしっかりと結果を残していますし、「クロックパーミッション」が多いからと言って好きなカードやデッキを使うことを躊躇する必要もないと思います。


 そんな思いを込めて、最後に僕が横浜に向けて調整中のデッキを掲載してお別れしましょう。



「Cruel Control」

3 《島》
1 《沼》
1 《山》
4 《沸騰する小湖》
4 《新緑の地下墓地》
2 《湿った墓》
2 《血の墓所》
1 《蒸気孔》
3 《闇滑りの岸》
2 《忍び寄るタール坑》
2 《滝の断崖》
1 《沈んだ廃墟》

-土地(26)-
3 《瞬唱の魔道士》
3 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《粗石の魔道士》
-クリーチャー(7)-
3 《コジレックの審問》
2 《呪文貫き》
1 《稲妻》
1 《暗黒破》
1 《真髄の針》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《仕組まれた爆薬》
3 《終止》
3 《電解》
2 《禁忌の錬金術》
2 《連合の秘宝》
4 《謎めいた命令》
1 《滅び》
2 《残酷な根本原理》

-呪文(27)-
1 《ワームとぐろエンジン》
3 《根絶》
2 《思考囲い》
2 《墓掘りの檻》
2 《突然の死》
1 《滅び》
1 《精神壊しの罠》
3 《袖の下》

-サイドボード(15)-
hareruya



残酷な根本原理

 Magic Onlineでたまたまあたったプレイヤーに教えてもらったデッキがこちらの「Cruel Control」。その時は僕も自作の《残酷な根本原理》入りのデッキを使っていたのですが、お互いに変なデッキだったので試合が終わったあとに話しかけられたのがきっかけです。

 その人はとにかく良い人で、自身のPTQの経験やデッキリスト、各カード選択の理由まで、何から何まで教えてくれました。グランプリ・横浜にはぜひとも《残酷な根本原理》の入ったデッキで出たいと思っているので、今後も色んな形を追求していこうと思っています。

 みなさんもご自身の思い出のカードを入れたデッキを作って、ぜひモダン環境を堪能してみてください。

 それでは、また次回の連載で。