週刊デッキウォッチング vol.15 -スリヴァー大集合 etc.-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。今回happymtgから晴れる屋に統合したが、変わらず紹介していこうと思う。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 緑白ビートダウン



Bram Snepvangers「緑白ビートダウン」
プロツアー『タルキール龍紀伝』(8-2)

6 《森》
2 《平地》
4 《吹きさらしの荒野》
2 《樹木茂る山麓》
4 《豊潤の神殿》
2 《マナの合流点》
2 《ニクスの祭殿、ニクソス》

-土地(22)-

4 《エルフの神秘家》
4 《毅然さの化身》
4 《羊毛鬣のライオン》
3 《棲み家の防御者》
4 《恭しき狩人》
4 《加護のサテュロス》
4 《狩猟の統率者、スーラク》

-クリーチャー(27)-
2 《ハイドラの血》
3 《ドロモカの命令》
2 《勇敢な姿勢》
4 《集合した中隊》

-呪文(11)-
4 《ナイレアの信奉者》
2 《勇気の元型》
2 《勇敢な姿勢》
2 《垂直落下》
1 《再利用の賢者》
1 《ハイドラの血》
1 《神々の思し召し》
1 《ドロモカの命令》
1 《強大化》

-サイドボード(15)-
hareruya



毅然さの化身ハイドラの血集合した中隊



 殿堂入りプレイヤー、Bram Snepvangersが【プロツアー『タルキール龍紀伝』】で選択したのは《集合した中隊》を最大限活用した白緑だった。

 ただ、同じ白緑でも【先週紹介した】Craig Wescoeのデッキとは異なり、《恭しき狩人》《ハイドラの血》といった少しマイナーなカードまでも採用した、純然たるビートダウンとなっている。《恭しき狩人》《毅然さの化身》と相性が良く、どちらを先にプレイしてももう片方が恩恵を受けられる。

 このデッキの《棲み家の防御者》はとにかく凄まじい仕事をする。1マナで軽い《ハイドラの血》を自身に撃ったあとで回収してもう1発撃ち込めば、1ターンに回避不能な10点以上の打点を叩きだすことも珍しくない。

 サイドボードは《勇気の元型》が目を引く。《死霧の猛禽》対策と思われるが、もし《集合した中隊》から出てきたら対戦相手が驚くこと必至だ。

 このデッキは翌週の【グランプリ・クラクフ】でもプロツアーチャンピオンのAntonio del Moral Leonが使用してトップ16に入賞しており、注目のデッキと言えるだろう。


【「緑白ビートダウン」でデッキを検索】





■ モダン: スリヴァー



Tomomizu Takuya「スリヴァー」
平日モダン20時の部(3-0)

1 《沼》
1 《血の墓所》
1 《神無き祭殿》
1 《草むした墓》
1 《寺院の庭》
1 《湿った墓》
4 《新緑の地下墓地》
2 《湿地の干潟》
1 《マナの合流点》
4 《魂の洞窟》
1 《スリヴァーの巣》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
3 《変わり谷》

-土地(22)-

4 《風乗りスリヴァー》
4 《筋力スリヴァー》
4 《捕食スリヴァー》
3 《宝革スリヴァー》
3 《拡散スリヴァー》
4 《菅草スリヴァー》
3 《吸管スリヴァー》
2 《壊死スリヴァー》

-クリーチャー(27)-
1 《殺戮の契約》
3 《四肢切断》
3 《集合した中隊》
4 《霊気の薬瓶》

-呪文(11)-
4 《思考囲い》
3 《呪文滑り》
3 《虚空の杯》
2 《戦争の報い、禍汰奇》
2 《石のような静寂》
1 《調和スリヴァー》

-サイドボード(15)-
hareruya



風乗りスリヴァー菅草スリヴァー集合した中隊



 一体いつまでやるんだよってくらい毎度毎度登場する《集合した中隊》デッキだが、しょうがないんだ。このカードには夢が溢れている。

 このカードが最も光り輝くのは「強力な3マナ域のクリーチャーを2体召喚して4マナで6マナ分のクリーチャーを出せたとき」だと思うが、他にも実は、「3マナ以下のクリーチャーの価値がほぼ全て等しいデッキで撃つとき」にも強力な効果を発揮する。

 何せ「スリヴァー」は能力を共有するので、最も重要な「全体を+1/+1修正するスリヴァー」が3種類もいるモダンなら、このカードが生み出すテンポは計り知れない。《暴走の先導》ではイマイチ手札が消費しきれなくなりがちだったところ、スリヴァーデッキの救世主になりうるカードと言えるだろう。


【「スリヴァー」でデッキを検索】





■ レガシー: 白青石鍛冶



Mitsuboshi Yuuki「白青石鍛冶」
グランプリ京都2015 SSS熊猫杯レガシー(2位)

2 《島》
2 《平地》
1 《沼》
3 《Tundra》
2 《Underground Sea》
1 《Scrubland》
4 《汚染された三角州》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《沸騰する小湖》
1 《忍び寄るタール坑》
1 《Karakas》

-土地(22)-

4 《石鍛冶の神秘家》
2 《悪意の大梟》
2 《瞬唱の魔道士》
2 《真の名の宿敵》

-クリーチャー(10)-
4 《思考囲い》
4 《剣を鍬に》
4 《渦まく知識》
1 《思案》
1 《対抗呪文》
1 《議会の採決》
1 《至高の評決》
4 《Force of Will》
2 《時を越えた探索》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《梅澤の十手》
1 《殴打頭蓋》
3 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(28)-
2 《翻弄する魔道士》
2 《エーテル宣誓会の法学者》
2 《狼狽の嵐》
2 《安らかなる眠り》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《悪斬の天使》
1 《水流破》
1 《解呪》
1 《謙虚》
1 《真髄の針》
1 《石術師、ナヒリ》

-サイドボード(15)-
hareruya



悪意の大梟悪斬の天使石術師、ナヒリ



 関西の《石鍛冶の神秘家》マスターが製作したエスパー石鍛冶は、【グランプリ京都】サイドイベントのSSS熊猫杯レガシーにおいて、使用者を8勝1敗でトップ4にまで導いた。

 75枚どこを見ても隙のない構成と、シチュエーションを選ぶものの相手次第でクリティカルにもなる無数の1枚差しカードのチョイスは、「レガシーのどのデッキにも負けるつもりはない」と言わんばかりの満ち溢れた自信が見てとれる。

 グランプリが終わり、またメタゲームは回る。次のレガシーのビッグイベントが楽しみだ。


【「白青石鍛冶」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】