こんにちは。第3回目となる今回の連載では、前回紹介しきれなかったモダンの主要デッキを見ていきたいと思います。まずはビートダウンデッキから見ていきましょう。
~主役のいない動物園・「Zoo」~
1 《平地》 4 《乾燥台地》 4 《沸騰する小湖》 4 《霧深い雨林》 2 《湿地の干潟》 1 《聖なる鋳造所》 1 《寺院の庭》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《蒸気孔》 1 《神聖なる泉》 1 《血の墓所》 -土地(21)- 4 《ステップのオオヤマネコ》 4 《壌土のライオン》 4 《密林の猿人》 3 《渋面の溶岩使い》 4 《タルモゴイフ》 2 《スレイベンの守護者、サリア》 2 《聖トラフトの霊》 -クリーチャー(23)- |
4 《流刑への道》 4 《稲妻》 4 《稲妻のらせん》 4 《部族の炎》 -呪文(16)- | 2 《硫黄の精霊》 2 《最後のトロール、スラーン》 3 《マナ漏出》 3 《古えの遺恨》 1 《倦怠の宝珠》 2 《忘却の輪》 2 《精神壊しの罠》 -サイドボード(15)- |
モダンのみならず、エクステンデッドやレガシーでも大車輪の活躍を見せる「Zoo」デッキ。その全貌は、各色の優良カードを集めたグッドスタッフです。第1回の連載で紹介したように、《野生のナカティル》が禁止になる前まではメタゲームの大本命と言える存在でしたが、昨年末に《野生のナカティル》が禁止になってからというもの、その露出度はグッと下がってしまっています。
しかしながら、もともと《野生のナカティル》がリリースされる前からエクステンデットで活躍していたデッキですし、《野生のナカティル》ほどではないにしろ、1マナ域には優秀なクリーチャーが揃っています。《壌土のライオン》と《密林の猿人》は1マナでパワー2という最低限のラインはクリアしていますし、《ステップのオオヤマネコ》は各種フェッチランドと組み合わさることで瞬間的に《野生のナカティル》をも凌ぐパワーへと成長します。残る《渋面の溶岩使い》もフェッチランドと相性が良く、小型クリーチャーを多用するデッキに強いだけでなく、《タルモゴイフ》同士の睨みあいを制するためなんかにも役に立ちます。前回紹介した「青単フェアリー」や「青単マーフォーク」などに効果覿面な1枚ですね。
そして1マナ域以外にも、「Zoo」の定番クリーチャーである《タルモゴイフ》や、「イニストラード」と「闇の隆盛」から加入した《聖トラフトの霊》、《スレイベンの守護者、サリア》といった精鋭がズラリと名を連ねます。《聖トラフトの霊》は単体除去の効かないクリーチャーとして、その高い打点は多くのデッキにとって脅威となるでしょうし、もう一方の《スレイベンの守護者、サリア》は、パワーこそ2と頼りないものの、後述する「青赤ストーム」などに劇的な1枚。これくらい前のめりなデッキで使うと、相手の除去が1マナ重くなるだけでも十分な仕事を果たしていると言えます。
クリーチャー、除去、火力しか入っていない分かりやすいデッキになっていますが、クリーチャーをもう少し減らして《アラーラの力》を入れたリストもあるようです。フェッチランド+ギルドランドの組み合わせのおかげで、《部族の炎》を5点で撃てるようなデッキなので、《アラーラの力》にも安定して+4~+5修正を見込めます。コンボデッキやコントロールデッキが多いようであれば、そのアプローチも一考に値するでしょう。
サイドボードは、主にこのデッキが苦手とするコンボデッキ対策で占められています。コンボデッキやコントロール相手に重宝する万能の《マナ漏出》を筆頭に、「メリーラ頑強」や《詐欺師の総督》+《欠片の双子》に有効な《倦怠の宝珠》、「青赤ストーム」を狙い撃ちにする《精神壊しの罠》などがそれにあたります。
あとは《未練ある魂》、《幽体の行列》を使用するデッキに効果的な《硫黄の精霊》、カウンターの入ったデッキや、「ジャンド」のような大量の除去を擁するデッキに強い《最後のトロール、スラーン》、万能パーマネント除去である《忘却の輪》とバランスの良い構成になっていますね。
前述の通り、禁止カードの影響で数を減らしたデッキではありますが、依然としてグランプリ初日全勝を飾るほどのデッキパワーを秘めています。今現在は「親和」の陰に隠れていますが、今後復権を果たす可能性は十二分にあると言えるでしょう。特に圧倒的な攻撃力を誇る《ステップのオオヤマネコ》は他のデッキでも使用されており、次に紹介するデッキもまた、その《ステップのオオヤマネコ》とフェッチランドを駆使したデッキです。そのリストには《ステップのオオヤマネコ》だけでなく、《野生のナカティル》の後継者と噂されるあのクリーチャーも搭載されています。
~次なる《野生のナカティル》は俺だ!?・「トリコロール(青白赤)Delver-Go」~
2 《平地》 1 《島》 1 《山》 4 《乾燥台地》 4 《沸騰する小湖》 3 《湿地の干潟》 1 《霧深い雨林》 2 《蒸気孔》 1 《聖なる鋳造所》 1 《神聖なる泉》 1 《氷河の城砦》 1 《硫黄の滝》 1 《ムーアランドの憑依地》 -土地(23)- 4 《ステップのオオヤマネコ》 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《聖トラフトの霊》 -クリーチャー(15)- |
4 《血清の幻視》 4 《稲妻》 4 《流刑への道》 2 《呪文貫き》 4 《差し戻し》 4 《稲妻のらせん》 -呪文(22)- | 4 《コーの火歩き》 3 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《鋼の風のスフィンクス》 1 《エメリアの盾、イオナ》 2 《解呪》 3 《けちな贈り物》 1 《堀葬の儀式》 -サイドボード(15)- |
《野生のナカティル》なき今、世間の注目を最も集めている1マナクリーチャーが《秘密を掘り下げる者》です。一度「変身」してしまえばそのパワーは3という驚異の値に達し、さらには「飛行」まで付いている高性能のクリーチャー。青い《野生のナカティル》と評されるその《秘密を掘り下げる者》と、フェッチランドが絡めば2ターン目から4点ものダメージを稼ぎだす《ステップのオオヤマネコ》といった軽量のクロックを、各種優良スペルでバックアップしていくのが、このデッキの基本的な動きになります。カウンター呪文が入っている関係上、一応「クロックパーミッション」系統のデッキに分類されますが、基本的には攻めを信条とするデッキなので、そういった意味では「Zoo」に近いリストに仕上がっていますね。
メインボードには長期戦向けのカードがほとんどないため、ゲームを速やかに終わらせることが理想の展開です。そのため、できることなら《ステップのオオヤマネコ》、《秘密を掘り下げる者》、《聖トラフトの霊》のいずれかがある初手をキープしたいところ。少し妥協して《血清の幻視》もキープ基準に入れてもいいとは思いますが、とにもかくにも序盤からプレッシャーをかけていけるかどうかが大きくゲーム展開を左右するデッキなので、初手のキープ基準は少し厳しめに設定しておくといいでしょう。
《秘密を掘り下げる者》を使ったデッキには、この「トリコロール」以外にも様々なリストがあり、他には「エスパー(青白黒)」、「青緑赤」、「青黒緑」といったバリエーションが存在します。その中で今現在最もポピュラーなものがこの「トリコロール」バージョンで、Magic Online(以下MO)上でも頻繁に見かけるデッキです。中村さんのリストも、メインボードに関してはMOのそれとあまり大きな違いはないのですが、このリストの秀逸な点はサイドボードに潜んでいます。
そうなんです、驚くべきことにこのリストは、前回「青白トロン」の項目で紹介した《けちな贈り物》から《堀葬の儀式》を導くシステムをサイドボードに採用しているんです。このデッキにこのシステムが採用されているなんて、初見ではまず分からないため奇襲性は抜群。突如として現れる《鋼の風のスフィンクス》や《エメリアの盾、イオナ》は、速やかにゲームを終わらせてくれることでしょう。《鋼の風のスフィンクス》は対ビートダウン戦における必殺兵器で、とりわけ「プロテクション(赤)(緑)」が効果的な「ジャンド」デッキなんかに劇的な1枚です。《エメリアの盾、イオナ》はビートダウンからコンボデッキまで、「親和」を除くほぼ全てのデッキに強いカードなので、《堀葬の儀式》のお供として鉄板の存在と言えます。もしも「親和」や「メリーラ頑強」を意識するのであれば、ぜひとも《大修道士、エリシュ・ノーン》を採用しておきたいですね。
唯一の懸念材料として、《堀葬の儀式》が手札にきてしまった場合にどうしようもないので、少し痛いのは気掛かりですが、《山》を《湿った墓》のような黒絡みのギルドランドにしてもいいかもしれません。
仮に《堀葬の儀式》システムを凌がれようとも、メインに《瞬唱の魔道士》を搭載しているこのデッキは、2枚目、3枚目の《けちな贈り物》を上手く活用することが可能です。《けちな贈り物》で《瞬唱の魔道士》、《稲妻》、《流刑への道》、《稲妻のらせん》と持ってくれば、対ビートダウン戦ではそれだけで大きなリードを得られるでしょうし、戦況に余裕があるなら《瞬唱の魔道士》、《聖トラフトの霊》、《けちな贈り物》、《ムーアランドの憑依地》といった強気なサーチの仕方もできます。
「青白トロン」であれば、「ウルザランド」が揃うと《大修道士、エリシュ・ノーン》や《エメリアの盾、イオナ》を普通にキャストできますし、必要に応じて《知識の渇望》で捨ててから《堀葬の儀式》で釣ることもできます。しかしながら、この「トリコロールDelver-Go」はそうではありません。ゲームが長引けば普通にキャストすることも稀にありますが、基本的には《けちな贈り物》以外のパーツは手札にきてほしくない類いのカードです。そのような欠点を抱えているにも関わらず、グランプリトライアル優勝という結果を残したことは、モダン環境に一石を投じる大きな出来事だったと思います。極端な話《けちな贈り物》→《堀葬の儀式》を導くシステムは、青白のデッキでなくとも、大量のフェッチランドと1枚の《神聖なる泉》が入っていれば成立するので、今後はより多くのデッキでこのシステムが採用されるきっかけになるかもしれません。
《けちな贈り物》は本当に強力なカードで、《堀葬の儀式》システム以外にも、たった1枚でこんなコンボを完成させることもできちゃうんです。
~青赤はコンボの代名詞・モダンを彩るコンボデッキたち~
3 《島》 2 《山》 4 《シヴの浅瀬》 4 《硫黄の滝》 4 《沸騰する小湖》 2 《霧深い雨林》 2 《ハリマーの深み》 1 《蒸気孔》 -土地(22)- -クリーチャー(0)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《血清の幻視》 1 《有毒の蘇生》 4 《差し戻し》 4 《魔力変》 4 《捨て身の儀式》 3 《発熱の儀式》 1 《ぶどう弾》 4 《煮えたぎる歌》 4 《けちな贈り物》 3 《巣穴からの総出》 2 《炎の中の過去》 -呪文(38)- | 4 《詐欺師の総督》 3 《やっかい児》 1 《鏡割りのキキジキ》 3 《マナ漏出》 4 《欠片の双子》 -サイドボード(15)- |
こちらは由緒正しき「青赤ストーム」デッキ。《魔力変》、《捨て身の儀式》、《発熱の儀式》、《煮えたぎる歌》などを用いてマナとストーム数を稼いでいき、最終的にはすさまじい数の《ぶどう弾》か《巣穴からの総出》で相手を跳躍することになります。
マナ加速とドロースペルだけではストーム数が足りない状況が多発しますが、それを改善するのが「イニストラード」から加入した《炎の中の過去》です。これさえあれば墓地のマナ加速もドロースペルも使いたい放題。必要であれば、肝心の《ぶどう弾》や《巣穴からの総出》を再利用することも可能です。なお、《炎の中の過去》で「フラッシュバック」が付くのは、《炎の中の過去》が解決した時点で墓地にあるカードのみです。解決後に墓地に落ちたカードには、「フラッシュバック」は付いていないのでご注意を。
このデッキの《けちな贈り物》がどういう動きをするかと言いますと、前述の通り1枚でコンボが完成します。サーチの仕方も至ってシンプルで、大体の場合は以下の手順でOKです。
~ステップ1 コンボへの下準備・《魔力変》or《発熱の儀式》or《捨て身の儀式》の中から2枚、《煮えたぎる歌》、《炎の中の過去》~
《炎の中の過去》には「フラッシュバック」が付いているので、もしも手札にこなくとも問題は無く、こうすれば大抵は次のターンにはコンボを開始できます。マナの総数が十分な場合は、ドローと青マナを確保できる《魔力変》を優先させ、単純にマナ加速が欲しい状況なら《発熱の儀式》と《捨て身の儀式》を持ってくるといいでしょう。そして大量のマナ加速からマナとストームを稼ぎつつ《炎の中の過去》をキャストすれば、墓地にある《けちな贈り物》にも「フラッシュバック」が付くため、いよいよゲームを決めにかかります。
~ステップ2 フィニッシュ・《有毒の蘇生》、《ぶどう弾》、《煮えたぎる歌》、《炎の中の過去》~
仮に《有毒の蘇生》と《ぶどう弾》を墓地に落とされようとも、《炎の中の過去》をキャストすれば、それらのカードにも「フラッシュバック」が付くので、最終的には《ぶどう弾》に辿り着けます。あとは《ぶどう弾》までに十分なストーム数を稼ぐのみですが、もしも相手のライフが多く、十分なストーム数を稼げそうにないのであれば、《有毒の蘇生》で《ぶどう弾》をトップに戻してから《魔力変》などでそれを引き直し、《ぶどう弾》をキャスト→本体を《差し戻し》→もう一度《ぶどう弾》をキャスト、と動けば20~30点くらいのライフは簡単に削り切れます。そんな手順を踏まなくても「フラッシュバック」した《ぶどう弾》を《差し戻し》すればいいのに、と思った方もいるかもしれませんが、「フラッシュバック」したスペルに対して《差し戻し》をキャストしても、そのスペルは手札に戻らず追放領域に行ってしまうため、相手のライフが多い場合は《有毒の蘇生》を駆使するか、《炎の中の過去》で「フラッシュバック」を付けて複数回キャストするしかないんですね。
このデッキの課題は主にふたつあって、ひとつめは平均キルターンが限りなく5ターン目に近いので、単純に他のデッキ相手にスピード負けしてしまうことが多いというもの。手札にマナ加速が大量にあれば、3ターン目に《発熱の儀式》or《捨て身の儀式》→《けちな贈り物》から4ターンにコンボを開始できるんですが、これは3ターン目までにいくつかのマナ加速と《けちな贈り物》を引けている時にしかできない芸当ですし、無理にコンボを開始しても止まってしまうと意味がないので、ある程度コンボが決まるという確信を持った状況か、次のターンにコンボを決めないと負けてしまうような状況を除いては仕掛けたくないですね。メインに3枚投入された《巣穴からの総出》は、《けちな贈り物》からだと間に合いそうにない場合に、マナ加速から2~3ターン目にキャストすることで、少しでもキルターンを早めようという意志を感じますが、やはり単純な速度の遅さは気になります。
ふたつめの課題は、このデッキが非常に対策されやすいということです。パーマネントだけで見ても《エーテル宣誓会の法学者》、《墓掘りの檻》、《大祖始の遺産》、《アメジストのとげ》、《法の定め》と盛りだくさんで、さらには《精神壊しの罠》のようなこのデッキ専用カードまで存在します。実際に今年の1月にはこの手の「青赤ストーム」が猛威を振るっていたために、どのデッキもサイドボードに《精神壊しの罠》を積むような惨状で、それにより《精神壊しの罠》が高騰するといったちょっとした事件も起きました。
そのため、サイド後の試合をどう乗り越えるかがこのデッキの鍵になってきます。このリストは《詐欺師の総督》+《欠片の双子》コンボで相手の妨害手段を無効化しようと試みていますが、墓地対策と《法の定め》系統のカードを全て無視できるこのコンボには、膨大な枠を割くだけの十分な価値があると思います。他にも《秘密を掘り下げる者》なんかを使った「オフェンシブサイドボード」も目にします。MOで流行している「青赤《紅蓮術士の昇天》ストーム」は、その「オフェンシブサイドボード」戦略を取っていることが多いので、実際にリストを見てみましょう。
4 《島》 1 《山》 4 《シヴの浅瀬》 4 《沸騰する小湖》 2 《霧深い雨林》 2 《蒸気孔》 -土地(17)- -クリーチャー(0)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《手練》 4 《血清の幻視》 4 《信仰無き物あさり》 4 《魔力変》 4 《発熱の儀式》 4 《捨て身の儀式》 1 《ぶどう弾》 4 《紅蓮術士の昇天》 4 《煮えたぎる歌》 4 《炎の中の過去》 2 《巣穴からの総出》 -呪文(43)- | 4 《秘密を掘り下げる者》 3 《渋面の溶岩使い》 4 《稲妻》 4 《呪文貫き》 -サイドボード(15)- |
こちらは《けちな贈り物》ではなく、《紅蓮術士の昇天》を軸にすえたバージョンです。MO界では《けちな贈り物》型よりも、こちらのバージョンが圧倒的に多いですね。
先ほどの「《けちな贈り物》ストーム」よりも動きが簡略化されていて、キルターンも僅かながらこちらの方が早いと思います。一度《紅蓮術士の昇天》がクエスト条件を達成してしまえば、相手のカウンター呪文1~2枚程度はものともせずにコンボを決めることができますし、《紅蓮術士の昇天》好きにはたまらないデッキに仕上がっています。
このデッキのサイドボードにも《詐欺師の総督》+《欠片の双子》コンボを仕込んだものを見かけますが、《紅蓮術士の昇天》型のリストは土地が少ないため、マナ加速呪文を経由しなければ《欠片の双子》や《鏡割りのキキジキ》を唱えづらいので、《法の定め》系のカードを完全に無視できないのがつらいところ。
そこで登場するのが《秘密を掘り下げる者》や《窯の悪鬼》などの「オフェンシブサイドボード」というわけです。これならば相手がどのようなコンボ対策を入れてこようとも、それを無視して戦うことが可能となります。ただしサイド後にも《稲妻》や《稲妻のらせん》を残してくる「Zoo」や「トリコロールDelver-Go」には効きづらい戦略なので、これもまたベストかと言われると難しいところです。対戦相手がどのカードをサイドインしてくるか知っていれば、パーマネントなら《残響する真実》、スペルなら《払拭》や《防御の光網》といった感じで的確に対処できるのですが、こればっかりは試合が始まるまでは分からないので、そういった意味で「オフェンシブサイドボード」が重宝するのは確かです。「オフェンシブサイドボード」以外に、もうひとつ軸をずらした戦い方として、《テレミンの演技》が挙げられます。ミラーマッチや「ウルザトロン」などに効果的な1枚で、最速だと2ターン目にゲームが終わりかねない優れもの。しかし《墓掘りの檻》の前に無力だったり、「青白ウルザトロン」相手には5分の1くらいで《エーテル宣誓会の法学者》が出てきてしまうといった弱点もありますし、ほぼノンクリーチャーデッキ限定のカードとなるので、「オフェンシブサイドボード」には劣るかなといった印象ですね。
最後に《ギタクシア派の調査》の使い方について少しだけ。よくMOで1ターン目にキャストされることが多いですし、僕も最初の頃はよくやってしまっていたのですが、このカードは基本的に1ターン目にキャストすべきではないと思います。相手のデッキを知ることは確かに大切なことですが、それよりもコンボを仕掛ける直前だったり、肝心な《けちな贈り物》や《紅蓮術士の昇天》をプレイする直前にキャストして安全確認として使った方が遥かに効果的ですからね。こちらが先手1ターン目に「ファイレクシア・マナ」でキャストした場合、相手のデッキがビートダウンデッキだと大幅に損をしてしまいますし、本当に相手の手札を知りたいタイミングまで待った方がいいと思います。例外として《ギタクシア派の調査》が複数枚手札にある場合や、他にドローサポートが無く、ハンデスで《ギタクシア派の調査》を落とされてしまうと土地が止まりそうな場合、または《紅蓮術士の昇天》のクエスト条件を達成するためにキャストすることはありますが、それ以外の状況では、《ギタクシア派の調査》は大事に使うように心掛けたいですね。
《けちな贈り物》型であれ《紅蓮術士の昇天》型であれ、メイン戦の勝率はかなりいいので、サイドボード後を乗り切れる戦略さえ発見できれば、勝ち組に返り咲くことができるでしょう。それかメタゲーム的にこれらのデッキがあまりメタられていないタイミングを見計らって使うのも吉です。デッキパワーは高いので、きちんと意識しておきたいデッキですね。
青赤の項目だけでもずいぶんと長くなってしまって申し訳ないのですが、もうひとつモダンを代表するコンボを紹介して次に移りたいと思います。
4 《島》 1 《山》 4 《沸騰する小湖》 4 《霧深い雨林》 1 《乾燥台地》 3 《蒸気孔》 1 《踏み鳴らされる地》 2 《硫黄の滝》 2 《滝の断崖》 2 《ハリマーの深み》 -土地(24)- 3 《渋面の溶岩使い》 3 《呪文滑り》 4 《やっかい児》 4 《詐欺師の総督》 3 《鏡割りのキキジキ》 -クリーチャー(17)- |
4 《払拭》 4 《手練》 4 《血清の幻視》 3 《炎の斬りつけ》 4 《欠片の双子》 -呪文(19)- | 3 《巨森の蔦》 2 《墓掘りの檻》 3 《残響する真実》 3 《古えの遺恨》 1 《否認》 3 《血染めの月》 -サイドボード(15)- |
昨年までスタンダードを賑わせていた「青赤《欠片の双子》」コンボデッキ、そのモダンバージョンがこちらです。
そのコンボの仕組みはと言いますと、《詐欺師の総督》に《欠片の双子》をエンチャントするだけのお手軽なもので、あとは以下の手順を繰り返せば、あなたは望む数の「速攻」付きクリーチャーで対戦相手を葬りさることができます。
1・《詐欺師の総督》に《欠片の双子》をエンチャントする。
2・《詐欺師の総督》をタップしてコピートークンを出す。
3・コピートークンの「あなたがコントロールするパーマネント1つを対象とし、それをアンタップする」能力が誘発するので、それで《欠片の双子》の付いた《詐欺師の総督》本体をアンタップ。
4・《詐欺師の総督》がアンタップされ、再びコピートークンが出せるようになるので、以下このサイクルの繰り返し。
たった2枚のコンボというのは実に強力なもので、対戦相手の《流刑への道》のような除去も《呪文滑り》や《払拭》で対処可能です。スタンダードの頃と大きく違うのは、《やっかい児》と《鏡割りのキキジキ》が使えることで、コンボパーツを最高で8枚ずつ搭載できる点です。これにより4~5ターン目にコンボが成立する可能性と、1度コンボを妨害されてしまった場合にも、2回目、3回目のコンボ達成率が高まっています。
《やっかい児》は《稲妻》で死んでしまったりブロッカーとして貧弱だったりと短所ばかりが目立ちますが、《詐欺師の総督》にはない長所として、《魂の管理人》の上からでも「無限コンボ」を決めれば殴り勝てることが挙げられます。
《鏡割りのキキジキ》は《欠片の双子》より1マナも重いですが、こいつには「速攻」があるので、マナさえあれば1ターンのうちに《やっかい児》or《詐欺師の総督》→《鏡割りのキキジキ》と繋いで瞬殺できるのは《欠片の双子》にはない長所ですね。他にも《クァーサルの群れ魔道士》のような《帰化》系のカードにひっかからないといった側面もあります。
このデッキは《呪文滑り》でも《払拭》でも対処できない《焼却》を苦手としていましたが、最近ではサイドボードに《巨森の蔦》を入れて《焼却》にもきちんと対処できるように工夫されています。このデッキは「青赤ストーム」よりも致命的な対策カードが少ないので、隙の少ないコンボデッキとして認知されていますが、対策カードとしては《静寂の守り手、リンヴァーラ》、《抑制の場》や《亡霊の牢獄》が一般的です。《静寂の守り手、リンヴァーラ》は「メリーラ頑強」にも強いですし、《亡霊の牢獄》は普通のビートダウンデッキ相手にも効かないことはないので、もしもこのデッキを意識するのであれば、サイドボードに忍ばせておくといいでしょう。
最後にモダンならではの面白いデッキをふたつ紹介してお別れしたいと思います。
1 《森》 1 《島》 1 《沼》 4 《霧深い雨林》 4 《新緑の地下墓地》 3 《沸騰する小湖》 1 《繁殖池》 1 《草むした墓》 1 《湿った墓》 1 《神聖なる泉》 1 《蒸気孔》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《寺院の庭》 1 《血の墓所》 -土地(22)- 4 《極楽鳥》 4 《面晶体のカニ》 4 《墓所這い》 4 《水蓮のコブラ》 4 《臭い草のインプ》 2 《よろめく殻》 2 《スカーブの殲滅者》 4 《復讐蔦》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 -クリーチャー(29)- |
4 《信仰無き物あさり》 2 《暗黒破》 2 《壌土からの生命》 1 《堀葬の儀式》 -呪文(9)- | 4 《スレイベンの守護者、サリア》 2 《呪文滑り》 1 《絶望の天使》 1 《エメリアの盾、イオナ》 3 《古えの遺恨》 1 《記憶の旅》 2 《骨までの齧りつき》 1 《堀葬の儀式》 -サイドボード(15)- |
昔懐かし「発掘」システムを使ったコンボデッキ。《面晶体のカニ》とフェッチランドの組み合わせで、「自らの」ライブラリーを削って墓地を肥やし、その過程で落ちた《臭い草のインプ》、《壌土からの生命》などを「発掘」することで、さらにライブラリーを掘り進んでいくのが基本的な動きです。
そうやって墓地を肥やしていけば、複数枚の《復讐蔦》、または《スカーブの殲滅者》か《大修道士、エリシュ・ノーン》+《堀葬の儀式》が墓地に落ちるので、それらを使って攻めに転じていくことになります。動きが普通のデッキとは大きく異なるので、使っていて非常に楽しいデッキではあるのですが、実戦レベルまではあと一歩といった印象ですね。「発掘」カードをどれくらい採用すべきか、《堀葬の儀式》と釣る対象をどれくらい入れるかなど、その辺りがはっきりしてくれば強いデッキの仲間入りができるかもしれません。
最後を飾るのは、先月にアメリカのPTQを突破したこのデッキ。
2 《森》 4 《新緑の地下墓地》 4 《霧深い雨林》 1 《乾燥台地》 2 《寺院の庭》 2 《踏み鳴らされる地》 4 《風立ての高地》 2 《苔汁の橋》 1 《セジーリのステップ》 1 《活発な野生林》 1 《ドライアドの東屋》 1 《変わり谷》 -土地(25)- 4 《極楽鳥》 4 《貴族の教主》 4 《水蓮のコブラ》 4 《巣の侵略者》 4 《聖遺の騎士》 4 《原始のタイタン》 4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(28)- |
3 《裂け目の突破》 4 《召喚の罠》 -呪文(7)- | 1 《ガドック・ティーグ》 3 《エイヴンの思考検閲者》 2 《台所の嫌がらせ屋》 4 《古えの遺恨》 4 《神聖の力線》 1 《ボジューカの沼》 -サイドボード(15)- |
様々な角度から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を出そうと試みるデッキが、こちらの「白緑《召喚の罠》」です。「青赤トロン」でも使用されていた《裂け目の突破》で手札から出すギミックに加え、《風立ての高地》、《苔汁の橋》、《召喚の罠》と、《引き裂かれし永劫、エムラクール》を出すことに全身全霊をかけた漢のデッキです。ただし、デカブツが《引き裂かれし永劫、エムラクール》だけだとそれらのカードの真価を発揮しづらいので、次点として《原始のタイタン》が採用されています。《活発な野生林》と《変わり谷》を引き連れ、颯爽と現れるこの巨人もまた、ゲームを終わらせるに十分な力を秘めています。PTQを抜けてからは、MO界でもそれなりに流行っているようですし、《引き裂かれし永劫、エムラクール》を愛するみなさんにぜひとも使っていただきたいデッキですね。
第3回は以上になります。第2回、第3回ともにかなり長々と書いてきましたが、これでモダンの主要デッキの6~7割ぐらいは紹介できたんじゃないかと思います。これでもまだ全てのデッキを網羅できていない辺りに、モダン環境の奥深さを感じますが、本当に色々なカードが使えて楽しいフォーマットですね。今現在は《堀葬の儀式》システムを筆頭に、様々な使い方ができる《けちな贈り物》が目立っているという印象を受けています。しかしながら、どのデッキも魅力的なものばかりなので、まずは好きなカードの入ったデッキからモダンを始めてみてはいかがでしょうか?
次回は日本各地で開催されるPTQにスポットを当てながら、実際の大会でどのようなデッキが勝っているのかを見ていく予定です。それでは、また次回の連載で。