津村健志のモダン・タイムズ 第2回仕切り直しのモダンシーズン

津村 健志


編注:本集中連載シリーズは、本来1月下旬頃に掲載予定だった第2回が、HappyMTG編集チーム側の問題で、掲載が遅れてしまいました。掲載時期が遅れてしまった事を深くお詫び申し上げます。
 また、今後のプロツアー予選、グランプリ・横浜というモダンシーズンに向けて、有益な情報を提供できるよう努力していく所存でございます。
 これからも、HAPPYMTGコラム、並びに津村健志の連載をよろしくお願い申し上げます。


 お久しぶりです。まず最初に、前回の連載から大幅に時間が経ってしまったことを深くお詫びいたします。今後はこういったことがないように、精神誠意努力させていただきます。今回からは月に1回のペースで、モダンの情報をお届けさせていただく予定です。

 第2回となる今回の記事では、先々週に開催されたグランプリ・リンカーン(リンク先は英語)の結果を見ていきましょう。このグランプリは《野生のナカティル》《罰する火》が禁止されてから初めて行われた大型イベントで、この結果は今後のPTQやグランプリ・横浜を占う重要なものだったと思います。膨大なカードプールを誇るモダン環境ですが、今回ご紹介させていただくものはMagic Online(以下MO)上でもあたる回数が多く、今後の現実世界で見かける機会も多いはずなので、デッキの動きや構造をしっかりチェックしておきましょう。

 それでは、まずはビートダウンデッキの代表格と言えるこのデッキから見てまいりましょう。


~次世代のビートダウン・親和~



「Affinity(親和」/ Mary Jacobson
Grand Prix Lincoln 2012 -5位

2 《山》
4 《ダークスティールの城塞》
4 《墨蛾の生息地》
4 《ちらつき蛾の生息地》
2 《空僻地》

-土地(16)-
4 《メムナイト》
4 《羽ばたき飛行機械》
4 《信号の邪魔者》
4 《大霊堂のスカージ》
4 《鋼の監視者》
2 《電結の荒廃者》
4 《刻まれた勇者》
-クリーチャー(26)-
4 《オパールのモックス》
4 《感電破》
3 《バネ葉の太鼓》
4 《頭蓋囲い》
3 《爆片破》

-呪文(18)-
3 《エーテル宣誓会の法学者》
3 《倦怠の宝珠》
3 《鞭打ち炎》
3 《古えの遺恨》
3 《血染めの月》

-サイドボード(15)-
hareruya




「Affinity(親和」/ Samuel Friedman
Grand Prix Lincoln 2012 -4位

2 《山》
4 《ダークスティールの城塞》
4 《墨蛾の生息地》
4 《ちらつき蛾の生息地》
2 《空僻地》
1 《真鍮の都》

-土地(17)-
4 《メムナイト》
3 《羽ばたき飛行機械》
3 《信号の邪魔者》
4 《大霊堂のスカージ》
4 《鋼の監視者》
3 《電結の荒廃者》
4 《刻まれた勇者》
-クリーチャー(25)-
4 《オパールのモックス》
4 《感電破》
3 《バネ葉の太鼓》
2 《鋼打ちの贈り物》
4 《頭蓋囲い》
1 《倦怠の宝珠》

-呪文(18)-
2 《エーテル宣誓会の法学者》
4 《古えの遺恨》
3 《倦怠の宝珠》
2 《鞭打ち炎》
1 《焼却》
3 《血染めの月》

-サイドボード(15)-
hareruya





 膨大な種類のカードが使えるモダンフォーマットの中でも、有数の爆発力を誇るのが「親和」デッキです。《教議会の座席》を筆頭とする5種類のアーティファクト・ランドがモダンフォーマットにおいて禁止カードに指定されているのは、ひとえにこの「親和」デッキが強すぎるからにほかなりません。それらアーティファクト・ランドが禁止されているにも関わらず、依然としてこのデッキが結果を残しているのを見れば、いかに「親和」というアーキタイプが強いかお分かりいただけるかと思います。

メムナイト羽ばたき飛行機械信号の邪魔者


このデッキの信条はと言いますと、《メムナイト》《羽ばたき飛行機械》《信号の邪魔者》というカードが示すように、いかに素早く展開できるか。それに尽きます。デッキ全体のマナカーブが低めに設定されていることに加え、《オパールのモックス》《バネ葉の太鼓》が圧倒的な展開力を可能にするのです。

鋼の監視者頭蓋囲い電結の荒廃者


 その展開力を攻撃へと繋げていくわけなんですが、そこで鍵となるのが《鋼の監視者》《電結の荒廃者》《頭蓋囲い》の3枚です。他のカードはカードパワーにそこまでの差はありませんが、この3種類だけは別格で、これらは野蛮なほどの攻撃力を誇り、戦場に残ってしまえば4~5ターンキルも容易に実行できます。この3枚はアーティファクトの数に強さを左右されますが、上で示したようにこのデッキの持つとてつもない展開力のおかげで、これらのカードはその力を最大限に発揮できるというわけです。しかしながら、逆に言えばそれらを引けない場合は攻め手が細すぎるので、4位のリストは《鋼打ちの贈り物》を用いて《頭蓋囲い》の水増しを図っています。これはアーティファクト・ランドが禁止されているために《電結の荒廃者》に以前ほどの力がないこと、クリーチャーカードよりも装備品の方が壊されにくいことを加味しての採用だと思います。とは言え、《電結の荒廃者》には《紅蓮地獄》《ジャンドの魔除け》のようなダメージ系の全体除去に強いだとか、パンプアップにマナがかからないなどの魅力もあるので、単純に《電結の荒廃者》を4枚にしてもいいような気もしますが、何にせよ安定して《頭蓋囲い》を引けるアプローチとして今後要注目のテクニックと言えるでしょう。

 それとモダン環境では「親和」デッキに最適なミシュラランドが2種類使えることにも注目です。スタンダードでお馴染みの《墨蛾の生息地》のみならず、古くから「親和」デッキを支えてきた《ちらつき蛾の生息地》が、この環境では使用可能なのです。《墨蛾の生息地》は「感染」持ちということで、《電結の荒廃者》《頭蓋囲い》と組み合わせれば、概ね2回のアタックでゲームが終わります。《ちらつき蛾の生息地》には「感染」こそありませんが、「飛行」のアーティファクトクリーチャーという最低限のスペックは持ち合わせていますし、「対象のちらつき蛾を+1/+1する」能力により、《ちらつき蛾の生息地》だけでなく《墨蛾の生息地》をパンプしたりもできます。


 「親和」デッキは、基本的に1マナ4点火力である《感電破》が使える赤をメインカラーに据えることが多いのですが、モダンには《バネ葉の太鼓》《空僻地》《真鍮の都》といった色マナを出せる優良カードが大量にあるため、メインボードやサイドボードに各色の優良カードを採用することが可能です。先ほどの《鋼打ちの贈り物》もそうですが、サイドボードに潜む《エーテル宣誓会の法学者》なんかも、メインボードがほぼ赤単色にも関わらず安定して序盤からキャストできるのは、多色土地が多いモダンだからこそできる芸当です。これらの土地を採用しておけば、《頭蓋囲い》のインスタントタイミングでの装備も無理なく行えるといった付加価値もありますね。メインカラーを青と黒にすることで、《闇の腹心》《ボーラスの工作員、テゼレット》を使用するリストもたまに見かけますし、「親和」デッキのポテンシャルはまだまだ未知数といったとこしょうか。

 《野生のナカティル》が禁止されて以降、ビートダウンデッキの代表的な存在となった「親和」デッキ。環境に《古えの遺恨》が多いことだけは気掛かりですが、それを差し引いても魅力的なデッキであるということを、今回の結果が示してくれています。前述の通り赤単色以外にもいくつかのバリエーションがあるので、みなさんもぜひ色々なタイプの「親和」デッキを作ってみてください。


~クロックパーミッション・フェアリー&マーフォーク~




「青単フェアリー」/ Samuel Karls
Grand Prix Lincoln 2012 -6位

18 《島》
4 《変わり谷》
3 《地盤の際》

-土地(25)-
4 《呪文づまりのスプライト》
2 《呪文滑り》
4 《ウーナの末裔》
3 《ヴェンディリオン三人衆》
4 《霧縛りの徒党》
-クリーチャー(17)-
4 《呪文嵌め》
1 《呪文貫き》
4 《差し戻し》
2 《マナ漏出》
3 《ヴィダルケンの枷》
4 《謎めいた命令》

-呪文(18)-
1 《呪文滑り》
1 《誘惑蒔き》
1 《ワームとぐろエンジン》
2 《鋼の妨害》
1 《払拭》
3 《漸増爆弾》
3 《不忠の糸》
1 《ジェイス・ベレレン》

-サイドボード(15)-
hareruya



 これぞクロックパーミッションといったデッキがこちらの「青単フェアリー」。クロックパーミッションとは、ダメージ源(クロック)を設置し、それをカウンター呪文などでバックアップする戦略を指すのですが、このリストは《呪文滑り》《ヴィダルケンの枷》以外の全てのスペルがインスタントタイミングでキャストできるので、ほとんど隙を見せることなくゲームを進めることができます。

 軽い強力なカードがひしめくモダン環境において、《呪文づまりのスプライト》《対抗呪文》になりえますし、《ヴェンディリオン三人衆》は優秀なアタッカーとしてもブロッカーとしても機能します。《霧縛りの徒党》は、基本的には相手のアップキープに唱えて《枯渇》のような働きをさせることが多いですが、相手のアタックを誘いたい場合には敢えてアップキープにはキャストせずに、相手の攻撃クリーチャー指定後に唱えるのが常套手段です。そしてこれらの戦力を援護するのが《ウーナの末裔》。相手の除去呪文に対応して《ウーナの末裔》を唱えれば、それを無効化することができますし、全てのフェアリーをパンプアップするその能力は最後の一押しにも持ってこいです。さらに《ウーナの末裔》が2体以上並ぶと全てのフェアリーは「被覆」を持つため、相手の単体除去を無駄カードにすることができます。

謎めいた命令霧縛りの徒党


 これらのクリーチャー全てがインスタントタイミングでキャストされるだけでも十分な脅威となりますが、ゲームをより複雑にするのが《謎めいた命令》の存在です。「フェアリー」デッキと対峙し、「フェアリー」プレイヤーが4マナを起こしてターンを返してきた時、あなたは常に《霧縛りの徒党》《謎めいた命令》かの2択に頭を抱えることになります。どちらも持っていると仮定すると、呪文を唱えることも戦闘を行うことすらもままならなくなるので、結局はどちらかを持ってないと思って行動するしかなくなるのですが、この2種類以外にも《呪文づまりのスプライト》《ウーナの末裔》など、考え出すとキリがないものばかりで構成されているのが「フェアリー」というデッキなんです。この「対峙する際の難しさ」こそが「フェアリー」デッキ最大の強みです。これは何度も練習をして、その状況で1番きついカードを見極め、それに対して損をしないようなプレイをするしかありません。このデッキを使わないにしろ、しっかりと練習を積んでおくことをお勧めします。

 メインボードでインスタントタイミングでキャストできない2種類の呪文は、《呪文滑り》《ヴィダルケンの枷》のみ。前者は《詐欺師の総督》+《欠片の双子》コンボに強く、単体除去からフェアリーたちを守る役割をもはたしてくれます。これにより《ウーナの末裔》×2という状況を作りやすくなったり、除去を恐れることなく《霧縛りの徒党》をキャストできるようになったりします。《詐欺師の総督》+《欠片の双子》デッキが多いと読むのであれば、ぜひとも増量を検討したい1枚ですね。もう一方の《ヴィダルケンの枷》は、クリーチャーを主戦力としたデッキ相手に強力な1枚で、ミラーマッチなんかはこれだけでゲームが決まってしまうことも多々あります。サイド後は《ヴィダルケンの枷》のためだけに《古えの遺恨》を入れられることも少なくないので、こちらもそれを見越して《アカデミーの廃墟》《ヴィダルケンの枷》を回収したり、アーティファクトではない《不忠の糸》を投入したりして若干の耐性を付けることになります。

 ここまでは比較的ポジティブな側面を押し出してきましたが、もちろんこのデッキにも苦手なものはあります。リストをご覧いただいた段階で気付いた方も多いかと思いますが、このデッキは対ビートダウン戦に大きな不安を抱えています。こちらが先手であれば押しきれたり、《ヴィダルケンの枷》が間に合ったりもしますが、後手の場合は本当に厳しく、とりわけ「親和」デッキのように数で押してくるタイプには苦戦を強いられます。サイドボード後は《漸増爆弾》などで対抗できるのですが、もう少し軽めの除去を積んでもいいかもしれません。ライフ損失が大きい《四肢切断》はこれ以上投入することが難しいので、4枚目の《漸増爆弾》《仕組まれた爆薬》辺りが良い候補になるでしょう。このデッキだと《仕組まれた爆薬》はX=0か1でしか置けませんが、《鋼の妨害》は相当に用途が狭いので、《秘密を掘り下げる者》《ステップのオオヤマネコ》などにも効く《仕組まれた爆薬》で良いと思います。

 しかしながら、現状では《野生のナカティル》が禁止になったことを受け、環境からビートダウンデッキが激減していることがこのデッキを選ぶ動機のひとつになっています。今後「親和」などが激増するようであれば、このデッキも形を変える必要が出てくるでしょうが、それまでは比較的メジャーなデッキタイプとして君臨するのではないでしょうか。

 今回の記事では、グランプリ・リンカーンのトップ8以外のデッキには触れないようにと思っていたのですが、せっかくの「青単」繋がりということで、もうひとつのクロックパーミッションも紹介させていただきます。



「青単マーフォーク」/ Alloran
Modern Daily #3456710 on 02/23/2012 -3-1

17 《島》
3 《変わり谷》

-土地(20)-
4 《呪い捕らえ》
4 《銀エラの達人》
4 《アトランティスの王》
4 《珊瑚兜の司令官》
2 《幻影の像》
1 《川の殺し屋、シグ》
4 《メロウの騎兵》
2 《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》
1 《マーフォークの君主》
-クリーチャー(26)-
4 《呪文貫き》
4 《霊気の薬瓶》
2 《真髄の針》
4 《マナ漏出》
-呪文(14)-
2 《呪文滑り》
3 《墓掘りの檻》
2 《大祖始の遺産》
1 《真髄の針》
3 《否認》
2 《倦怠の宝珠》
2 《不忠の糸》

-サイドボード(15)-
hareruya


霊気の薬瓶


 同じ青単色のデッキと言えど、「青単フェアリー」とは対極の動きをするのがこのデッキです。「青単フェアリー」が自身のターン中にマナを使わないことを信条とするのに対し、この「青単マーフォーク」は毎ターンクリーチャーをキャストしながら、とにかく攻め続けることを念頭においた構成になっています。《霊気の薬瓶》からの流れるような動きは圧巻の一言で、そのような展開であれば相手のデッキを問わず殴り勝つことができるでしょう。しかしながら「青単フェアリー」とは違いクリーチャーへの依存度が高いため、相手の除去呪文にいいようにやられてしまう展開が多いこと、そして《霊気の薬瓶》を引けない場合の動きのもっさり感もあり、最近では数を減らしています。このリストでは除去耐性を上げるべくメインから《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》を投入していますが、個人的には3枚入れてもいいと思うくらいにこのデッキにぴったりの1枚。《呪文貫き》《マナ漏出》で除去呪文をカウンターすることも多いこのデッキにとって、何もせずとも除去呪文をカウンターしてくれるというのは本当に頼りになる限りです。

 「青単マーフォーク」はクリーチャー同士の相互関係が大きいので除去に弱いのですが、前述の「青単フェアリー」や後述の「青白トロン」のような除去の少ないデッキが増えれば再びチャンスが巡ってくると思います。特に《アトランティスの王》が入っている関係上、《島》の入ったデッキには強いので、メタゲーム次第では今後増えていく可能性もあるでしょう。

 さて、ここまで散々除去がきついとお伝えしてまいりましたが、それではどのデッキにそんなに大量の除去呪文が入っているのでしょうか。その答えは数年前までスタンダードを席巻していたこのデッキです。


~王者健在・ジャンド~



「ジャンド(黒緑赤)」/ Mat Mercier
Grand Prix Lincoln 2012 -7位

2 《沼》
1 《森》
4 《樹上の村》
3 《怒り狂う山峡》
4 《新緑の地下墓地》
1 《湿地の干潟》
4 《黒割れの崖》
1 《草むした墓》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《血の墓所》
3 《黄昏のぬかるみ》

-土地(25)-
4 《闇の腹心》
4 《タルモゴイフ》
1 《台所の嫌がらせ屋》
4 《血編み髪のエルフ》
-クリーチャー(13)-
4 《稲妻》
4 《コジレックの審問》
1 《思考囲い》
3 《終止》
4 《大渦の脈動》
3 《ジャンドの魔除け》
3 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(22)-
3 《台所の嫌がらせ屋》
2 《高原の狩りの達人》
3 《思考囲い》
1 《死亡/退場》
2 《古えの遺恨》
1 《ジャンドの魔除け》
1 《クローサの掌握》
2 《魂の裏切りの夜》

-サイドボード(15)-
hareruya




「ジャンド(黒緑赤)」/ Derrick Rutledge
Grand Prix Lincoln 2012 -8位

2 《沼》
2 《森》
4 《樹上の村》
4 《新緑の地下墓地》
4 《黒割れの崖》
2 《銅線の地溝》
2 《草むした墓》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《血の墓所》
2 《黄昏のぬかるみ》

-土地(24)-
4 《闇の腹心》
4 《タルモゴイフ》
4 《台所の嫌がらせ屋》
4 《血編み髪のエルフ》
1 《オリヴィア・ヴォルダーレン》
-クリーチャー(17)-
4 《稲妻》
4 《コジレックの審問》
2 《思考囲い》
3 《終止》
4 《ヴェールのリリアナ》
2 《大渦の脈動》

-呪文(19)-
2 《永遠の証人》
3 《マグマのしぶき》
2 《自然の要求》
1 《強迫》
1 《思考囲い》
3 《アメジストのとげ》
3 《古えの遺恨》

-サイドボード(15)-
hareruya




 少し前までスタンダードを席巻していたのが、この「ジャンド」デッキ。1枚1枚のカードパワーが高いことに加え、《血編み髪のエルフ》という稀有な「殴れるアドバンテージ獲得手段」が、当時のスタンダードシーンを血の海に染め上げたのは記憶に新しいでしょう。このアーキタイプはモダンでも非常に強力で、実際に年末に行われたThe Finals2011、そして今回のグランプリ・リンカーンにおける勝ち頭となったのが、この「ジャンド」デッキだったのです。

思考囲いタルモゴイフ


ヴェールのリリアナ血編み髪のエルフ


 1ターン目にハンデス→2ターン目に《闇の腹心》or《タルモゴイフ》という必殺の動きは、対戦相手のデッキを問わず強力で、このデッキの高い勝率を支える原動力になっています。《闇の腹心》は、《ファイレクシアの闘技場》よろしく、生き残ればそれだけでゲームに勝ってしまうほどのアドバンテージ製造機で、とりわけライフ損失の意味合いが薄いコントロールデッキやコンボデッキ相手に重宝します。《タルモゴイフ》に関しては今更語るまでもないかもしれませんが、とても2マナとは思えないそのサイズは、対ビートダウンにはアタッカー兼ブロッカーとして、対コントロールやコンボでは優秀なクロックとして、どんな相手にも活躍が見込めます。

 さらにそれに続く《ヴェールのリリアナ》《血編み髪のエルフ》も相手のデッキを選ばない高性能のカードです。《ヴェールのリリアナ》は対ビートダウンデッキでは<-2>の除去能力が、対コントロールデッキと対コンボデッキには<-1>能力と<-6>能力が頼りになります。特に対「ウルザトロン」戦での最終奥義の強さは目を見張るものがあり、そのマッチアップで無駄になりがちな《稲妻》《終止》などを捨てながらプレッシャーをかけられるのは秀逸の一言に尽きます。《血編み髪のエルフ》は「続唱」の関係上多少の運にも左右されますが、基本的には3/2の「速攻」クリーチャーにおまけが付いてくる優良カード。相手のデッキを選ばないこれらのカードの持つ汎用性の高さは、膨大な数のアーキタイプが混在するモダン環境において大きな強みになります。

 《稲妻》《コジレックの審問》《思考囲い》《終止》と軽い呪文も充実しているため、比較的苦手とするデッキが少ないことは「ジャンド」デッキ最大の魅力と言っても過言ではないでしょう。

アメジストのとげジャンドの魔除けマグマのしぶき


 唯一コンボデッキ相手だけには不利がつくので、サイドボードから追加のハンデスや《アメジストのとげ》などで対策を施すのが一般的です。《ジャンドの魔除け》《魂の裏切りの夜》《マグマのしぶき》といった一風変わったクリーチャー対策カードは、後述の「メリーラ頑強」デッキを意識しての採用だと思われます。《ジャンドの魔除け》には墓地対策という役割もありますし、《魂の裏切りの夜》は「トークン」系デッキへの解答にもなります。《マグマのしぶき》も対ビートダウンデッキ戦での軽量除去追加といった意味合いで重宝しますし、サイドボードも汎用性の高いカード選択が目を引きます。サイドボードに関しては、これは「ジャンド」デッキに限った話ではなく、多くのアーキタイプが存在するモダン環境においては、幅広い相手に活躍が期待できるカードがサイドボードを占める割合が高い傾向にありますね。


~もうひとつのジャンド・Aggro Loam~




「Aggro Loam」/ Bronson Magnan
Grand Prix Lincoln 2012 -優勝

1 《沼》
1 《森》
1 《山》
4 《新緑の地下墓地》
2 《霧深い雨林》
2 《血の墓所》
1 《草むした墓》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《黒割れの崖》
4 《偶像の石塚》
1 《黄昏のぬかるみ》
1 《火の灯る茂み》
1 《溶岩爪の辺境》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
1 《ボジューカの沼》
2 《幽霊街》

-土地(28)-
4 《闇の腹心》
4 《タルモゴイフ》
4 《田舎の破壊者》
-クリーチャー(12)-
4 《カラスの罪》
3 《炎の突き》
3 《コジレックの審問》
4 《壌土からの生命》
3 《突撃の地鳴り》
3 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(20)-
3 《強情なベイロス》
2 《暗黒破》
2 《自然の要求》
1 《コジレックの審問》
3 《古えの遺恨》2 《倦怠の宝珠》
1 《紅蓮地獄》
1 《ジャンドの魔除け》

-サイドボード(15)-
hareruya



 今回のグランプリ・リンカーンで見事栄冠に輝いたのは、《壌土からの生命》を軸に据えた「Aggro Loam」でした。軽量ハンデスから《闇の腹心》、または《タルモゴイフ》へと繋げる動きこそ「ジャンド」デッキと同じですが、その他のカード選択は全くの別物であり、「Aggro Loam」には《壌土からの生命》を使用した様々なシナジーが盛り込まれています。

~土地は最大の武器・《壌土からの生命》+《カラスの罪》or《炎の突き》or《突撃の地鳴り》

壌土からの生命


カラスの罪炎の突き突撃の地鳴り


 《壌土からの生命》は「回顧」能力と非常に相性が良く、《カラスの罪》とのコンボは第1回の連載でも紹介させていただいたように、対コントロール、対コンボデッキへの強力なアンチテーゼになります。このリストはさらにもう一歩踏み込んで、そこに《突撃の地鳴り》と、それに準ずる動きができる《炎の突き》を投入しています。《突撃の地鳴り》は古くから《壌土からの生命》と使われることの多いカードで、3ターンほどもあれば十分にゲームに勝てるほどの力を秘めています。《炎の突き》が併用されているのは、《壌土からの生命》の「発掘」能力と相性が良いためで、「発掘」過程で早期のターンに《炎の突き》が墓地に落ちればゲームプランが建てやすくなりますし、《突撃の地鳴り》《炎の突き》を数ターン以内に引かないと押しきられてしまう、そんな状況であれば普通にドローをするよりも、《壌土からの生命》を「発掘」した方が《炎の突き》を引ける確率が高いので、そういったギリギリの局面でも《炎の突き》はあなたの助けとなってくれるでしょう。とりわけ《壌土からの生命》を対処されることの少ないメイン戦では、明確な勝ち手段として機能してくれます。


~土地を力に・《田舎の破壊者》+《壌土からの生命》or《カラスの罪》or《炎の突き》or《突撃の地鳴り》or《ヴェールのリリアナ》

 本来であれば、《田舎の破壊者》がいると土地を引けなくなるのですが、《壌土からの生命》を「発掘」すれば墓地から土地を回収できるため、「回顧」カードや《突撃の地鳴り》のコストを《田舎の破壊者》状況下でも問題なく調達できるようになります。さらに《田舎の破壊者》は手札からだろうとライブラリーからだろうと、とにかく土地が墓地に落ちれば大きくなるので、「回顧」カードや《突撃の地鳴り》なんかとも相性ばっちりなんです。もちろん《新緑の地下墓地》のような各種フェッチランドを起動するだけでも成長しますし、《幽霊街》を自分の土地に対して使用すれば一気に+2/+2修正を与えることもできちゃいます。《稲妻》《稲妻のらせん》の入ったデッキと対峙した場合には、フェッチランドを用意してからキャストしたいですね。


 このデッキが今回勝てた最大の要因は、環境に墓地対策が少なかったことが挙げられるでしょう。モダンのデッキはどれも地力が高いので、メタゲームに隙ができれば優勝をさらっていけるようなものばかりだと感じています。そのため、デッキ選択やサイドボードカードの取捨選択が非常に重要で、今回であれば墓地対策が《墓掘りの檻》に傾いていたことも、このデッキにとって追い風だったと思います。《墓掘りの檻》は、《カラスの罪》《炎の突き》は止まってしまうものの、肝心要の《壌土からの生命》に対して効果がないので、その他の墓地対策、例えば《根絶》《大祖始の遺産》なんかと比べるとかなり楽ですからね。今後も墓地対策が《墓掘りの檻》という状況が続くようであれば、このデッキにとっては好都合ですが、逆にその他のデッキは「Aggro Loam」を意識するのならば、墓地対策を《墓掘りの檻》から他のものに変える必要があるでしょう。



~コンボの代名詞・メリーラ頑強~




「メリーラ頑強」/ Andrew Cuneo
Grand Prix Lincoln 2012 -準優勝

4 《森》
1 《沼》
4 《新緑の地下墓地》
4 《霧深い雨林》
2 《草むした墓》
1 《寺院の庭》
1 《神無き祭殿》
2 《森林の墓地》
1 《剃刀境の茂み》
1 《地平線の梢》
1 《ドライアドの東屋》
1 《ゴルガリの腐敗農場》

-土地(23)-
4 《極楽鳥》
3 《臓物の予見者》
1 《貴族の教主》
4 《根の壁》
3 《シルヴォクののけ者、メリーラ》
1 《調和スリヴァー》
1 《永遠の証人》
1 《残忍なレッドキャップ》
1 《納墓の総督》
1 《イーオスのレインジャー》
1 《静寂の守り手、リンヴァーラ》
1 《ファイレクシアの変形者》
1 《目覚ましヒバリ》
1 《不浄なる者、ミケウス》
-クリーチャー(28)-
2 《思考囲い》
4 《出産の殻》
3 《召喚の調べ》

-呪文(9)-
2 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《戦争の報い、禍汰奇》
1 《クァーサルの群れ魔道士》
1 《オルゾフの司教》
1 《大爆発の魔道士》
1 《強情なベイロス》
1 《最後のトロール、スラーン》
1 《叫び大口》
2 《思考囲い》2 《四肢切断》2 《大渦の脈動》

-サイドボード(15)-
hareruya




 今現在最も勢いのあるコンボデッキこそが、《シルヴォクののけ者、メリーラ》を使用したこのデッキ。
そのコンボを完成させるには3枚のカードが必要で、ひとつめはクリーチャーを生け贄に捧げることのできる《臓物の予見者》。ふたつめはデッキ名にもなっている《シルヴォクののけ者、メリーラ》。そしてみっつめは「戦場に出た時」にライフを獲得できる《台所の嫌がらせ屋》です。

 コンボの仕組みは至ってシンプルで、上記3枚のカードが揃ったならば準備完了。

1・《臓物の予見者》《台所の嫌がらせ屋》を生け贄に捧げる。

2・《台所の嫌がらせ屋》の「頑強」能力により、《台所の嫌がらせ屋》が戦場に戻ってきます。この際に、普通であれば-1/-1カウンターが乗って戻ってくるのですが、《シルヴォクののけ者、メリーラ》の「あなたのクリーチャーの上には-1/-1カウンターが配置できない」能力のおかげで、《台所の嫌がらせ屋》は健康な3/2の状態で戦場に戻ります。

3・あとは望む回数《台所の嫌がらせ屋》《臓物の予見者》で生け贄に捧げれば、あなたは好きなだけライフを獲得することが可能で、《臓物の予見者》の「占術」を好きなだけ繰り返すこともできるので、ライブラリーのトップを好きなカードにした状態で次のターンを迎えることができるのです。

 このコンボの《台所の嫌がらせ屋》が、《残忍なレッドキャップ》になれば無限ライフではなく無限ダメージになるので、即座にゲームに勝つことができます。

シルヴォクののけ者、メリーラ臓物の予見者台所の嫌がらせ屋


 クリーチャー3枚を必要とするコンボと言ってしまえば、不安定に聞こえるかもしれませんが、《出産の殻》《召喚の調べ》を利用することで、驚くほど簡単に揃えられるのがこのコンボの強みです。《出産の殻》でピンときた方もいらっしゃるかと思いますが、仮にコンボパーツが揃わなくとも、《出産の殻》を用いたボードコントロールだけでも、ゲームを掌握することができます。特にコンボパーツのひとつである《台所の嫌がらせ屋》がビートダウンに強いクリーチャーであるため、クリーチャーデッキには相性がいいですね。それもそのはず、《根の壁》《台所の嫌がらせ屋》《イーオスのレインジャー》《目覚ましヒバリ》など、ビートダウンデッキが嫌がるカードが各マナ域にズラリと名を連ねていますからね。それらを《出産の殻》でうまく使いまわせば、戦場のコントロールは比較的簡単に行えるので、あとは対戦相手が隙を見せたところでコンボを決めれば良いだけです。

 《出産の殻》《召喚の調べ》が入っているので、1枚差しが多く、調整の難しいデッキになっていますが、そのぶん調整のしがいは抜群で、練習をやればやるほど結果に結び付きやすい、やり込み系のデッキだと思います。最後に、マナ域別の注目カードを紹介して次のデッキに移りましょう。


《オルゾフの司教》
 タフネス1をまとめて排除できる優れ物。「青赤ストーム」の《巣穴からの総出》トークンや、「親和」デッキのタフネス1軍団を1枚で対処できるので、少なくともサイドボードには用意しておきたい1枚。ミラーマッチでも、相手のコンボが始まってしまった時にこれを《召喚の調べ》から導けば、対戦相手の《臓物の予見者》が全滅するため、相手のコンボを止めることができます。


《静寂の守り手、リンヴァーラ》
 ミラーマッチのコンボを止められる優秀なクリーチャー。それだけではなく、《詐欺師の総督》+《欠片の双子》だったり、《出産の殻》を狙う《クァーサルの群れ魔道士》や、《極楽鳥》《根の壁》のマナ能力など、実に様々な局面で役に立ちます。《静寂の守り手、リンヴァーラ》はサイドボード要因とされることが多いのですが、ミラーマッチの多い現状であれば、メインボードに入れることを強くお勧めします。


《目覚ましヒバリ》
 5マナ域の固定パーツ。他の5マナ域は、人によって《酸のスライム》《叫び大口》《影武者》とばらけていますが、《目覚ましヒバリ》だけは別格です。《臓物の予見者》《シルヴォクののけ者、メリーラ》を一度に回収できるので、1枚でコンボ完成にリーチがかかりますし、コンボを度外視しても、《目覚ましヒバリ》の稼ぎだすアドバンテージは非常に強力です。消耗戦のあとに出せば、ビートダウンはそれだけで根を上げるでしょうし、対コントロール戦でも、このクリーチャー回収能力はもちろん役に立ちます。パワーが4と殺傷能力も十分なので、対戦相手からしてみれば、無視するわけにもいかない非常に厄介な存在。


《不浄なる者、ミケウス》
 自軍に圧倒的な戦闘能力を授けてくれる新戦力。《ファイレクシアの変形者》《目覚ましヒバリ》に「不死」能力が付くと、それだけでもすごいことになりますが、《不浄なる者、ミケウス》《シルヴォクののけ者、メリーラ》の代わりの役割までもはたしてくれます。先ほど紹介した無限コンボのパーツの《シルヴォクののけ者、メリーラ/Melira, Sylvok utcast》を《不浄なる者、ミケウス》に置き換えると、-1/-1カウンターが乗っていれば「不死」が、+1/+1カウンターが乗っていれば「頑強」が誘発するため、全く同じ手順で無限コンボを決めることができるんです。6マナ域は《太陽のタイタン》とどちらにするか悩ましいところではありますが、《月皇ミケウス》もなかなかのやり手なので、ぜひ一度お試しください。


《大渦の脈動》
 今現在相当な勢いで勝ち星を重ねているこのデッキは、実に様々なカードで対策されています。具体的には《墓掘りの檻》《抑制の場》《倦怠の宝珠》《減衰のマトリックス》といった辺りですね。対戦相手がどれを採用しているか知っていれば、《クァーサルの群れ魔道士》《調和スリヴァー》で的確に対処できるでしょうが、それを当てるのは至難の業で、そこで重宝するのが《大渦の脈動》というわけですね。《大渦の脈動》さえあれば、パーマネントなら何にでも対処できるので、上記のような問題とはおさらばできます。ただの《帰化》系のカードではなく、クリーチャー除去にもなる《大渦の脈動》を採用することで、ビートダウンデッキ相手にもサイドインできるようになっています。どんなデッキがどんな対策カードを入れてくるか判断しかねる状況が多いので、こういった手広いカード選択は重要ですし、とても参考になりますね。


~これぞコントロール・各種トロン~


「青白トロン」/ Luis Scott-Vargas
Grand Prix Lincoln 2012 -3位

1 《島》
4 《天界の列柱》
3 《氷河の城砦》
3 《神聖なる泉》
4 《ウルザの塔》
4 《ウルザの魔力炉》
4 《ウルザの鉱山》
1 《トレイリア西部》
1 《ウギンの目》

-土地(25)-
1 《大修道士、エリシュ・ノーン》
1 《エメリアの盾、イオナ》
1 《無限に廻るもの、ウラモグ》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
-クリーチャー(4)-
4 《流刑への道》
3 《探検の地図》
4 《差し戻し》
4 《アゾリウスの印鑑》
1 《発展のタリスマン》
4 《知識の渇望》
1 《忘却の輪》
1 《機を見た援軍》
4 《けちな贈り物》
1 《神の怒り》
1 《審判の日》
1 《堀葬の儀式》
1 《卑下》
1 《撤廃》

-呪文(31)-
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《ワームとぐろエンジン》
1 《否定の契約》
2 《墓掘りの檻》
2 《払拭》
2 《天界の粛清》
1 《解呪》
1 《否認》
2 《機を見た援軍》
1 《亡霊の牢獄》
1 《法の定め》

-サイドボード(15)-
hareruya



 コントロール大好きLSVことLuis Scott-Vargasが使用したのが、こちらの「青白トロン」。序盤は《流刑への道》《差し戻し》といったカードでやりくりし、《探検の地図》《けちな贈り物》などを駆使して《ウルザの塔》《ウルザの魔力炉》《ウルザの鉱山》という3種類の「ウルザランド」を揃えることを目指すデッキです。

ウルザの塔ウルザの魔力炉ウルザの鉱山



 一度「ウルザランド」が揃ってしまえば、その膨大なマナを生かして《エメリアの盾、イオナ》なり《引き裂かれし永劫、エムラクール》なりで速やかにゲームを終わらせることができます。昨年までは《雲上の座》+《ヴェズーヴァ》が幅を利かせていたので、「ウルザランド」に日の目が当たることはありませんでしたが、《雲上の座》の禁止を受け、久しぶりに「ウルザランド」がトーナメントシーンに戻ってきました。昔の「ウルザトロン」デッキと比較してみると、《探検の地図》のおかげで昔よりも「ウルザランド」が揃う確率が高まっていますし、そのおかげで《トレイリア西部》を減らすことができるようになり、その枠に《天界の列柱》《金属海の沿岸》といった色マナソースを投入することで、様々な面で安定性が大きく向上しています。そして《けちな贈り物》も「ウルザランド」を揃えることに長けており、こちらはそれだけにとどまらず、フィニッシュの役割も担うこのデッキの核です。ここでは《けちな贈り物》のサーチの仕方を少しだけですが、ご紹介させていただきます。

けちな贈り物


ケース1・「ウルザランド」が1種類しかない場合 まずは基礎である「ウルザランド」を揃える場合。これは至極簡単なもので、残りの「ウルザランド」2種類、《トレイリア西部》《探検の地図》と持ってくればどうやっても「ウルザランド」が揃います。手札が強くてマナさえあれば、なんて状況だとこれを選ぶことになりますね。


ケース2・「ウルザランド」が2種類ある場合 残りの「ウルザランド」、《トレイリア西部》《探検の地図》、何か強力なカード1枚。こうすれば概ね土地2枚か、土地と《探検の地図》の組み合わせが手札にくるはずなので、「ウルザランド」が揃うだけでなく、《ウギンの目》も最終的に手に入れることができます。あとはエルドラージクリーチャーを持ってくればフィニッシュという寸法です。


ケース3・「ウルザランド」が1種類もない場合 以前であれば、この状況だとその場に合わせた4枚(除去4種など)を選ぶしかなかったのですが、LSVは《堀葬の儀式》システムを組み込むことで、これを打破しています。《けちな贈り物》には「カードを探す」と書いてあるので、4枚フルに探す必要はなく、1枚だけだったり3枚だけを提示することが可能です。そのため、《けちな贈り物》《堀葬の儀式》+《大修道士、エリシュ・ノーン》or《エメリアの盾、イオナ》とサーチすれば、《堀葬の儀式》とそのクリーチャーは強制的に墓地に落ちるので、すぐさま《堀葬の儀式》の「フラッシュバック」へと繋げられるんです。これは「ウルザランド」が揃っていようとも候補に挙がる探し方なので、《大修道士、エリシュ・ノーン》で相手の戦場が壊滅する場合や、相手のデッキが単色だったり除去が1色しかない状況ならば《エメリアの盾、イオナ》を釣り上げるといったことを常に意識しておくようにしましょう。黒マナが入っていないので《堀葬の儀式》を手札からキャストすることは叶いませんが、もしも手札にきてしまったら《知識の渇望》で捨てればいいだけなので、そこまで大きな問題にはなりませんね。《大修道士、エリシュ・ノーン》は特に「メリーラ頑強」に効果覿面で、《エメリアの盾、イオナ》は「ジャンド」のように確定除去が1色しかないデッキ相手に頼りになります。このテクニックは《けちな贈り物》が入っているデッキであれば、白マナを少し入れておくだけで実行できるので、「ウルザトロン」デッキに限らず、色んなデッキで活用できるものだと思います。


 上記のケースは比較的簡単なものですが、《けちな贈り物》は本当に難しいカードです。文章にするのが難しいのですが、使うコツとしては、あなたが本当に欲しいカードを悟られないようにすることでしょうか。例えば手札に《流刑への道》《けちな贈り物》があって、あなたの戦場に5マナがあったとします。そこで相手の戦闘中に1マナを起こして《けちな贈り物》をキャストし、《流刑への道》、他のカード3枚(手札にきてほしいカード)とサーチした場合、相手の視点で見るとあなたが求めているカードは《流刑への道》だと錯覚させられる可能性が高いです。他にも手札に「ウルザランド」が揃っている状態で、軽いカード、軽いカード、重いカード、重いカードとサーチすれば、「ウルザランド」が揃っているかどうか分からない相手は渡すカード選択に苦労するはずですし、とにかく相手に情報を与えないことが大切だと思います。困ったら《堀葬の儀式》システムに頼れるようになったので、以前よりは難しい局面が減ったとは思いますが、大会に出る前には《けちな贈り物》の練習はしっかりとしておくといいでしょう。

 それと「ウルザトロン」系のデッキがかなり増えてきたので、今後はそれを加味して《地盤の際》を入れておきたいですね。単体で使用してもそれなりの強さがありますが、《世界のるつぼ》と併用して延々と土地を壊すプランもいいですね。

 トップ8のデッキ解説は以上になるのですが、最後に青白以外の「ウルザトロン」を紹介してお別れしましょう。


「青赤トロン」/ TKC55
Modern Daily #3428223 on 02/19/2012 -4-0

2 《島》
1 《山》
4 《沸騰する小湖》
2 《シヴの浅瀬》
2 《蒸気孔》
1 《繁殖池》
4 《ウルザの塔》
4 《ウルザの魔力炉》
4 《ウルザの鉱山》
1 《トレイリア西部》
1 《ウギンの目》

-土地(26)-
1 《真実の解体者、コジレック》
1 《無限に廻るもの、ウラモグ》
2 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
-クリーチャー(4)-
4 《探検の地図》
4 《イゼットの印鑑》
4 《紅蓮地獄》
4 《差し戻し》
4 《知識の渇望》
3 《けちな贈り物》
4 《裂け目の突破》
1 《精神隷属器》
2 《撤廃》

-呪文(30)-
3 《ワームとぐろエンジン》
3 《大祖始の遺産》
3 《払拭》
4 《古えの遺恨》
2 《焼却》

-サイドボード(15)-
hareruya



 こちらは2色目に赤を選んだリストです。白が入っていない=《堀葬の儀式》システムが採用できないため、青白バージョンほど《けちな贈り物》は器用ではありませんが、それでも「ウルザランド」を揃えることができるので、この手のデッキだと鉄板のカードですね。

 赤の魅力は《紅蓮地獄》のような軽量除去と、カウンター以外ではほぼ対処できない《裂け目の突破》が使えること。前者は「親和」デッキや「メリーラ頑強」なんかに対して効果なカードで、《紅蓮地獄》以外にも《稲妻》《電解》といった優秀なカードが控えています。とは言え除去は白にもある要素なので、やはり赤を選ぶ最大の理由は《裂け目の突破》にあると言っていいでしょう。前述の通り、カウンター以外の呪文ではほとんど防ぐことができないカードなので、そこから走ってくるエルドラージクリーチャーは一撃必殺になりえます。

 サイドボードに《古えの遺恨》《焼却》などが搭載できますし、メタゲーム上に「親和」や「青赤《欠片の双子》」デッキが多いと思うのであれば、青赤バージョンを選ぶのもありだと思います。



「緑単トロン」/ Golliher
Modern Daily #3456776 on 02/24/2012 -4-0

12 《森》
4 《ウルザの塔》
4 《ウルザの魔力炉》
4 《ウルザの鉱山》
1 《幽霊街》
1 《すべてを護るもの、母聖樹》
1 《ウギンの目》

-土地(27)-
4 《草茂る胸壁》
4 《根の壁》
2 《ムル・ダヤの巫女》
1 《炎の血族の盲信者》
3 《原始のタイタン》
1 《無限に廻るもの、ウラモグ》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
-クリーチャー(16)-
4 《探検の地図》
4 《探検》
2 《森の占術》
3 《内にいる獣》
4 《歯と爪》

-呪文(17)-
4 《強情なベイロス》
4 《大祖始の遺産》
3 《原基の印章》
4 《忍び寄る腐食》

-サイドボード(15)-
hareruya



 最後は昔懐かし《歯と爪》の入った緑単色のバージョンを。フィニッシュも《歯と爪》「双呪」からの《引き裂かれし永劫、エムラクール》+《炎の血族の盲信者》と豪快ですし、マナ加速と《歯と爪》しか入っていないような大胆なデッキですが、「ウルザトロン」対決に強い《内にいる獣》だったり、カウンター呪文を無に帰す《すべてを護るもの、母聖樹》だったりと、要所要所に繊細なカード選択が光ります。このリストには《ムル・ダヤの巫女》が2枚しか入っていませんが、思いの外強力なカードだったので、《森の占術》か何かを減らして増量を検討してもいいでしょう。緑系の「ウルザトロン」の長所は、《森の占術》のおかげで「ウルザランド」が揃いやすいことだったのですが、《探検の地図》の登場により、少しばかり緑を選ぶ理由が減ってしまった気もしますが、《トリスケリオン》+《不浄なる者、ミケウス》だったり、《鏡割りのキキジキ》+《荒廃鋼の巨像》だったりと、《歯と爪》は夢の詰まったカードなので、ティミー系のみなさんにはぜひともお試しいただきたいデッキですね。


 第2回は以上になります。改めまして、今回の記事の掲載が遅れてしまったことをお詫びいたします。次回は今月中に掲載予定なので、遅れのないよう気を引き締めて取り組みたいと思います。次回はグランプリ・リンカーンの初日全勝デッキなどをお届けの予定です。それでは、また次回の連載で。