シールド攻略という、比較的マイナーなコンセプトの記事にしては、望外の反応があったと言える。
そう、シールドはスタンダードやドラフトといった花形に比べると確かに華やかさに欠けるが。
リミテッドのグランプリ初日やPTQの予選ラウンドなどで勝ちあがるには、決して疎かにできないフォーマットなのだ。
だからこそ、言語化して残しておきたい。
たとえ試みとしての拙い構成でも。後に「シールドの記事といえばこれは外せない」と言われるような、参照すべきアーカイブとして。
シールドの構築技術を。今この時代を生きるプレイヤーたちの思考を、その輝きを。
余すところなく、
伝えたいのだ。
……といった前置きは、Part2ともなればもはや不要だろうか。
いずれにせよ、記事の趣旨や形式については既に十分ご理解いただけたものと信じている。
さて。
それでは早速、第2回目のカードプールを見ていこう。
1.Drowned in the Sealed pool
1 《希望の幻霊》 1 《鋤引きの雄牛》 1 《レオニンの投網使い》 1 《旅する哲人》 2 《乗騎ペガサス》 1 《ラゴンナ団の長老》 1 《エイスリオスの学者》 1 《ヘリオッドの選抜》 1 《ヘリオッドの試練》 -白(10)- 1 《トリトンの岸盗人》 1 《海の神、タッサ》 2 《記憶の壁》 1 《海檻の怪物》 1 《水底の巨人》 2 《地平の識者》 1 《液態化》 1 《迷宮での迷子》 1 《予記された運命》 1 《航海の終わり》 1 《捕海》 1 《海神の復讐》 -青(14)- |
2 《苛まれし英雄》 1 《蘇りし者の密集軍》 1 《悪意の幻霊》 1 《肉餓えの馬》 1 《血集りのハーピー》 1 《悪魔の皮のミノタウルス》 1 《蘇りしケンタウルス》 1 《毒々しいカトブレパス》 1 《闇の裏切り》 1 《毒蛇座の口づけ》 2 《ファリカの療法》 1 《殺し屋の行動》 1 《鞭の一振り》 -黒(15)- 1 《死呻きの略奪者》 1 《サテュロスの散策者》 1 《炎語りの達人》 1 《ミノタウルスの頭蓋断ち》 2 《槍先のオリアード》 2 《国境地帯のミノタウルス》 1 《ドラゴンのマントル》 1 《伝書使の素早さ》 1 《火花の衝撃》 2 《タイタンの力》 2 《稲妻の一撃》 1 《マグマの噴流》 1 《パーフォロスの激怒》 -赤(17)- |
1 《サテュロスの享楽者》 2 《旅するサテュロス》 1 《恭しき狩人》 2 《サテュロスの笛吹き》 1 《信条の戦士》 1 《ネシアンのアスプ》 1 《巨体の狐》 1 《ナイレアの存在》 1 《神々との融和》 2 《蛮族の血気》 2 《残忍な発動》 -緑(15)- 1 《青銅の黒貂》 1 《戦識の重装歩兵》 2 《乳白色の一角獣》 1 《魔心のキマイラ》 1 《金床鋳込みの猛禽》 1 《荒野の収穫者》 1 《ファリカの癒し人》 1 《死の国の歩哨》 1 《灰燼の乗り手》 1 《伏魔殿のピュクシス》 1 《神秘の神殿》 1 《未知の岸》 -多色・アーティファクト・土地(13)- |
前回のように目が覚めるレアはないものの、《海の神、タッサ》《荒野の収穫者》《灰燼の乗り手》など、各色に強力なカードが散らばって、何とも悩ましいプールである。
こんなプールをもし仮にグランプリやPTQでもらったとしたら、制限時間を目いっぱい使ってああでもないこうでもないと苦悩してしまいそうだ。
しかし、だからこそ意見を聞く価値がある。
さて、この難題にどう立ち向かうべきだろうか?
「自分なら〇×タッチ△だな」というような回答を用意していただけただろうか。
では、今回のゲスト2名の回答へと移ろう。
2.Kitayama’s answer
Stardust Crusaders、日本選手権07。とくればもうこの人物しかいない。
最近でも2297人もの参加者を記録したグランプリ・横浜13で、その頂点に立ったばかりのリミテッドマスター。
王者の中の王者。
北山 雅也 (神奈川)。
ラヴニカに続けて、テーロスでも環境の覇者となるか。
--「北山さんはこの環境のシールドの経験は何回ほどおありですか?」
北山 「MOも合わせて2,30回というところでしょうか」
--「その経験に照らして、このプールは100点満点で何点くらいのプールでしょうか?」
北山 「80点ですね。PTQでもらったらまあまあ嬉しいプールだと思います。お持ち帰りレア(《海の神、タッサ》)もありますし」
--「なるほど。では、北山さんの構築手順をお聞かせください」
北山 「各色全部眺めてみて、ダメな色を把握する感じですね。今回だと、とりあえず白はないかなと思いました」
--「そうするとまずは青黒赤緑からメインカラーを選ぶ感じになりますね」
北山 「あとはマルチの強いカードが多いのが難しいです。目についたのは赤のスペルで、やはりシールドは除去があってナンボなので、できれば使いたいところです。次に緑黒のマルチカード2種、そして《旅するサテュロス》が2枚あるということで、赤緑ベースを基本路線にしてみようかと思いました。緑黒のマルチカードはタッチでも使えますしね」
--「他の色はメインカラーにはならなかったんでしょうか?」
北山 「赤黒も並べてみましたけど、いまひとつというところですね。アンコモンとレアが足りないし、スペル過多なのも気になります」
--「タッチについてはどうでしょう?」
北山 「赤緑2色でもまとめられるとは思いますが、マナサポートもありますし、シールドなので多少無理してでも強いカードを入れたいです。序盤を支えられるなら多色も全然ありだと思っているので」
--「それでこのデッキが出来たというわけですか」
7 《森》 7 《山》 1 《神秘の神殿》 1 《未知の岸》 -土地(16)- 2 《旅するサテュロス》 1 《死呻きの略奪者》 2 《槍先のオリアード》 2 《乳白色の一角獣》 1 《炎語りの達人》 2 《国境地帯のミノタウルス》 1 《信条の戦士》 1 《荒野の収穫者》 1 《ネシアンのアスプ》 1 《ファリカの癒し人》 1 《巨体の狐》 -クリーチャー(15)- |
2 《稲妻の一撃》 1 《マグマの噴流》 1 《捕海》 1 《パーフォロスの激怒》 1 《海神の復讐》 1 《ナイレアの存在》 2 《残忍な発動》 -呪文(9)- | -サイドボード(0)- |
--「結構頑張ってタッチしてますね。《乳白色の一角獣》もフル投入ですか」
北山 「《乳白色の一角獣》ラブなんですよ。占術土地もありますし、青は入れ得ですね。黒はなくても組めるとは思いますが、《乳白色の一角獣》2枚に《ナイレアの存在》《未知の岸》という時点で、3色も4色も大して変わらないと思いました」
--「赤の前のめりな生物や《残忍な発動》を採用している割には、ビートダウンっぽくない構成ですね」
北山 「もっとビートっぽく組むプランもありえますが、《ミノタウルスの頭蓋断ち》のようなカードはあまり評価してないので。それにシールドは長引くゲームもありますし、後半引いてがっかりするようなカードは入れたくないです。序盤、中盤、終盤、隙がないというようなデッキにしたいですね」
--「シールド経験が多いとのことでお聞きしたいのですが、この環境で相手にしていてよく負けるデッキは、どんな色の組み合わせのデッキが多いですか?また、単によく当たる色もできれば教えてください」
北山 「よく負けるのはやはり青白『英雄的』と、軽い生物と除去が揃った赤黒ですかね。よく当たるのは、青緑が多いです。やはりこの環境は青が頭一つ抜けてるので、プールをもらったらまず青のカードはチェックしますね」
--「それでいうと、このデッキはそういった青白や赤黒に対しても立ち回れるんでしょうか?また、先手と後手どちらを取りますか?」
北山 「このデッキは軽い除去もあるので、青白や赤黒のトップスピードにも対応できると思います。マナクリと除去、合わせて5枚のうちどれかが初手にあれば良いイメージですね。先手と後手はどちらでも戦えるデッキですが、選択権があったらやはり先手を取ります」
--「ありがとうございました」
赤緑の地上ビッグサイズクリーチャーを主体にしつつ、豊潤なマナベースによるタッチカードで決定力を確保しにいった北山。
北山 「ライザのことだから《伏魔殿のピュクシス》とかもワンチャン……?いやでもさすがになー……」
なんだか企画の趣旨を間違えているような気もするが。
北山 「いや、でもちゃんと本気で組みましたから!」
3.Nakajima’s answer
マジックも歴史を重ね、今や20周年。
日本のプロマジック黎明期を知るプレイヤーも、もはや少なくなった。
そんな中で、マジックとともに青春を駆け抜け、マジックとともに年を取った男がいる。
齢30を超えてなおプレイヤーとしても壮健。モダンで行われたプロツアー・フィラデルフィア11でのトップ4入賞は記憶に新しい。
マジック界の生き字引。八王子四天王の一人。
中島 主税 (東京)。
現役プレイヤーの中では最も多くのエキスパンションでのシールドを経験したであろう中島は、はたしていかなる境地に至っているのか。
--「この環境のシールドは何回くらい経験がありますか?また、このプールは100点満点で何点くらいでしょうか?」
中島 「シールドは10回くらいですかね。プールは弱いと思いますよ。60点くらいかな」
--「では、中島さんのシールド構築手法を教えてください」
中島 「まず各色デッキに入らないカードを弾いて、枚数を確認します。この時点で極端に枚数が少なくなった色は使わないですね。で、ここからが僕独自の理論があるんですが」
--「と、言いますと?」
中島 「僕、色事故するのがめちゃめちゃ嫌いなんですよね。あと手札にキャストできない呪文が延々と鎮座し続けるのも嫌で、とにかくストレスをためたくないという考えがあるんですよ。なので、シールドにおいても極力、二色での構築を心がけます」
--「じゃあタッチもあまりしない感じなんですね。でも二色縛りということは、かなりビート寄りになっちゃいませんか?シールドでビートを組むということについて、抵抗はないんでしょうか」
中島 「そうですね、ビートダウンが多いです。シールドでビートダウンを組むことにも、抵抗は全くないですね。特にこの環境は除去が弱く、『授与』などで押し切りやすいので、ビート優位だと思いますし」
--「サイド後も、相手によって色を変えたりはしないんでしょうか?」
中島 「ほとんどしないですね。相手もビート対策カードを2~3枚は入れてくるでしょうが、それが勝率を大きく変えるものでもないと考えています」
--「なるほど。ではそれでいくと、このプールはどのように二色を選ぶんでしょうか?」
中島 「クリーチャーの総数がやはり決め手になりますね。14より少ないようではデッキになりません」
--「そうすると白と青は真っ先に切れますね」
中島 「そうですね。そして次に赤も、頭数は揃っていますが、ちょっと軽すぎるというか、重いところの生物が1枚もなくて、微妙な感じですね」
--「となると・・・・・・」
中島 「はい、マルチの強力カード《荒野の収穫者》が使える、緑黒になりました」
8 《沼》 7 《森》 1 《神秘の神殿》 -土地(16)- 2 《苛まれし英雄》 2 《旅するサテュロス》 1 《悪意の幻霊》 1 《肉餓えの馬》 1 《蘇りし者の密集軍》 1 《悪魔の皮のミノタウルス》 1 《恭しき狩人》 1 《血集りのハーピー》 1 《信条の戦士》 1 《荒野の収穫者》 1 《ネシアンのアスプ》 1 《ファリカの癒し人》 1 《巨体の狐》 -クリーチャー(15)- |
2 《蛮族の血気》 2 《ファリカの療法》 1 《鞭の一振り》 1 《海神の復讐》 1 《ナイレアの存在》 2 《残忍な発動》 -呪文(9)- | -サイドボード(0)- |
--「今回はタッチはしてるんですね」
中島 「自分の中ではかなり例外的なケースですね。占術土地と《ナイレアの存在》があり、シングルシンボルのしかもボムといっていいカードということもあって、これらの条件が重なった結果タッチという判断になりました」
--「ありがとうございました」
同じ緑を採用しながらも、北山とは違う『ビートダウン』という明確なコンセプトを打ち出してきた中島。
中島 「とにかく事故りにくい二色のビートダウンを使って、精神に負担をかけないが僕のコンセプトなので。まあ、ビートダウンキャラでもありますしね」
確かに中島には、ビートダウンがよく似合う。
4.and yours?
さて。
いかがだっただろうか・・・・・・という前に。
今回のシールドプールにも、実はコンセプトがある。
それは、
シールドにおいてメインからビートダウンを組むべきか?ということだ。
あるいは、シールドのメインデッキはどのような速度に設定するのが適切なのか、と言い換えてもいい。
よく「シールドなら熊(2マナ2/2)はデッキに入らない」なんて言われるところだが、それは正しいのだろうか。
読者の方々も是非このテーマに向き合って、自分なりの結論を導いてみて欲しい。
そして、この記事への感想、自分ならばこう組んだというアイディア、北山や中島の構築についての意見などがもしあれば。
例によってこの記事へのコメントに寄せてくれると嬉しい。
それでは、また次回。
See you!
5.rizer’s answer -Theros Sealed- Part2
こちらをご覧ください!!
さらに。
ここでお知らせがある。
11月30日までの間、晴れる屋トーナメントセンターでは何と。
今回の記事で題材となったシールドプールの店内貸し出しを行っている。※終了しました
さらに、第1回のシールドプールの店内貸し出しも、好評につき11月いっぱいまで延長することとなった。
これであなたが考えたデッキの一人回しが、いや第1回と今回のデッキの対戦だって可能だ。
友達と一緒に借りて、どのような構築が良いか議論するのもオススメだ。
「テーロスシールドの練習がしたい」「実物のカードを並べて考えてみたい」「作ったデッキを実際に回してみたい」といった方は。
トーナメントセンターにご来店の際、大会受付カウンターにてスタッフにお気軽にお尋ねください。