グランプリ静岡まであと1か月半ほど。
皆さん、シールドの練習は進んでいるだろうか。
私はといえば、Magic Onlineでここのところ毎週行われているリミテッドPTQのプレリミナリ5回戦で3-2を繰り返して心が折れそうになっているといった具合である。
もしこれがグランプリだったら初日落ち濃厚だろう。
私の成績がどうという話ではないが、この環境のシールドは難しいと思う。
コモンの多色土地が選択肢を極限まで押し広げ、マルチカラーの変異やレアが「タッチして!」と言わんばかりにアピールしてくる。
どんなに強力なデッキが組めたと思っても、色事故を起こして負けてしまうこともしばしば。
かなり練習してコツを掴まなければ、安定して勝ちきることは極めて難しい。そんな印象だ。
だからこそ。
我々は知らなければならない。巧者のテクニックを。先人たちの知恵を。
シールドは決して運ゲーではない。
勝利には理由がある。敗北には理由がある。
シールドで毎回のように勝つプレイヤーがいるとすれば。そこには強者を強者たらしめている、より普遍的な「シールドの構築技術」があるはずなのだ。
2人のゲストと1人のシールド神の力を借りて、それを解き明かしにいく。
早速始めよう。
1.Re:Challenge to a sealed pool
1 《炎蹄の騎兵》 1 《アイノクの盟族》 1 《道の探求者》 1 《休息地の見張り》 1 《雪花石の麒麟》 1 《アブザンの戦僧侶》 1 《塩路の巡回兵》 1 《まばゆい塁壁》 1 《果敢な一撃》 1 《必殺の一射》 1 《戦場での猛進》 1 《包囲戦法》 -白(12)- 1 《湿地帯の水鹿》 1 《湯熱の精》 1 《隠道の神秘家》 1 《河水環の曲芸士》 2 《引き剥がし》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《運命編み》 1 《宝船の巡航》 -青(10)- |
1 《縁切られた先祖》 1 《グルマグの速翼》 1 《マルドゥの頭蓋狩り》 1 《ケルゥの吸血者》 1 《不気味な腸卜師》 1 《不撓のクルーマ》 1 《朽ちゆくマストドン》 1 《ケルゥの戦慄の大口》 1 《血蠅の大群》 1 《スゥルタイのゴミあさり》 1 《よろめく従者》 1 《ラクシャーサの秘密》 1 《苦々しい天啓》 1 《絞首》 1 《大蛇の儀式》 1 《略奪者の戦利品》 -黒(16)- 1 《僧院の速槍》 1 《跳躍の達人》 1 《沸血の熟練者》 2 《山頂をうろつくもの》 1 《マルドゥの戦叫び》 1 《粉砕》 1 《苦しめる声》 1 《反逆の行動》 1 《弧状の稲妻》 2 《矢の嵐》 1 《焼き払い》 -赤(13)- |
1 《族樹の管理人》 1 《射手の胸壁》 1 《スゥルタイの剥ぎ取り》 2 《サグの射手》 1 《大牙コロッソドン》 1 《長毛ロクソドン》 1 《暴風》 1 《帰化》 1 《龍鱗の加護》 1 《神秘の痕跡》 -緑(11)- 1 《ラクシャーサの死与え》 1 《高峰のカマキリ》 1 《スゥルタイの占い屋》 2 《雪角の乗り手》 1 《イフリートの武器熟練者》 1 《サグのやっかいもの》 1 《ティムールの隆盛》 1 《幽霊火の刃》 1 《頭蓋書庫》 1 《アブザンの戦旗》 1 《マルドゥの戦旗》 2 《スゥルタイの戦旗》 1 《血溜まりの洞窟》 1 《ジャングルのうろ穴》 1 《華やかな宮殿》 1 《岩だらけの高地》 1 《精霊龍の墓》 1 《平穏な入り江》 1 《風に削られた岩山》 1 《山》Foil -多色・アーティファクト・土地(22)- |
え、こんなに簡単でいいの?と思われるかもしれない。
『タルキール覇王譚』環境の初回ということもあり、あまり難しいプールは避けた方がいいと思って、メインカラー選択自体はそれほど悩まないプールを選んだつもりだ。
だが、シールドの組み方は人それぞれ。このプールでも様々な選択肢が考えられるし、仮にメインカラーが一緒でも、40枚全てが一緒とは限らない。
是非1枚1枚吟味して、最良のデッキを探してみて欲しい。
自分の中に「これが正解だ!」という40枚を思い描いていただけただろうか。
では、今回のゲスト2名の回答へと移ろう。
2.Takahashi’s answer
まず1人目は、幾多の敗北を乗り越えてなお立ち上がる「不屈のストイシズム」。
高橋 優太。
一体高橋はこの環境をどのように捉え、どのようなデッキを構築したのか。
--「まず高橋さんは、この環境のシールドにおいて先手後手はどちらの方が良いとお考えでしょうか?」
高橋 「断然後手ですね。先手を取るようなデッキはそもそも組みませんし、相手が先手を取ってくれたらラッキーと感じますね。サイド後なら先手デッキにすることはありえますが、メインはとにかく『より重く、よりでかく、そして除去の山』という風に組んだ方が良いと思います」
--「土地と『戦旗』の枚数については、いかがでしょう?定石のようなものがあるんでしょうか」
高橋 「定石かどうかはわかりませんが、土地17~18枚に『戦旗』1枚を入れることが多い気がしますね。余程プールの土地が強くない限り、『戦旗』は入れた方が良いと思います。ただ、この環境はスクリューと同じくらいフラッドで負けることもあるので、土地2枚で詰まりたくないからといってマナ関連のカードを多く入れすぎないように気を付けたいですね」
--「結構5色とかバンバン組む感じの環境なんでしょうか?」
高橋 「いや、そうでもないですね。強い『変異』ならタッチしますが、基本的には3色以内に収めたいです。『変異』については、『変異』を解除して弱くなるような《賢者眼の侵略者》《族樹の管理人》《シディシのペット》などはデッキに入れたくないですが、《長毛ロクソドン》《雪角の乗り手》《子馬乗り部隊》《グドゥルの嫌悪者》などはタッチしてでも使いたいですね。《イフリートの武器熟練者》はタッチしませんが……」
--「今回のプールに関しては、メインカラーの選択など、どのように検討しましたか?」
高橋 「これは簡単ですね。僕はメインカラーを白黒→緑黒→青緑の順に検討し、ダメそうなら最後に赤の使用を考えるというシステムを採用しています。この点、緑黒を組んだ段階でプールのレアを使い切れる上に十分強い形になるとわかるので、緑黒ベースが良いという結論になりました」
4 《森》 4 《沼》 4 《島》 1 《山》 1 《血溜まりの洞窟》 1 《ジャングルのうろ穴》 1 《岩だらけの高地》 1 《華やかな宮殿》 -土地(17)- 1 《縁切られた先祖》 1 《射手の胸壁》 1 《ラクシャーサの死与え》 1 《不気味な腸卜師》 1 《スゥルタイの剥ぎ取り》 1 《隠道の神秘家》 2 《サグの射手》 1 《スゥルタイの占い屋》 1 《サグのやっかいもの》 2 《雪角の乗り手》 1 《スゥルタイのゴミあさり》 1 《河水環の曲芸士》 1 《長毛ロクソドン》 -クリーチャー(15)- |
1 《ラクシャーサの秘密》 1 《苦々しい天啓》 1 《絞首》 1 《大蛇の儀式》 1 《宝船の巡航》 1 《神秘の痕跡》 1 《幽霊火の刃》 1 《スゥルタイの戦旗》 -呪文(8)- |
--「割と均等気味のマナベースなんですね。これなら《焼き払い》もタッチで入れられそうなものですが」
高橋 「メインカラーは2色に絞った方がいいですが、同時に同じ色の基本地形は入れすぎない方がいいというのもあります。メインカラーでもダブルシンボルのカードが無いならその色が出る土地が7枚あれば十分で、結局『変異』がプレイできればキープするのでそこまでメインの色マナに固執しない方がいいです。結局、同じ種類の基本地形だけ引くのが一番良くないので。《焼き払い》はこのマナベースだと絶対タッチしないですね。もう1~2枚赤マナソースがあればまた違うんですが……」
--「この環境はクリーチャーとスペルの比率的には、どれくらいが適正なんでしょうか?」
高橋 「今回のように、15 : 8 くらいが標準なのではないかと思います。14 : 9 はギリギリですね」
--「このデッキのスペルのチョイスについてはいかがでしょう」
高橋 「僕は《巨大化》系の呪文の評価が低くて、《龍鱗の加護》や《熊の覚醒》などはプレイに値しないと思っています。積極的に相打ちをとっていって、最後にでかいものが残る感じになるので、ハンデスやドローなどの手札の増減カードを優先して入れています」
--「マナカーブ的には3マナがかなり膨らんでいますが、《マルドゥの頭蓋狩り》などの2マナクリーチャーは入れないんでしょうか?」
高橋 「2マナ域以下の枚数はあまり気にしなくてもいいと考えています。2マナ2/2が生きるターンが2ターン目しかなく、それ以降は引いてもただ悪いカードなので、序盤はタップインを処理する方が重要です。先手ゲーで決まることはほとんどないので、入れていい2マナ域はコモンだと《縁切られた先祖》《射手の胸壁》《アイノクの盟族》《マルドゥの悪刃》くらいかと」
--「《神秘の痕跡》と《宝船の巡航》の評価はどの程度なんでしょうか?」
高橋 「《神秘の痕跡》は端的に言ってボムですね。後半引いたときに腐るリスクはありますが、それを差し引いてもリターンの方がはるかに大きいと思います。《宝船の巡航》もほぼ常にタッチする強力なカードという評価ですね。このデッキだと墓地も肥えやすいので『探査』もしやすいですし」
--「ありがとうございました」
「ジャイグロよりも手札の増減カード」という言葉が示すように、高橋はシールドの基本に忠実でかなりアドバンテージ志向が強い印象を受けた。
3.Katou’s answer
2人目は、リミテッドGP2冠の強豪。
加藤 一貴。
ティムールな風貌とは裏腹に実はかなりの理論派な加藤だが、はたしてこの難解な環境をいかに攻略するのか。
--「まずは環境の先手後手についてですが……」
加藤 「後手を取りたいです。ただメインは相手がどっちを取りたいかわからないから、ある程度先手を渡されてもいいように組んだ方が良いですね」
--「土地の枚数や『戦旗』についてはいかがでしょうか」
加藤 「土地は18枚で組むことが多いですね。『戦旗』については、必ずしも必要ではありません。マナベースの都合や、マナブーストとして使って『変異』カードを素でキャストして嬉しいときに採用を検討します」
--「5色が組めそうな場合は、やはり5色に行くべきなんでしょうか?」
加藤 「5色を組める場合は4色を組みます。結局は『メインカラーとなる2色がしっかりとしていて、補色Aがある程度色マナが確保している状態』から補色Bをどこまでタッチをできるかという話になるんだけれども、大抵補色Bのマナベースまでは十分じゃないことが多いので、5色は無謀ですね。特にこの環境でありがちなのが『3色目の基本地形を結構入れている状態でさらに4色目の基本地形を入れる』というものですが、これはナンセンスだと思います。特殊地形や『戦旗』だけで補色BやCが賄えるなら話は別ですが」
--「となると、やはりメインカラーを2色に絞るべきであると」
加藤 「必ずしも2色かと言われると、3色均等にならざるをえないプールなどもあるのでそうでもないですが、基本的にはそうだと思います」
--「では今回のプールについてですが、どのように検討されましたか?」
加藤 「まあ普通に並べたら緑黒になりますね。他になんとかならないのかなと思いましたがならなかったですし。一応赤の火力が多めだったのでトリコとかは検討しましたが、除去が黒より強いだけで重いカードが全然ないし、マナベースも弱いので『これはないな』と思いました」
7 《沼》 6 《森》 3 《島》 1 《ジャングルのうろ穴》 1 《華やかな宮殿》 -土地(18)- 1 《縁切られた先祖》 1 《射手の胸壁》 1 《ラクシャーサの死与え》 1 《不気味な腸卜師》 1 《ケルゥの吸血者》 1 《スゥルタイの剥ぎ取り》 1 《スゥルタイの占い屋》 2 《サグの射手》 1 《隠道の神秘家》 1 《スゥルタイのゴミあさり》 1 《サグのやっかいもの》 1 《河水環の曲芸士》 1 《よろめく従者》 1 《長毛ロクソドン》 -クリーチャー(15)- |
1 《ラクシャーサの秘密》 1 《苦々しい天啓》 1 《龍鱗の加護》 1 《絞首》 1 《大蛇の儀式》 1 《幽霊火の刃》 1 《スゥルタイの戦旗》 -呪文(7)- |
--「《焼き払い》はタッチされないんですね」
加藤 「基本地形を入れたくないので、マナベース上赤マナソースは2枚だけになっちゃうし、『戦旗』から赤が出るならもうちょっと話が違うけれど、タップイン確定だと手札で腐るリスクが高いですね。それに《砂塵破》か《火口の爪》くらいのカードだったらタッチするんですが、無理して入れてゲームに勝てるほどのカードでもないのが大きいですね」
--「それにしても結構メインカラーを厚めにとっていますよね。こんなに黒マナ出す必要あるのか、と思わなくもないですが」
加藤 「《神秘の痕跡》を入れて赤をタッチしたり、《宝船の巡航》を入れたりする人もいるとは思うんですが、メインでは相手の構成がわからないので、局面によって腐るようなカードは極力デッキに入れたくないですね。これらのカードの採用は相手が重いデッキだったときにサイド後に採用を考えればよくて、1本目は素直に、事故らないことをとにかく優先しています」
--「なるほど、メインは事故らないように、ですか。メインとサイド後はそこまで性質が違うものなんですね」
加藤 「メインのゲームとサイドのゲームはかなり違うものとして認識しています。相手のデッキが確定しているかしてないかはかなり大きくて、1本目の状態だと相手は極端に早かったり『ど』のつくコントロールだったりもするわけです。だからメインはどんな速度の相手にも万遍なく戦えるように組んで、相手のデッキを見たらそれに対応すればいいと思います」
--「盤面を固めるクリーチャーも気持ち多めですよね」
加藤 「シールドではデッキに入ってるカードパワーが全体的に高くなるから、スペルが1枚腐るだけで天秤が傾きやすくなるんですよね。相手のアクションに対してそのスペルがうまくリアクションとして働かないだけで敗北が近くなる。そういうときにクリーチャーだったら固めて一呼吸つくなりできる、というのが理由です」
--「2マナ域の枚数はこのくらいで十分ということでしょうか?」
加藤 「2マナ域の枚数自体は重要視したいところではありますが、『2ターン目に出してブロックに参加できるかどうか』が基準なので、《マルドゥの頭蓋狩り》だとちょっと微妙ですね。それくらいなら《族樹の管理人》を入れた方がいいですが、そんなに早いデッキは多くないと踏んで結局入れませんでした」
--「その他、個々のカード選択についてはいかがでしょうか」
加藤 「《神秘の痕跡》については後半引いたときに無駄カードになりやすいので、上で述べた理由で採用しませんでした。《宝船の巡航》を入れないのは3色目というのがもちろん大きいですが、そうでなくてもそこまで評価は高くないですね。『カードを引けばマジック勝てる』というのはオールドファッションで、3枚引いてもその分土地を引けば勝てないので、確定したパワーカードであることの方がより重要だと思います。その点、《よろめく従者》は場に出ればカード2枚分の働きは確実にするので、こちらを優先させました」
--「ありがとうございました」
4.and yours?
いかがだっただろうか。
同じプール、同じ「緑黒ベース」でも、細部が違えば勝率もまた変わってくる。特定のカード1枚入っていないだけで対処できるカードと対処できないカードに差が生まれるからだ。
十分に選択肢を吟味した上で、改めて自分なりの結論を導いて欲しい。
そして、この記事への感想、自分ならばこう組んだというアイディア、高橋や加藤の構築についての意見などがもしあれば。
例によってこの記事へのコメントに寄せてくれると嬉しい。
それでは、また次回。
See you!
5.rizer’s answer -Khans of Tarkir Sealed- Part1
【こちら】をご覧ください!
さらに。
ここでお知らせがある。
2014年11月25日(火)から12月8日(月)までの間、晴れる屋トーナメントセンターでは例によって。
今回の記事で題材となったシールドプールの店内貸し出しを行っている。※終了しました
これであなたが考えたデッキの一人回しが可能になる。
友達と一緒に借りて、どのような構築が良いか議論するのもオススメだ。
「タルキールシールドの練習がしたい」「実物のカードを並べて考えてみたい」「作ったデッキを実際に回してみたい」といった方は。
トーナメントセンターにご来店の際、大会受付カウンターにてスタッフにお気軽にお尋ねください。