rizer’s answer -Khans of Tarkir Sealed- Part1

石村 信太朗

written and interviewed by Atsushi Ito



 歴代最難関。

 そう思わせるほどに、『タルキール覇王譚』のシールドは選択肢が多い。

 多彩なマルチカラーのカード。キャストすることは容易だが表返すのはその限りではない『変異』クリーチャーの数々。毎回6枚前後は出現する2色・3色地形。

 ビートダウンとコントロール、方向性が異なる5つの氏族。

 それらの要素が複雑に絡み合い、ただでさえ完璧に振る舞うには難易度が高すぎるシールドというフォーマットを、よりカオスなものにしているのだ。

 しかし、我々には切り札がある。

 先日のMOCS Season5でも予選シールドラウンドを9-0と、圧倒的なパフォーマンスを見せつけた男。

 シールド神、rizer

 どうやらまた彼に頼るときが来たようだ。

 今回も彼の『シールドの構築技術』をわかりやすく、そして余すところなく言語化してもらうべく、『タルキール覇王譚』シールド環境についてインタビューしていく。

 それでは始めよう。


 






講義編1: この環境は先手 or 後手?

--「まず環境の概観から入ろうと思うんですが、『タルキール覇王譚』のシールドは先手を取った方がいいんでしょうか?

rizer 「もちろんデッキ内容によっても変わりますが、大雑把にはマルドゥ、ティムール、ジェスカイは先手で、スゥルタイ、アブザン、多色コントロールは後手ですね」


--「なるほど、氏族によって変わるんですね。でも、どうしてなんでしょう?」

rizer 「先手後手を決める基準については、以前もお話したと思いますが、『ライフをメインに狙うか否か』で判断すると良いと思います。タルキール環境で言うなら、2マナ圏多め&殴る生物(《高山の灰色熊/Alpine Grizzly(KTK)》など)&攻め呪文のラインがあるときや、レアやアドバンテージを取れる呪文がなくテンポでの押し切りをメインの勝ち手段に据えるしかないときなどは先手ですね」

--「なるほど。ちなみに全体の割合として、この環境のメインの先手デッキと後手デッキの比率は何 対 何くらいでしょうか?テーロスは9 : 1 ということでなかなか衝撃的な環境でしたが」

rizer 「この環境の先手と後手の割合は大体3 : 7くらいですかね。目標によってもまた変わるんですが」

--「と、言いますと?」

rizer 「例えばMOPTQP4-1でいい場合と、PTQ本戦で7-1が必要な場合では事情が異なります。同レベル~ちょっと格上までなら相対的に強いカードが多くなり、安定性も上がる後手デッキで押しつぶした方が勝率がいいんですが、強いデッキにぶつかった場合は、試合展開が序盤~中盤の斬り合いになりやすく、後手デッキだとどうしても展開が後手に回る分辛い部分があるんですよね」

--「本当に強いデッキに勝つためには、先手デッキを組まざるをえない傾向にある、と」

rizer 「そうですね。強い2マナ域の群れや《サグのやっかいもの》《アラシンの上級歩哨》を前にして《必殺の一射》構えるのもバカバカしいですから。欲しいのは除去じゃない、ジャイグロなんだ!となりがちなわけです」


 結論

マルドゥ、ティムール、ジェスカイは先手。
スゥルタイ、アブザン、多色コンは後手。








講義編2: 土地と『戦旗』の適正な枚数は?

--「土地の枚数もよくわからないんですよね。『18枚が安定』とはよく言われるところだと思いますが、消耗戦になることもありますし、『戦旗』は入れた方がいいのかなども難しいですし」

rizer 「前の段落同様に大雑把に言えば、マルドゥ、ティムール、ジェスカイは特殊地形が多ければ土地17枚、少なければ土地18枚で、スゥルタイ、アブザン、多色コントロールは土地18枚の『戦旗』1枚といったところだと思います」


--「これも氏族によって違うんですね」

rizer 「殴るデッキは特殊地形5枚含みの土地17枚がハッピーですが、大抵そんなに土地ないんで色々誤魔化しますね」

--「同じクランの特殊地形が5枚あるプールなんてなかなかない気もしますが」

rizer 「まともに3色やるなら3枚は流石に欲しいですね」

--「どうしてスゥルタイやアブザンは他の氏族と比べてマナソースが多くなったり『戦旗』が必要になるんでしょうか?」

rizer 「まずマナソースの量については、『変異』への依存度が高くて5マナに辿りつきたい要請が強いというのがあります。『戦旗』が許容されるのは、《大牙コロッソドン》《大蛇の儀式》の6マナコンビがいてジャンプアップの価値がある点、それから単純に多色にすることが多いからです」


 結論

マルドゥ、ティムール、ジェスカイは特殊地形が多ければ土地17枚、少なければ18枚。
スゥルタイ、アブザン、多色コンは土地18枚に『戦旗』1枚。








講義編3: 2色ベース構築 or 5色構築?

--「デッキのメインカラーについても難しいところです。土地が10枚くらいあったら好き好んで5色になるのか、それとも軸の2色ベースでタッチAB(C)があくまで基本形なのか」

rizer Reid Dukeさんが言うように軸の2色ベースでタッチAB(C)があくまで基本形ですね。土地&変異フェスティバルでもないかぎり乱雑な5色はやりません」


--「より具体的に言えば、2色軸に加え、タッチというにはちょっと濃いめで生物もちょこっと入ってる3色目と、『変異』とスペルのみの4色目(+5色目)、といった感じでしょうか」

rizer 「ですね、2色+氏族の3色目+除去タッチ+『変異』タッチといった感じです。特殊地形7枚でアンコ土地1枚があると、『8 : 8 : 5 : 3 : 2』か『8 : 7 : 6 : 3 : 2』のマナ配分ができるので、それが後手デッキの基本ですね。先手デッキの場合だと特殊地形5枚あれば『8 : 7 : 7』ですんなり3色できるんですが、そんなにうまい話もそうそうないので、土地3枚で『8 : 7 : 5』か、『8 : 8 : 4』で2色タッチ1色が関の山ですね」

--「他に重要な点は何かありますか?」

rizer 4色目、5色目の基本地形は『ダメ。ゼッタイ。』

--「それは重要な指摘ですね。4色目・5色目はあくまで特殊地形や『戦旗』で賄うべき、ということですか」

rizer 「必要な理由があってもMAXは1枚で、ついでに言えばタッチの3色目もできれば2枚までですね。2枚入れたカードは2枚引く可能性がありますし、3枚入れるならもう言わずもがな」

--「やはり『変異』があって特殊地形も豊富で何でもできるようでいて、結構な事故環境であると」

rizer 環境を一言で言うなら『事故ゲー』ですからね」

--「そもそもマナ関連でものすごく構築ミスしやすい罠が各所に張り巡らされてますよね」

rizer 「ですね。人の欲望と甘えをバリバリ刺激してきます」


 結論

乱雑な5色よりも、2色軸+氏族の3色目+除去・『変異』タッチの4・5色目が基本形。
ただし4・5色目の基本地形はダメ。ゼッタイ。








講義編4: どれくらいのマナベースで、何をタッチするのか?

--「タッチの判断も悩ましいですよね。4色目が2つだけ出たりしたとき、タッチするのかどうか。そもそもどんなカードならタッチしていいのか。4色目・5色目によって補われるカードの正体は主に何になるんでしょうか」

rizer 「主に除去ですね。色マナが3つ出るなら1枚は入れ得なので、《焼き払い》《大物潰し》など入れたいところです。逆に色マナが2つしか出ないなら、どうしても必要なカードでなければ諦めましょう」


--「なるほど。『変異』の場合はどうでしょう?」

rizer サイズの大きい『変異』は入れ得なので、色マナが1つしか出なくても即タッチしましょう《長毛ロクソドン》とか言ってしまえば《ワームとぐろエンジン》みたいなもんですからね。『え、なんで入れてないの!?』というレベルです」

--「どのくらいの『変異』ならタッチするんでしょうか?」

rizer 《イフリートの武器熟練者》も即タッチで、《クルーマの盟族》《峡谷に潜むもの》すらタッチを検討するラインです。とにかく3ターン目、4ターン目は『変異』を並べたいので、殴っても最低限裏目がない『変異』は数合わせとしては立派に仕事をします。その意味で逆に《子馬乗り部隊》はベンチスタートですね」

--「色マナ1つといった少々強引な『変異』タッチが許容されるのは、やはり『変異』を相打ちさせるかどうかの判断が自分でコントロールできる上に、ゲーム中に全ての『変異』を表返す必要がないから、素の『変異』2/2でも十分1枚分の役割を果たす、という前提があるからでしょうか」

rizer 「そうですね。あとは『変異』が多い方が事故ゲーを制しやすいんですよね、単純に」


 結論

タッチカラーが3つ出るなら1枚はタッチし得。除去を優先してタッチしよう。
1つしか出ない場合でもサイズが大きい『変異』なら迷わずタッチしよう。








講義編5: どんなクリーチャーを何体ほど入れれば良いのか?

--「クリーチャーの取捨選択なども難易度が高いですよね。クリーチャーと呪文のそもそもの比率とか、求められるクリーチャーのサイズとか」

rizer 「後手デッキなら相手次第で強い枚数は変わるので比率はあまり気にしなくてもいいですが、まず大きいクリーチャー(4/4以上)は5枚は欲しいです。この環境はみんな『変異』を使うので、みんなクリーチャーが太いんですよね。そこそこ軽いデッキ相手でも太いクリーチャー同士の対決を意識しないといけません」

--「なるほど。特に『変異』の枚数という点でいうと、5枚以上はやはり欲しい感じでしょうか?」

rizer 「そうですね。まあいくらいても損はないですからね、3マナ以下のうりーチャーという意味では最低7枚は準備したいところです」

--「逆に2マナ域のクリーチャーの枚数はいかがでしょうか?」

rizer 先手デッキならあるだけ、後手デッキならいてもいなくてもいいので強いやつだけですね」

--「つまりこれも氏族による、ということでしょうか?」

rizer 「ですね。例えばジェスカイの《湿地帯の水鹿》は偉いですが、スゥルタイだとお察しなので……」


 結論

4/4以上のクリーチャーは5枚以上欲しい。
2マナ域のクリーチャーは先手デッキならあるだけ入れるが、後手デッキでは強いものしか必要ない。








実践編1: rizer’s answer

--「さて、ここからは【How do you build? -Khans of Tarkir Sealed- Part1】で使用したプールの話になりますが、高橋さんや加藤さんが組まれているとおり、緑黒軸についてはあまり異論はなさそうですね」

rizer 「まあレアからしてこの色ですからね」

--「一応他のメインカラー候補は考えられたんでしょうか?」

rizer 「一応赤がやる気満々ではありますね。《山頂をうろつくもの》2枚に《矢の嵐》2枚もあって『俺がメインカラーだ』感バリバリで。ただまあ残念ながらその熱意を受け止められる補色がないので終了ですね」

--「となると、他の色はどちらかと言えば後手寄りのプールなんですね」

rizer 「そうですね、スゥルタイは呪文が揃っていますし」

--「では緑黒がメインカラーに決まったところで、抽象的ですがここからはどういう風にデッキを組み上げていくんでしょうか?」

rizer 「核となるパーツが決まったら、ひとまず先手か後手かを決めます。そこから細かいパーツを調整していった方がいいですね」

--「『先手を取るからこの守り呪文はサイドに落とそう』とか、『後手を取るからこの攻めっけ呪文よりも壁を入れよう』的な?」

rizer 「そうですね。『生物やスペルの全体の方向性が先手と後手のどちらにより向いているか』を大雑把に測って、そっちに寄せるということですね、大袈裟に言えば」

--「それでこういうデッキになったわけですね」

rizer 「いきなり『4・5色目の基本地形ダメゼッタイ』を破っちゃってますが」

--「まあ《神秘の痕跡》がちょっと例外的ということですかね」




「緑黒タッチ青赤」

5 《森》
5 《沼》
3 《島》
1 《山》
1 《華やかな宮殿》
1 《血溜まりの洞窟》
1 《ジャングルのうろ穴》
1 《岩だらけの高地》

-土地(18)-


1 《射手の胸壁》
1 《ラクシャーサの死与え》
1 《ケルゥの吸血者》
1 《不気味な腸卜師》
1 《スゥルタイの剥ぎ取り》
1 《隠道の神秘家》
1 《サグの射手》
1 《朽ちゆくマストドン》
1 《スゥルタイの占い屋》
1 《サグのやっかいもの》
2 《雪角の乗り手》
1 《スゥルタイのゴミあさり》
1 《河水環の曲芸士》
1 《長毛ロクソドン》

-クリーチャー(15)-
1 《暴風》
1 《引き剥がし》
1 《焼き払い》
1 《大蛇の儀式》
1 《神秘の痕跡》
1 《幽霊火の刃》
1 《スゥルタイの戦旗》

-呪文(7)-

hareruya











実践編2: 個々のカード選択について1

《宝船の巡航》《ラクシャーサの秘密》《苦々しい天啓》


--「高橋さんも加藤さんも緑黒ベースの後手デッキを組んできてはいますが、細部……特に4色目の有無と、個々のカード選択に大きな違いがあるわけです。そこで、何故こういうカード選択になったのか、という点を主に語っていただきたいのですが、まず《宝船の巡航》《ラクシャーサの秘密》《苦々しい天啓》のアドバンテージ軍団について、特に《宝船の巡航》といえばシールドにおいてはいついかなる時でもタッチしたいカードという印象があったので、加藤さんもそうですが、使われていないのが意外でしたね」


宝船の巡航


rizer 「その3枚だと《宝船の巡航》が一番評価が低いですね。やはり有効牌になるターンが遅すぎる点に問題があります。強い除去が多かったり、墓地を溜めやすかったりな理由がなければ積極的には採用しませんね」

--「なるほど。《ラクシャーサの秘密》はどうでしょうか?後手デッキならハンデスは強い、というのがセオリーと思っていましたが」


ラクシャーサの秘密


rizer 「はい、ハンデスは基本的にメインスタートで問題無いです。除去が多いデッキで特に真価を発揮しますね。ただバウンスの採用理由や他のアドバンテージカード2枚の不採用理由にも繋がるんですが、まず第1点としてテンポの問題があります。このデッキ、テンポを取り返せるようなマナレシオの良い生物や呪文がないので、基本的に押されるんですよね。そこで2ハンデスで土地とスペルを落としたとしても嬉しくなくて、盤面を作るカードの方が欲しいわけです」

--「確かに他のカードが盤面を形成するまでにかなり極限までマナを要求する構成になっているので、これを許容する余裕がない、という感じはありますね」

rizer 「2点目の理由としては、このデッキの強み(コンセプト)に反するというものがあります。《神秘の痕跡》《ラクシャーサの死与え》《サグのやっかいもの》《ケルゥの吸血者》と多めのデカブツたち、これらに共通する性質として、押してるときの方が強いんですよね」

--「後手デッキではあるけれど、攻撃にまわったときにより真価を発揮するカードが多く入っていると」

rizer 「そして押している局面では、対戦相手は回答となる限られたアクション以外のカードは基本的に無駄牌として手札に抱えられているので、《ラクシャーサの秘密》を撃ってもそれらが捨てられるだけで噛み合いません。そういった観点から《ラクシャーサの秘密》はリストラされました」

--「なるほど。コンセプトという意味では、むしろ《苦々しい天啓》の方が採用に近そうですね」


苦々しい天啓


rizer 「そうですね、この3枚だと1番欲しいのは《苦々しい天啓》だと思います。しかし、結局後手4ターン目にプレイする動きがこの構成だと許容できず、そのターンに『変異』など他のアクションをとりたいので入れませんでした。いずれにせよ除去が薄いデッキだと力を発揮しづらいカードですね。このデッキだとロングゲーム対決がわかった時点でサイドから入れる、というのが無難だと思います」






実践編3: 個々のカード選択について2

《絞首》《焼き払い》《よろめく従者》《朽ちゆくマストドン》《ケルゥの吸血者》


--「では次に《絞首》ですが、これが抜けているのはかなり意外でしたね。貴重な除去ではないのでしょうか?」


絞首


rizer 警戒されすぎますね、このカードは。5マナオープンで返したらみんな思いつくので、コンバットでのシャクり期待値はかなり低めに見積もらざるをえず、そうなるとカード単体の評価になるわけですが、ちょっと重いんですよね。『変異』を表返しながら使えないのでコンバットトリックとして使いづらく、除去としてもテンポが悪い。用途は主に《軍族の解体者》《凶暴な拳刃》といったレアの狙い撃ちですね」

--「その点、《焼き払い》になるとやはり別次元の評価なんでしょうか?」


焼き払い


rizer 「このデッキにも入っている《河水環の曲芸士》や、うっかり+1/+1カウンターが乗っちゃった生物なども軒並み焼けますし、《絞首》だと処理できない《千の風》《死滅都市の悪鬼》なども楽々焼却できるので、まあ確定除去としてカウントできますね」

--「なるほど。では次に《よろめく従者》の不採用についてですが、これも《宝船の巡航》と同じ理由ですかね。《ラクシャーサの秘密》《苦々しい天啓》が入っていれば……といったところではありますが」


よろめく従者


rizer 「ですね。お友達がいなくなったので仲間には入れません」

--「壁役という意味では《朽ちゆくマストドン》が採用されているのも目を惹きますね。このカードはこのデッキに必要なんでしょうか?」


朽ちゆくマストドン


rizer 「むしろこのデッキの屋台骨と言っていいと思います。たった5マナで『変異』を含めた地上生物をほぼすべてシャットアウト、《軍備部隊》《増え続ける成長》ですら威力半減という。こいつがいなかったらデッキの構成はもうちょっと違っていたと思うほどですね」

--「意外な採用枠でいうと他にも《ケルゥの吸血者》がありますが、これまで名前が挙がった種々のカードを押しのけて採用されているわけで、このあたりは理由があるんでしょうか?」


ケルゥの吸血者


rizer 「このカードは概ね緑黒専用ですが地味にかなり強力です。《スゥルタイの剥ぎ取り》とのシナジーはもちろん、盤面が膠着した後半にトップすればそれだけで吸い殺せることもあるので、こういう緑黒を組んだときにはデッキに入れておいて損はないですね」






実践編4: 個々のカード選択について3

《縁切られた先祖》《神秘の痕跡》《引き剥がし》《軽蔑的な一撃》《暴風》


--「他には《縁切られた先祖》について、どうして採用していないのでしょうか?」


縁切られた先祖


rizer 《射手の胸壁》《スゥルタイの剥ぎ取り》《スゥルタイの占い屋》などの壁役が既に十分いるというのがまず1点。それに積極的に表にする『変異』や《ラクシャーサの死与え》《幽霊火の刃》がマナ食い虫で『長久』したいタイミングが少なめなんですよね。そうなると0/4か1/5での運用に重点が主になるわけですが、そこで負けるデッキでもないので、不要と判断しました」

--「《神秘の痕跡》についてはいかがでしょう?高橋さんは『ボム』という評価でしたが、加藤さんは『後半引いたときに無駄カードになりやすい』ということで採用していませんでした。rizerさんはどっち寄りですかね?」


神秘の痕跡


rizer 「高橋さんの意見寄りですね。『強い2マナ圏』という評価で良いと思います。あったらかなり緑をメインカラーにしたくなりますね。後半引いたら弱いのは、所詮2マナ圏なので仕方ないかと」

--「《引き剥がし》をタッチしている点も印象的ですよね。rizer先生なら《軽蔑的な一撃》の方をタッチしたがるかな、と思ったのですが」


引き剥がし軽蔑的な一撃


rizer 「カードパワーは断然《軽蔑的な一撃》なんですが、《ラクシャーサの秘密》のところで触れたテンポ的な問題があり、1回は相手の攻めビッグアクションを乗り切る必要がありそうなのでそのためですね。トランプル2種もいるんで、一応攻めにも使えないことはないですし」

--「最後は《暴風》ですが、このカードを《絞首》よりも優先するというのはかなり意外なところですね」


暴風


rizer 「このデッキは普通のデッキと違い、相手の序盤の飛行(《ジェスカイの風物見》《雪花石の麒麟》《高峰のカマキリ》など)に対しては基本的に殴り合うしかないんですよね。手ごろな除去が《絞首》くらいしかないので。そうすると若干不利なダメージレースになるんですが、それを一発で逆転できるのが《暴風》ですね。飛行が2体並んだところでどーんすると簡単マジックです。特にGB系のデッキでは、あの《飛鶴の技》《風番いのロック》ですらカモれる影のボムと言っていいでしょう」






終わりに

--「最後に、何か付け加えたいことがあれば」

rizer 「今回のデッキはマナベースがなんとも言えない仕上がりになっていますが、『変異』がメインだからこの《島》3枚《山》1枚が許されるのであって、基本的には不純物となる基本地形は入れない方がいいですね。あとはまあ肝は巨大飛行の対策に《焼き払い》《暴風》という点と、骨子以外の部分は盤面を支えるカードで埋めるというあたりでしょうか」

--「マナベースの安定もそうですが、スペル厚より肉厚、『変異』厚の方が裏目が少ないですよね。特に《宝船の巡航》《ラクシャーサの秘密》《苦々しい天啓》の評価は慎重にした方が良さそうです」

rizer 「『変異』は片っ端から入れればいいですが、スペルの厳選はかなりこの環境の課題だと思います」

--「環境の雑感とか普遍的な事項についてはいかがでしょうか?」

rizer 『強いカード=レアに合わせた構築を、見た目のカードパワーよりも安定を』とかですかね」

--「ありがとうございました」

rizer 「ありがとうございました」







 いかがだっただろうか。

 年初のグランプリ静岡で初日突破を目指す方々の参考になれば幸いだ。

 それでは、また次回。





 さらに。

 ここでお知らせがある。

 2014年11月25日(火)から12月8日(月)までの間、晴れる屋トーナメントセンターでは例によって。

 今回の記事で題材となったシールドプールの店内貸し出しを行っている。

 これであなたが考えたデッキの一人回しが可能になる。

 友達と一緒に借りて、どのような構築が良いか議論するのもオススメだ。

 「タルキールシールドの練習がしたい」「実物のカードを並べて考えてみたい」「作ったデッキを実際に回してみたい」といった方は。

 トーナメントセンターにご来店の際、大会受付カウンターにてスタッフにお気軽にお尋ねください。