USA Standard Express vol.46 -GP Paris etc.-

Kenta Hiroki



皆さんこんにちは!

先週末はGP Paris、先々週末はSCGO PortlandGP TorontoGP Sao Pauloとスタンダードの大規模な大会が各地で開催され、プロツアー『タルキール龍紀伝』では見られなかったデッキもいくつか入賞していました。

今回の記事では、上記4つの大会結果を追っていきたいと思います。


SCGO Portland トップ8 ~優勝はSultai Reanimator~


2015年5月3日

Christopher Morris-Lent 


1位 Sultai Reanimator/シディシウィップ
2位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
3位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
4位 UG Devotion/青信心
5位 Mono Green Aggro/緑信心
6位 Esper Dragons/白青黒コントロール
7位 Atarka Red/赤単
8位 Atarka Red/赤単

プロツアー『タルキール龍紀伝』を制したAtarka Redや、その翌週に開催されたGP Krakowで多数の入賞者を出したEsper Dragons、安定した成績を出し続けているAbzan Aggroなどが入賞する中、Sultai Reanimatorが優勝。しかし、今大会で最も印象に残ったデッキは4位に入賞していた《集合した中隊》入りのUG Devotionでした。



SCGO Portland デッキ解説


「UG Devotion」


Nick Peternell「UG Devotion」
SCGO Portland (4位)

12 《島》
4 《神秘の神殿》
4 《茨森の滝》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》

-土地(24)-

4 《惑乱のセイレーン》
4 《霜歩き》
4 《キオーラの追随者》
4 《層雲の踊り手》
4 《岸砕きの精霊》
4 《シルムガルの魔術師》
4 《海の神、タッサ》
4 《波使い》

-クリーチャー(32)-
4 《集合した中隊》

-呪文(4)-
4 《氷固め》
3 《シディシの信者》
2 《霜の壁》
2 《霊気渦竜巻》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《否認》

-サイドボード(15)-
hareruya


《潮縛りの魔道士》《凍結燃焼の奇魔》《夜帷の死霊》といった色拘束が強いクリーチャーが、ローテーションに伴い姿を消してしまった青信心でしたが、《集合した中隊》を加えた新しい形が今大会でトップ4という好成績を残しました。


☆注目ポイント

《岸砕きの精霊》は『タルキール龍紀伝』リリース直後に、青青青という色拘束の強さから青信心復権の鍵となるクリーチャーと一部で評価されていました。単体除去に耐性もあり、パンプアップ能力もあるので打点も高めです。

《霜歩き》は信心を満たすのには向いていませんが、2マナでパワー4という破格のサイズで序盤からプレッシャーをかけられます。《岸砕きの精霊》と同様にエレメンタルでもあるので、《波使い》による恩恵も受けられます。

《シルムガルの魔術師》は「濫用」することで《本質の散乱》を誘発し、瞬速の2/1飛行とクロックとしても優秀で、なおかつダブルシンボルなので信心を集めやすくなります。

《集合した中隊》は、軽いクリーチャーを多数採用したこのデッキでは安定して2体のクリーチャーを出すことが可能です。《海の神、タッサ》の信心も集めやすく、ソーサリースピードのスイーパーにも強くなるので、このデッキの強さを支える重要なスペルです。

岸砕きの精霊海の神、タッサ集合した中隊




GP Toronto トップ8 ~《棲み家の防御者》を使ったデッキが多数入賞。優勝はAbzan Midrange~


2015年5月3日

Lucas Siow 


1位 Abzan Midrange/白黒緑コントロール
2位 Mardu Dragons/白黒赤ビートダウン
3位 Bant Megamorph/白青緑ビートダウン
4位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
5位 Abzan Megamorph/白黒緑ビートダウン
6位 Bant Megamorph/白青緑ビートダウン
7位 Abzan Midrange/白黒緑ビートダウン
8位 GW Aggro/緑白ビートダウン

Esper Dragons祭りだったGP Krakowの結果と大きく異なり、《棲み家の防御者》を使ったミッドレンジデッキの活躍が目立だったGP Toronto。Esper Dragonsは予想通り相当メタられていたようで、トップ8には一人も勝ち残れませんでした。優勝は《棲み家の防御者》をメインから採用したAbzan Midrangeでした。



GP Toronto デッキ解説


「Abzan Midrange」 「Mardu Dragons」 「GW Aggro」



Lucas Siow「Abzan Midrange」
GP Toronto (1位)

3 《森》
2 《平地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《疾病の神殿》
4 《静寂の神殿》
3 《砂草原の城塞》
3 《ラノワールの荒原》
2 《コイロスの洞窟》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(26)-

3 《棲み家の防御者》
3 《羊毛鬣のライオン》
4 《クルフィックスの狩猟者》
4 《包囲サイ》

-クリーチャー(14)-
4 《思考囲い》
2 《胆汁病》
1 《ドロモカの命令》
4 《アブザンの魔除け》
3 《英雄の破滅》
1 《骨読み》
1 《命運の核心》
1 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》
3 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(20)-
3 《アラシンの僧侶》
2 《強迫》
2 《ドロモカの命令》
2 《悲哀まみれ》
1 《骨読み》
1 《信者の沈黙》
1 《命運の核心》
1 《残忍な切断》
1 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》
1 《精霊龍、ウギン》

-サイドボード(15)-
hareruya


GP Torontoを制したのはLucas Siowの操るAbzan Midrangeでした。苦手とされていたEsper Dragonsとのマッチアップも互角以上に戦えるように調整されており、Mono Redとの相性もサイド後には改善されそうです。


☆注目ポイント

メインから採用された 《骨読み》《世界を目覚めさせる者、ニッサ》《命運の核心》からも分かるようにEsper Dragonsを強く意識した構成で、《究極の価格》など単体除去が解雇されています。

サイドの《アラシンの僧侶》《悲哀まみれ》と共に、Mono Redとのマッチアップでキーとなるカードです。2マナという軽さでライフゲインするCIP能力を持ち、本体も1/3というサイズなので序盤の猛攻を凌ぐのに役に立ちます。

世界を目覚めさせる者、ニッサ命運の核心アラシンの僧侶




Edgar Magalhaes「Mardu Dragons」
GP Toronto (2位)

3 《山》
1 《沼》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《遊牧民の前哨地》
3 《凱旋の神殿》
1 《悪意の神殿》
1 《静寂の神殿》
4 《コイロスの洞窟》
2 《戦場の鍛冶場》
2 《精霊龍の安息地》

-土地(25)-

4 《道の探求者》
2 《魂火の大導師》
4 《ゴブリンの熟練扇動者》
4 《雷破の執政》
4 《嵐の息吹のドラゴン》
2 《嵐の憤怒、コラガン》

-クリーチャー(20)-
3 《思考囲い》
4 《龍詞の咆哮》
4 《はじける破滅》
2 《忌呪の発動》
1 《コラガンの命令》
1 《残忍な切断》

-呪文(15)-
4 《神々の憤怒》
2 《骨読み》
2 《前哨地の包囲》
2 《命運の核心》
1 《龍王コラガン》
1 《思考囲い》
1 《見えざるものの熟達》
1 《コラガンの命令》
1 《太陽の勇者、エルズペス》

-サイドボード(15)-
hareruya


Marduカラーのドラゴンクリーチャーを多数採用したミッドレンジデッキ。《はじける破滅》《忌呪の発動》など、特にEsper Dragonsの《龍王オジュタイ》をメタった構成です。


☆注目ポイント

《はじける破滅》《龍王オジュタイ》対策としてはベストに近く、このデッキを選択する理由の一つになります。ドラゴンクリーチャーを多数採用しているため、《龍詞の咆哮》も除去兼直接火力としても機能しやすくなっています。

《嵐の憤怒、コラガン》はトークンを生み出す《ゴブリンの熟練扇動者》とのシナジーが強力で、3ターン目に《ゴブリンの熟練扇動者》、4ターン目に《雷破の執政》、5ターン目に「疾駆」の《嵐の憤怒、コラガン》というシークエンスは脅威となります。流行りの《死霧の猛禽》を使った緑デッキ対策に《神々の憤怒》が4枚サイドに採られているなど、抜かりがありません。

嵐の憤怒、コラガンはじける破滅神々の憤怒




Craig Wescoe「GW Aggro」
GP Toronto (8位)

7 《森》
5 《平地》
4 《吹きさらしの荒野》
2 《溢れかえる岸辺》
4 《豊潤の神殿》
2 《マナの合流点》

-土地(24)-

3 《エルフの神秘家》
1 《始まりの木の管理人》
4 《棲み家の防御者》
4 《羊毛鬣のライオン》
3 《道の探求者》
4 《クルフィックスの狩猟者》
4 《死霧の猛禽》
3 《オレスコスの王、ブリマーズ》

-クリーチャー(26)-
4 《ドロモカの命令》
2 《勇敢な姿勢》
4 《集合した中隊》

-呪文(10)-
4 《暴風》
3 《アラシンの僧侶》
2 《加護のサテュロス》
2 《見えざるものの熟達》
2 《光輝の粛清》
2 《勇敢な姿勢》

-サイドボード(15)-
hareruya


プロツアー『タルキール龍紀伝』での活躍も記憶に新しいアメリカ人プロのCraig Wescoeは、今大会でも《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》のエンジンを採用したデッキで入賞を果たしています。今回はBant Midrangeではなく、《集合した中隊》を採用した緑白の2色のアグロデッキのようです。


☆注目ポイント

デッキに採用されている全てのクリーチャーの点数で見たマナコストが1-3なため、《集合した中隊》を活用しやすい構成となっています。序盤は軽いクリーチャーでプレッシャーをかけつつ、中盤以降は《集合した中隊》《棲み家の防御者》によってアドバンテージを稼いでいくことが可能で、コントロールに対しても強くなっています。

サイドには 《見えざるものの熟達》の他にも、なんと《暴風》が4枚も積まれているなど、他のデッキと同様にEsper Dragonsを強烈に意識していたようです。逆にこれほど徹底した対策を施さなければならなかったことがEsper Dragons、《龍王オジュタイ》の存在の大きさを示しています。

集合した中隊見えざるものの熟達暴風




GP Sao Paulo トップ8 ~Esper Dragonsの強さ揺るがず~


2015年5月3日

Paulo Vitor Damo Da Rosa 


1位 Esper Dragons/白青黒コントロール
2位 RG Dragon/赤緑ビートダウン
3位 Green Devotion/緑信心
4位 Esper Dragons/白青黒コントロール
5位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
6位 Atarka Red/赤単
7位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
8位 Esper Dragons/白青黒コントロール

GP Torontoの結果とは対照的に、GP Sao PauloではEsper Dragonsがトップ8に3名勝ち残り、優勝もEsper Dragonsとその強さを見せつけました。GP Torontoと比べると、Esper Dragonsなどコントロールが苦手とする《棲み家の防御者》を使ったデッキは少なく、あまりメタられていなかったようです。



GP Sao Paulo デッキ解説


「Esper Dragons」



Paulo Vitor Damo da Rosa「Esper Dragons」
GP SAO PAULO (1位)

3 《島》
2 《沼》
4 《汚染された三角州》
1 《溢れかえる岸辺》
4 《陰鬱な僻地》
4 《欺瞞の神殿》
4 《啓蒙の神殿》
2 《コイロスの洞窟》
2 《精霊龍の安息地》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(27)-

4 《龍王オジュタイ》
1 《龍王シルムガル》
1 《漂う死、シルムガル》

-クリーチャー(6)-
3 《思考囲い》
4 《シルムガルの嘲笑》
3 《胆汁病》
2 《予期》
3 《忌呪の発動》
3 《英雄の破滅》
2 《解消》
2 《命運の核心》
4 《時を越えた探索》
1 《悪夢の織り手、アショク》

-呪文(27)-
3 《悲哀まみれ》
2 《黄金牙、タシグル》
2 《究極の価格》
2 《悪夢の織り手、アショク》
2 《龍王の大権》
1 《層雲の踊り手》
1 《龍王シルムガル》
1 《思考囲い》
1 《胆汁病》

-サイドボード(15)-
hareruya


プロツアー『タルキール龍紀伝』でトップ16、GP Krakowでトップ8、そして今大会では優勝と、今シーズン好調な殿堂プレイヤーのPaulo Vitor Damo da Rosa。もちろん今大会でも使い慣れたEsper Dragonsを使用していました。


☆注目ポイント

このデッキのフィニッシャーである《龍王オジュタイ》が、多くのリストで3枚しか採用されていない中で4枚に増量されています。流行りの 《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》デッキや、多くのデッキがサイドインしてくる《見えざるものの熟達》を相手にした際は長期戦になると不利になりやすく、《龍王オジュタイ》を5ターン目に出してダメージレースを仕掛ける必要が出てくるため、4枚採用も納得です。

ミラーマッチも意識していたらしく《悪夢の織り手、アショク》がメインから採用されており、サイドにも追加の2枚が見られます。 Abzan Aggroやミラーマッチなど、現在のメタではあまり役に立たないことの多い《究極の価格》もサイドに移されており、環境の変化に合わせた細かい調整がしっかり施されています。

龍王オジュタイ悪夢の織り手、アショク




GP Paris トップ8 ~上位8名中4名がAbzan!~


2015年5月10日

Amand Dosimont 


1位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
2位 GW Aggro/緑白ビートダウン
3位 Abzan Midrange/白黒緑コントロール
4位 Mono Red/赤単
5位 Mono Red/赤単
6位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
7位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
8位 GR Devotion/緑信心

GP Torontoと同様にEsper Dragonsは見られず。優勝はGP Torontoでもトップ4に入賞するなどコンスタントに勝ち続けているAbzan Aggroで、今大会ではトップ8に3名の入賞者を輩出していました。コントロール寄りの構成のAbzan Midrangeも含めると、トップ8の半分がAbzanです。



GP Paris デッキ解説


「Abzan Aggro」



Amand Dosimont「Abzan Aggro」
GP Paris (1位)

2 《森》
2 《平地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《砂草原の城塞》
3 《疾病の神殿》
3 《静寂の神殿》
3 《ラノワールの荒原》
2 《コイロスの洞窟》
1 《マナの合流点》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(25)-

2 《始まりの木の管理人》
4 《羊毛鬣のライオン》
4 《ラクシャーサの死与え》
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
4 《包囲サイ》
1 《狩猟の統率者、スーラク》
2 《風番いのロック》

-クリーチャー(21)-
4 《思考囲い》
2 《ドロモカの命令》
4 《アブザンの魔除け》
2 《英雄の破滅》
2 《真面目な訪問者、ソリン》

-呪文(14)-
3 《棲み家の防御者》
3 《悲哀まみれ》
2 《強迫》
2 《異端の輝き》
2 《自傷疵》
2 《太陽の勇者、エルズペス》
1 《ドロモカの命令》

-サイドボード(15)-
hareruya


大きな大会の上位では必ずと言って良いほど見かけるAbzan Aggro。デッキ内のクリーチャーの数が多いため、Abzan Midrangeと比べると《ドロモカの命令》を活用しやすく、Mono Redに対しての相性も他のAbzan(Abzan Midrange、Abzan Megamorph)と比較すると良いようです。


☆注目ポイント

《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》エンジンにより、地上クリーチャーによる攻防にフォーカスされた現環境では、「強襲」の条件を満たすことで一度にパワー3の飛行クリーチャーを2体展開する《風番いのロック》はこのデッキならではの強みとなっています。

サイドの《太陽の勇者、エルズペス》は、ミラーマッチや《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》デッキとのマッチアップにおいて切り札となり、Esper Dragonsなどとのマッチアップでも悪くないカードです。

《自傷疵》はこのデッキにとって《龍王オジュタイ》に対する最高の回答になり、《羊毛鬣のライオン》《ラクシャーサの死与え》などの除去耐性の高いクリーチャーの対策も兼ねています。2点ライフルーズもデッキの方向性とマッチしており、地味ながら嬉しいおまけです。

風番いのロック太陽の勇者、エルズペス自傷疵




総括


Esper Dragons祭りだったGP Krakowから一転して、GP Torontoでは《棲み家の防御者》を採用したミッドレンジが幅を利かせていました。

GP Torontoほど意識されていなかったGP Sao Pauloでは、Esper Dragonsが多数上位に見られました。そして、先週末に開催されたGP ParisではAbzan Aggroが多数の入賞者を出し、優勝もAbzan Aggroでした。

『タルキール龍紀伝』加入後も、相変わらず毎週メタが目まぐるしく変化する現在のスタンダードは、プレイしていて非常に面白いフォーマットです。SCG Portlandで4位に入賞を果たしたUG Devotionを見れば、まだまだイノベーションの余地は十分にあると言えます。

以上USA Standard Expres Vol.46でした。次回の記事ではSCGO DallasとSCG Premier IQ Worcester、GP 上海の入賞デッキを紹介していく予定です。

それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!


※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『StarCityGames.com』
http://www.starcitygames.com/
『MAGIC: THE GATHERING』
http://magic.wizards.com/en