お待たせした。How do you build? -Theros Sealed- Part4への、rizerの回答。
神々の軍勢入りシールドでの、構築技術の粋。
その一端を、お見せしよう。
はたして、今回のプールからrizerが導き出したデッキとは。
テーロス×6の極意
--「まずはrizer’s answerまとめというか、これまでのおさらいですが、 『メインはミッドレンジ最強だよ』『サイドは相手の機能不全カードを増やしていくイメージで色を変えたりするといいよ』『どんなカードプールでも基本的に戦いようはあるよ』というお話でしたよね」
rizer 「そんな感じでしたね。テーロス×6は外れプールが少なく、カードが余りやすい環境でしたから、サイドによる対応が柔軟にできました」
--「それを踏まえて、テーロス×6の極意みたいなものをrizerさんが編み出した……という噂を聞いたのですが、それは一体どういうものなのでしょうか?」
rizer 「こんな感じになりますね」
--「なるほど、これは簡単ですね」
rizer 「2色~3色だとどうしても除去か生物が足りずに受けきれなかったところを、豊富なマナベースを生かして4色使って相手の脅威を数で封殺しようという感じですね。勝ってる人は当たり前にみんな意識してやっていた印象です」
--「勝ってる人は当たり前に4色だったんですか」
rizer 「少なくとも3色ではありましたね。『怪物化』と『英雄的』の影に隠れた多色環境でした。マナベースも豊富ですし、シングルシンボルの強力コモンが満載でしたから」
--「《ネシアンのアスプ》は本当にダメでしたよね」
rizer 「どんなプールでも戦えるとはいっても、上位に食い込む第1条件は《ネシアンのアスプ》でしたね。無いと勝てないとか、強すぎるとかではなかったですが、明らかに勝率の上方修正に貢献しますからね……長丁場にはありがたいカードです」
--「まあともあれ、『実はマナベースが強い上にシングルシンボル多くてタッチが容易で、色々なテクニックを駆使すれば何でもケアできたよ』というのがテーロス×6だった、と」
rizer 「良いまとめですね」
神々の軍勢により必ずしも色を無制限に増やすのが最適解ではなくなった
--「では、『実はマナベースが強い上にシングルシンボル多くてタッチが容易』というのがテーロス×6だったとすれば、神々の軍勢×3の登場により、それはどういう風に変化したんでしょうか?」
rizer 「マナベースが弱体化した上に、ダブルシンボルが増えてタッチし得なカードが減ったというのがあります。ついでに全体のカードパワーも弱体化しましたね」
--「《旅行者の護符》と《乳白色の一角獣》という2大マナサポートの枚数が減ると、当然タッチの無理もきかなくなりますね。《ナイレアの存在》も、《サテュロスの道探し》や《ケイラメトラの好意》では到底代わりになりませんし」
rizer 「多色は一応できるけれど、タッチカラーのダブルシンボルを両方入れるとかの無理はきかなくなりましたね」
--「XYタッチABといったスタイルが使えなくなった、と」
rizer 「使えなくなったというと語弊がありそうですが、神々の軍勢により必ずしも色を無制限に増やすのが最適解ではなくなった感じですね。簡単マジック終了のお知らせ、です」
--「きちんと事故とのバランスを考えないといけなくなったんですね」
rizer 「そうですね、ある意味で健全な環境になりました」
--「全体のカードパワーの弱体化というのは、どういった意味でしょうか?」
rizer 「上のカードの強さも若干下方修正されたんですが、メインは下の支えるカードたちの弱体化ですね。本物のゴミが増えてしまって、カードが足りずにデッキのカードパワーを保つのが難しくなりました。カードパワーが下がったというよりは、より誤魔化しがシビアになったんでしょうね。今思えば、テーロスのキャントリップオーラは優秀でした」
--「確かにドラフトでも、テーロスは1周しても取るカードあるのに1周した軍勢は取るカードないですからね」
rizer 「ですね。単純にプレイアブルなカードの枚数が減りました」
--「テーロス×6でのrizer先生の構築を見直すと、キャントリップオーラと数少ない『英雄的』で地味にアドバンテージをとりつつ隙間を埋めるスタイルが結構多く使われてる気がします。その構築の要だったキャントリップオーラが減って、rizer激おこである、と。『授与』や『英雄的』の影にかくれがちですが、5種類あったキャントリップオーラも、多色デッキを円滑に回すための影の立役者だったのかもしれませんね」
rizer 「テーロスのオーラと比べて『神啓』用のオーラたちは基本的に弱いですからね。『英雄的』を生かそうにも、育て損にならないキャントリップオーラの枚数が重要ですし」
--「緑青黒の3種類に減ってる上に、ちょっと黒(《忌まわしい変身》)は重いですからね。5種類が2.5種類くらいに減った感覚です。しかも一番強かった《ナイレアの存在》が消えているという……」
rizer 「そんな感じですね、脇道的な話ですが」
今の印象は緑≧黒>青=白=赤ですかね
--「色の強さ的にはどうでしょう?テーロス時点では青>緑=白>赤=黒という話でしたが、軍勢も織り交ぜて考えるとこの順位に変動はあったんでしょうか」
rizer 「テーロスの最終段階で緑≧黒>青>白>>赤で、軍勢入って今の印象は緑≧黒>青=白=赤ですかね」
--「軍勢の赤が強くてさすがに持ち直したけど、基本的には緑と黒が主役である、と。緑とか《ネシアンのアスプ》も《旅するサテュロス》も減って軍勢のゴミみたいな緑になってますけど、依然トップなんですか」
rizer 「全体的にカードが弱体化したんですが、本当に全体的に下がったので、元からテーロスのカードが強い緑が環境の主役ですね」
--「黒も除去がかなり弱くなりましたよね。まあ元から除去でもっていた色でもないんですが」
rizer 「黒は緑に対抗しやすいというのが他よりも優れている点ですね。逆にせっかく相対的に強化された赤は緑にカモられやすいので残念賞と……」
--「なるほど、黒には『接死』と『再生』による受けがありますからね。赤は《クラグマの解体者》とか出しても緑の3/3を超えられませんし」
rizer 「GPメキシコシティで前日トライアルを抜けたデッキにメインから《狩人狩り》が入っていたくらいには、緑は大人気みたいですからね」
--「それはかなり進んでますね。rizerさんでもメインから入れますか?」
rizer 「《エレボスの催促》を入れる確率と同程度で入れそうです」
--「ほとんど入れないってことかな……まあそれはやりすぎにしても、相手もかなりの確率で緑を使ってくるであろうことを意識した方がいい環境ということですね」
rizer 「そうですね」
MOシールドだとみんなビートです
--「『試練』も減ってますし、メインで相手がビートダウンを組んでくることもかなり減ったと考えていいんでしょうか」
rizer 「いや、逆ですね。特にMOシールドだとみんなビートです」
--「それはどういった要因によるものなんでしょうか?」
rizer 「身も蓋もなく言うと、環境初期特有のビート優勢状況な気もしますが……あえて言うなら、1.殴るのに特化している赤の強化、2.緑の<セテッサの誓約者>と<フィーリーズ団の精鋭兵>や、数少ない白の強コモン<アクロスの空護衛>など、攻めに特化したカードを使わざるをえないことが多いこと、3.青と黒の生物弱体化でとても守れる雰囲気じゃなくなったこととかですかね」
--「ということは、今のところはメインでミッドレンジが依然として有効な戦略である、ということになるんでしょうか?」
rizer 「そうですね。ただ前よりは『英雄的』システムを組み込むことが増えました」
--「『英雄的』で思い出したんですが、もしかして神々の軍勢に『怪物化』っていない?」
rizer 「いません!『貢納』に持っていかれました」
--「『貢納』(笑)」
rizer 「本当に()だから困りモノですね」
--「『怪物化』や強い『授与』が減ったとなると、素のサイズが重要な環境になったと言えそうですね」
rizer 「そうですね。アンコ以上の『授与』や《雨雲のナイアード》でなんてことないクリーチャーに盤面をぐいっと持っていかれるパターンが減ったので、単純なデカブツの価値が上がりました」
--「なるほど、大体神々の軍勢環境のことがわかった気がします」
自分のデッキを相手にして本当に辛いかどうか、負けるかどうかですね
--「それでは今回のプールに話を移していきたいと思いますが、まずミッドレンジを組もうという視点からいくと、白がお通夜、赤も肉が少なくて使えませんね」
rizer 「《剥離》も《アクロスの空護衛》もいない白に用はありませんね。赤も肝心のミドル級生物がいませんし、他の色次第で補色になれる程度です」
--「となると自然と青、黒、緑の3色からの選択になりそうですが、カードパワーでは断トツで黒が抜けてそうなんですよね」
rizer 「ですね、何せテーロス界の覇王《形見持ちのゴルゴン》様がいらっしゃる。《フィナックスの信奉者》&《エレボスの使者》、2マナ除去2種に2マナ3/3と、色々揃ったラインナップですし」
--「黒青、黒緑、青緑という3種のいずれもミッドレンジ間での、メインデッキとしての適格性、優劣を判断するには、どのような要素に着目すればいいんでしょうか?前回までの話に沿うならば、コンセプトということになるんでしょうが、ミッドレンジとコンセプトって微妙に相反しませんか?」
rizer 「しますね。ですからもう少し掘り下げると、イメージ的な観点から見て一番簡単な判断基準は、仮に自分のデッキを相手にして本当に辛いかどうか、負けるかどうかですね」
--「確かにそう考えると黒緑は少しフィニッシャーというか、決め手に欠けるきらいはありますね」
rizer 「むしろ売りが何もないんですよね。レアや『接死』がある黒緑のプールをもらったとして、このプールの黒緑に負けるビジョンが欠片もない」
--「なるほど、黒緑は環境最強カラーの組み合わせですから、当然相手がそれを組んでくることを想定すると」
rizer 「はい、メジャーな色で組む以上は同型に強い形になっているのは大前提ですね。シールドは構築戦ですから」
--「コンセプトを選択するのは自分である……と」
rizer 「そういうことですね」
まあなんか面倒くさいデッキなんですよね、相手側から見て
--「それではようやく、今回のrizer’s answerですが」
rizer 「はい、こちらになります」
8 《森》 6 《島》 1 《平地》 1 《静寂の神殿》 -土地(16)- 2 《旅するサテュロス》 1 《サテュロスの道探し》 1 《前兆語り》 1 《メレティスの天文学者》 1 《羊毛鬣のライオン》 1 《トリトンの財宝狩り》 1 《戦いの柱》 1 《雨雲のナイアード》 1 《墓荒らし蜘蛛》 1 《エレボスの使者》 2 《氾濫潮の海蛇》 2 《水底の巨人》 -クリーチャー(15)- |
1 《航海の終わり》 1 《霊気のほころび》 1 《無効化》 1 《食餌の時間》 1 《邪悪退治》 2 《ケイラメトラの好意》 2 《層雲歩み》 1 《ナイレアの存在》 -呪文(10)- | -サイドボード(0)- |
--「青緑……タッチ白黒ですか。黒緑が同型に対して優位がないというのはいいとしても、逆にこの青緑はメジャーな黒緑に対してどのあたりに優位があるんでしょうか?」
rizer 「とりあえず、《水底の巨人》が飛びます」
--「まあそれはそうですね」
rizer 「そこそこ勝ちます」
--「wwwww ……確かにこのデッキ、よく見ると《ケイラメトラの好意》2枚、《層雲歩み》2枚と《雨雲のナイアード》、《メレティスの天文学者》に《トリトンの財宝狩り》に《戦いの柱》、そして《氾濫潮の海蛇》と《水底の巨人》が2枚ずつと、コンセプト的に必要なカードが全て複数枚揃っていて、動きはかなり安定しますね」
rizer 「4色からカード集めただけあって、呪文や生物の質もそこそこ強いので立ち回りも悪くなく、『英雄的』や《エレボスの使者》で爆発力もあると」
--「なんかコンボデッキみたいだな……ていうか呪禁オーラですよね、これ。《羊毛鬣のライオン》もいるし」
rizer 「ですね。おっしゃる通りに動きの安定性もそこそこあるので、まあなんか面倒くさいデッキなんですよね、相手側から見て」
--「相手から見たときの、自分のデッキの怖さ。それがミッドレンジ間での優劣を決定づける、と」
rizer 「ですね、相手から見てこうやられたら負けるだろうというパターンが欲しいですね」
先にデカブツを出されても盤面を返せるカードは優秀です
--「サイドに話を移すと、例によって先手デッキと後手デッキがあるんですかね」
rizer 「そうですね。サイド後の先手後手と、相手の色によって使い分けます」
7 《山》 6 《平地》 2 《沼》 1 《静寂の神殿》 -土地(16)- 2 《アクロスの十字軍》 1 《恩寵の重装歩兵》 2 《オレスコスの太陽導き》 1 《迷宮の霊魂》 1 《イロアスの英雄》 1 《アクロスの重装歩兵》 1 《ラゴンナ団の長老》 1 《燃えさし呑み》 1 《アクロスの密集軍》 1 《金床鋳込みの猛禽》 1 《エファラの管理人》 1 《エレボスの使者》 1 《ファラガックスの巨人》 1 《野蛮な祝賀者》 -クリーチャー(16)- |
1 《タイタンの力》 1 《統率の取れた突撃》 2 《槌の一撃》 1 《屍噛み》 1 《邪悪退治》 1 《天啓の嵐》 1 《ヘリオッドの選抜》 -呪文(8)- | -サイドボード(0)- |
--「赤白は《天啓の嵐》まで入れて、1マナ『英雄的』によるテンポ差を生かす形ですね」
rizer 「ですね、《水底の巨人》出してえっちらおっちらでの勝利を許してくれない相手用ですね」
--「《屍噛み》をタッチしているのが興味深いです。あのこの形でも《邪悪退治》を入れているという点もそうですね。何も考えずに《セテッサのグリフィン》を放り込んじゃいそうですが」
rizer 「なんだかんだで1体のデカブツで駆け抜ける環境ですので、《邪悪退治》は必要ですね。《セテッサのグリフィン》はたまたま《潮流の合唱者》がある相手に対してだったので《ファラガックスの巨人》を入れてますが、普段はそっちの方が良さそうです。《屍噛み》はそこそこのソリューションカードなので、空きがあれば入れていきたい1枚です。『英雄的』デッキだとなおさらですね」
--「基本的にケアできないし、無理アタックも正当化されますからね」
rizer 「《保護色》に次ぐ優秀なコンバットトリックですね。《邪悪退治》と同じで、先にデカブツを出されても盤面を返せるカードは優秀です」
--「《定命の者の決意》や《難題への挑戦》もそうですが、神々の軍勢のコンバットトリックはどれも優秀ですよね」
rizer 「あえて言うなら《屍噛み》の欠点はそこですね。同期のトリックに勝てない」
--「まだ《定命の者の熱意》がありますよ!」
rizer 「『絆魂』(笑)」
<セテッサの誓約者>と<アクロスの空護衛>の加入は明確に環境を変化させましたね
--「残りは後手デッキですね」
rizer 「はい、青黒タッチ白ですね」
8 《島》 7 《沼》 2 《平地》 1 《静寂の神殿》 -土地(18)- 1 《前兆語り》 1 《蘇りし者の密集軍》 1 《メレティスの天文学者》 1 《悪意の幻霊》 1 《戦いの柱》 1 《トリトンの財宝狩り》 1 《アショクの心酔者》 1 《雨雲のナイアード》 1 《フィナックスの信奉者》 1 《ナイレアの使者》 2 《氾濫潮の海蛇》 1 《形見持ちのゴルゴン》 1 《水底の巨人》 -クリーチャー(14)- |
1 《撤回のらせん》 1 《航海の終わり》 1 《ファリカの療法》 1 《胆汁病》 1 《無効化》 1 《屍噛み》 1 《邪悪退治》 2 《層雲歩み》 1 《ヘリオッドの選抜》 1 《死の国の重み》 -呪文(11)- | -サイドボード(0)- |
rizer 「デッキではなくプロトタイプという形で申し訳ないですが、相手の形に合わせてここから何枚か抜き差しします」
--「これはどういった相手にサイドインするのでしょうか?」
rizer 「一番手堅く強い形態なので、これで勝てる相手には即これにします。細い『英雄的』デッキとかうひょーですね」
--「確かにタフ2までの『英雄的』は一番捌ける形ですね」
rizer 「問題は勝ち手段とデカブツ対処にやや難があるという2点くらいです。ただ腐るカードがある状態で持ち出したいデッキではないので、相手のデッキを知ったサイド後に完成形でぶつけるという方針を取りました。メインをそれはそれで強いぶんぶんデッキで様子見して、サイド後に相手に合わせた受けデッキをぶつける……というのがこのプール使用時の戦い方でしたね」
--「確かに神々の軍勢によってカードが弱くなったからか、フィニッシャー確保に難が生じやすくなりましたね」
rizer 「ですね。フィニッシャーが弱くなったからこそ、《水底の巨人》のようなカードにも使いでが出てきましたし、『英雄的』の使用が不可避になりました。《セテッサの誓約者》と《アクロスの空護衛》の加入は明確に環境を変化させましたね」
--「なるほど……こんなところですかね。神々の軍勢による環境の変化も盛り込めたし、十分な内容になったのではないかと」
rizer 「ですかね」
--「では今回はこのあたりで、お疲れ様でした」
rizer 「お疲れ様でした」
rizer 「……で、終わっていれば簡単だったんですけどね」
--「!?」
ミッドレンジ最強時代の終焉を感じてるんですよね
rizer 「ここまで言っておいてなんですが、あとでもう何回かこの環境のシールドをやってみた結果、神々の軍勢の参入でミッドレンジ最強時代の終焉を感じてるんですよね」
--「なん……だと……?」
rizer 「カギは《突進するアナグマ》にあります」
--「いやいやおかしいでしょwww 一体どういうことなんです?」
rizer 「それは……」
~Part5につづく~
いかがだっただろうか。
テーロス×6と神々の軍勢環境との違いに着目してお送りした今回だが、グランプリ名古屋に参加しようという読者の参考に少しでもなれば幸いだ。
それでは、また次回。
さらに。
ここでお知らせがある。
2014年4月30日までの間、晴れる屋トーナメントセンターでは例によって。
今回の記事で題材となったシールドプールの店内貸し出しを行っている。
これであなたが考えたデッキの一人回しが可能になる。
友達と一緒に借りて、どのような構築が良いか議論するのもオススメだ。
「神々の軍勢シールドの練習がしたい」「実物のカードを並べて考えてみたい」「作ったデッキを実際に回してみたい」といった方は。
トーナメントセンターにご来店の際、大会受付カウンターにてスタッフにお気軽にお尋ねください。