浅原×中村「嘘か真か」

浅原 晃


ある日、スカイプにて

1.ヨーロッパ遠征中

AA 「ボンジュール」

なかしゅー 「ちわーす」

AA 「今、ヨーロッパ巡っているんですよね。どうですかそっちは?」

なかしゅー 「ごろごろしています。いや、城巡りとかもしたんですが、なにぶん、ジュザ(※1)の家が郊外なもので」

AA 「プラハの枚方(※2)みたいなものですか」

なかしゅー 「まあ、そうですね」

AA 「海外なんで《さまようもの》にならないように注意ですね」

なかしゅー 「一応、現地のプレイヤーに車で案内して貰っているので大丈夫ですよ」

AA 「現地の人に《ジュワー島の小走り》して貰っている感じですか」

なかしゅー 「さっきから何言ってるんです?」

AA 「いや、これって記事で使われたカード名が右に表示されるじゃない?それで会話の節々にカード名を混ぜて行こうかなと」

なかしゅー 「ろくでもないカードばかりじゃないですか(笑)」

AA 「そんな《甲鱗のワーム》なことないよ」

なかしゅー 「まあ、いいですけど、それじゃ、よろしくお願い《包囲マストドン》

AA 「何いってるんですか?」

なかしゅー 「え」

2.マジックとの付き合い方

AA 「ということで早速ですけど、ナックさん(※3)に聞きたいことってほとんどないんですよね」

なかしゅー 「なんですかそれ(笑)」

AA 「ナックさんて、マジックとの付き合いかたというかゲームに対するスタンスってもう完成というか達観しているイメージなんですよ。」

なかしゅー 「なんかもはやここまでくると生活の一部というか、実際、事実的にも収入源なんで、練習とかでも上手くなるためにやっているという考えが入り込んでないかもしれません。やらないといけないからやっているって面もありますね。もちろん、マジックが面白いから続けてますが」

AA 「ここまで、マジックを続けている以上は好きじゃないとか言われたらさすがにビックリしますけどね」

なかしゅー 「それはそうですね、ヤソとかは天邪鬼なんでいやゲーム全部好きだしとかいいそうですけど」

AA 「ヤソもさすがにマジックは結構好きみたいですけどね(笑)」

なかしゅー 「とことんやれるところまでやってみようとはかなり前に決意して、それで今のスタンスが固まりましたね。ただ、その結果として当然というか、自分でも時々、なんでマジックやってるんだろうと思ってしまう瞬間があったりしますけど。『3月のライオン』って漫画知ってます?」

AA 「将棋の漫画ですよね。ちょっと読んではいないんですが、『ハチミツとクローバー』と同じ作者ですよね、そっちなら読んだことあります」

なかしゅー 「そうですそうです。将棋の話で、その中に出てくる脇役にすごい共感を覚えるんですよ。引退寸前の棋士が主人公に負けた後、【将棋は好きですか?】っていう質問をされて、吐くセリフ何ですけど【勝った時は叫び出す程嬉しくて、負ければ内臓を泥靴で踏みにじられるように苦しくて、世界中に「生きている価値なし」と言われたような気持になる。なんで将棋をやってるかなんて理由は忘れたわ。】っていう感じのセリフがあるんですが、それがまあシンクロすること、すること。津村とかヤソとかトモハルは主人公になれるかもしれないですけど、よくも悪くも自分で自分を評価すると一般人よりというか、主人公気質では無いなと。」

AA 「ずっと海外回ってたその4人の面子ってそれぞれ違う個性があって、同じプロとして活動しているにも関わらず、マジックに対する考え方とか楽しみ方とか全然違って面白いですよね。将棋とか碁はプロ世界になると完璧な競技だと思いますけど、いろいろな接し方を許容できてるマジックって、どこまで行っても、いい意味でも悪い意味でもやっぱゲームであるって部分は大きいのかなと。というか、ナックさんは【ゲームとしてのマジック】との付き合い方が上手い気はしますね。いろいろなコミュニティに参加したりというのもそうですし」

なかしゅー 「デッキを作ったりとかそういった才能無いですからね。その辺はちょっと諦め入ってます。その4人でいろいろ話したことありましたけど、本当に考え方が違ってて結構喧嘩にもなりましたよ(笑)マジックに期待しているものも違うんじゃないかなっていうのはありますね。津村はマジックを楽しんでもっと上手くなりたいって気持ちが強くて、だから逆にそういう向上心が無い人を許せないみたいな部分があって、逆にヤソは十分上手いという自覚があって自分を表現する場と考えていたり、その分人に対してあまり干渉しないというか好きにすればっていう面もあるんじゃないかなーと。」

AA 「ちなみにトモハルはハッピーの為ですか(笑)」

なかしゅー 「トモハルは何か明確な目標を持って行動すること自体が好きなんでしょうね。大好きなマジックで、あるイベントへ向けて結果を残す。例えば、PTで優勝する!って決めて、それに向けて努力するっていうことがハッピーだったんだと思います。サスペンドはありましたけど、マジック意外の他の行動を見てもそうだと思いますね。」

AA 「サスペンドと言えば、ギョームの2人(※4)が漏出の件でサスペンド出てしまいましたけど、正直、かわいそうですよね。罪に対する罰としては適正ではあると思いますが、単純にただ残念ですね。」

なかしゅー 「この件に関してはコメントしずらいですが、言えることは、彼らは本当の意味でマジックが好きですってことですか。サスペンドが出たという判決に対して異論も無いですし、結局、意図として悪意が無かったとしても免罪符にはなりません。事実は事実なので。ただ、彼らの人間性が悪い奴だと思うのは勘違いだと思うので、それだけは言っておきたいですね。また、サスペンドが明けたら返ってきてほしいですね」

AA 「そうですね、それは同感です。ナックさんはやれるとこまでやるだから、彼らのこと待ってあげられますしね、頑張ってマジック界に残っていてください」

なかしゅー 「頑張ってみますよ」

AA 「話戻しますけど、結局ナックさんはその4人の中でもさらにどれのタイプでも無さそうですね。自分でも一般人に近いって言ってましたけど、他の面子に比べてマジックというゲームに明確な目標を持たずにマジックを続けているタイプなんですか?」

なかしゅー 「ゲームに関してはそうかもしれないですね。マジックというゲームで勝ち続けることが目標であって過程において何かこだわるってことは少ないですね。できるだけ一貫性を保とうとしながら小狡い事も考えていたり、かと思えば信義則を重視したりとか、至ってノーマルというか矛盾だらけのごくごく一般的な小市民じゃないでしょうかね。あの3人のように、何かに全てを預けられるような信念や才能も無いので、勝つためにどういった選択を取ればいいのかというのをいっつも考えてますね。そういう意味では選ぶっていうのが自分のパーソナリティなのかもしれません。

AA 「その辺の考え方というか、マジックとの付き合い方はマジックならではだなぁと思いますけどね。」

なかしゅー 「あんまり自分に負荷をかけない生き方をしているということで(笑)。その辺は自分に嘘を付いてごまかしているのかもしれませんね。続けるために。本当は1番を目指すというのが理想なのかもしれませんが」

AA 「負荷が無いってのは自然と長く続けられるってことだから、すごいいいことだと思いますけどね。ナックさんよりも上手いプレイヤーはたくさんいると思いますけど、最高レベルを3年連続で維持できるのはナックさんくらいじゃないですか」

なかしゅー 「それはやる気の問題じゃないですかね(笑)」

AA 「そのやる気を現実的なラインで高いレベルで継続させるのが大変ってことなんじゃないですかね。まあ、3月のライオンの例のセリフのように、ある種の強迫観念で続けているのかもしれませんけど(笑)。他のプレイヤーはマジックのゲームに対しての比重が高いってのもあるのかもしれません。ナックさんは旅好きだし、コミュニティ的な活動というか、外人を家に呼んで交流したりしてますしね。そういったものでマジックっていうものの価値がゲーム以外にも大きいじゃないんですか?」

なかしゅー 「どうなんでしょうね。他のプレイヤーのことは分からないですが、俺も1年で50点のプロポイントという尺度でものを考えてはいますから、勝ちへのこだわりはそれなりに強いですよ。ただ、勝てなかったからといって絶望しないだけです。負けると悔しいのはそれこそ腸を土足で踏まれたようですが。」

AA 「まあ、上に行く人は誰もが負けず嫌いだと思いますけどね。でもその辺はしっかり割りきってる感じではありますよね。さっき行っていた選ぶっていうスタンスの影響もあるんですかね」

なかしゅー 「実際にプレイングという分野に関しては、一定以上の水準に達しているとあまり意味が無いものと考えている節があるので、デッキにしても、これとこれに対して弱点が少ないからこれを選ぶとか、ドラフトのアーキタイプにしてもこれの優位性が高いから選ぶとか。自分が選ぶだとすると、トモハルは作るでヤソが使うなのかな」

AA 「そいや、昔、しゃみしゅーなんて呼ばれかたしてましたけど、三味線とか使ったりするんですか(笑)?」

なかしゅー 「やられたら嫌なことはやらない主義です(笑)」

AA 「ナックさんはデジタルな気配はしますけどね」

なかしゅー 「ミスディレクションは試みますけどね。概ねデジタルじゃないですか」

AA 「論理的な部分で相手のミスを誘うっていうゲーム内のミスディレクションなら、デジタルの範疇ですね。きつそうな顔とかのミスディレクションはしないですか(笑)?」

なかしゅー 「根は正直なんでちょっと(笑)。まあ、ナチュラルというか基本的にメンタル弱いんで盤外戦はめっぽう弱いですよ」

AA 「マジすか」

なかしゅー 「マジしかないですね。癖のある人は苦手です。トラッシュトークも嫌いですし。ただ、ブラフは好きなんですが、情報過多にして、深読みさせるっていうのがミスディレクションの基本的な技術ですね。つい先日ツイッターで話題になった(※5)本来置くべき土地を置かないとかそういうのも、プロツアーで実践したことがありますよ。」

AA 「あるんですか?」

なかしゅー 「ボロスを使ったエクステンデッドだったかな。2マナで止まった振りをして戦ったことがあります。手札偽装ですかね。」

AA 「なるほど」

なかしゅー 「だいたいそういう状況に立たされてる時って負けてるんですけどね」

AA 「必死ですからね(笑)」

3.今後の展望

AA 「そぅいえば、マジックを続けるのはいいとして、これからカードゲーム関連の何かをしようとかはあるんですか」

なかしゅー 「出来ればいいですね、そういった意味も考えて今、関東(※6)に引っ越して来ましたし。今のところ自分探ししている状態ですよ」

AA 「自分探しですか、見つかるといいですね(笑)。なんとなく、今回でナックさんがマジックをずっと続けられる理由がちょっと分かった気がします」

なかしゅー 「なんか、取りとめのない話になってしまいましたけどいいんですかね」

AA 「マジックのゲーム外の領域の話って、誰とでも出来るわけではないと思っているので、良かったと思いますよ。」

なかしゅー 「次はどうするんですか?」

AA 「決めてないっすね」

なかしゅー 「しゅー繋がりで、コムシューかラッシュ」

AA 「すごい要望があれば考え《ルーメングリッドの管理人》

なかしゅー 「締めがそれですか(笑)」

※1 ジュザ・マーティン:親日家。いろいろとあって津村弟と言われることもある。
※2 枚方:大阪の東の方にあるところ。中村修平の実家がある。
※3 中村修平:ナックさんの愛称が何故が定着。
※4 ワフォタパとマティノン:新たなるファイレクシアのカード情報漏洩問題でサスペンドを受けた。 
※5 土地を詰まりブラフ:ツイッターで話題になったが、玄人がたまに使う程度のマニアック技。
※6 関東に引っ越した:千葉に近い当たりに住んでいるらしい