【コガモメモリーズその4】ゴブバンテージ

津村 健志



これまでに数多くのデッキで世界を魅了し、今では強豪国としての地位を確固たるものにした日本。

第3回の「Oath of Trix」しかり、最近であればマッキーさん(三原 槙仁)の「コロッサル・グルール」やなべ君(渡辺 雄也)の「ジェスカイ・トークンズ」しかり、それこそ数え始めればきりがないほど、いくつもの輝かしいデッキを世に送り出してきました。

そんな中で、最も僕が衝撃を受けたデッキは、第3回と同じく、チーム「Fireball」が生み出したこのデッキです。



岡本 尋「ゴブバンテージ」
世界選手権2003 (トップ8)

20 《山》
2 《古えの墳墓》
1 《裏切り者の都》

-土地(23)-

4 《ゴブリンの従僕》
4 《モグの狂信者》
3 《スカークの探鉱者》
4 《ゴブリン徴募兵》
4 《ゴブリンの群衆追い》
1 《火花鍛冶》
3 《ゴブリンの女看守》
3 《宝石の手の焼却者》
3 《ゴブリンの戦長》
3 《ゴブリンの首謀者》
2 《包囲攻撃の司令官》

-クリーチャー(34)-
3 《入門の儀式》

-呪文(3)-
4 《炎の印章》
4 《紅蓮光電の柱》
4 《略奪》
1 《ゴブリンの名手》
1 《宝石の手の焼却者》
1 《ゴブリンの暗殺者》

-サイドボード(15)-
hareruya



ゴブリンの従僕ゴブリンの首謀者


世界中をあっと言わせた会心のデッキがこの「ゴブバンテージ」。『スカージ』と『基本セット第8版』が発売されるやいなや、プレイヤーたちはこぞって「《精神の願望》」デッキの話題に没頭しました。当時は画期的な新システムとして「ストーム」が大きな注目を集めており、どのリストが最適かを議論している記事を頻繁に見かけました。


思考停止苦悶の触手精神の願望

大きな注目を集めた「ストーム」


ですがチーム「Fireball」の面々が目を付けたのは、そんな不確実なコンボデッキではなく、実に堅実で、それでいて大胆な「ゴブリン」デッキだったのです。

こちらの記事にもあるように、このデッキは《ゴブリン徴募兵》を最大限に悪用するデッキです。「世界選手権2003」前までは全く見向きもされなかったこのカードを、チーム「Fireball」は見逃しませんでした。6枚の<山>と<ゴブリン徴募兵>さえあれば4ターンキルが可能だと聞いた時には、何かの間違いかと耳を疑ったものです。





「ゴブバンテージ」は、それまでの「ゴブリン」デッキとは一線を画していました。2ターン目に登場した<新緑の魔力>をも悠々と乗り越え<破滅的な行為>でリセットされても決して息切れすることのないこのデッキは、僕たちの知っている「ゴブリン」デッキとは似ても似つかないものだったのです。



無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーー!


とにもかくにも、《ゴブリン徴募兵》は強すぎました。そこから導かれる《ゴブリンの首謀者》は、必然的に4枚のゴブリンを供給することを約束し、ましてやそれらが状況に合わせた《宝石の手の焼却者》《ゴブリンの名手》だったりするのですから、対戦相手としてはたまったもんじゃありません。


宝石の手の焼却者


この大会後、「ゴブバンテージ」は一大旋風を巻き起こし、《ゴブリンの従僕》は禁止カードに指定されることに。ただし、このデッキのダイナモは<ゴブリンの従僕>ではなく<ゴブリン徴募兵>だったのです。結果として「ゴブバンテージ」は形を変えて生き残り、後の「プロツアー・ニューオーリンズ2003」でも輝かしい成績を残しました。



浅原 晃「ゴブバンテージ」
プロツアー・ニューオーリンズ2003 (10位)

17 《山》
4 《古えの墳墓》

-土地(21)-

3 《スカークの探鉱者》
4 《ゴブリン徴募兵》
4 《ゴブリンの群衆追い》
4 《ゴブリンの女看守》
4 《ゴブリンの戦長》
2 《宝石の手の焼却者》
1 《ゴブリンの名手》
3 《ゴブリンの首謀者》
2 《包囲攻撃の司令官》

-クリーチャー(27)-
4 《金属モックス》
4 《煮えたぎる歌》
4 《ゴブリンの放火砲》

-呪文(12)-
4 《ゴブリンのうすのろ》
4 《荒残》
3 《忘却石》
2 《破壊的脈動》
1 《ゴブリンの名手》
1 《ゴブリンの模造品》

-サイドボード(15)-
hareruya



金属モックスゴブリンの放火砲


このバージョンは《ゴブリン徴募兵》がライブラリーに好きなだけのゴブリンを調達できる点を悪用し、《ゴブリンの放火砲》を搭載しています。このおかげで《金属モックス》《煮えたぎる歌》などがあれば、最速なら2ターンキルも可能になりました。

このリストも《ゴブリンの従僕》があった頃と同様の、またはそれ以上の勝率を誇っていたため、数ヶ月後には当然のごとく《ゴブリン徴募兵》も禁止カードに指定され、「ゴブバンテージ」はその短い、しかしながら実に華々しい歴史に幕を下ろすこととなりました。



レガシーでも禁止です。


「ゴブバンテージ」は、歴代でも屈指の「クリーチャーコンボ」デッキであり、それを作り上げたのは、日本を代表するプロ集団でした。

初めてこのデッキを見たときの衝撃を、僕は生涯忘れることはないでしょう。

いつの日にか、これと同様のインパクトを残せる日がくるように、僕も自分でデッキが作れるように精進していきたいと思います!


コガモ