■調整初期
「プロツアー『マジック・オリジン』の権利が、ない。」
【プロツアー『タルキール覇王譚』での上位入賞】から約8ヶ月。プロツアー・グランプリでの度重なる敗戦により、ついに次回のプロツアーの権利を失ってしまいました。
プロツアーへの参加権がどうしても欲しかった僕は、一念発起して5月上旬の【GPパリ】に参加することを決心。マジック・オンライン(MO)での練習に加え、ゴールデンウイークには【Planes Walker’s Cup】(PWC)に連日参加してと、かなりの時間を練習に費やしました。
その練習で鍛え上げたデッキを手に、自信を持って遠征した【GPパリ】であっさりと初日落ち。
しかし、翌週には【GP上海】が控えているので凹んでいる暇はありません。翌日の日曜日は朝食以外一歩も部屋から出ず、朝9時から延々とMOで練習していました。
主に回していたのは以下の2つです。
1つ目のデッキである「緑白大変異」は、元々【大阪のPPTQで表西くんが優勝したデッキ】を自分なりに調整したもの。ゴールデンウイークに調整し、手ごたえがあったのでGPパリでも使用しました。
9 《森》 6 《平地》 4 《吹きさらしの荒野》 1 《溢れかえる岸辺》 4 《豊潤の神殿》 1 《花咲く砂地》 -土地(25)- 4 《エルフの神秘家》 3 《始まりの木の管理人》 4 《棲み家の防御者》 4 《羊毛鬣のライオン》 3 《爪鳴らしの神秘家》 4 《死霧の猛禽》 2 《加護のサテュロス》 4 《囁きの森の精霊》 -クリーチャー(28)- |
1 《アジャニの存在》 3 《勇敢な姿勢》 2 《ドロモカの命令》 1 《太陽の勇者、エルズペス》 -呪文(7)- |
3 《アラシンの僧侶》 2 《垂直落下》 2 《異端の輝き》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 2 《スズメバチの巣》 1 《加護のサテュロス》 1 《勇敢な姿勢》 1 《ドロモカの命令》 1 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
2つ目は「緑タッチ赤信心」。普通の形と少し違っていて、エスパードラゴンへの相性を改善するために「大変異」パッケージが入っているタイプ。
当時ナベが調整していたものを教えてもらい、白緑大変異と並行して自分なりに調整していました。
9 《森》 1 《山》 4 《樹木茂る山麓》 2 《吹きさらしの荒野》 4 《奔放の神殿》 3 《ニクスの祭殿、ニクソス》 1 《精霊龍の安息地》 -土地(24)- 4 《エルフの神秘家》 4 《爪鳴らしの神秘家》 4 《森の女人像》 2 《棲み家の防御者》 4 《クルフィックスの狩猟者》 4 《死霧の猛禽》 3 《世界を喰らう者、ポルクラノス》 4 《囁きの森の精霊》 4 《龍王アタルカ》 1 《女王スズメバチ》 -クリーチャー(34)- |
2 《歓楽者ゼナゴス》 -呪文(2)- |
4 《ナイレアの信奉者》 2 《起源のハイドラ》 2 《棲み家の防御者》 2 《スズメバチの巣》 2 《垂直落下》 2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 1 《精霊龍、ウギン》 -サイドボード(15)- |
どちらも8人構築は安定して勝ててはいるが、いまいちパッとせず、GP上海ではこのままでは勝ちきれないなという印象。
次のプロツアー『マジック・オリジン』の権利がない僕は、トップ8に入らなければならないのです。
そこそこ勝てる、ではダメ。もっと振り切れなければ。他のプレイヤーに差をつけなければ。
ということでさらなる飛躍のために、新しいデッキを作成することにしました。
・「白緑大変異」を使っていて感じたのは、「マナクリーチャー+大変異+囁き森」という組み合わせの強さ。特に先手3ターン目の《囁きの森の精霊》は環境最強レベル。絶対に使いたい。
・「信心」を使っていて感じたのが、「信心」というデッキのポテンシャルは高いが《死霧の猛禽》のせいで《世界を喰らう者、ポルクラノス》が弱い!解雇しよう。
・エスパーが負け組なのは間違いないが、一定数いることもまた事実。負けないようにしたい。→《思考囲い》+《棲み家の防御者》の組み合わせで優位に立てる。
・一番人気は「大変異」デッキや各種アブザン。これらに有利になるようにデッキを組むべきだ。→大変異系で盤面が固まる&ゲームが長期化しやすいので、《龍王アタルカ》《精霊龍、ウギン》といったカードが強い!
・《サテュロスの道探し》+《棲み家の防御者》+《精霊龍の安息地》の組み合わせは強い!デッキの安定性が上がり、後半の《サテュロスの道探し》も嬉しい!打てさえすれば環境最強除去である《残忍な切断》も使えるようになった。
といったことを考えながらカードを並べ始めてみると、あれよあれよという間に60枚のデッキ(のようなもの)が完成!
「負けてもいいから、とりあえず試してみるか!」と急いでDailyEventにジョインしてみたリストが、こちら。
6 《森》 1 《山》 4 《樹木茂る山麓》 4 《疾病の神殿》 4 《ラノワールの荒原》 2 《ニクスの祭殿、ニクソス》 2 《精霊龍の安息地》 -土地(23)- 4 《エルフの神秘家》 4 《サテュロスの道探し》 3 《爪鳴らしの神秘家》 3 《森の女人像》 3 《棲み家の防御者》 4 《死霧の猛禽》 3 《クルフィックスの狩猟者》 4 《囁きの森の精霊》 3 《龍王アタルカ》 1 《女王スズメバチ》 -クリーチャー(32)- |
3 《残忍な切断》 1 《エレボスの鞭》 1 《精霊龍、ウギン》 -呪文(5)- |
4 《ナイレアの信奉者》 4 《思考囲い》 3 《垂直落下》 2 《スズメバチの巣》 2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
試したいカードを色々入れてみたのでかなり雑なリストでしたが、これが強い、強い!
あれよあれよとDE4-0。
「信心」特有の展開の速さと盤面の強さ、そして「大変異」に加え「ドラゴン」要素を加えたことによる長期戦の強さと盤面への干渉力。
想定通りにデッキは動き、特に各種アブザン系には圧倒的な強さを発揮しました。
「(黒)(黒)はさすがに厳しいし《エレボスの鞭》いらないな」「《残忍な切断》は《サテュロスの道探し》依存だからメインは2枚が限界だな」と簡単なフィードバックでデッキをアップデートしたのち、本格的に調整を進めることに。
ナベ(渡辺 雄也)にシェアしたところ彼も気に入ってくれて、一緒に調整を開始。彼は一時期5回DE出場して4回4-0、1回3-1と圧倒的な勝率をたたき出し、その強さを証明してくれました。
また、【GP上海】と同じ週末に行われる【2014 Magic Online Championship】に出場予定のライザ(石村 信太朗)にもデッキを教えてみたところ、これが非常に乗り気。
井川さんの新作強ーい
— rizer (@rizer1891) 2015, 5月 10
【2014 Magic Online Championship】のデッキ提出期限の関係で調整時間自体はそこまで長く取れませんでしたが、実際に彼は一年に一度の大舞台で実際に使用してくれました。
ライザ、信頼してくれてありがとう!
7 《森》 1 《山》 4 《樹木茂る山麓》 1 《吹きさらしの荒野》 4 《疾病の神殿》 2 《ラノワールの荒原》 1 《悪意の神殿》 2 《ニクスの祭殿、ニクソス》 1 《精霊龍の安息地》 -土地(23)- 4 《エルフの神秘家》 4 《サテュロスの道探し》 4 《棲み家の防御者》 3 《爪鳴らしの神秘家》 3 《森の女人像》 4 《死霧の猛禽》 4 《クルフィックスの狩猟者》 4 《囁きの森の精霊》 4 《龍王アタルカ》 -クリーチャー(32)- |
1 《思考囲い》 2 《残忍な切断》 -呪文(5)- |
4 《ナイレアの信奉者》 3 《思考囲い》 3 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 2 《スズメバチの巣》 1 《高木の巨人》 1 《垂直落下》 1 《精霊龍、ウギン》 -サイドボード(15)- |
■弱点の克服 ~3色から4色へ~
メインボードの選別や、サイドボーディングの対応、《棲み家の防御者》はメインに何枚必要かなどをナベと話し合いながら調整を進めていましたが、日にちが経つにつれ、弱点がはっきりとしていきました。
このデッキの弱点は明確で、マルドゥと信心が辛い。
前者は《雷破の執政》《嵐の息吹のドラゴン》という飛行クリーチャーのラインが厳しく、メインの《思考囲い》やサイドボードの《神々の憤怒》もあり、なかなか止めることが難しい。また、相手が先手だと《思考囲い》《龍詞の咆哮》《ゴブリンの熟練扇動者》《はじける破滅》のようなイージーモードもあり、なかなか勝率を上げることができません。
後者は相手の方がマナクリーチャーや《ニクスの祭殿、ニクソス》が多いため初速が早く、その分の展開力の差で負けることが多かったのです。また、こちらの除去が薄いために早いターンの《世界を喰らう者、ポルクラノス》も致命傷になることも多々。もちろん、こっちが先手で良い動きをしたり、後手でも《思考囲い》《残忍な切断》がハマって勝つことはありましたが、やはり《龍王アタルカ》先出しが圧倒的に有利なので、どうしても不利がついてしまっていました。
この2点に頭を悩ませていたところ、ナベが出発前日に《龍王シルムガル》入れることを発案。
このナベの柔軟な発想が、デッキを大幅に強化することに。
急遽マナベースを改良し、MO上でナベとテストプレイを重ねたところ、この《龍王シルムガル》が無双!
《雷破の執政》《嵐の息吹のドラゴン》といった各種ドラゴンを受け止め、また奪った生物の方がパワーが高いことが多いため、《はじける破滅》をほぼ喰らわないこのカードは本当に強力で、対マルドゥの相性を大幅に改善してくれました。
信心に対しても、対マルドゥほど劇的ではないにせよ強力でした。場に出てしまった《龍王アタルカ》や《世界を喰らう者、ポルクラノス》を奪えば相手の対処手段はかなり限られるので、最序盤のマウントを防ぎ中長期戦に持っていけさえすれば、徐々に有利になる展開が多くなりました。
また、3色→4色にするために《精霊龍の安息地》を増量したことにより、さらに長期戦に強くなりました。その強さは特に対アブザン戦で発揮されます。捨てさせても除去っても、次々に「龍王」が、《精霊龍、ウギン》が盤面に戻ってくるその強さたるや。
ということで長くなりましたが、【GP上海】で使ったリストがこちらです!
4 《森》 1 《山》 3 《樹木茂る山麓》 4 《ラノワールの荒原》 3 《疾病の神殿》 3 《華やかな宮殿》 4 《精霊龍の安息地》 1 《ニクスの祭殿、ニクソス》 -土地(23)- 4 《エルフの神秘家》 4 《サテュロスの道探し》 4 《爪鳴らしの神秘家》 3 《棲み家の防御者》 2 《森の女人像》 4 《死霧の猛禽》 4 《クルフィックスの狩猟者》 4 《囁きの森の精霊》 2 《龍王シルムガル》 3 《龍王アタルカ》 -クリーチャー(34)- |
2 《残忍な切断》 1 《精霊龍、ウギン》 -呪文(2)- |
4 《ナイレアの信奉者》 4 《思考囲い》 2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 1 《棲み家の防御者》 1 《悪行の大悪鬼》 1 《龍王シルムガル》 1 《自傷疵》 1 《残忍な切断》 -サイドボード(15)- |
■グランプリ・上海2015レポート
・Day1
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
Round 1 | BYE | |
Round 2 | BYE | |
Round 3 | アブザンコントロール | ×〇× |
Round 4 | エスパードラゴン | 〇〇 |
Round 5 | シディシウィップ | ×× |
Round 6 | アタルカレッド | 〇〇 |
Round 7 | アタルカレッド | 〇×〇 |
Round 8 | エスパードラゴン | 〇〇 |
Round 9 | アブザンコントロール | 〇〇 |
7-2!
1-2スタートで意気消沈するも、何とか踏ん張りました。
完全に私事で余談ですが、今シーズンは「7GP5バブル(6-2で最終戦)」から5連続勝利中!粘り強いのは嬉しいですけど、たまには9-0や8-1したいですね。
・Day2
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
Round 10 | エスパードラゴン | ×〇〇 |
Round 11 | エスパードラゴン | ×〇〇 |
Round 12 | マルドゥドラゴン | 〇〇 |
Round 13 | アブザンアグロ | 〇〇 |
Round 14 | 赤緑ドラゴン | ×× |
Round 15 | アブザンコントロール | 〇〇 |
5-1。
トータル12-3で18位。500ドルとPP3点を獲得。
最終戦で敗れた【GPオークランド】に続き、あと一歩届かず。非常に悔しいですが、まだまだ実力不足ですね。
この敗戦によりプロツアー『マジック・オリジン』への参加は絶望的となりましたが、可能性がある限りシーズン最後まで諦めずに頑張ろうと思います。
今回は日英でデッキテク、英語版でマッチカバレージを取っていただいたので、よろしければこちらもご覧ください。
・【デッキテク:井川 良彦の「ドラゴン信心」】
・【DECK TECH: DRAGON DEVOTION】
・【ROUND 13 FEATURE MATCH: YOSHIHIKO IKAWA (DRAGON DEVOTION) VS PARK JUN YOUNG (ABZAN)】
■おまけ:MOPTQレポート
【GP上海】の翌週はプレミアイベントがなかったので、MOでプロツアーを目指すことに。
PTQに出場するのにはPPTQを突破する必要があるのは、リアルもMOも一緒。
メタゲームを見てみると、【GP上海】の結果を受けてアブザンコントロール(というか【市川くんのデッキ】)が増えている傾向があるようです。
相性が良いとはいえ、もう少し落とさないようにしよう。→サイドに《精霊龍、ウギン》を追加してJoin。
・5/22 MOPPTQ(Standard)
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
Round 1 | マルドゥドラゴン | 〇×〇 |
Round 2 | アブザンアグロ | 〇〇 |
Round 3 | アブザンコントロール | 〇〇 |
Round 4 | 赤単 | 〇×〇 |
Round 5 | アタルカレッド | 〇〇 |
5-0! MOPTQの参加権獲得!
からの、MOPTQ!!もちろんデッキは「ドラゴン信心」で!
・5/24 MOPTQ Finals(Standard)
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
Round 1 | ドラゴン大変異 | 〇〇 |
Round 2 | マルドゥドラゴン | ×〇〇 |
Round 3 | アブザンアグロ | ×〇〇 |
Round 4 | アブザンアグロ | ×〇〇 |
Round 5 | 緑タッチ赤白信心 | 〇〇 |
Round 6 | ティムールミッドレンジ | ×〇× |
Round 7 | 緑タッチ赤信心 | 〇×〇 |
6-1でトップ8!
同じデッキで5-2と一歩及ばなかったライザの分まで、勝ちたい!勝たねば!
今回こそは!!!
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
準々決勝 | 緑タッチ赤信心 | ×× |
ダメでした!!!!!!!!!!!!!
第7回戦で倒した緑タッチ赤信心に見事リベンジされてしまいました。まぁ元々相性はよくはないので、計3回も当たれば1敗はしてしまうのは仕方ないところですね。第7回戦は勝っても負けてもトップ8が確定していたので、どうせなら先に負けたかったです(涙)
トップ8デッキリストなどはこちら→【 SCHEDULED EVENTS MAY 24, 2015 STANDARD PTQ】
ということで、【GP上海】、【MOPTQ】とどちらも一歩及ばずでプロツアーの権利獲得はなりませんでした。
ですが、デッキ自体は非常に良かったと思います。比較的キープが緩い(マリガンが厳しくない)デッキで、かつブン回りがある、そして長期戦にも強い!
緑信心がこれ以上増えるようだと少し厳しくはなりますが、極端に増えない限りはまだまだ戦えるデッキだと思います。
特に各種アブザン(アグロ・コントロール・大変異)にかなり有利な構成になっているので、アブザンに勝ちたい人は、ぜひ使ってみてください!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今月からはモダンシーズンに入るので、次はモダンの中でも、僕自身が得意としているBG系(ジャンド・アブザン)に焦点を当てた記事を書きたいなと考えています。
それでは、またの機会にお会いしましょう!
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