◆総合勝率
順位 | 名前 | 総合成績 | 勝率 | 好んだ色 |
1位 | 渡辺 雄也 | 25勝8敗 | 76% | 赤白系 |
2位 | 三原 槙仁 | 19勝14敗 | 58% | 緑黒系 |
3位 | 八十岡 翔太 | 19勝17敗 | 53% | 5色 |
3位 | 行弘 賢 | 19勝17敗 | 53% | 緑黒系 |
5位 | 中村 修平 | 16勝17敗 | 48% | 緑黒系 |
6位 | 高橋 優太 | 10勝11敗 | 48% | 緑黒系 |
7位 | 中村 さら | 8勝10敗 | 44% | なし |
8位 | 中村 肇 | 6勝9敗 | 40% | スゥルタイ |
9位 | 市川 ユウキ | 8勝16敗 | 33% | なし |
9位 | 井川 良彦 | 6勝12敗 | 33% | マルドゥ |
9位 | 和田 寛也 | 3勝6敗 | 33% | ティムール |
9位 | 山本 賢太郎 | 3勝6敗 | 33% | 緑系 |
9位 | 高橋 純也 | 1勝2敗 | 33% | なし |
※9/30 行弘賢の成績を修正しました
◆氏族別勝率
氏族 | 勝率 |
アブザン | 56% |
スゥルタイ | 51% |
ティムール | 49% |
ジェスカイ | 46% |
マルドゥ | 42% |
その他 | 52% |
※その他には「4色以上」「2色」が該当する。「3色+1色」はベースの氏族に合わせてカウントしている。
◆2色別勝率
対抗色 | 勝率 |
緑黒 | 53% |
黒白 | 52% |
青緑 | 50% |
青赤 | 47% |
白赤 | 44% |
友好色 | 勝率 |
緑白 | 60% |
青黒 | 51% |
青白 | 50% |
赤緑 | 49% |
黒赤 | 42% |
※厳密なメインカラー採用の有無ではなく、例えば「アブザン」なら「緑白」「緑黒」「白黒」でそれぞれ1回ずつカウントされている。
◆勝率76%の原動力は逆行するコンセプト
世界でも指折りのプレイヤーたちが集った合宿だったが、33マッチで勝率76%という驚異的な成績で独走したのは渡辺 雄也だった。続く三原と八十岡・行弘らは50%を超える好成績を残したものの、その他のプレイヤーは皆勝率50%を割ってしまうという、まさに「誰にも止められない」とはこのような事態を指すのだろう。
そんなジャガーノートが好んだ戦略は意外にも「赤白系」だった。
多色環境なのでがっぷり四つに組み合うゲームも珍しくなく、自然と「緑黒系」のスゥルタイやアブザンという遅いゲームでしっかりとアドバンテージを獲得できるピックが好まれていた。これがこの環境のスタンダードで、実際に上の表で紹介したように平均勝率の高さは圧倒的に「緑黒系」が良いことも明らかだ。
しかし、その中で渡辺は、その風潮に逆行するように「赤白系」をためらわずに選択していたことが印象的だった。
遅いゲーム。多色環境。
『タルキール覇王譚』を象徴するこれらのキーワードから、緑系や除去色に手が伸びるプレイヤーが多い中で、それらのカードの奪い合いから渡辺は明らかに一歩身を引いていた。冷静に空いている”弱い色”である「赤白系」を、”相対的に強い色”だと評価し、適切なタイミングでピックしていたのだ。
◆黒<白という慧眼
もちろん、周囲のプレイヤーたちも「赤白系」をピックしていなかったわけではない。しかし、前提として”弱い色”である「赤白系」は、彼らにとって「緑黒系」あるいは「緑系」に進めなかったときのサブプランであったように思える。
その中で渡辺の合宿の締めとなる発言が映えている。
渡辺 「(トップコモンに《アイノクの盟族》を挙げて) 《消耗する負傷》と悩むけど、両方一緒に出たら《アイノクの盟族》を取る。理由としては、2マナのカードが絶対ある程度の枚数欲しいことと、黒より白の方が色としての評価が上がったこと」
黒より白のほうが評価が高い。
これがすべてだろう。
渡辺 雄也は誰よりも白への評価が高かったのだ。
楔の3色が基本となる中で白が絡む組み合わせは3種類の氏族だけ。
アブザン、ジェスカイ、マルドゥ。
「緑黒系」の素養があるアブザンを除くと、ジェスカイとマルドゥが白の評価を高めた時に選択肢にあがる氏族だ。そして、このジェスカイとマルドゥなどの「赤白系」を渡辺は11回のドラフトのなかで6回も選択していた。
◆最強の戦略を支える前提という壁
ただ、渡辺 雄也が勝率76%を叩き出す原動力となった「赤白系」が最強のアーキタイプだ!
という結論には至らないことは、なぜ渡辺が「赤白系」で好成績を残せたのかが関係している。
まず前提として「赤白系」は平均勝率が低い”弱い色”なのだ。
しかし、それを嫌うプレイヤーや評価が低いプレイヤーが多く、”弱い色”のカードは過小評価されていたため、渡辺はそれらを適切に評価して勝利をつかんだ。
つまり渡辺の勝因には、周囲の過小評価が大きく関わっているのだ。
もしあの場に渡辺がもう一人いたならば?
これから「緑黒系」の評価が落ち着いたなら?
前提を変えてしまえば結果もいくらでも変わってくるのだ。今回は良き一手だった「赤白系」が純粋に勝率の低い選択肢に成り下がってしまう可能性も十分にある。
来週に迫るプロツアー『タルキール覇王譚』ではプロたちの評価はどのように変化しているのだろうか。
今回の合宿に参加していた皆の幸運と勝利を祈って。
菊名合宿『タルキール覇王譚』は幕を閉じる。