山本賢太郎のプロツアー『運命再編』レポート

山本 賢太郎



こんにちは。

プロツアー『運命再編』に参加してきました。



■ ドラフト



【菊名合宿】とマジックオンラインを含め20回弱ドラフト練習。
『運命再編』が加入した事により、大きく評価が上がったカードがいくつかありました。


1. 優良除去の増加・「変異」の減少によりゲームスピードが低速化し、カードアドバンテージを得れるカードの評価UP

《苦々しい天啓》《宝船の巡航》はカードアドバンテージが得られる反面、場やライフが劣勢だと打ちづらいという弱点がありましたが、ゲームスピードが低速化したことにより、キャストできるタイミングが増え評価UP。


苦々しい天啓宝船の巡航


特に《宝船の巡航》は「予示」の登場により墓地が増えやすくなったために、より強力に。
前環境では1週目で取られるカードではなかったですが、現環境ではデッキにもよりますが4~6手目が適正だと思います。


2. 「鼓舞」により「長久」生物の評価UP

《アブザンの戦僧侶》《マー=エクの夜刃》は能力自体は強力ですが、「長久」すると1ターンのタイムラグができてしまう弱点がありました。
しかし「鼓舞」によりタイムラグがなく効果を共有できるようになり評価UP。
特に絆魂効果を持つ《アブザンの戦僧侶》が与える影響は大きく、「鼓舞」カードを複数枚ピックしているならば初手級の強さです。


アブザンの戦僧侶マー=エクの夜刃



3. タフネス1の生物が増え《石弾の弾幕》の評価UP

《砂草原ののけ者》を筆頭にコモンにタフネス1の生物が増えたために、主にフィニッシュブローとしての役割が強かった《石弾の弾幕》が軽い全体除去になる機会が増えました。


石弾の弾幕


個人的には運命再編が加入して1番評価がUPしたカードで、今なら初手で取っても全く問題ないですね。


■ ファーストドラフト


初手は《前哨地の包囲》からスタート。
流れの良い青赤路線を維持したまま、『タルキール覇王譚』ではティムールピック。ちゃんと《石弾の弾幕》も取れ、非常に強力なデッキが出来ました



山本 賢太郎「ティムール」
プロツアー『運命再編』 1stドラフト

8 《島》
6 《山》
1 《開拓地の野営地》
1 《急流の崖》
1 《岩だらけの高地》

-土地(17)-

1 《ジェスカイの賢者》
1 《ジェスカイの長老》
1 《湿地帯の水鹿》
1 《戦名を望む者》
2 《ジェスカイの風物見》
1 《沸血の熟練者》
1 《突き刺し豚》
2 《蓮道のジン》
1 《氷河の末裔》
1 《氷河の忍び寄り》
1 《雪角の乗り手》

-クリーチャー(13)-
2 《引き剥がし》
1 《苦しめる声》
1 《実在への書き込み》
1 《石弾の弾幕》
1 《打ち倒し》
2 《ナーガの意志》
1 《宝船の巡航》
1 《前哨地の包囲》

-呪文(10)-
hareruya








ラウンド 対戦デッキ  勝敗
Round 1マルドゥ〇〇
Round 2アブザン×〇〇
Round 3ティムール×〇〇


結果:3-0

スタンダードでも活躍中の《前哨地の包囲》の強さは当然ですが、《石弾の弾幕》も重要な局面で何度もゲームを決めてくれました。


前哨地の包囲石弾の弾幕



■ セカンドドラフト


初手は《城塞の包囲》とまたも恵まれたスタート。しかし同パックにあった白のプレイアブルカード5枚が全て返ってこない不穏な流れ。
その後も白のカードが流れてこないので《城塞の包囲》を切り、流れの良い青をまず確定させることに。
『タルキール覇王譚』では《増え続ける成長》をピックできたので2色目を緑へ。
しかしその後は緑のカードを上手くピックできず、最終的には青緑2色ではカードが足りず、仕方なく赤をタッチする苦しいデッキになりました。



山本 賢太郎「ティムール」
プロツアー『運命再編』 2ndドラフト

8 《島》
6 《森》
1 《山》
1 《岩だらけの高地》
1 《急流の崖》

-土地(17)-

1 《族樹の管理人》
1 《ジェスカイの賢者》
1 《ジェスカイの長老》
1 《名高い武器職人》
1 《荒野の後継者》
1 《氷羽のエイヴン》
2 《ジェスカイの風物見》
1 《湯熱の精》
1 《氷河の末裔》
2 《隠道の神秘家》
1 《エイヴンの偵察員》
1 《氷河の忍び寄り》
1 《河水環の曲芸士》

-クリーチャー(15)-
1 《冬の炎》
1 《龍火浴びせ》
1 《無形の育成》
1 《増え続ける成長》
1 《ナーガの意志》
2 《鐘音の一撃》
1 《英雄の刃》

-呪文(7)-
hareruya








ラウンド 対戦デッキ  勝敗
Round 9ジェスカイ (市川 ユウキ)××
Round 10マルドゥ (Jon Finkel)××
Round 11ティムールタッチ白××


結果:1ゲームも取れず0-3。

弱いながらも勝ち手段のあるデッキで0-3はしないだろうと思っていたので、これは堪えました。



■ モダン



プロツアー前週に行なわれた【チーム戦グランプリサンノゼ】に行弘 賢君・北原 寛章君と参加したため、調整は主にこの3人で行いました。(※グランプリはエース北原君が7-0するも僕と行弘君の勝ち星がかみ合わず4-3ドロップでした)

1週間弱ホテルに篭り、ローテーション形式で2人は対人、残る1人はマジックオンラインの2人構築と8人構築を延々とプレイ。

その調整した結果、完成したデッキがこちら。



山本 賢太郎「奈良ZOO」
プロツアー『運命再編』

1 《沼》
1 《森》
1 《平地》
4 《新緑の地下墓地》
4 《湿地の干潟》
4 《吹きさらしの荒野》
2 《草むした墓》
2 《神無き祭殿》
1 《寺院の庭》
2 《活発な野生林》
1 《森林の墓地》
1 《地盤の際》

-土地(24)-

4 《復活の声》
4 《タルモゴイフ》
4 《包囲サイ》
4 《黄金牙、タシグル》

-クリーチャー(16)-
4 《コジレックの審問》
4 《思考囲い》
4 《流刑への道》
3 《突然の衰微》
4 《未練ある魂》
1 《真面目な訪問者、ソリン》

-呪文(20)-
3 《虚空の杯》
3 《石のような静寂》
2 《潮の虚ろの漕ぎ手》
2 《原基の印章》
2 《大渦の脈動》
1 《盲信的迫害》
1 《ナイレアの弓》
1 《殴打頭蓋》

-サイドボード(15)-
hareruya



基本構成はオーソドックスな緑黒白ジャンクですが、いくつか特徴的なカードが入っています。


《復活の声》


復活の声


青を含まないコンボデッキ以外に強い2マナ生物。特に緑黒白ジャンク・青赤双子に有効で、その能力から《ヴェールのリリアナ》に強く、相手のインスタントでの妨害を制限します。

《タルモゴイフ》以外の2マナ生物として《漁る軟泥》を採用しているリストが多いですが、個人的には<復活の声>を推します。

調整中の3人の口癖は「鹿つえー」「鹿つえー」


《黄金牙、タシグル》


黄金牙、タシグル


調整スタートは2枚で試していたのですが、調整が進むにつれ3枚・4枚と数が増え、かなり早い段階で4枚積むことが確定したカード。12枚のフェッチランド・8枚のハンデスとかなり墓地が増やしやすい構成なので基本コストは概ね3以下。

能力も《未練ある魂》と相性が良く、実質的にはカードを1枚引くのと同義の効果です。
2枚しか取られていないリストが多いですが、それは<黄金牙、タシグル>を過少評価しているだけだと思います。

調整中の3人の口癖は「シルタグつえー」「シルタグつえー」


《虚空の杯》


虚空の杯


主なサイドイン相手はリビングエンド・トロン・アミュレットブルーム・ストーム・バーン。

ストーム・リビングエンド・バーンに有効なのは言わずもがなですが、トロンには「X=1」で《古きものの活性》《彩色の宝球》《彩色の星》《探検の地図》を、アミュレットブルームには「X=0」で各種契約を封じます。

モダンというデッキタイプが数多く存在するフォーマットで、1スロットで5種類のデッキにサイドインできる<虚空の杯>はとても優秀で、3枚ではなく4枚取るべきカードでした


《ナイレアの弓》


ナイレアの弓


バーンにもサイドインしますが、メインターゲットは青赤双子のサイドから投入が予想された《誘惑蒔き》です。

こちらの生物を奪われ、《未練ある魂》のブロッカーになる<誘惑蒔き>は奈良ZOOの天敵。タイミング良く《流刑への道》を打てれば良いですが、そうでなければ苦戦は必至です。ただ複数枚引いてもかさばるのでお守りで1枚。

優勝者【Antonio Del Moral Leonのリスト】には《誘惑蒔き》が入っていないので、今後このリストが流行するなら《ナイレアの弓》は不要になります。



ちなみにデッキ名「奈良ZOO」の由来ですが、メインデッキデザイナーである行弘 賢君いわく、


「<復活の声>(鹿)が<包囲サイ>(サイ)と戯れているのを<黄金牙、タシグル>(園長?)が見守っている様は正に奈良ZOO


一瞬「???」となりましたが、あまりに語感が良かったので、奈良ZOOでいくことに。3人とも75枚同じレシピです。


ラウンド 対戦デッキ  勝敗
Round 4緑黒白ジャンク×〇〇
Round 5スケープシフト××
Round 6トリココントロール (中村 修平)〇〇
Round 7緑黒白ジャンク (津村 健志)〇×〇
Round 8緑黒白ジャンク (Eric Froehlich)×〇×



ラウンド 対戦デッキ  勝敗
Round 12緑黒白ジャンク (Brian Kibler)×〇×
Round 13グリクシス双子 (三原 槙仁)〇〇
Round 13緑黒白ジャンク (Christian Calcano)××



結果:4-4


ここで7敗になり、追加獲得ポイントの目がなくなりドロップ。

結果は駄目でしたが、デッキの完成度は高く、プロツアーが終わった後でも使用した3人と「いいデッキだったね」と言える構成だったのですが、もう少し緑黒白ジャンク対策のサイドボードを取っても良かったなと思っています。

今なら津村さんたちが採用していた《城塞の包囲》を2枚入れたいですね。


城塞の包囲


実際に津村さんと対戦した際に《城塞の包囲》を出されたのですが、同系戦では非常に強力で、こんな使い方もあるのかと目から鱗が落ちる思いでした。



以上がプロツアー『運命再編』のレポートになります。

次回のブログは、やまけんの給与明細2をお届けしたいと思います。

(※編注:「やまけんの給与明細その1」は【こちら】からご覧いただけます。)

あれから3ヶ月、幾多の大会を経てやまけんの懐はどうなったのでしょう。


ではまたこのブログで!


やまけん