みなさんこんにちは。
プロツアー 『ラヴニカのギルド』が終了し、今週末にはアメリカでグランプリ・ミルウォーキー2018が、月末にはグランプリ・静岡2018が開催されるのでスタンダードはまだまだ熱いフォーマットです。
今回の連載ではプロツアー『ラヴニカのギルド』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
プロツアー『ラヴニカのギルド』
Boros軍隊の圧勝
2018年11月9-11日
- 1位 Boros Aggro
- 2位 Boros Aggro
- 3位 Boros Aggro
- 4位 Boros Aggro
- 5位 Boros Aggro
- 6位 Jeskai Control
- 7位 Boros Aggro
- 8位 Izzet Drake
Andrew Elenbogen
トップ8のデッキリストはこちら
大方の予想通りGolgari Midrangeは今大会最大勢力となりました。母数の多さに反してプレイオフには残らなかったものの、スタンダード部門で7-3以上の成績を残していたリストも少なくなく、環境に合わせてチューニングしていけるアーキタイプなのでGPなどではまた違った結果になってきそうです。
今大会の上位を支配していたのはGolgari Midrangeで、次に最大勢力だったのはBoros Aggroでした。決勝戦はBoros Aggroのミラーでしたが、スタンダード部門を全勝したのはMono Blue TempoとIzzet Drakesでした。Izzet Drakes は日本人プロの渡辺 雄也選手も使用し結果を残していたこともあり、要注目のデッキの一つです。
プロツアー 『ラヴニカのギルド』 デッキ紹介
「Boros Aggro」「Jeskai Control」「Izzet Drakes」
Boros Aggro
4 《聖なる鋳造所》
2 《断崖の避難所》
-土地 (20)- 4 《不屈の護衛》
4 《空渡りの野心家》
2 《癒し手の鷹》
4 《アダントの先兵》
4 《短角獣の歩哨》
4 《ベナリアの軍司令》
4 《敬慕されるロクソドン》
-クリーチャー (26)-
プレイオフに6名のプレイヤーを送り込んだBoros Aggroは、準優勝したLuis Scott-Vargas率いる「ChannelFireball」のメンバーだけでなく、多くのプロがこのデッキを選択していたようです。チームやプレイヤーによって細かい部分で構築に違いが見られるものの、基本的に《アダントの先兵》など、優秀な白いクリーチャーでビートダウンするという戦略であることは変わりありません。
アグロデッキは、環境が固まり切っていない時期は有利な選択となる傾向にあります。今大会でも例外ではなく、本来アグロデッキに強いとされているコントロールデッキも対応しきれずに押し切られることも多くあり、サイド後に《実験の狂乱》や《暴君への敵対者、アジャニ》、《苦悩火》など追加のアドバンテージ獲得手段やフィニッシャーが投入され、メイン戦とは異なる回答が要求されるのもこのデッキとの対戦難易度を高めている理由の1つです。
☆注目ポイント
見事に優勝を果たしたAndrew Elenbogen選手のリストはメインは白単色で、タッチされた赤はサイドの《苦悩火》、《実験の狂乱》、《反応+反正》のためで必要最低限に留めています。サイド後は《暴君への敵対者、アジャニ》なども投入され、重くなるので追加の土地兼赤マナ供給源として《断崖の避難所》が2枚サイドに採られています。
Elenbogen選手のメインデッキでまず目を引くのは4枚の《敬慕されるロクソドン》です。序盤から軽い白いクリーチャーを多数展開し、《敬慕されるロクソドン》を「召集」してクリーチャーを強化することでサイズ面で有利に立てます。《敬慕されるロクソドン》や《短角獣の歩哨》 といった高タフネスのクリーチャーを採用することによって、火力系の除去やスイーパーに耐性を付けているのも見逃せないポイントです。
《暴君への敵対者、アジャニ》はこのデッキにフィットこそしていますが、4マナと少し重いためサイドに落とされています。そのほかサイドには、遅いデッキ相手に投入されるアドバンテージエンジンの《実験の狂乱》や、最後の一押しとなる《苦悩火》、追加の除去である《反応+反正》が採用されています。
Golgari Midrangeのクリーチャーを無力化する《トカートリの儀仗兵》もしっかり4枚採用されており、Golgari Midrangeが最大勢力であった今大会では大活躍だったことが予想できます。双方のプレイヤーに影響があるため《敬慕されるロクソドン》の能力も誘発しなくなるので注意しておきたい点です。また、《不屈の護衛》の能力は常在型能力なので《トカートリの儀仗兵》の影響は受けません。
Boros Aggro《アジャニの群れ仲間》型
最後の最後に痛恨のトリプルマリガンによって惜しい結果となってしまいましたが、準優勝という好成績を残した殿堂顕彰者のLuis Scott-Vargas選手。彼を含め「Channel Fireball」が選択したBoros Aggroは、《アジャニの群れ仲間》やサイドに忍ばせてある《不可解な終焉》、そして準決勝戦で決め手となった《残骸の漂着》などミラーマッチを意識した構成になっています。
プレイオフにも6名が残ったことを考慮すると、ミラーマッチで有利な構成にしたことは正解だったようです。Elenbogen選手のリストと同様に赤はサイドボードのカードのためのタッチとなっており基本的に白単色のウィニーです。
☆注目ポイント
《アジャニの群れ仲間》は今大会におけるチーム「ChannelFireball」のイノベーションの1つでした。ライフを回復する手段も《癒し手の鷹》、《レオニンの先兵》、《軍団の上陸》といった軽いカードが多数採用されているので、《アジャニの群れ仲間》を安定して強化していくことができ、除去が少ないミラーマッチでは決定打になることが多く、ほかのBoros Aggroに有利だとされていた理由の1つです。
除去耐性のある《アダントの先兵》、全体強化の《ベナリアの軍司令》や《征服者の誇り》によって全体火力の《焦熱の連続砲撃》などにもある程度まで耐性が付いています。
サイドに1枚だけ採用されている《残骸の漂着》は、準決勝戦のJeremy Dezani選手とのマッチアップで決め手となったスペルでした。ケアするのが難しく、ミラーマッチなどで後手に回ってしまった際に逆転するチャンスを作りだすスペルなので、サイドのスペースに余裕があれば最低1枚は採用しておきたいカードです。
Izzet Drakes
5 《山》
4 《蒸気孔》
4 《硫黄の滝》
1 《イゼットのギルド門》
-土地 (21)- 4 《ゴブリンの電術師》
4 《奇怪なドレイク》
4 《弧光のフェニックス》
3 《弾けるドレイク》
-クリーチャー (15)-
3 《火想者の研究》
2 《パルン、ニヴ=ミゼット》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《イゼット副長、ラル》
1 《つぶやく神秘家》
1 《呪文貫き》
1 《標の稲妻》
-サイドボード (15)-
優勝こそBoros Aggroでしたが、今大会のスイスラウンドのスタンダード部門で全勝を果たしたのは、Izzet DrakesとMono Blue Tempoでした。日本人プロの渡辺 雄也選手もこのIzzet Drakesで見事にプレイオフ進出を果たしています。
好成績を残していたリストは《ゴブリンの電術師》を採用することで爆発力を高めたバージョンでした。
今後はBoros Aggroのメタに合わせてサイドボードなどを調整する必要が出てきそうですが、プロツアーの成績を見る限りはまだまだ一線級で活躍が期待できそうです。
☆注目ポイント
《発見+発散》はドローを進めつつ《弧光のフェニックス》を墓地に落とす手段にもなるので、このデッキでは優秀なドロースペルとなります。
サイドに1枚だけ忍ばせてある《つぶやく神秘家》は、タフネス5と固く《アダントの先兵》を始めとしたBoros Aggroのほとんどの主力クリーチャーが止まります。軽いスペルを多数採用したこのデッキではトークンを並べることも可能で、墓地の状態に依存しない追加の勝ち手段としても有力です。このクリーチャーをメインから採用していたリストも見られました。
《標の稲妻》は、《黎明をもたらす者ライラ》や《破滅を囁くもの》といった高タフネスのクリーチャーも対処できる火力スペルです。「再活」が付いていることを活かして序盤を凌ぎつつ、中盤以降はフィニッシャー級のサイズのクリーチャーも狙えるので、ソーサリースピードながら墓地が肥やせるこのデッキでは使いやすい火力となります。
《火想者の研究》も軽いスペルを連打するこのデッキにフィットしたカードで、コントロールやミラーマッチで2ターン目に設置できれば、対処されにくいアドバンテージエンジン兼フィニッシャーとなります。
Jeskai Control
2 《本質の散乱》
2 《裁きの一撃》
2 《活力回復》
1 《否認》
4 《轟音のクラリオン》
4 《悪意ある妨害》
1 《イオン化》
4 《薬術師の眼識》
2 《浄化の輝き》
2 《発展+発破》
1 《アズカンタの探索》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (31)-
2 《否認》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《溶岩コイル》
2 《封じ込め》
1 《黎明をもたらす者ライラ》
1 《シヴの火》
1 《神聖の発動》
1 《イクサランの束縛》
1 《イゼット副長、ラル》
-サイドボード (15)-
今大会で結果を残した唯一のコントロールデッキで、フィニッシャーは《ドミナリアの英雄、テフェリー》と《弾けるドレイク》のみで残りは除去、スイーパー、カウンター、ドロースペルでまとめられています。Boros Aggroに有効な全体火力である《轟音のクラリオン》がメインから採用されており、コントロールデッキにJeskaiを選択する理由の1つです。
グランプリ・ニュージャージー2018で優勝を果たしたバージョンと異なり、アグロデッキを意識していたようで効果が表れるまで時間がかかる《アゾールの門口》は不採用でした。白いアグロデッキやGolgari Midrange、Izzet Drakesなどが多くなるメタを想定していたようです。
☆注目ポイント
Boros Aggroとのマッチアップを想定していたようで、《裁きの一撃》や時間を稼ぎつつ安定性を高める《活力回復》など、軽いスペルが多数見られます。メインから採用されている《浄化の輝き》は、Boros Aggroなどがサイドインしてくる《実験の狂乱》なども除去できる頼れるスイーパーです。《薬術師の眼識》は、2枚採用のリストも散見していますが《天才の片鱗》や《ヒエログリフの輝き》に代わるこのデッキのメインのアドバンテージ獲得手段なので4枚採用をお勧めします。
《ベナリア史》があるBoros Aggroに対しては、基本的に1対1交換をしているだけでは捌けないことが多いので、《轟音のクラリオン》はマストです。《弾けるドレイク》はタフネス4なので《轟音のクラリオン》と相性がよく、このデッキにとっては対処が困難な《アダントの先兵》も止めやすくなります。
サイドの《パルン、ニヴ=ミゼット》は、コントロールミラーやIzzet Drakesとのマッチアップ用の最終兵器となり、フィニッシャーとしても普通に強いのでメインから採用しているリストもよく見られます。
総括
プロツアー『ラヴニカのギルド』ではBoros Aggroが上位を支配しましたが、一番人気だったGolgari Midrangeもスタンダード部門では多くが7勝以上の優秀な成績を残していたのも事実です。
Boros Aggroはほかの多くのデッキと同様に死角が全くないわけではなく、《焦熱の連続砲撃》や《轟音のクラリオン》といったスイーパーのほかにも、序盤のクリーチャーを止める《つぶやく神秘家》や《財力ある船乗り》といったカードなど有効な対処法も多くこれから意識されれば勝つのは難しくなるでしょう。低タフネスのクリーチャーが多い白ウィニーに対しては《ゴブリンの鎖回し》も脅威となります。余談ですがプロツアー 『ラヴニカのギルド』と同時期にMOで開催されていたPTQでは、その《ゴブリンの鎖回し》をメインにフル搭載したMono Red Aggroが優勝していました。早くもメタゲームに変化が訪れているのかもしれません。
USA Standard Express vol.134は以上です。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!