レガシーを極めし神々

2014年7月5日に最初のレガシー神が誕生して以来、数々の名勝負が生まれてきた『レガシー神決定戦』。今回で記念すべき30回目を迎え、現レガシー神・高野 成樹の永世神も懸かったメモリアルな大会となった。
レガシーの魅力とはなにか?レガシーで上達するためには?高野 成樹にはどうしたら勝てるのか?
これまで、あらゆる大会で高野 成樹とも激闘を繰り広げてきたレガシーの猛者たち、歴代のレガシー神6名にインタビューを行った。
神々の回答を糧に、レガシーの真髄に迫りたい。
第1期~9期レガシー神:川北 史朗

──レガシー歴について教えてください。
川北:ブランクはありつつも、15年ぐらいですかね。
──今回、使用したデッキと、選択理由を教えてください。
川北:墓地対策を意識した、「変則オムニテル」です。リアニメイト以外には強そうな構成で、リアニメイトに対してメタカードをたくさん採用すれば、勝てるんじゃないかと仮説を立てました。
川北:サイド後は《実物提示教育》や《全知》をすべて抜いて、フェアデッキになります。晴れる屋のデッキリストを眺めていて、そういうデッキがあまりなかったので、試しに組んでみました。こういった仮説を立てながらデッキを組んで、大会で答え合わせをするというのが楽しいですね。
──レガシー神になって良かったことはありましたか?
川北:対局料が貰えることも大きいですが、いろんな人に声をかけられるのが嬉しいですね。
川北:僕のことをまだ覚えてくれている方もいらして、今回も対戦相手から「あの、もしかして……」と声をかけられることがありまして。そういうのって嬉しいですよね。
──神だった当時と今のレガシー環境で変わったことはありますか?
川北:とにかくプレイヤーの質が上がっている。これに尽きます。
川北:僕が神だったころは、フェッチもないのに適当に《渦まく知識》をプレイするとか、そこまでレガシーの研究が進んでいないプレイヤーが多かった印象です。今はもう、みなさん上手くて。
川北:あとは全体的にコンボデッキが増えたな、という印象です。
──レガシーというフォーマットの魅力はなんだと思いますか?
川北:社会人にやさしいところですかね!ブランクはあるけど、主要カードは変わらないままなので、今回も楽しくゲームができています。
川北:ほかのフォーマットと違い、レガシーだけは「まったく違うデッキ」がトップメタになったりしないですよね。《有翼の叡智、ナドゥ》だけは少し驚きましたが、あれも「セファリッドブレックファースト」だと考えれば、昔からあるデッキなので。
──レガシーが上達するコツについて教えてください。
川北:環境を読んで、いかに自分が有利なデッキを持ち込めるかというところを意識すると勝てるようになるかな、と。
──自分を象徴するカード、好きなカードがあれば教えてください。
川北:もう、あまり使われていないのですが、《精神を刻む者、ジェイス》には思い入れがあります。
──現レガシー神・高野 成樹の印象について教えてください。
川北:第1期の神決定戦、準々決勝で高野さんとあたったことを、今でも覚えています。
川北:機械みたいに行動がインプットされているプレイヤーという印象です。当時からギミックが難しいエルフデッキを使いこなして、瞬時に最適なプレイをしていました。マジック界の藤井聡太だと思います。
──レガシープレイヤーに向けて、一言、お願いします。
川北:レガシープレイヤーはカードを調べたり、カードの将来性を見る目があると思うので、株をおすすめしたいです。もちろん、投資は自己責任でお願いいたします。
川北:自分も、トレードの経験からカードの値上がりなどを予想するようになり、株に応用するようになりました。意外と通じる部分もあって、面白いです。株は再録されて価値が下がったりしないのが良いですね(笑)
第10期レガシー神:有田 浩一朗

──レガシー歴について教えてください。
有田:2018年、神だった当時がレガシー歴3年目ぐらいでした。ここ最近はレガシーから遠ざかっており、大会に出るのは5年ぶりぐらいですかね。
──今回、使用したデッキと、選択理由を教えてください。
有田:当時、使っていたANTです。
有田:能力をよく知らなかったのですが、《記憶への放逐》が実はめちゃくちゃ強いことが書いてあったので、新しく採用しました。
──レガシー神になって良かったことはありましたか?
有田:当時の神決定戦は、予選で使ったデッキから決定戦用のデッキに変えて良いルールでした。そのため、本番では普段使わないようなデッキを使えたことが楽しくて、それが良かったことですかね。
──神だった当時と今のレガシー環境で変わったことはありますか?
有田:2018年頃のディミーアリアニメイトはあまり強くないデッキで、リアニメイトを使うにしてもラクドスリアニメイトを使うのが主流でした。それが今や、最強デッキだなんて……
──レガシーというフォーマットの魅力はなんだと思いますか?
有田:久しぶりにプレイしても、意外とやりようがあるというか。まだまだ現役で使えるカードがあるのが嬉しいですね。
有田:「久しぶりだけど、ちゃんとゲームになる」というのは魅力的です。
──レガシーが上達するコツについて教えてください。
有田:今回、復帰するにあたって感じたのは、「自分が経験することも大事ですが、人から聞くこともすごく大事」ということだと思います。
有田:今回、ANTを現代風にチューンナップする必要がありましたが、今は人気のデッキでもなく、5年分のブランクを埋めるには世に出回っている情報が少なくて。
有田:ちゃんと、今のレガシーについて聞ける友達がいたのが大きかったですね。
──自分を象徴するカード、好きなカードがあれば教えてください。
有田:《苦悶の触手》ですかね。自分はストームを使い続けてきたので。
──現レガシー神・高野 成樹の印象について教えてください。
有田:何度か対戦したこともありますが、私が第10期で神になったときから、もうすでに勝てる気がしませんでしたね。
有田:今回、カードを工面してディミーアリアニメイトを使っても良かったんですが、高野さんとミラーマッチになったら勝ち目がないと考え、ANTを選択しました。そう思わせるプレイヤーです。
──レガシープレイヤーに向けて、一言、お願いします。
有田:5年のブランクがあっても、レガシーをちゃんと楽しめています!
第16期レガシー神:鈴池 史康

──レガシー歴について教えてください。
鈴池:マジックを始めたのは『時のらせん』ブロックからです。レガシー歴でいうと、15年ぐらいになりますかね。
──今回、使用したデッキと、選択理由を教えてください。
鈴池:赤単プリズンです。昔ながらの《大いなる創造者、カーン》と《罠の橋》があらゆるクリーチャーを止めてくれるのに期待して。
──レガシー神になって良かったことはありましたか?
鈴池:歴代の神で、僕がもっとも恩恵に授かったプレイヤーなんじゃないですかね(笑)
※参考:鈴池さんが運営するYouTubeチャンネル『エムパンCh. MOパンダ』
鈴池:全国的にコロナ禍に見舞われてしまったとき、レガシー神だった僕が動画をアップして、「神がアップする動画なら、見るか」とたくさんの人に視聴していただけるようになりました。
鈴池:知名度を上げたいとか、マジックプレイヤーとして自分のブランディングをしたい人にとって、神シリーズはもっとも身近なきっかけになっていると思います。
──神だった当時と今のレガシー環境で変わったことはありますか?
鈴池:実は、ゲーム自体はそんなに変わっていないと思います。
鈴池:ポンダー撃って、ブレスト撃って、フェッチ切って、《不毛の大地》で土地を壊して。基本的な部分は変わっていません。
鈴池:デルバーで殴るのも、タミヨウで殴るのも、キルターンは変わらないですよね。ちょっとタミヨウのほうが対処しづらいですけど。
鈴池:しばらくレガシーから遠ざかっている人も、復帰しやすいと思いますよ。「最近のクリーチャーは強いね」なんて笑いながら(笑)
──レガシーというフォーマットの魅力はなんだと思いますか?
鈴池:ヴィンテージは攻めるカードが強すぎるんですけど、レガシーは攻めるより受けるカードが強くて、ちょうどいいゲーム感なのが魅力だと思います。
──レガシーが上達するコツについて教えてください。
鈴池:レガシーはどこまでいっても反復練習あるのみ。ワンミス負けが多いフォーマットなので、ワンミスをしないようにシビアに練習することが一番です。
鈴池:学びを得るためには、ただプレイするだけじゃなくて、動画を見るのも良いですよね。座学も大事です。
──自分を象徴するカード、好きなカードがあれば教えてください。
鈴池:第17期の神決定戦でも使いましたが、《甦る死滅都市、ホガーク》ですかね。
鈴池:勝ち筋が多くて難しいデッキが好きで、メインはブン回りが期待でき、墓地対策されたサイド後もビートダウンプランで戦えるなど、《甦る死滅都市、ホガーク》を採用したクリーチャー・ミッドレンジは好きでしたね。
──現レガシー神・高野 成樹の印象について教えてください。

鈴池:シゲキはデッキを仕上げる部分がめちゃくちゃ上手い。カード評価とかは苦手で、0を1にするとか、デッキビルダーとしての能力がそこまで高いわけではないのですが、デッキチューナーとしての才能が秀でています。
鈴池:環境を見ながら、最終的なカードチョイスによってデッキを最適にし、その上で最適なプレイができる。「デッキに魂を吹き込む」という感じですね。
──レガシープレイヤーに向けて、一言、お願いします。
鈴池:レガシーは自由なんです!
鈴池:環境デッキを回すのも楽しいですが、使いたいカードや、それと相性が良いカードを試すのが楽しいフォーマットでもあります。
鈴池:「Tierが狭い」ので、カードプールは広いのに、ごく一部のカードしか使われていないという面もあり、謎のオリジナルデッキを作って回すのが一番楽しいフォーマットなんじゃないかと思います。
第21期レガシー神:清田 勝之

──レガシー歴について教えてください。
清田:4年ですね。はじめて神になったのは、本格的に始めて5ヵ月ぐらいのときでした。
──今回、使用したデッキと、選択理由を教えてください。
清田:「ナドゥオーダー」というデッキです。80枚デッキで、相棒に《空を放浪するもの、ヨーリオン》を採用しています。
──レガシー神になって良かったことはありましたか?
清田:知り合いが増えたことですかね。神になったことをきっかけに、いろんな人に話しかけてもらったり、誘ってもらいやすくなりました。やまぐちみなみ(※)くん経由でシゲキとも友達になれましたね。
※やまぐちみなみさん・・・高野 成樹にキッチンを貸し与えている人物。
──神だった当時と今のレガシー環境で変わったことはありますか?
清田:今はちょっと、ディミーアリアニメイトが多すぎるというか、一強状態を面白くないと感じる方もいるかもしれません。対策次第で面白いゲームにすることはできるんですけどね。
──レガシーというフォーマットの魅力はなんだと思いますか?
清田:人がやさしい。大会とかに出ると、気軽に話しかけたり、いろいろと教えてくれる人が多いところが魅力ですかね。
──レガシーが上達するコツについて教えてください。
清田:周りの友達と意見交換して、協力しあって研究を進めることですかね。
──自分を象徴するカード、好きなカードがあれば教えてください。
清田:《時を超えた英雄、ミンスクとブー》です。僕はプレインズウォーカーが好きなんですけど、赤緑なのにドローできて、これ1枚で勝てるパワーがあるのが良いです。
──現レガシー神・高野 成樹の印象について教えてください。

清田:シゲキの倒し方、教えましょうか?愛を伝えることです。
清田:対戦相手のことをよく知り、倒すために徹底的に研究し、対策すること。「あなたを倒したい」という想いを伝える。それが「愛」です。
──レガシープレイヤーに向けて、一言、お願いします。
清田:上達するために、友達と意見交換したり、協力することが大切だと言いました。もちろん、私に聞かれても答えますので、気軽に話しかけてくださいね!
第22期~第25期レガシー神:廣田 貴志

──レガシー歴について教えてください。
廣田:第21期レガシー神のころからなので、3年ぐらいですかね。
──今回、使用したデッキと、選択理由を教えてください。
廣田:ディミーアリアニメイトです。最強だし、清田に相談したら「いいんじゃない?」って言われたので。
──レガシー神になって良かったことはありましたか?
廣田:身内の清田が先に神になっていたので、実は特別に「すごい!」とはならなかったのですが、対戦相手が僕のことを知ってくれたおかげで、コミュニケーションがとりやすくなり、いつもより楽しくマジックできるようになったことが良かったですね。あと、知り合いが増えました。
──神だった当時と今のレガシー環境で変わったことはありますか?
廣田:当時は《表現の反復》が禁止された直後の環境で、いろんなデッキが活躍していました。今は絶対的な最強デッキのディミーアリアニメイトがあるので、少し特殊な感じがします。カードパワーも上がっていますよね。
──レガシーというフォーマットの魅力はなんだと思いますか?
廣田:ワンミスで負けるので、緊張感があります。一つひとつのプレイに対し、真剣になって楽しめるのが良いですね。
──レガシーが上達するコツについて教えてください。
廣田:やっぱり、周りの人から情報をもらうこと、意見交換をすることですかね。
──自分を象徴するカード、好きなカードがあれば教えてください。
廣田:《審判の日》です。昔からビートダウンデッキが好きだったのですが、《審判の日》で全滅するのを見て、「すげー!!強い!!」って。
──現レガシー神・高野 成樹の印象について教えてください。
廣田:本当にマジックが好きなんだな、と思います。「よく飽きないな」って感心するほどです(笑)
──レガシープレイヤーに向けて、一言、お願いします。
廣田:レガシープレイヤーは年齢層も高くなって、だんだん思考が固くなってくるころです。なので、柔軟に周りの意見を聞き入れるようにしたいですね。
第26期~第27期レガシー神:大川 博史

──レガシー歴について教えてください。
大川:8年ほどです。
──今回、使用したデッキと、選択理由を教えてください。
大川:ディミーアリアニメイトです。今回、ミラーと土地単にやられちゃいましたが。
──レガシー神になって良かったことはありましたか?
大川:神を経験したことで知り合いが増えたりもしましたが、一番は関西でお世話になった人たちに「自分が元気な姿」を見せられたことですね。
──レガシーを始めたころから、環境が変わったと感じることはありますか?
大川:僕が始めた頃は《死儀礼のシャーマン》とかミラクルが全盛期だったので、それと比べるとかなり大ぶりな、叩きつけるゲームになったという印象です。
大川:もちろん、フィニッシュに至るまでのプレイングは繊細なんですけどね。
──レガシーというフォーマットの魅力はなんだと思いますか?
大川:自分が勝てます。
大川:というのは半分冗談で、モダンとかだと有力なデッキや戦略が多すぎて、自分のプレイスタイルだと勝ちきれない部分があります。レガシーはデッキ選択とかプレイングが確立的なので。
──レガシーが上達するコツについて教えてください。
大川:周りの人と相談すること、みんなで協力しながら学ぶことですかね。
──自分を象徴するカード、好きなカードがあれば教えてください。
大川:《自然の怒りのタイタン、ウーロ》です。元々はアルーレンを使っていたので、アルーレンの潤滑油というか、アルーレンのすべてと言っても過言ではない《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が大好きですね。色はスゥルタイが好きです。
──現レガシー神・高野 成樹の印象について教えてください。

大川:きっちり、固いプレイをする印象があります。
大川:あと、ほかのプレイヤーよりもゲーム感を少し「遅く見てる」感じがありますね。少し不利な状況でも焦らない。どっしりと構えながらプレイしている印象です。あと、几帳面で部屋がキレイで作る飯が美味いです。
──レガシープレイヤーに向けて、一言、お願いします。
知り合いがいない、友達ができないという場合はインターネットで動画を見ると良いです。MOパンダさんの動画を見て、みんなで一体となりましょう。