きたしまの『プロツアーへの道』~『地域チャンピオンシップ予選』突破レポート~

晴れる屋メディアチーム

はじめに

きたしま:みなさん、こんにちは。晴れる屋のきたしま(@oolong___chan)です。

■人物紹介:きたしま

きたしま: 晴れる屋商品管理チームスタッフ。高校3年の冬に『ワールド・マジック・カップ2017』を見てマジックの魅力にのめり込む。現在、競技マジックに挑戦する様子を記事にした「きたしまの『プロツアーへの道』」を連載中。

今回は『チャンピオンズカップ シーズン4ラウンド2』の店舗予選&スペシャル予選に参加してきたので、その振り返りレポートになります!

再び戦いの場へ

前回記事を更新してから半年も経ってしまいました。挽回を宣言していた『マジック・スポットライト:FINAL FANTASY』では少しの良いところもなく初日敗退。その後のモチベーションを維持することができず、7月まで開催されていたモダンの店舗予選には、ほとんど足を運ぶことはありませんでした。

そんなとき、メディアチームから『マジック・スポットライト:FINAL FANTASY』を優勝された平林さんとの対談企画のお話をいただきました。

この対談で、自分がプロツアーに行きたいと思った原点となる気持ちを思い出すことができました。

初心を思い出した今だからこそ、なんとしてもこの予選期間は突破したい!

予選シーズン開始から少し出遅れた8月末、イゼット大釜が最強といわれるスタンダードでの戦いが始まりました。

デッキ選択

予選を戦い抜く相棒として選んだのは「赤単」です。

雇われ爪剃刀族の棘頭叫ぶ宿敵

赤単を使う動機となったのは、イゼット大釜に対して有利という点です。

予選シーズンが始まった当初は、環境全体が「イゼット大釜にどうやって勝つか」に寄っていました。ミラーを意識してか、イゼット大釜のメイン除去は《アガサの魂の大釜》に対処できる《削剥》が採用されており、《塔の点火》のような軽量除去はまだサイドボードでの採用に留まっていたのです。

削剥塔の点火

この《削剥》《塔の点火》の1マナ差が、1ターン目からクリーチャーを展開して攻める赤単にとってチャンスだったのです。

実際、今シーズンの初戦となった8月31日のスペシャル予選で赤単を使用しました。権利は獲得できなかったものの、5勝2敗で18位という好成績を残すことができました。

イゼット大釜に5回当たり、勝ち越せたという結果は、今後も赤単を使い続けるには十分な理由になりました。

この日の好調ぶりに手応えを感じていた僕でしたが、ここから先は思うように結果が出ず、苦戦が続くことになります。

ピン除去(単体除去)10枚も引かれるなんてついてなかったな!

今振り返ると、「あと1勝のところでピン除去10枚引かれて負け」というところに、もう少し危機感を持って向き合うべきだったのかもしれません。

使い続けたデッキの限界

翌週からも赤単で予選に出続けましたが、結果はどれも振るいませんでした。

■成績

9/6 晴れる屋吉祥寺 『スペシャル予選』:3-4
9/7 Cardshop Serra 『店舗予選』:2-2
9/13 晴れる屋秋葉原 『店舗予選』:2-3
9/14 Day屋 『スペシャル予選』:1-2
9/15 CardPot 『スペシャル予選』:3-2
9/28 ホビーステーション本厚木 『店舗予選』:3-0-1(決勝敗退)
10/5 イエローサブマリン柏 『店舗予選』:2-2
10/12 晴れる屋川崎 『スペシャル予選』:0-2

一度だけ権利のかかったバブルマッチまで進めたものの、全体的には不調続きでした。同時に、赤単を使うモチベーションも徐々に低下。

特に厳しかったのは、有利だと思っていたイゼット大釜に負け越していたことです。

《量子の謎かけ屋》コントロールが倒せない

赤単の流行を受けて、イゼット大釜の《塔の点火》がメインボードに昇格し、サイドに追加の軽量除去として《声も出せない》が定着するようになりました。

塔の点火声も出せない

少し前までの赤単であれば《心火の英雄》《巨怪の怒り》で一気にバーストダメージを叩き出すことができましたが、今の赤単は地道にクリーチャーを展開して攻撃を刻んでいく必要があります。

そのため軽量除去を重ね引かれてしまうとライフを詰め切れず、ジリ貧になってしまいやすいのです。

通常、そのように除去を連打していれば対処する側もリソースが尽きてしまいます。最近のコントロールデッキなら《食糧補充》《星間航路の助言》でそのリソースを回復するのですが……

量子の謎かけ屋

《量子の謎かけ屋》が強すぎる!!

除去を大量にサイドインして赤単をコントロールし、《量子の謎かけ屋》で蓋をするという動きは赤単にとって絶望的でした。4/6・飛行というスタッツは《焦熱の射撃》《魔女跡追いの激情》で落とすことができず、《新星のヘルカイト》も越えられません。

《量子の謎かけ屋》に対処できなかったらおおむね終わりです。《冬夜の物語》《蒸気核の学者》で手札をぶん回し、《迷える黒魔道士、ビビ》《アガサの魂の大釜》を見つけ出してそのままゲームセット。こちらの負けが確定するまでただ眺めることしかできません。

推進機構の切断復讐に燃えた憑依歪んだ忠義

《量子の謎かけ屋》《新星のヘルカイト》に対処可能で、《叫ぶ宿敵》も最低限の被害にとどめられる《推進機構の切断》や、《復讐に燃えた憑依》《歪んだ忠義》のようなコントロール奪取系カードも試しました。都合の良いタイミングで引けたときは強いカードでしたが、そうでないときに引くことのほうが多かったように思います。

「その日」を待つ赤単

赤単が予選を抜けられないデッキだとは思いませんでした。毎週、どこかの予選では赤単を使うプレイヤーが通過している印象です。イゼット大釜が軽量除去を増やすということは、ミラーマッチよりも赤単を警戒していることを示しています。

とはいっても、《剃刀族の棘頭》が生き残ってイージーウィン!なんてゲームもままあります。

限界点

それでも、苦しい!

権利を掴めるのはほんの一握り。毎週、自分にも「その日」が来ることを祈りながら正拳突きをしているような感覚です。

赤単を使うことに希望を見出せなくなってきたため、ここで一度別の可能性を探すことにしました。

そういえば原根さん(@jspd_)がシミックウロボロイドが好感触だってポストしていたな……

シミックウロボロイドに乗れ!

川崎スペシャル予選を0-2でドロップした後、昼食を取りつつMTGアリーナで原根さんのシミックウロボロイドを試してみることにしました。

天才遺伝学者、ジャッカル

もぐもぐ……(1ターン目マナクリから2ターン目《天才遺伝学者、ジャッカル》を押し付ける動き、対処手段が限られていて強いな~)

遺伝子送粉機ウロボロイド

もぐもぐ……(《遺伝子送粉機》がいると3ターン目に《ウロボロイド》を出すのも現実的だな~)

群青の獣縛り

もぐもぐ……(《群青の獣縛り》はイゼット大釜にも赤単にも有効で、環境に合っているな)

……ゴクン!(このデッキ、めちゃくちゃ楽しい!)

シミックウロボロイドは『久遠の終端』リリース後に使ったことがありましたが、《天才遺伝学者、ジャッカル》の追加で序盤の爆発力が段違いになっていました。なにより、《ジャッカル》でコピーを量産してクリーチャーを大量展開するのが楽しい!《ウロボロイド》をコピーできたら宇宙です。

炎魔法紅蓮地獄ピナクルの星檻審判の日

この手のクリーチャーデッキが苦手とする全体除去があまり使われていないという現状もデッキの強みに思えました。

《炎魔法》《紅蓮地獄》はイゼット大釜のサイドに見られますが、1~2枚程度しか取られていない印象です。《ピナクルの星檻》《審判の日》を使える白青系のコントロールはほとんどいません。

環境を定義するアグロデッキの赤単が、横並びよりも個々のクリーチャーと火力で攻めるデッキであるため、全体除去よりも軽い単体除去のほうが優先されていたのです。

環境的にあまりマークされておらず、プロプレイヤーのお墨付きで、使っていて楽しいデッキ。乗るしかない、このビッグウェーブに。(1年ぶり2回目)

1年前のエリア予選で、市川ユウキさん(@serra2020)のリストを使用して予選を抜けたときと同じ波が来ている気がしました。これはいけるか……!

再び”一発抜け”!

翌日、晴れる屋吉祥寺店でのスペシャル予選に向かいます。

遺伝子変異の成虫棘を播く者、逆棘のビルフラッドピットの溺れさせ

使用したリストは、メインの《遺伝子変異の成虫》《棘を播く者、逆棘のビル》を抜き、《フラッドピットの溺れさせ》をメインに4枚採用した構成のものです。

リストの変更点からサイドボーディングまでは、すべて原根さんのポストを参考にし、自分はゲーム中にミスをしないよう慎重にプレイすることを心掛けます。

■対戦結果

R1:《ティムールの戦告者》コンボミッドレンジ ×〇〇
R2:スゥルタイリアニメイト ××
R3:シミックウロボロイド 〇×〇
R4:イゼット大釜 〇×〇
R5:ディミーアミッドレンジ 〇〇
R6:ID
R7:赤単 〇〇

5-1-1で『チャンピオンズカップファイナル』の権利獲得!

1か月以上出続けた予選を乗り越えたのはこれが初めてだったこともあり、最終戦に勝ったときは「ようやく……!」という気持ちで天を仰ぎました。

ラノワールのエルフ天才遺伝学者、ジャッカル

とにかく《ラノワールのエルフ》《天才遺伝学者、ジャッカル》がよく初手にそろった日でした。相手に《塔の点火》《噴出の稲妻》がなく、そのまま《天才遺伝学者、ジャッカル》の物量差で押し切る展開が多かったです。

群青の獣縛り

また、《群青の獣縛り》さまざまなデッキに対して平均以上の働きをしてくれました。イゼット大釜の《アガサの魂の大釜》を縛ってコンボを封じ、赤単の《叫ぶ宿敵》やディミーアミッドレンジの《分派の説教者》を無力化できます。《亭主の才能》の強化先としても優秀で、一度強化してしまえば信頼できるアタッカーになります。

フラッドピットの溺れさせ

《フラッドピットの溺れさせ》は赤単をいなしつつ、このデッキでは貴重な除去としても活躍しました。ただ、あまり連打したいクリーチャーでもないので4枚は多かったかもしれません。

なぜ勝つことができたのか

勝因1:最新のリストへのアンテナを高く張っていた

今回の吉祥寺スペシャル予選では、予選通過者4名中2名がシミックウロボロイドを使用していました。この結果から見ても、デッキパワーと環境の相性がかなり高かったことがわかります。つまり、最も勝ちやすいタイミングでデッキを選ぶことができたといえると思います。

大勝ち

また事前の予想どおり、全体除去を採用しているデッキはほとんど見かけませんでした。《塔の点火》《声も出せない》で個別に除去される場面はありましたが、すでにコピーを生成した《天才遺伝学者、ジャッカル》を倒されても、こちらがリソースで得をする展開になっていることが多かったです。

勝因2:打席に立ち続けた

赤単でなかなか手ごたえが掴めなくても、折れずに予選に出続けることができたのは、平林さんからのアドバイスがあったからだと思います。

どんなに負けが続いたとしても、スランプを脱出するときはマジックをやるしかないんだよね。やらない限り、勝たないからね。

打席に立ち続けなければ、勝たない。

頭ではわかっているつもりでしたが、競技プレイヤーの大先輩からの言葉は何よりも説得力を感じました。

連敗が続くと、マリガンやプレイのミスなど、反省すべきことは山ほど出てきます。それでも、「勝つために今日ここに足を運んだことは、間違いなく正しいはずだ」という気持ちで挑戦を続けることができました。

次の目標に向けて

今回はスペシャル予選突破ということでひとまずの成果を得ましたが、本当の挑戦はまだこれからです。

次の目標は、来年3月に京都で開催される『チャンピオンズカップファイナル』!初参加だった今年2月のファイナルでは1勝6敗と大敗してしまったので、次回は同じ轍を踏まないようにしっかり準備して臨みたいと思います。

また、11月下旬からは新しい予選シーズン『チャンピオンズカップ シーズン4ラウンド3』が始まります。こちらの予選フォーマットもスタンダードなので、これからもスタンダードにガンガン取り組んでいきます!

おまけ

関東でやっている予選がない日があったので、静岡県の沼津まで電車で行ってきました。

BIG MAGICのりゅうじさんおすすめのお店「ふみ野」さんにて。久しぶりの海鮮丼でしたが美味しかったです。

レンタルサイクルを走らせて千本浜海岸へ。砂浜で日の入りを待ちながらレガシー神シゲキさんの永世神をかけた防衛戦を見ていました。酒井さん強かった……!

白砂青松100選にも選ばれたらしい、千本松原です。オデッセイの《森》っぽい雰囲気がありますね。

※柏の店舗予選に行ったついでに、初めてのエリア予選参加レポートのときにも行った「ホワイト餃子」を食べようと思ったのですが、残念ながら売切れでした。

今回の記事を以上となります。最後まで読んでいただきありがとうございました!また次回の記事でお会いしましょう!それでは!

これまでの道のり

この記事内で掲載されたカード

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