はじめに
お疲れ様です。増田(@tensai_manohito)です。
今回は「プランを立てる」ということについてあれこれ語ります。
題材としてモダンの「繁殖鱗コンボ」を例に挙げますが、内容はフォーマットやアーキタイプを問わず応用できるものです。
普段、デッキの調整を行うなかで、「このデッキは○○に有利」「このカードは○○に強い」といった話をする機会が多いと思います。
しかし、重要なのはそうした「結論」そのものだけではありません。
なぜそのカードを採用するのか。なぜ同じカードでも、デッキが変われば評価が変わるのか。
今回は、こうした結論に至るまでの思考プロセスについて考えていきます。
カードの評価や採用理由を考えるためには、プランを明確にする必要があります。
「プランを立てる」という言葉はマジックではよく使われますが、実際にどのようにプランを組み立てるのかは、意外と言語化されていないように思います。
もちろん、今回の記事で紹介する考え方が唯一の正解というわけではありません。
ですが、デッキを調整するときなど、考えるための材料になればと思います。
比較用デッキリスト紹介
今回の解説にあたって、2種類の「繁殖鱗コンボ」のリストを参考にします。
それぞれを【活性型】・【迷宮型】と呼びます。
【活性型】
【迷宮型】
「繁殖鱗コンボ」とは
まずは、「繁殖鱗コンボ」の簡単なデッキ概要を解説します。
「繁殖鱗コンボ」は《日を浴びる繁殖鱗》と《血の長の刃》を使ったクリーチャー・コンボデッキです。
《日を浴びる繁殖鱗》に《血の長の刃》が装備された状態で、「《日を浴びる繁殖鱗》に+1/+1カウンターが置かれる」、または「クリーチャーが死亡する」とコンボが始動します。
《日を浴びる繁殖鱗》に+1/+1カウンターが置かれると《日を浴びる繁殖鱗》の効果でエルドラージ・落とし子・トークンが生成され、エルドラージ・落とし子・トークンを生け贄に捧げると《血の長の刃》が誘発して《日を浴びる繁殖鱗》に+1/+1カウンターが置かれます。
つまり、これによって無限ループが発生します。
最終的に、《日を浴びる繁殖鱗》が無限のパワーとタフネスを得たうえで無限の無色マナが生成されるため、そのまま戦闘で相手を殴り倒す、もしくは《コジレックの命令》の占術・ドローで《まばゆい肉掻き》《歩行バリスタ》などの勝ち手段につなげればゲームに勝利します。
(※便宜上、任意に大きな値を「無限」と表現していますが、実際のゲームでは実行回数を指定する必要があります)
【活性型】と【迷宮型】の違い
【活性型】は《ウギンの迷宮》を採用せず、十分な緑マナ+《古きものの活性》を採用しているのが特徴です。
初速や《約束された終末、エムラクール》を唱えるという点においては【迷宮型】に劣りますが、コンボのそろいやすさ=再現性という点では【迷宮型】より優れています。
《日を浴びる繁殖鱗》と《血の長の刃》は除去や手札破壊に弱く、妨害されやすいという欠点があります。
しかし、相手がコンボを妨害してゲームが長引いたとしても、もう1つの勝ち筋である《約束された終末、エムラクール》が残ります。
相手の除去や手札破壊によって墓地にカードが送られれば、《約束された終末、エムラクール》のコスト軽減にもつながります。
つまり、【活性型】はコンボの脆弱性を《約束された終末、エムラクール》という長期戦でも機能するプランで補っている構造になっているのです。
一方、【迷宮型】は《ウギンの迷宮》を採用してマナを伸ばしフィニッシャーを叩きつける、いわゆるランプ戦略に寄った戦い方をします。
《古きものの活性》を唱えるための緑マナが不足しているため、サンプルリストでは不採用です。
2マナランドが多い分、最大値は高いですが、再現性などは【活性型】に比べると若干劣ります。
また、早期のランプ戦略からの《約束された終末、エムラクール》狙いだけだと序盤に隙が生まれやすく、相手に自由な行動を許してしまいます。
しかし、《日を浴びる繁殖鱗》+《血の長の刃》のコンボを採用していることで、相手は自分の展開を優先するか、コンボへの対処を構えるかという判断を迫られます。
この2つは同じ「繁殖鱗コンボ」ですが、実は“何を目指してゲームをするか”が少し異なるのです。
これらのデッキリストの特徴を押さえておくと、後の話が理解しやすいと思います。
大まかには【活性型】はコンボ中心、【迷宮型】はランプ中心と覚えておけばよいです。
「プランを立てる」とは
ここでいう「プラン」とは、単に「このカードを使って勝つ」という話ではありません。
たとえば、「序盤は○○で相手の攻めを押さえ、次に△△へつなぎ、最終的には□□という勝ち筋に持ち込む」というように、複数の行動をひとつの流れとして捉え、ゲーム全体の道筋を考えることです。
これを意識することで、目指すべきゲーム展開が明確になり、カードの採用理由もはっきりしてきます。
逆に、プランを明確にしないままカードを採用すると、そのカードがなぜ必要なのか、どう使えば勝ちに近づくのかが曖昧になりがちです。
プランからカードを選ぶ
ここで対「イゼット果敢」を例に挙げます。
「イゼット果敢」は軽量のクリーチャーを展開し、呪文によって打点を伸ばしながら、3~5ターン目の勝利を目指す高速アグロです。
《日を浴びる繁殖鱗》+《血の長の刃》によるコンボは《稲妻》などの軽量除去によって妨害されやすいです。
一方、《約束された終末、エムラクール》を目指すランプ戦略も、「イゼット果敢」の攻めに対しては間に合わないことのほうが多いです。
また、序盤のクリーチャーを放置してしまうと、相手は十分な打点を確保した状態で、コンボへの妨害を構えることを優先できるようになります。
そのため、対「イゼット果敢」では、コンボやランプを積極的に狙うよりも、まずは相手の攻めを押さえる=除去を優先したいと考えます。
緑単の「繁殖鱗コンボ」は色の都合上、採用できる除去のなかでは《四肢切断》がベストな選択肢であることは間違いありません。
しかし、「イゼット果敢」のような攻撃的なデッキに対して、《四肢切断》を唱えるための4点ライフを支払うデメリットはあまりにも大きすぎます。
また、ランプ戦略が成立しづらいということは、ゴールである《約束された終末、エムラクール》と同時にそれをサポートする《まき散らす菌糸生物》もまたイマイチという評価になります。
ただ、これらをすべてサイドアウトし、代わりに有効なカードを大量に投入できるほど、サイドボードの枠に余裕があるわけではありません。対策すべき相手は「イゼット果敢」だけではないからです。
そこで、これらをサイドアウトしてしまうのではなく、すでに採用されているカードを生かしながら、対「イゼット果敢」で必要な役割を補えるカードを探すことにします。
①《四肢切断》の採用を肯定する。(4点のライフコストを補う方法を探す)
②《まき散らす菌糸生物》(または《約束された終末、エムラクール》)に役割を持たせる。
上記の2点を満たすカードを探します。
そこで候補に挙がったのが《影槍》です。
《影槍》は装備したクリーチャーに絆魂を与えるため、《四肢切断》で減ったライフを取り戻せます。また、1マナのアーティファクトであることから、《ウルザの物語》でサーチ可能な点も大きいです。
さらに、《ウルザの物語》は《まき散らす菌糸生物》でサーチ可能なため、ここでも再現性を高められます。
このように、序盤を除去でしのぎ、カードをつなげて反撃に転じる道筋を描くことで、対「イゼット果敢」における具体的な勝ち筋が見えてきます。
つまり、プランとは「自分の理想的な動き」を決めることではなく、「現実的な勝ち筋」を考えることなのです。
大切なのは《影槍》というカードを採用すること自体ではなく、それによってどのようなゲーム展開を目指すのかという視点です。
「《四肢切断》で相手の攻めを凌ぎ、《まき散らす菌糸生物》から《ウルザの物語》へとつなぎ、《影槍》を用意して反撃に転じる」
この一連の展開をあらかじめイメージしておくことで、それぞれのカードを採用する理由やカード同士のつながりが明確になります。
なんとなく対策カードを採用し、引いて唱えたら勝った、引かなかったので負けた。それだけでは、なぜ勝てたのか、次も同じように勝つにはどうすればよいのかが分かりません。
また、このリストを見て「《影槍》を採用しているのか」「対アグロ戦では《影槍》をサイドインするのか」といった情報だけを覚えても、得られるものは限られます。
重要なのは、「なぜそのカードが必要なのか」「ほかのどのカードとつながり、どのようなゲーム展開を実現するために使われるのか」を理解することです。
採用されたカードの背景にある「ストーリー」を思い描くこと。それこそが、プランを立てるうえで大切なのです。
サイドボード例
【活性型】 vs. イゼット果敢
カードの価値はデッキの構造によって変わる
対「イゼット果敢」における《三なる宝球》を例に考えてみましょう。
同じ【繁殖鱗コンボ】でも、【迷宮型】と【活性型】では《三なる宝球》の価値が大きく異なります。
実際に今回サンプルとして載せたリストでも、【迷宮型】は《三なる宝球》をサイドボードに採用している一方、【活性型】では採用していません。
これは、得られる恩恵が異なるためです。
【迷宮型】は《ウギンの迷宮》を利用することで、最速2ターン目に《三なる宝球》を設置することができます。
一方、【活性型】には《ウギンの迷宮》が採用されていません。そのため、通常は設置が3ターン目になります。
特に後手の場合、この1ターンの差は非常に大きなものになります。
2ターン目に《三なる宝球》を設置できれば、相手がそれまでに行動できるのは2ターンだけですが、3ターン目の設置では3ターンになります。
高速アグロである「イゼット果敢」にとって、この1ターン差は無視できません。
《三なる宝球》がサイドインされる2本目以降は、「イゼット果敢」側も《記憶への放逐》をサイドインしてきます。
しかし、2ターン目に1マナ構える行為は序盤に押し切りたい「イゼット果敢」としては避けたいプレイです。
「イゼット果敢」側が展開を優先した場合、【迷宮型】であればその返しのターンに《三なる宝球》を設置することで、以降はほぼ1ターンに1枚しか呪文を唱えられない展開になるため、十分な時間を稼げるようになります。
逆に【活性型】の場合、最速でも3ターン目の設置となるため、「イゼット果敢」視点でも最初の2ターンは展開に費やし、3ターン目からは1マナ構えるという方針が取りやすいです。
そうなると、《三なる宝球》を唱えるタイミングで《記憶への放逐》に当たってしまったり、仮に《三なる宝球》が通ったとしても、戦場のクリーチャーたちに押し切られる展開にもなりやすいです。
つまり、【迷宮型】における《三なる宝球》は、相手の展開が十分に進む前に設置できるという点で、非常に優れたカードです。
一方、【活性型】では設置が遅くなりやすく、同じカードであっても得られる恩恵は小さくなります。
もちろん、《三なる宝球》そのものの性能が変わったわけではありません。変わったのはそれを使うデッキの構造と、カードを使えるタイミングです。
同じアーキタイプであっても、構築が違えばカードの価値は変わります。
だからこそ、カード単体の強さだけで採用を判断するのではなく、そのカードが自分のデッキで求められる役割を果たせるのかまで考える必要があるのです。
同じ相手でもサイドプランは変わる
対「リビングエンド」のサイドプランの話を例に挙げます。
【活性型】を調整していた際、対「リビングエンド」では《約束された終末、エムラクール》をサイドアウトするという結論に至りました。
理由は「リビングエンド」がサイドに採用している《避け難い裏切り》の存在です。
《避け難い裏切り》が通ってしまうと、《約束された終末、エムラクール》が奪われてしまい、そのまま対処できずに負けてしまいます。
そもそも、対「リビングエンド」において、《約束された終末、エムラクール》を唱えても勝ち確定にならないことが多いです。
「リビングエンド」には自身に被害を及ぼすようなカードがあまり採用されておらず、対戦相手のコントロールを奪っても、そこまで大きな被害を与えられないからです。
そのため、《約束された終末、エムラクール》は使うリスクが大きい一方で、得られるリターンも小さいカードといえます。こうした理由から、可能であればサイドアウトするのが良いという結論に至りました。
ただ、この話は【活性型】での結論であり、【迷宮型】だと話が変わってきます。
【迷宮型】で採用している《ウギンの迷宮》は、下敷きとなる大型エルドラージとセットでなければ《荒地》と同等の効果しか得られません。
仮に《荒地》になることを許容したとしても、大型エルドラージ6~7枚をサイドアウトしつつ、その代わりにサイドインするだけの十分なサイドカードは用意されてないことが多いです。
《約束された終末、エムラクール》をサイドアウトするというプランは、【活性型】なら成立しますが【迷宮型】では成立しないのです。
では、【迷宮型】ではどうすればいいのでしょうか。
《約束された終末、エムラクール》をサイドアウトできない以上、《避け難い裏切り》を止める方向で考えます。
ということで、《避け難い裏切り》への対策として《墓掘りの檻》をサイドインします。
《墓掘りの檻》はライブラリーからクリーチャーを出すことができなくなるため、これによって《避け難い裏切り》を対策することができます。
同じデッキであっても、構造が違えばサイド後の方針も違ってきます。
サイド後の方針が違えば、サイドアウトするカードもサイドインするカードも異なるのです。
サイドボード例
【活性型】 vs. リビングエンド
【迷宮型】 vs. リビングエンド
サイドボードは対策カード置き場ではない
「サイドボードに対策カードを用意し、サイド後は必要な相手にそれをサイドインする」
これが間違っているとは思いません。
しかし、それはサイドボーディングの本質ではありません。
真の目的は、相手に合わせてメインデッキを最適化することです。
【活性型】で「ネオブランド」「ルビーストーム」「ドルイドコンボ」のようなコンボデッキと対戦する場合を例に考えてみましょう。
こうした相手には、《まき散らす菌糸生物》でマナを伸ばして《約束された終末、エムラクール》を唱えるランプ戦略が間に合わないことのほうが多いです。
素早く《日を浴びる繁殖鱗》+《血の長の刃》のコンボを狙う、もしくは対策カードによって相手のコンボを止める必要があります。
では、対コンボを意識して相手への対策カードを大量に採用すればよいのでしょうか。
たとえば、《三なる宝球》と《墓掘りの檻》を4枚ずつ採用すれば、それぞれを初手に引ける確率は上がります。
しかし、対策カードを設置すること自体が勝利に直結するわけではありません。
対策カードが相手の動きを制限している間に、こちらも勝利を目指す必要があります。
つまり、対策カードで時間を稼ぐだけでは不十分です。その時間を使って勝ち切る手段も、サイド後のデッキに用意しておかなければなりません。
ここで重要になるのが、サイドボードに相手への対策だけでなく、自分の勝ち筋を補強するカードを用意するという考え方です。
サンプルリストではサイドボードに《歩行バリスタ》を採用しています。
《歩行バリスタ》は《日を浴びる繁殖鱗》+《血の長の刃》によるコンボをサポートするカードです。
《血の長の刃》が装備された《日を浴びる繁殖鱗》が戦場にいる状態で、《歩行バリスタ》をX=0で唱えると、0/0の《歩行バリスタ》は状況起因処理によって死亡します。
これによって《血の長の刃》が誘発し、《日を浴びる繁殖鱗》に+1/+1カウンターが置かれることで、コンボが始動します。
通常とは異なるコンボ始動方法であるため、相手にとっても予想しづらい動きです。
また、コンボが成立して無限マナを生み出せれば、《歩行バリスタ》はそのマナの注ぎ先にもなります。《日を浴びる繁殖鱗》が召喚酔いしていても、そのターン中に勝利することができるのです。
ただ、《歩行バリスタ》はコンボ戦略に非常にマッチしたカードですが、コンボ以外の場面では役割が限られます。
そのため、コンボとランプの両方を追うメインデッキでは採用枠を割きにくい一方、ランプを積極的に狙わず、速度を重視するマッチアップでは価値が上がります。
一見すると、サイドボードに《歩行バリスタ》のようなクリーチャーを採用することには違和感を覚えるかもしれません。
しかし、サイド後に速度を重視したプランを取るのであれば、これほど役割の噛み合ったカードはありません。
サイドボードを考えるときは、相手に有効なカードを採用して満足するのではなく、サイド後に自分がどのように勝つのかまでイメージしてみましょう。
サイドボード例
【活性型】 vs. ドルイドコンボ
おわりに
今回は「プランを立てる」ということをテーマに、ゲームプランの考え方について解説してきました。
強いカードを探し、採用し、試すことも大切ですが、それ以上に「なぜそのカードが必要なのか」「そのカードで、どのようなゲームを実現したいのか」を考えることが重要です。
こうした思考の積み重ねが、カードの採用理由や、ゲームプランそのものを明確にしてくれます。
デッキを調整するときには、ぜひカード単体の性能だけでなく、デッキ全体の構造やカード同士のつながりにも目を向け、「プランを立てて」みてください。
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