By Hiroshi Okubo
第12期フロンティア神挑戦者決定戦には、グランプリやプロツアーでその名を見かけることも多い競技プレイヤーも数多く参加していた。彼らがこの戦いに赴くのは、未だ未開拓な部分も多いフロンティアのゲーム性に惹かれてか、あるいは栄えあるタイトルの一つである”神”の座を射止めんとしてか、あるいはその両方か。
その理由は定かではないが、しかし戦いに必要なのは理由ではなく闘志だ。目の前に座す対戦相手を破り、高みを目指す。フィーチャーマッチテーブルでは競技性は関係ないと言わんばかりに、彼らは勝利を渇望していた。
さて、このスイスラウンドの第4回戦で相見えるのは、関東各地の競技イベントでその腕を磨く強豪・磯 俊治と、BIGsに所属する現リミテッド神・加藤 健介の2人だ。いずれもここまでのスイスラウンドも3-0で勝ち進んできていることから、フロンティアという混沌とした環境でも、その実力を遺憾なく発揮していることが伺える。
磯のデッキは《飛行機械技師》や《武器作り狂》といった”出し得”クリーチャーから《膨らんだ意識曲げ》に繋ぐ赤黒ミッドレンジ。対する加藤は《ラムナプの遺跡》に《密輸人の回転翼機》、《暴れ回るフェロキドン》といった”禁止カード”目白押しの赤単である。
はたしてここで勝利を収め、決勝ラウンド進出へと弾みをつけるのはどちらになるのか? 両者が固く握手を交わすと、第12期フロンティア神挑戦者決定戦の第4ラウンドが幕を開けた。
Game 1
先攻の磯が加藤の《ボーマットの急使》を《致命的な一押し》で除去する滑り出し。さらに磯は第2ターンに《強迫》で加藤の手札にクロックがないことを確認しつつ、本体火力である《稲妻の一撃》を抜き去って続くターンに《飛行機械技師》をプレイ。ブロッカーを立たせる。
加藤も負けじと《ギトゥの溶岩走り》を戦線に追加するが、磯は《凶兆艦隊の向こう見ず》で《稲妻の一撃》を疑似「フラッシュバック」。加藤とリソースをつけていく。
ここまで攻め手を抑え込まれている加藤だが、トップデッキした火力を投げ続けて磯のライフを着実に減らしていく。さらに《ボーマットの急使》を戦線に追加し、続けて《遁走する蒸気族》をプレイ。最序盤の出鼻こそ挫かれてしまったものの、徐々に立て直しを図っていく。
ここまで加藤の攻撃の手を遅れさせてきた磯だったが、逆に言えばゲーム展開を遅らせるだけで、プレッシャーをかけられるカードを展開できない。いつの間にかゲームは「トップ火力叩きつけモード」に入った加藤のペースになっており、やがて加藤が《稲妻の一撃》、《魔術師の稲妻》と続けざまに火力呪文を連打すると、磯のライフはいつの間にか燃え尽きることとなった。
磯 0-1 加藤
Game 2
加藤の《僧院の速槍》を《致命的な一押し》で除去し、続く《損魂魔道士》の前に《飛行機械技師》を立てる磯。攻撃が止まってしまう加藤は《密輸人の回転翼機》を戦線に追加するも、これは《コラガンの命令》によって《損魂魔道士》もろとも除去されてしまう。
第1ゲーム同様序盤のペースを握った磯だったが、返す加藤も負けじと《ボーマットの急使》と《僧院の速槍》を並べ立てて磯を責め立てる。だが、これに対して磯は必殺の《ゲトの裏切り者、カリタス》をプレイ!
タフネス4、絆魂持ち。『戦乱のゼンディカー』ブロックがスタンダードで現役だった当時から強力なバーンメタカードとして使用されていたこのクリーチャーは、無論フロンティアの赤単にとっても最悪の能力が目白押しだ。しかも先の第1ゲームと異なり、磯のライフはまだ初期ライフからほとんど動いておらず、ここから火力だけで押し切るのも難しい。
忌々しそうに《ゲトの裏切り者、カリタス》を見つめながらターンを明け渡す加藤だったが、磯は加藤を長く苦しめることはなかった。続くターンにプレイした《反逆の先導者、チャンドラ》が加藤の《ボーマットの急使》を破壊すると、もはや加藤に逆転の手立ては残されていなかったのだから。
磯 1-1 加藤
Game 3
ここにきて値千金の先攻を得た加藤。第1ターンに《僧院の速槍》をプレイし、続くターンには《密輸人の回転翼機》を並べる。磯はこの《密輸人の回転翼機》こそアクティブになった瞬間《致命的な一押し》で処理するが、加藤は構わず《ボーマットの急使》を投入して磯へと肉薄する。
返す磯は苦渋の表情を浮かべながら《強迫》。加藤の《稲妻の一撃》、《溶岩コイル》、《熱烈の神ハゾレト》という手札から《稲妻の一撃》を抜き去るも、3枚目の土地を置くことができず、盤面のクロックを減らすことができなかった。
そして、この1ターンのタイムラグこそがゲームの分水嶺だった。加藤は第4ターンに《熱烈の神ハゾレト》を叩きつけ、磯のライフを一気に削る。返す磯は1ターン遅れて3マナにアクセスし、《武器作り狂》でブロッカーを用意するが、加藤は霊気装置トークンに惜しみなく《溶岩コイル》を投入して磯のチャンプブロッカーを排除。さらに2枚目の《密輸人の回転翼機》を設置して苛烈に攻撃を仕掛けていく。
なんとか《熱烈の神ハゾレト》の猛打だけは凌ぐ磯だったが、依然として加藤の攻撃を押しとどめるには至らない。加藤がダメ押しの《暴れ回るフェロキドン》をプレイすると、磯はその苛烈な攻撃の前に膝を屈することとなった。
磯 1-2 加藤