Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/12/19)
はじめに
みなさんこんにちは!ゴンサロ・ピント/Goncalo Pintoです。
12月に入り、すでにモダンのグランプリが2つも開催されました。グランプリ・ポートランド2018とグランプリ・リバプール2018です。今回はこの2つのグランプリに対する私の見解をお話しましょう。モダンの大会を控えている方はぜひ最後まで楽しんでいって下さいね!
モダンに対する心構え
グランプリについて話していく前に、私がモダンをフォーマットとしてどう考えているかを説明させて下さい。
私はモダンというフォーマットがあることは素晴らしいと思っています。プレイ人口が多いフォーマットで大会の頻度も多いため、自分の好きなデッキを一年通して好きなときに使えますからね。
それに、新しいセットの発売・禁止カードの解禁があったとしても、自分のデッキが突然使い物にならなくなるようなこともありません(自分のデッキのカードが禁止になってしまった場合は別です)。確かに環境に合わせていくつか修正する必要はあるかもしれないですが、レガシーと同様にそこまで大きく変える必要はなく、気軽に参加しやすいのも魅力です。これはお店にとっても、プレイヤーにとっても、マジック業界全体にとっても素晴らしいことでしょう。
また、誰も思いつかなかったようなアイディアを試し、結果を残すこともできるフォーマットと言えます。私自身も、数か月前にMagic Onlineでエスパースピリットを使って遊びつつも、リーグで全勝できる一歩手前まで行くことができました。
エスパースピリットの次は、《弾けるドレイク》と《投げ飛ばし》を使ったデッキを考えていました。そして最終的には《弧光のフェニックス》がただの流行だけのカードではないと気付くことになります(詳しくはあとでお話しますね)。
しかし競技のモダンとなると、まったく話が変わってきます。環境があまりにも多様化していて、どのデッキを選択しようがほとんど関係ありません。勝てないマッチアップが存在するため、大会の命運を握っているのはペアリングと言えます。サイドボードの枠も15枚しかないので、自分のデッキの弱点をすべてカバーすることは不可能です。
また、《意志の力》のようなカードもないため、ダイスロールが勝敗を分ける大きな要因になりがちという面もあります。これは競技マジックには向いていない要素でしょう。
先手・後手を均等に割り振ったり、サイドボードの枠を増やすことが、モダンをより競技向けにするひとつの方法だと私は思います。そうすれば、プロツアーのたびに禁止カードを出さずとも済むでしょう。
モダンを競技マジック向けにできるアイディアをみなさんもお持ちなら、記事下部にあるコメント欄に書いてみて下さい。過去の実績から、ウィザーズがプレイヤーの意見に耳を傾けてくれることは明らかです。ですから、こういった場でどんどん意見を出すようにしましょう。
とはいえ、変化を待っているだけでは仕方ありません。今のところ私たちにできるのは、競技モダンをする上で最善の心構えを持つことです。最善の心構え、それは「自分が使って楽しいデッキ、使い慣れているデッキを使うこと。そして、どうしても勝てないマッチアップの存在を受け入れること」です。そして、勝率を上げるために最低限でもやっておくべきなのは、自分の使っているデッキを十分に理解し、各マッチアップでの立ち回り方を理解しておくことですね。
モダンで優秀な成績を収めているプレイヤーが同じデッキを使い続けているのは偶然ではありません。たとえば、同郷の友人であるルイス・ゴバーン/Luis Gobernはタイタンシフト、ベルナルド・サントス/Bernardo Santosは5色人間、マルシオ・カルバリョ/Marcio Carvalhoは《硬化した鱗》デッキを使い続けています。
プロプレイヤーも同様に同じデッキを使い続けていることが多いですね。ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoは青白コントロール、セス・マンフィールド/Seth Manfieldはトロン、ピオトル・グロゴゥスキ/Piotr Glogowskiはアイアンワークスを愛用しています(ウィリー・エデル/Willy Edelはただの頑固おやじですが)。
ですから、モダンの大きな大会を控えているみなさんにアドバイスをするとすれば、「使い慣れたデッキを使い続けること」です。仮に前回の大会で良い結果が出ていなかったとしても、次はきっともっと良い結果が出るでしょう。
グランプリ・リバプールとグランプリ・ポートランド
まずはグランプリ・リバプール2018で活躍したスペイン語圏のプレイヤーたちに賛辞を贈りたいと思います。ここ数年で彼らと接する機会が増えていたので、今回のグランプリで支配的な強さを見せてくれたことを本当にうれしく思います。
それだけにとどまらず、友人であるマルセリーノ・フリーマン/Marcelino Freemanのメキシコ人チームが優勝を果たし、ラテン系のプレイヤーが現在のマジック界における最大勢力のひとつだと知らしめました(もっとも、直近のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーはアルゼンチン人のルイス・サルヴァットであり、世界王者もスペイン人のハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezですので、すでにラテン系のプレイヤーの強さは周知の事実であったと思います)。
グリクシス・シャドウ
どちらのグランプリも優勝したのはグリクシス・シャドウでした(デッキリスト: リバプール / ポートランド)。 モダンで愛用し続けてきたデッキが時代遅れになることはないと証明してくれましたね。
このように、そのデッキが対策されないタイミングがやってくれば、再び頭角を現し、優勝することもできるのです。優勝したグリクシス・シャドウのリストはいずれも使用しているクリーチャーと土地の構成が同じであり、呪文に少し違いが見られるだけでした。
ダニエル・ベセラ/Daniel Becerraのサイドボードの方が素直な構築と言えますが、これはチーム共同デッキ構築であったため、メタゲームを予測しやすかった結果だと思われます。ですから、もし私が使うなら、ポートランド王者であるタイラー・パトナム/Tyler Putnamのリストを使います。
イゼットフェニックス
次に紹介するのは、今もっとも旬なデッキ、イゼットフェニックスです。今となってはこのデッキが好きでたまりませんが、以前に試したときは微妙なデッキだなと感じました。特にサイドボード後は、墓地対策カードになす術がありませんでしたからね。
しかしつい先日……ロス・メリアム/Ross Merriamは以前まで定番であった《騒乱の歓楽者》ではなく《弾けるドレイク》を使い、StarCityGames.com Openを優勝しました。
《弾けるドレイク》に変更したのは革新的でした。以前ほど墓地に依存しなくなったのです。さらに、テンポが勝敗の分け目になるバントスピリットやホロウワンとの対戦で、相手が《安らかなる眠り》や《虚空の力線》をサイドインしてくることが喜ばしいことになりました。
ただ、どうしても納得できないのは、誰も《思考掃き》を4枚採用していないことです。
イゼットフェニックスはキャントリップ呪文が欲しいデッキですし、墓地を肥やしたいデッキでもあるので、《思考掃き》を4枚使わないのはあり得ないと思っています。グランプリ・リバプールのチームメイトであったアントニオ・デル・モラル・レオン/Antonio Del Moral Leonは以下のデッキを使用し、7-0を達成しました(先にチームの決着がついてしまった1戦は最後までやっていません)。
2 《山》
3 《蒸気孔》
4 《沸騰する小湖》
2 《汚染された三角州》
4 《尖塔断の運河》
-土地 (18)- 2 《僧院の速槍》
4 《氷の中の存在》
4 《弧光のフェニックス》
3 《弾けるドレイク》
-クリーチャー (13)-
残念だったのは、私ともう一人のチームメイトであったルイ・デルトゥール/Louis Deltourの結果が優れず、初日の最終戦で負けて2日目に進出できなかったことです。アントニオがいうには、サイドボードの《イゼット副長、ラル》は4枚目の《弾けるドレイク》にした方が良かったとのことです。このデッキにとって5マナは重いですからね。
以前私がイゼットフェニックスを試したとき、他のリストを参考に《ヴリンの神童、ジェイス》を使ってみたのですが、あまり強いとは思えませんでした。しかし、もう一度試してみてもいいかなと思っています。
最後に触れておきたいのは、5位に入賞しているティアゴ・ロドリゲス/Thiago Rodriguesがメインデッキに採用している《ティムールの激闘》です。私も試してみたいカードですね。あるいは《投げ飛ばし》を使った奇抜な構築にしても良いかもしれません。
《氷の中の存在》が《目覚めた恐怖/Awoken Horror》に変身すれば、相手のクリーチャーをすべて手札に戻すことができるため、少なくとも1回はプレイヤーに攻撃できるはずです。その後に《投げ飛ばし》で《目覚めた恐怖/Awoken Horror》を生け贄に捧げれば、実質的に二段攻撃のように機能するのです。しかも、《ティムールの激闘》は唱えたときに対象としたクリーチャーが除去されてしまうリスクがありますが、《投げ飛ばし》であればそのようなリスクはありません。
また、いずれ墓地から蘇ってくる《弧光のフェニックス》を《投げ飛ばし》で生け贄に捧げれば、《稲妻の一撃》のように使うこともできます。さらに、《弾けるドレイク》を生け贄に捧げれば、対戦相手を一瞬で葬り去ることも夢ではないのです(現代によみがえった《欠片の双子》デッキと言えるかもしれないですね)。
《古きものの活性》デッキ
《クラーク族の鉄工所》 (KCI)
グランプリ・リバプールのトップ4に3人も使用者がいたのはアイアンワークスでした。アイアンワークスについては、アイアンワークスマスターとでも呼ぶべきピオトルが解説記事を書いてくれているので、私がアイアンワークスの解説をするようなことはしません。ピオトルの記事はこちらからご覧になれます。自信をもっておすすめできる記事です。
アイアンワークスはグランプリ・リバプールで多かったデッキでした。《古きものの活性》の強さを鑑みれば、どのチームもこのカードを使ったデッキを使わざるを得ないですからね。
緑単トロン
《古きものの活性》が活躍したデッキは他にもありました。緑単トロンです。
グランプリ・ポートランドのトップ16に入ったリストを見ていただければわかると思いますが、トロンも2つのリストが似通っています。サイドボードに《約束された終末、エムラクール》が定番になっても良いのではないかと思います。仮に《約束された終末、エムラクール》本体が打ち消されたとしても、対戦相手を操れる能力はコントロールデッキと戦う上で影響力が大きいですからね。
5色人間
4 《古代の聖塔》
4 《手付かずの領土》
4 《魂の洞窟》
4 《地平線の梢》
4 《金属海の沿岸》
-土地 (19)- 4 《教区の勇者》
4 《貴族の教主》
4 《帆凧の掠め盗り》
4 《幻影の像》
4 《サリアの副官》
4 《翻弄する魔道士》
3 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《カマキリの乗り手》
3 《民兵のラッパ手》
3 《反射魔道士》
-クリーチャー (37)-
2 《ガドック・ティーグ》
2 《イゼットの静電術師》
2 《秋の騎士》
2 《罪の収集者》
1 《配分の領事、カンバール》
1 《民兵のラッパ手》
1 《四肢切断》
-サイドボード (15)-
5色人間とバントスピリットがグランプリ・ポートランドのトップ8に入っていないのは少し衝撃的でした。特にバントスピリットは、直近のグランプリを2回も優勝していましたからね。
グランプリ・リバプールで準優勝した5色人間のリストは、3枚あるフリースロットに《民兵のラッパ手》を3枚入れ、サイドボードにも1枚入れていますが、個人的にはあまり好きな構築ではありません。
私も5色人間を使ったことがあるのですが、予想以上に活躍して驚いたのは《つむじ風のならず者》です。
《民兵のラッパ手》と同じく消耗戦で非常に強いのはもちろんのこと、エルフ・ドレッジ・バントスピリットといったテンポが重要なマッチアップにおいても活躍してくれます。大きなサイズになった《教区の勇者》や《サリアの副官》をブロックされなくしたり、ブロッカーを用意することで将来的な戦闘フェイズを増やす役割を担ってくれるのです。
ですから、もし私が5色人間のリストをコピーするとすれば、9位に入賞しているベルナルドのリスト ですね。メインデッキに《反射魔道士》4枚、《民兵のラッパ手》2枚、そしてサイドボードに《つむじ風のならず者》2枚を採用しているからです。
グランプリ・リバプールを準優勝したリストはサイドボードに4枚採用されている《オーリオックのチャンピオン》が良いですね。私も今度5色人間を使うときは真似してみるかもしれません。
というのも《オーリオックのチャンピオン》がもっとも重要なカードの1枚になるマッチアップは驚くほど多いとわかったからです。たとえば、ドレッジ・バーン・5色人間・《死の影》デッキに対して活躍してくれました。
また、2枚採用した《クロールの銛撃ち》も変わり種ですが、バントスピリットに対して非常に頼もしいカードです。
個人戦の大会であれば、メタゲームが読みづらくなるので《クロールの銛撃ち》はおすすめしません。しかし、チーム戦であれば、バントスピリットは人気デッキの一角になるだろうと考えていたため、試してみることにしたのです。実際に使ってみた感触は悪くありませんでした。
青黒フェアリー
1 《沼》
2 《湿った墓》
4 《汚染された三角州》
2 《沸騰する小湖》
4 《闇滑りの岸》
3 《忍び寄るタール坑》
3 《廃墟の地》
2 《変わり谷》
-土地 (24)- 4 《瞬唱の魔道士》
3 《呪文づまりのスプライト》
-クリーチャー (7)-
4 《コジレックの審問》
4 《血清の幻視》
1 《呪文貫き》
2 《喪心》
1 《英雄の破滅》
3 《謎めいた命令》
4 《苦花》
3 《ヴェールのリリアナ》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (29)-
最後に、グランプリ・ポートランドで青黒フェアリーを使い、トップ8に入った高橋 優太におめでとうと声を大にして言いたいですね。グランプリ・アトランタで12-3では惜しくもトップ8に入れませんでしたが、諦めずに青黒フェアリーを使い続けた賜物でした。先ほどお話した通り、競技のモダンにおいては自分が知り尽くしたデッキを使うことがいかに有利に働くかを示してくれたのです。
最後に
同じデッキを使い続けているプレイヤーは他にもいます。マルセリーノ・フリーマンは白緑オーラを、ダニエル・バレスティン/Daniel Ballestinは青白コントロールを愛用し続けていることで知られています。彼らがカードを最高のタイミングで使えるのも、間違いなくその変わらぬ愛のおかげです。
それではまた次回の記事もお楽しみに!
ゴンサロ@u_mad_bro_MTGO