Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/02/13)
はじめに
やぁみんな。ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoだ。今日はブエノスアイレスの自宅で執筆している(普段は飛行機のなかで書くことが多いんだけどね)。
今回は、スタンダードでもっとも人気のあるデッキの一角、スゥルタイミッドレンジを取り上げよう。
After 10 years of trying, today I qualify to my first Pro tour winning @MagicOnline PTQ. London here I go! pic.twitter.com/gt7LEmKodx
— Peto Martinez (@MartinezPeto) 2019年1月27日
訳:10年に及ぶ挑戦の末、今日ついにMagic Onlineのプロツアー予選を突破し初のプロツアーへの参加権を得ることができた。行くぜロンドン!
『ラヴニカの献身』発売後初となる、Magic Onlineミシックチャンピオンシップ予選が2週間前に開催され、スゥルタイミッドレンジを使用したアルゼンチンの友人が優勝を収めた。そして俺はデッキについて詳しく知るため、彼に教えを請うことにした。そこで今回は、彼から得た教訓を余すことなくお伝えしようと思う。
彼をミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019に導いた最高のデッキリストをご覧いただこう。
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
4 《湿った墓》
4 《内陸の湾港》
4 《森林の墓地》
-土地(24)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《成長室の守護者》
4 《ハイドロイド混成体》
4 《培養ドルイド》
3 《マーフォークの枝渡り》
4 《翡翠光のレインジャー》
3 《人質取り》
2 《楽園党の議長、ゼガーナ》
-クリーチャー(28)-
通常のスゥルタイミッドレンジとの違い
このデッキリストは、一般的なスゥルタイミッドレンジとは少し毛色が異なる。+1/+1カウンターをテーマにしたシミックに黒をタッチした感じだね。《ハダーナの登臨》を上手く使うことが狙いなんだ。
ミシックチャンピオンシップ予選における仮想敵は、《運命のきずな》・《荒野の再生》にフィーチャーしたデッキと、その他諸々のミッドレンジデッキだという認識だった。だから俺たちは、いずれのアーキタイプにも強いデッキを作ろうと試みたんだ。
一般的なスゥルタイミッドレンジとの大きな違いについて話そう。1つ目は、安定したマナ基盤にするため、黒のダブルシンボルの呪文を採用していないことだ。だから《貪欲なチュパカブラ》や《ヴラスカの侮辱》、《肉儀場の叫び》はこのデッキリストには含まれていない。
そして2つ目の最大の違いは、《野茂み歩き》を使っていないことだ。というのも、その枠には《成長室の守護者》を入れたかったからなんだ。《成長室の守護者》の方が終盤にトップデッキして嬉しいカードだし、どのマッチアップでもよりいい働きが期待できるからね(赤系のバーンに限っては《野茂み歩き》の方がいいけどね)。それに《ハダーナの登臨》との相性でも《成長室の守護者》に軍配が上がる。
このデッキリストを使うべき理由
《ハダーナの登臨》は今のスタンダードで強力な1枚だ。でも、自分が一番好きだと思えるタイプのスゥルタイミッドレンジを使うべきだと俺は思う。今回紹介しているタイプは除去が比較的少ないから、一般的なリストよりもしっかりと盤面を作っていく力がある。《培養ドルイド》から巨大な《ハイドロイド混成体》を唱えられるのが強みだね。
もし3ターン目までに《ハダーナの登臨》をドローできていれば、相手が手を付けられないような初動がこのデッキには可能だ(残念ながら、そんな重要な《ハダーナの登臨》は2枚しか採用していない。複数枚ドローしてしまった場合に困るからね)。その超強力な初動の例をいくつか挙げてみた。最初の数ターンでいかに莫大なアドバンテージを獲得しているのか、わかってもらえると思う。
初動その1
初動その2
初動その3(これは特にお気に入りの動きだ)
サイドボードガイドとデッキ相性
さっき話したけど、このデッキリストはミッドレンジに勝つことを目的に構想されたものだ。だから、1本目に関しては、一般的なスゥルタイミッドレンジよりも、コントロールやアグロに弱いかもしれない。でも、サイドボード後は大幅に相性を改善できるよ。
赤単
対赤単
このデッキリストには《野茂み歩き》がないから、《渇望の時》を多めに採用して時間を稼ぐ必要がある。そして巨大な《ハイドロイド混成体》を唱えて盤面を固められれば勝つことができるだろう。
俺は《培養ドルイド》をサイドアウトするようにしている。ブロッカーに向いていないし、どんな火力呪文でも除去されてしまうからね。
《打ち壊すブロントドン》はタフネスが4あるから、ブロッカーとして非常に優秀だし、大抵の火力呪文に耐えられる。それに《宝物の地図》や《実験の狂乱》も破壊できる頼りになるクリーチャーでもあるね。
このマッチではポイントが2つある。5ターン目までライフを十分に保っておくこと、そして初動が遅い手札をマリガンすることだ。これさえ守ってくれれば、簡単に勝てると思うよ。
《運命のきずな》+《荒野の再生》デッキ・4色ギルド門
対《運命のきずな》+《荒野の再生》デッキ・4色ギルド門
忘れてはいけないのは、キーカードが《荒野の再生》であることだ。このエンチャントさえなければ、あっさり勝つことができるだろう。サイドボード前は相手のコンボを妨害する手段が一切ないから、相性はかなり悪い。相手を思い通りに動かせないこと、プレッシャーをかけることが大事だ。おそれずにリソースをすべて展開していこう。
サイドボード後も厳しい戦いを強いられるだろうけど、相手の脅威に対処できる手段が大幅に増える。むやみにマナをすべて使わないようにしよう。また、手札に《否認》や《軽蔑的な一撃》があったり、戦場に《打ち壊すブロントドン》がいるときも、常にマナを構えておくことが大事だ。
《成長室の守護者》はこのマッチアップのキーマンだ。相手のターンに打ち消し呪文を構えつつ、マナが余るようであれば「順応」で自身を強化するとともに後続をサーチすることができるからね。これこそが《野茂み歩き》でなく《成長室の守護者》を採用している理由のひとつだ。単体でも大きな役割を果たすから最高だね。
《運命のきずな》+《荒野の再生》デッキとギルド門デッキの違いは、前者が《濃霧》系のカードを運用するのに対して、後者は全体除去を使うことにある。全体除去がない《運命のきずな》デッキに対しては、望むだけの脅威を展開してもまったく問題ないよ。
スゥルタイミッドレンジ
対スゥルタイミッドレンジ
このマッチアップは相性がいい。カードアドバンテージを得ることに意識を向けつつ、《培養ドルイド》のマナ加速から巨大な《ハイドロイド混成体》を叩きつけよう。こちらのデッキリストには《ヴラスカの侮辱》が採用されていないから、相手の《ビビアン・リード》は大きな脅威となる。でも、相手の方が動きが遅いので、ゲームを有利に運べることが多いね。
このマッチアップのキーカードは《人質取り》だ。《貪欲なチュパカブラ》、《翡翠光のレインジャー》、《破滅を囁くもの》など、優秀な脅威を奪い取ることができるんだ。大きく育った《野茂み歩き》を追放して+1/+1カウンターを取り除けるのもありがたいね。
《人質取り》の最大の魅力の1つは、《ハイドロイド混成体》に対する完璧な解答になることだ。奪った《ハイドロイド混成体》はマナを払って唱えてもいいし、仮に唱える前に《人質取り》が除去されたとしても《ハイドロイド混成体》も死亡してしまうんだ。
イゼットドレイク
対イゼットドレイク
相性が互角のマッチアップだ。イゼットドレイクの新入りである《プテラマンダー》は、キャントリップ呪文などのあらゆる呪文と相性抜群だね。飛行持ちで序盤から相手にプレッシャーをかけられるし、かなり早い段階から「順応」で大きな脅威に変貌する。
とは言ったものの、俺たちのデッキには《プテラマンダー》を対処する手段はいくつかある。特に《人質取り》はこの上なく頼もしい。5ターン目に《人質取り》で《プテラマンダー》を追放すれば、即座に唱えることができる。あるいは《ラノワールのエルフ》や《培養ドルイド》でマナ加速していれば、この動きを4ターン目に実現可能だ。奪った《プテラマンダー》はパワーが高くなったドレイクに対するブロッカーになるし、相手のクリーチャーがいないならプレッシャーをある程度かけることができる。非常に頼もしい人質だね。
《強迫》はイゼットドレイクに対して最高のサイドボードカードの1枚だ。捨てさせたいカードとしては《潜水》や《幻惑の旋律》がある(念のために言っておくと、戦場の《ハイドロイド混成体》はいくらサイズが大きくてもたったの2マナだ)。また、相手の手札にあるかもしれない《軽蔑的な一撃》を捨てさせた上で《ビビアン・リード》を着地させることができる。
青単
対青単
青単のキーカードは《執着的探訪》だから、相手のクリーチャーはできるだけ早く除去するように心がけよう。《打ち壊すブロントドン》は最初はあまりいいサイドボードカードに思えないかもしれないけど、《執着的探訪》を破壊できたときに見方が変わると思うよ。
青単にも《プテラマンダー》が加入したし、その他にも1マナのクリーチャーがいるため、《人質取り》はこのマッチアップでも大活躍してくれる。
エスパーコントロール
対エスパーコントロール
エスパーコントロールは最近ますます数を増やしてきたね。デッキリストもどんどん洗練されてきているから、Tier1と呼ぶにふさわしいものになりつつある。
相手は《ケイヤの怒り》を4枚採用しているため、ゲームにまったく影響を与えないマナクリーチャーは何枚かサイドアウトしよう。《培養ドルイド》もマナクリーチャーだけど、このカードにはマナ加速によって巨大な《ハイドロイド混成体》を唱えるという役割が期待できる。だから《培養ドルイド》はサイドアウトしないでいい。
相手はサイドボード後に、《正気泥棒》や《人質取り》といった優秀なクリーチャーたちをサイドインしてくる(《正気泥棒》は実に厄介だ)。全体除去で大きな損失をしないような形でプレッシャーをかけつつ、《ハイドロイド混成体》や《成長室の守護者》といったカードでアドバンテージを取るようにしよう。
おわりに
メタゲームに合わせて微調整すれば戦えるミッドレンジを使いたいのであれば、今回紹介したデッキを強くおすすめする。とてもいいデッキなんだ。それに、考えがいがあるデッキでもある。どうやれば呪文を連鎖させられるのか、どうやればカードを最大限上手く使えるのか、ってね。
今回の記事はどうだったかな?何か聞きたいことがあったら、気兼ねなく俺の放送やSNSで尋ねて欲しい!(アカウント名はすべてLuis Salvattoで統一してある。)
今回も読んでくれてありがとう。
ルイス・サルヴァット