By 富田 翼
マジックには多様なフォーマットが存在している。自らの好みに合わせて遊べるのがその魅力のひとつなのだろう。
しかし、プロプレイヤーにとってそれはある種の負担にもなり得る。さまざまな環境の理解や時間などが必要になってくるからだ。しかも、彼らは結果を常に求められる立場にある。
そのようななか、スタンダード・モダン・レガシー・リミテッド、そのすべてにおいて結果を出しているプレイヤーがいる。ジェレミー・デザーニだ。
きっと彼ならば、大きな教訓を与えてくれるに違いない。そこで我々は彼にインタビューを行うことにした。
多様なフォーマットで活躍するには
――「早速ですが、質問です。あなたはどんなフォーマットでも安定して結果を残してきている稀有な選手だと思います。多様なフォーマットに精通するコツでもあるのでしょうか?またそのなかでも特に好きなフォーマットがあれば理由も合わせて教えてください」
デザーニ「大切なのはたったひとつだけ、真剣に練習をすることです。毎週取り組むフォーマットが違うのは決して簡単なことではありませんが、プロプレイヤーを目指すのであればやるしかありません。一般的な練習方法としては、まずメタゲームを分析し、環境のベストデッキたちを使ってみます。仮に本番で使わないことになったとしても、敵を知っておくことは有利に働きます」
デザーニ「私が一番好きなフォーマットは群を抜いてキューブドラフトです。残念ながら公式の大会でこのフォーマットが採用されていませんが、マジックは楽しむためのゲームですよね」
レガシーで活躍が見込まれる新カード
――「あなたはグランプリ・シアトル2018(レガシー)で準優勝した経歴をお持ちです。『ラヴニカの献身』からおすすめのレガシーカードはありますか?」
デザーニ「レガシーの大会で活躍できるとは私自身も驚きましたね。そもそもスタンダードとレガシーのダブルグランプリが開催されたシアトルに行ったのは、主にスタンダードのためだったのです。レガシーには、無名とはいえ、何年も研鑽を積んできた強豪プレイヤーがひしめいています。ですから、”新入り”となって勝つことは非常に困難なのです。ゲームをプレイするにしても、そこで展開されるロジックやテクニックは、他のフォーマットとは異なります」
デザーニ「最近はレガシーをプレイしていませんが、ほぼ間違いないだろうと思っているのは《プテラマンダー》がレガシーで活躍する可能性があるカードだということですね」
現在のスタンダードについて
――「青単を使ってプロツアー『テ―ロス』を優勝したあなたにお聞きしたいです。現在のスタンダードにも青単がいますが、現在の青単についてはどう思いますか?可能性を感じますか?」
デザーニ「青単信心は、4枚ずつ採用されている《海の神、タッサ》と《波使い》をいかにいい状況で戦場に出せるか、というデッキだったのだと考えています。ですから、序盤のターンではこれらのカードが活躍するお膳立てをするわけですね」
デザーニ「かたや現在の青単は違います。青単信心と比較した場合、1マナのクリーチャーの重要性が大きく、動きも速い。しかし、カード間のシナジーは薄く、持久力も青単信心ほどはありません。ですが、相手に何もさせないような初手があるのが強みですね」
――「今回のスタンダードでは、どんなデッキを選択されたのですか?理由とともに教えてください」
デザーニ「スゥルタイミッドレンジを使用しています。私のオリジナル要素はあまりありませんが、他のメンバーが数週間かけて調整してきたものなので、彼らを信頼しています。チームには世界王者もいれば、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー、マジック・プロリーグのメンバーもいますからね。彼ら全員がデッキリストに納得したのであれば、私は黙って彼らに従おうと思えますし、デッキをプレイすることに全神経を集中させることができるのです」
――「なるほど、チームメンバーに全幅の信頼を置いているんですね。では、練習の段階で可能性を感じたものの、最終的に使わなかったデッキ・カードはありますか?」
デザーニ「マーフォークはまったく理不尽だと感じるほどの強さがあり、結果を出す人がいてもおかしくないだろうと思います。相手がどうやって対処すれば良いのかわからなければ、それが大きなアドバンテージになり得ますからね」
レガシーで勝てたことが驚きであると本人は言っていたが、それこそ彼が真剣な練習をし、数々の戦いをくぐり抜けてきたからなのだろう。
スタンダードではマーフォークの可能性に言及していたデザーニだが、ラファエル・レヴィ/Raphael Levyはマーフォークを使ってスタンダードラウンドで8-2という成績を収めている。
Aquaman does it! 8-2 in constructed with « Jungle Secrets » (Merfolk). 11-5 in total to a likely top 48 finish. Deck was… interesting to say the least! Debriefing to come shortly on Hareruya. #2019Mc1 #HareruyaPros pic.twitter.com/Ebaa35wdBY
— Raphael Levy (@raphlevymtg) 2019年2月24日
フランスの強豪2人にそのポテンシャルを認められたマーフォーク。ぜひみなさんも試してみてはいかがだろうか。