Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/05/02)
『灯争大戦』でもっとも注目のカード
『灯争大戦』は、近年でも屈指の強力なパックになる可能性を秘めています。そして、私自身がモダンでもっとも期待を寄せているカードは、紛れもなく《大いなる創造者、カーン》です。
テキストを見る限りではとてもユニークなカードに思えますが、モダンで使用するにはマナコストが重すぎるおそれがあります。確かに、サイドボードからアーティファクトを「願う」ことができたり、一方的に《石のような静寂》を使えるのは魅力的です。しかし、その魅力をどう活かすべきでしょうか?そのヒントは《マイコシンスの格子》にあります。
《マイコシンスの格子》と《大いなる創造者、カーン》が盤面に揃えば、対戦相手は起動型能力を一切使えず、マナ能力も使用できません!このロック状態から抜け出すには、基本的に戦闘で《大いなる創造者、カーン》を破壊するしかないのです。
コンボを完成させるには4マナのプレインズウォーカーと6マナのアーティファクトを必要とするのですから、モダンにおいてはそこまで魅力的ではないのが普通かもしれません。しかし、このコンボは《マイコシンスの格子》をメインデッキに入れる必要がないという特異性があります。サイドボードに1枚忍ばせておき、《大いなる創造者、カーン》を戦場に出し、タイミングを見計らって-2能力で手札に加えれば良いのです。
とはいえ、その状況に持っていくことは簡単ではありませんから、安定した盤面で《大いなる創造者、カーン》と6マナがある状況を作り出せる構築にする必要があります。しかし、モダンにはそれを達成する手段がいくつかあると思いますし、それこそがこの記事で伝えたいことなのです。
《大いなる創造者、カーン》の多様な可能性
プリズン
まず、アーティファクトを軸にしたデッキで《大いなる創造者、カーン》を採用すれば、モダンでも最強クラスのカードを2枚も使用できます。《古きものの活性》と《オパールのモックス》です。《古きものの活性》があれば、《大いなる創造者、カーン》を戦場に出すことを狙いとしたデッキに大きな安定性が与えられます。《オパールのモックス》は、《大いなる創造者、カーン》を展開するターンを早め、《マイコシンスの格子》に必要な6マナに到達しやすくしてくれますね。
1 《島》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
4 《空僻地》
4 《産業の塔》
4 《ダークスティールの城塞》
2 《アカデミーの廃墟》
2 《発明博覧会》
-土地 (22)- 3 《呪文滑り》
3 《練達飛行機械職人、サイ》
-クリーチャー (6)-
4 《虚空の杯》
4 《ミシュラのガラクタ》
4 《オパールのモックス》
3 《仕組まれた爆薬》
2 《溶接の壺》
4 《精神石》
3 《罠の橋》
4 《大いなる創造者、カーン》
-呪文 (32)-
2 《ギラプールの霊気格子》
2 《ボーラスの工作員、テゼレット》
1 《呪文滑り》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《トーモッドの墓所》
1 《減衰球》
1 《防御の光網》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《罠の橋》
1 《マイコシンスの格子》
-サイドボード (15)-
現在のモダンですでに活躍している《発明品の唸り》プリズンをベースとしたものとなっています。《大いなる創造者、カーン》と《発明品の唸り》を共存させた場合、動きが鈍くなってしまうと考えられます。《罠の橋》も採用している関係で、あまり手札にカードを抱え込みたくないですしね。そこで、《発明品の唸り》は採用せず、《大いなる創造者、カーン》を4枚使うことにしました。
《発明品の唸り》を抜いたことで、無色マナである《ダークスティールの城塞》を採用できるようになっています。これにより、《オパールのモックス》を使った速い初動が可能となり、1ターン目に《虚空の杯》を(X)=1で設置することも夢ではありません。
《発明品の唸り》を不採用とした恩恵は他にもあり、追加の《発明博覧会》や《アカデミーの廃墟》を安心して採用できるようになったのです。
《罠の橋》や《練達飛行機械職人、サイ》、《呪文滑り》は、《大いなる創造者、カーン》を展開するまでの時間を稼いでくれるだけでなく、彼を守ってくれることでしょう。
《大いなる創造者、カーン》で手札に加えるため、サイドボードには1枚挿しのものが多く、若干まとまりがないかもしれません。ですが、その多くはそれぞれを役割を持っているのです。《大いなる創造者、カーン》を採用するのであれば、間違いなく《トーモッドの墓所》はサイドボードに入れます。彼をプレイして-2能力を使えば、すぐに唱えられますからね。
トロン
《大いなる創造者、カーン》を有効活用する方法は他にも考えられます。早々に大量のマナを生み出せるデッキで採用するという方法です。トロンは3ターン目に7マナを確保しようとするデッキですし、既存のデッキリストには10マナのカードが使用されています。都合が良いことに、10マナあれば《大いなる創造者、カーン》と《マイコシンスの格子》を同一のターンに唱えられるのです。
4 《ウルザの塔》
4 《ウルザの魔力炉》
4 《ウルザの鉱山》
1 《幽霊街》
1 《ウギンの聖域》
-土地 (19)- 1 《歩行バリスタ》
3 《ワームとぐろエンジン》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
-クリーチャー (5)-
4 《森の占術》
1 《四肢切断》
4 《彩色の宝球》
4 《彩色の星》
4 《探検の地図》
2 《大祖始の遺産》
3 《忘却石》
4 《大いなる創造者、カーン》
4 《解放された者、カーン》
2 《精霊龍、ウギン》
-呪文 (36)-
4 《自然の要求》
1 《呪文滑り》
1 《トーモッドの墓所》
1 《世界のるつぼ》
1 《罠の橋》
1 《忘却石》
1 《三なる宝球》
1 《マイコシンスの格子》
-サイドボード (15)-
一般的なトロンのデッキリストからフィニッシャーを何枚か抜き、その枠に《大いなる創造者、カーン》を4枚採用したものとなっています。サイドボードには、ゲームに大きな影響を与える3マナのアーティファクトを何枚か入れています。これは、ウルザランドが3ターン目に揃った場合に、《大いなる創造者、カーン》に加えてそれらをプレイできるようにするためですね。《夢の宝珠》や《転倒の磁石》も候補に挙がりましたが、これらのカードの活躍が期待できる状況であれば、《呪文滑り》や《罠の橋》でも大抵の場合は同じ役割を果たしてくれるだろうと考えました。
コントロール
《大いなる創造者、カーン》を活用する方法その3は、コントロールデッキです。モダンのコントロールデッキは、更地に《精神を刻む者、ジェイス》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》を着地させようとするものですから、《大いなる創造者、カーン》も安全に着地させようとするのは自然な発想ではないでしょうか?
このデッキのもうひとつの魅力は、《飛行機械の鋳造所》と《弱者の剣》のコンボを搭載していることです。《大いなる創造者、カーン》によって、不足しているコンボパーツをサイドボードから手札に加えられるようにしてあります。
3 《平地》
2 《神聖なる泉》
4 《溢れかえる岸辺》
2 《天界の列柱》
2 《氷河の城砦》
1 《秘教の門》
4 《廃墟の地》
1 《アカデミーの廃墟》
-土地 (24)- 1 《瞬唱の魔道士》
-クリーチャー 1)-
4 《血清の幻視》
1 《糾弾》
1 《失脚》
1 《ドビンの拒否権》
1 《マナ漏出》
1 《交錯の混乱》
1 《論理の結び目》
1 《知識の渇望》
3 《至高の評決》
1 《謎めいた命令》
2 《アズカンタの探索》
2 《拘留の宝球》
3 《弱者の剣》
3 《飛行機械の鋳造所》
2 《発展のタリスマン》
4 《大いなる創造者、カーン》
-呪文 (35)-
2 《天界の粛清》
1 《呪文滑り》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《トーモッドの墓所》
1 《真髄の針》
1 《減衰球》
1 《ドビンの拒否権》
1 《弱者の剣》
1 《飛行機械の鋳造所》
1 《世界のるつぼ》
1 《罠の橋》
1 《マイコシンスの格子》
-サイドボード (15)-
このようなコントロールデッキにするのであれば、他にもいろいろな構築方法が検討できるのは間違いありません。実際のところ、モダンの古典的な青白コントロールもさまざまな形で構築されてきましたからね。ロングゲームを目指していくデッキにおいて、《大いなる創造者、カーン》が4枚なのは多すぎるかもしれません。しかし、新しいカードの真価を問う段階であれば、できるだけその機会を多くするのが好みですね。
まとめ
《大いなる創造者、カーン》を採用するとしても、大抵のデッキでは4枚も使うことにはならないだろうと予想しています。ただ、枚数を増やすメリットもあります。1枚目は《マイコシンスの格子》を手札に加えて後に除去されたとしても、2枚目は《稲妻》で除去されない忠誠度として展開できるのです。《大いなる創造者、カーン》を中心にしたデッキが、モダンの速度に追いつけない可能性もあるでしょう。ただ、いずれにしても彼が使用されるのは間違いないだろうと思います。
少なくとも《発明品の唸り》プリズンが1枚採用し、《マイコシンスの格子》とのコンボによって《粉砕の嵐》や《謎めいた命令》を封じようとするでしょう。また、マナコストが重く、攻撃されてしまう脆さがあっても、無色の《石のような静寂》としてエルドラージ系のデッキが採用するかもしれません。
忘れてはならないのは、今回紹介したデッキすべてにおいて、《大いなる創造者、カーン》がメインデッキから採用できる強力な対策カードであるということです。常在型能力や、-2能力をご覧いただければお分かりになると思います。《マイコシンスの格子》と同時に採用されず、《大いなる創造者、カーン》が単体としてモダンで多少採用されることになっても私は驚かないでしょう。
早く《大いなる創造者、カーン》をモダンで試してみたいですね。ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019の構築で『灯争大戦』の使用が認められていないのは少々残念でした。カードの入手が困難であることや、調整時間が限られていることも踏まえれば、仕方のないことだったのでしょう。
何か質問がありましたら、気兼ねなくTwitter(@jacobnagro)で訊いてくださいね。今回紹介したデッキリストや、モダンの《大いなる創造者、カーン》についてのご意見もお待ちしています。