プレインズウォーカー達を指揮せよ! ~4色《戦慄衆の指揮》~

Raphael Levy

Translated by Ryosuke Igarashi

原文はこちら
(掲載日 2019/05/15)

はじめに

『灯争大戦』がついにリリースされ、まさに興奮も最高潮といったところだ。MTGアリーナが登場してから、オリジナルデッキの作成を楽しんでいるよ。内にある情熱を発散する手段が欲しかったんだろうね。もしくは、Magic Onlineでデッキを組むのが面倒だったのかもしれない。

ビビアンのアーク弓

最初はHareruyaWayfinderでも紹介した、《ビビアンのアーク弓》デッキから始めた。楽しんで構築できたし、ポテンシャルもあると思うよ。このデッキを回しているとき、SpecialK589(ポール・カチョロフスキ/Paul Kaczorowski)に敗北してしまったのだが、彼のデッキは非常に惹かれるものだった。

スクリーンショットをちょっと撮っていたのもあって、マッチが終わるころにはデッキを再現することができたよ。気に入らなかった部分を少し変えて(元のバージョンは《進化の賢者》を採用していたが、これも選択肢の一つではあるね)、できたのがこんな感じのデッキだ。

コンセプトとしては、「探検」で墓地をプレインズウォーカーや「探検」クリーチャーでいっぱいにし、それらを《戦慄衆の指揮》で釣り上げる、というものだ。《野茂み歩き》全てをまとめ上げてくれるカードだね。戦場に出た「探検」クリーチャーの分ライフを得られる……墓地から帰ってきた分も。

このコンセプトを非常に気に入ったので(墓地シナジーとラファエル・レヴィ……これ以上言わなくても分かるだろう?)、改良に取り組んだ。かなり複雑だったね。最初にこの記事を書き上げたときに、リストは大体出来上がっていたのだが、もう何日か調整してみて、非常に競技レベルなデッキが出来上がったと思えたんだ。実際、ポールと私はほんの数時間でミシックランクに到達できたね。今回はそのデッキリストを紹介しよう。

デッキリスト

このデッキについては語れることが多すぎるし、4色のため選択肢も非常に多くなっている。

問題点その1:マナベース

緑の軽いカードと、4色全てにプレインズウォーカー、そしてマナカーブの頂点に(黒)(黒)を要求するカードを採用したデッキ……君ならマナベースをどう組む?いろいろと試してみて、最もうまくいくように思えたのがこれだ。

色マナとショック/チェックランドの配分が間違っている可能性はあるね。《戦慄衆の指揮》に関わってくるので、ライフは余分に失いたくはない。それに、マナカーブ通りに呪文を唱えたいから、土地はアンタップ状態で出したい。何時間か回してみて、考え出したのがこのマナベースだ。いい感じに作用してくれている。だが、これで問題が解決したわけではない。土地が24枚で、(黒)(黒)を含む6マナのカードを安定して唱えるには、もう一味工夫が必要なのだ。

楽園の贈り物

しばらくの間、《楽園の贈り物》を試していた。このカードは必要なマナを供給しつつ、(黒)(黒)を捻出することもできる。 かしながら、マナフラッドしないために土地を22枚にまで減らした結果、3枚目の土地が引き込めずに《楽園の贈り物》を唱えられなかったり、逆にマナ源を引きすぎたりしてしまった。

次元間の標

《次元間の標》は1枚で多くの問題を解決してくれた。多色のプレインズウォーカーを全て唱えられるため、このデッキを可能にしてくれたし、多くのライフを得られるため序盤をしのぎつつ、《戦慄衆の指揮》を強化できるのだ。

培養ドルイド野生造り、ジアン・ヤングー

初期は《培養ドルイド》《野生造り、ジアン・ヤングー》を採用していたが、《培養ドルイド》があっけなく除去されてしまい、《野生造り、ジアン・ヤングー》が1人では何もできない……ということになりがちだった。

繁茂の絆沼

《繁茂の絆》は序盤のマナ基盤を安定させつつ、後半は脅威に向かって掘り進められる、いいとこどりのカードだ。墓地からなるべく多くのパーマネントを戻せるように、ライフはできるだけ保っておきたい。その点、ライフゲインは有用だね。

また、《沼》を黒マナ源として1枚追加した。本当に(黒)(黒)を出したいんだ。まあ《廃墟の地》《暗殺者の戦利品》で持ってくる土地も欲しかったからね。

問題点その2:クリーチャー

《野茂み歩き》《マーフォークの枝渡り》《翡翠光のレインジャー》確定で4枚ずつだ。このパッケージが今まで証明してきているように、ついでに赤単に勝つこともできる。コントロールデッキに対しては、こちらのゲームプランを進めつつも、序盤にドローできるプレッシャーとなるのだ。

イクサーリの卜占師

問題としては、このデッキは2マナ域が薄いにもかかわらず、《探求者の従者》を唱えられるようなマナベースになっていないという点だ。アグロデッキと対面した際、これは隙になりうる。そのため、《イクサーリの卜占師》を採用することに決めたのだ。言いたいことはわかる、特に面白くもないカードたちだ。だが、仕事はこなしてくれるよ。墓地を肥やしつつもプレインズウォーカーを守るため、あと1枚は「探検」クリーチャーを採用したかった。そこでたまたま、《イクサーリの卜占師》が唯一の選択肢だったんだ。

虐殺少女

しばらくの間、このデッキは白ウィニーに負け、エスパーミッドレンジの《第1管区の勇士/Hero of Precinct One》に押し切られてしまっていたのだが、《虐殺少女》を採用することで、全てが変わったんだ。この伝説の暗殺者は、私が改善したかった、このデッキの持つ大半の問題点を解決してくれたよ。

《黄金の死》のように、非常に状況が限られ、ゲームプランに噛み合わない全体除去はメインデッキに採用したくなかった。《虐殺少女》は一見勝ち目のないような盤面を何とかし、《戦慄衆の指揮》で釣り上げることもでき……対処しがたい脅威にもなりうるのだ。彼女を《野茂み歩き》や「探検」クリーチャーと一緒に釣り上げるときは、誘発をスタックに積む順番に気をつけよう。「探検」が解決されるときに《野茂み歩き》が戦場にいなければライフゲインできないので、《虐殺少女》の誘発は一番下に積むことだ。

問題点その3:プレインズウォーカー

プレインズウォーカーたちの正しい割合はなんだろうか?

戦慄衆の将軍、リリアナ

初期のリストでは《戦慄衆の将軍、リリアナ》が首位打者で、《戦慄衆の指揮》《戦慄衆の将軍、リリアナ》のどちらも勝ち筋となるカードだったね。しかし、ゆっくりとだが確実に、《戦慄衆の将軍、リリアナ》見た目ほどには強力ではないと分かってきた。

確かに、相手が何もできなくなるようなゲームもある。だが大抵の場合、手札に溜まったままだったり、墓地にいるときでも、6点ものライフを払って彼女を蘇らせたくはなかった。対処したい脅威……プレインズウォーカーや、特定のクリーチャーに触れることはできないしね。ただコストに見合っていないんだ。結果、6マナのカードは《人知を超えるもの、ウギン》のみになったが、これも他のカードに変えることを考えてる数少ないカードの1枚だね。強力なものの、多くの場合はオーバーキルだよ。

ドミナリアの英雄、テフェリー

1つ下がって5マナには、《ドミナリアの英雄、テフェリー》。ターン終了時にアンタップした土地を有効活用できないため、コントロールデッキで使うほどには強力ではないが……とはいえ、素晴らしいカードだ。脅威、それもあらゆる脅威を対処できる、重いプレインズウォーカーが必要だからね。《ドミナリアの英雄、テフェリー》の[-3]能力はまさに求めていたものだよ。

ゴルガリの女王、ヴラスカ

さて4マナには、まず《ゴルガリの女王、ヴラスカ》を採用した。[-3]能力で小型から中型までのクリーチャー(《ベナリアの軍司令》《正気泥棒》も!)を除去し、ロングゲームでは[+2]能力でちょっとのライフゲインとドローを授けてくれる。

伝承の収集者、タミヨウ

そして、大事なパズルの1ピース、《伝承の収集者、タミヨウ》だ。《戦慄衆の指揮》を探すことができ、すでにディスカードさせられたり唱えたりして、墓地に落ちている場合は回収もできる一方で、墓地を重要なカードで肥やしてもくれる。《野茂み歩き》だったり、各プレインズウォーカーだったりね。墓地が肥えていき、《戦慄衆の指揮》で多くのパーマネントを釣り上げようと狙っているときは、墓地に落としておきたいカードを宣言してはいけない。手札に加わってしまうからね。

時を解す者、テフェリー

3マナには、《時を解す者、テフェリー》だ。なんとか3ターン目に出せたなら、相手のクリーチャーをバウンスすることで非常にテンポを取ることができるし、コントロールデッキに対して鍵となるカードだ。ライフを1、2だけ残して《戦慄衆の指揮》を唱えたとき、その際失ったライフは《野茂み歩き》で取り戻そうとすることだろう。だが、「探検」がスタックに乗っている間に《野茂み歩き》を除去されてしまうとそうはいかない。そこで、《時を解す者、テフェリー》がいればその心配もなくなるんだ。《時を解す者、テフェリー》が盤面にも墓地にもいないときは気をつけよう。

覆いを割く者、ナーセットオルゾフの簒奪者、ケイヤ

《覆いを割く者、ナーセット》は相手のドローを防ぎつつも、脅威を探す助けになる。《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》はライフを得られる一方で、小さなクリーチャーを除去することもできるね。

他にも採用されうるプレインズウォーカーは多く存在しており、実際サイドボードには特定のマッチアップ用に何人かが採用されている。

支配の片腕、ドビン放浪者復讐に燃えた血王、ソリン

特別賞のカードたち

一度はデッキに入っていたものの、抜けていったプレインズウォーカーたちだ。

寛大なる者、アジャニ盾魔道士、テヨ謎めいた指導者、カズミナ
秘宝探究者、ヴラスカ戦慄衆の将軍、リリアナ

問題点その4:サイドボード

サイドボードに本当に必要なものを把握するまで時間がかかったが、現在のサイドボードには非常に満足している。

対赤単

対赤単

Out

覆いを割く者、ナーセット
覆いを割く者、ナーセット
ドミナリアの英雄、テフェリー
人知を超えるもの、ウギン

In

オルゾフの簒奪者、ケイヤ
オルゾフの簒奪者、ケイヤ
復讐に燃えた血王、ソリン
放浪者

ライフゲイン要素が非常に多いため、赤単側が先手でぶん回らない限り、かなり有利なマッチアップだ。相手は序盤、こちらのプレインズウォーカー(彼らは《次元間の標》でライフゲインもしてくれる)の対処に手間取り、やがて《虐殺少女》が盤面を一掃する。だが、《野茂み歩き》だけで勝てるとは考えないことだ

対エスパーミッドレンジ

対エスパーミッドレンジ

Out

覆いを割く者、ナーセット オルゾフの簒奪者、ケイヤ 繁茂の絆 イクサーリの卜占師
人知を超えるもの、ウギン

In

クロールの銛撃ち クロールの銛撃ち クロールの銛撃ち クロールの銛撃ち
復讐に燃えた血王、ソリン

《正気泥棒》を採用しているデッキに対しては、必ず《クロールの銛撃ち》をサイドインする。そして《クロールの銛撃ち》をサイドインする際は、《復讐に燃えた血王、ソリン》も一緒にサイドインするんだ。《正気泥棒》を絶対に除去したいから、《復讐に燃えた血王、ソリン》の能力で《クロールの銛撃ち》を再利用できるのは大事だ。

古呪

相手もプレインズウォーカーを多く追加してくるようなら、《古呪》をサイドインしてもいい

対エスパー/グリクシス:打ち消し呪文を使う重コントロール

対エスパー/グリクシス

Out

虐殺少女 虐殺少女 イクサーリの卜占師
オルゾフの簒奪者、ケイヤ
ゴルガリの女王、ヴラスカ

In

クロールの銛撃ち クロールの銛撃ち クロールの銛撃ち
古呪
時を解す者、テフェリー

コントロールデッキに対しては、打ち消し呪文を避けるために4枚目の《時を解す者、テフェリー》をサイドインする。このマッチは脅威で相手を押しつぶせるだろうし、《戦慄衆の指揮》は1枚で勝負を決めれるカードだから、大抵の場合非常に有利だ。《正気泥棒》対策として、ここでも《クロールの銛撃ち》が登場だ。見ればわかるとは思うが、青白コントロールにはサイドインしないように。

対グルール

対グルール

Out

マーフォークの枝渡り
覆いを割く者、ナーセット

In

放浪者
古呪

このマッチアップも非常に有利だ。とはいえ、《主無き者、サルカン》による急なダメージには気をつけよう

対白単ウィニー

対白単ウィニー

Out

覆いを割く者、ナーセット 覆いを割く者、ナーセット 時を解す者、テフェリー
人知を超えるもの、ウギン ドミナリアの英雄、テフェリー
戦慄衆の指揮

In

クロールの銛撃ち クロールの銛撃ち クロールの銛撃ち
オルゾフの簒奪者、ケイヤ オルゾフの簒奪者、ケイヤ
人質取り

非常に厳しいマッチアップだが、《虐殺少女》によっては逆転が起こりうる。大抵のアグロデッキとのマッチアップ同様に5、6ターン目に強力なカードを唱えるため、序盤数ターンをしのぐんだ。

対シミックネクサス

対シミックネクサス

Out

戦慄衆の指揮 戦慄衆の指揮 戦慄衆の指揮 戦慄衆の指揮
虐殺少女 虐殺少女 イクサーリの卜占師
ゴルガリの女王、ヴラスカ
繁茂の絆

In

クロールの銛撃ち クロールの銛撃ち クロールの銛撃ち クロールの銛撃ち
漂流自我 漂流自我 漂流自我
時を解す者、テフェリー
古呪

おそらく最悪のマッチアップだ。《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》のおかげで相手に干渉はできるが、バウンス呪文や《爆発域》を上手く引かれると除去されてしまう。

ゲームプランとしては、序盤にプレッシャーをかけ、それをプレインズウォーカーたちでバックアップすることになる。《戦慄衆の指揮》はおそらく遅すぎるし、特にサイド後は《否認》をサイドインしてくるだろう。《漂流自我》は、ゲームプランを完遂するまでの時間稼ぎになる。

再利用の賢者

もし《つぶやく神秘家》がサイドインされるようなら、《虐殺少女》をメインに残しておいてもいい。また、《漂流自我》を1枚《再利用の賢者》と入れ替えることになるかもしれない。《荒野の再生》を破壊するには5マナは重過ぎるため、《ビビアン・リード》よりはいい選択だろう。

最後に

全てのマッチアップを網羅したわけではないが、要点は掴めたことだろう。私のように、楽しんでプレイしてくれることを願っているよ。グッドラック!

ここまで記事を読んでくれてありがとう。もし質問があれば、是非私のTwitchチャンネルで質問してほしい。おっと、それに晴れる屋製品のプレゼント企画も予定しているから、是非放送に来てフォローしてくれ!

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ラファエル・レヴィ

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Raphael Levy ラファエル・レヴィはフランスの古豪。初のプロツアー参戦は1997年で、そこから2017年のプロツアー『イクサラン』まで、91回連続でプロツアーに出場し続けたという驚異の経歴の持ち主だ。そして、2019年のミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019にて、歴史上で初めて100回のプロツアーに参戦したプレイヤーとなった。これまでに築き上げてきた実績は数知れず、2019年2月の時点でプロツアートップ8が3回、グランプリトップ8が23回(優勝6回)、その他にもワールド・マジック・カップ2013ではキャプテンとしてチームを優勝に導くなど、数々の輝かしい成績を残している。生涯獲得プロポイントは750点を超えており、2006年にはプロツアー殿堂にも選出されている。 Raphael Levyの記事はこちら