ディミーア徹底解剖 ~『灯争大戦』編~

Arne Huschenbeth

Arne Huschenbeth

Translated by Nobukazu Kato

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(掲載日 2019/05/03)

ディミーア家の一員

みなさんこんにちは!

一年で最高の時期がやってきましたね。『灯争大戦』の全カードが公開され、デッキ構築意欲も湧いてきました。僕は熱狂的なディミーアのファンなので、今回の記事では新セットに収録されている注目の青と黒のカードの可能性を語っていこうと思います。と、その前に、僕がディミーア愛好家を名乗る理由を簡単にお話ししましょう。

氷瀑の執政命運の核心龍王シルムガル

僕が初めて手に取ったスタンダードのデッキは、青黒ドラゴンでした。そのデッキは、屈指のコントロールマスターである八十岡 翔太がプロツアー『タルキール龍紀伝』で準優勝したときに使用したものです。青黒という闇の領域へ初めて足を踏み入れた瞬間でした。

ヴリンの神童、ジェイス悪夢の織り手、アショク時を越えた探索

その次のシーズン、つまり《ヴリンの神童、ジェイス》が登場してから、《ヴリンの神童、ジェイス》《悪夢の織り手、アショク》を4枚ずつ採用した青黒コントロールを使いこみました。ドイツで開催されたプロツアー予備予選に毎週末通ったのです。そのデッキはあまりに面白く、いくら使っても飽きることはありませんでした。《時を越えた探索》は素晴らしいカードでしたね。当時のことを思い出すたびに、笑みがこぼれてしまいます。

『灯争大戦』注目のカード ~その1~

思い出話はここまでにして、『灯争大戦』の話題に移りましょう。早速華やかなカードから解説していきますよ。

《戦慄衆の将軍、リリアナ》

戦慄衆の将軍、リリアナ

とても強いですね。以前からマイナス能力で《血のやりとり》ができるリリアナが欲しいと思い続けてきたので、やっと念願が叶いました。《血のやりとり》クリーチャーを運用しないデッキで真価を発揮します。エスパーやグリクシスは、《スカラベの神》《奔流の機械巨人》を失ってしまったため、強力なフィニッシャーを求めていました。《戦慄衆の将軍、リリアナ》がまさにその枠を埋めてくれることでしょう。

スゥルタイミッドレンジのようなデッキでマナ加速からプレイしても、《血のやりとり》は悪くありません。《真夜中の死神》の強さは実証済みであり、《戦慄衆の将軍、リリアナ》は同じ能力を持つ、さらに強力なカードです。全体的に素晴らしい1枚であり、着地したばかりの《殺戮の暴君》を生け贄に捧げさせたくてたまりません。

もちろん《戦慄衆の将軍、リリアナ》にも弱みがあります。赤単を筆頭とした単色デッキや、《荒野の再生》デッキに弱いのです。ミッドレンジやコントロールに対して頼りになるカードと言えるでしょう。

《終局の始まり》

終局の始まり

6マナのフィニッシャーと言えば、このカードも紹介しておくべきでしょう。軍団というクリーチャータイプに意義があり、瞬速と打ち消されない能力を持った《熟考漂い》《熟考漂い》と比べて、サイズはより大きいものになることが大半でしょうが、飛行はありません。

興味をそそられるカードであることは疑いありません。私は、《奔流の機械巨人》と比較できないだろうかと真っ先に考えました。《奔流の機械巨人》は柔軟性に富んでおり、《ヴラスカの侮辱》を「フラッシュバック」することでゲームの流れを変えられる素晴らしいカードでした。

《終局の始まり》盤面への干渉力が弱く1ゲーム目に腐っているはずの相手の除去を上手く使わせてしまう可能性もあります。エスパーやグリクシスで運用するのであれば、1ゲーム目は《戦慄衆の将軍、リリアナ》の方が好ましいでしょう。とはいえ、《終局の始まり》がコントロールミラーのサイドボードとして使われたり、《荒野の再生》デッキが数枚採用することもあり得ると思います。

《悪への引き渡し》

悪への引き渡し

最初に見たときは強そうな印象を受けました。しかし、実際には上手く使えないと確信を持って言えます。まず、墓地に4枚もカードを貯めるのは決して簡単ではありません。また、手札に戻すカードを相手が選択できるのも評価を下げます。さらに、ボーラス・プレインズウォーカーをコントロールしているときに4枚すべてを手札に戻せるというおまけも、あまり大袈裟に考えるべきではありません。ニコル・ボーラスが生存した状態でターンが返ってくるのであれば、いずれにせよ有利な状況でしょう。いわば「オーバーキル」のカードですね。《概念の雨》のような、序盤の動きを安定させるカードを採用した方が良いでしょう。上手く使うには骨が折れる1枚です。

《ボーラスの占い師》

ボーラスの占い師

占い師が返ってきました。僕自身はこのカードを使う喜びを味わったことがないのですが、心惹かれますね。エスパーやグリクシスのようなコントロールは、この小柄なクリーチャーを必要としないと思われます。どちらかと言えば、ジェスカイやバントで使用されるのではないでしょうか。シミックネクサス、ティムール《荒野の再生》、イゼットドレイク、イゼットフェニックスも候補に挙がります。

新たな白と青の全体除去である《時の一掃》《ボーラスの占い師》と相性が良いため、《ボーラスの占い師》《拘留代理人》《弾けるドレイク》を手札に戻しながら相手のクリーチャーを全体除去するような、新しいジェスカイが誕生するかもしれないですね。シミックネクサスが《一瞬》《ボーラスの占い師》を手札に戻し、更なる《運命のきずな》を探すのも良いでしょう。

《啓示の終焉》

啓示の終焉

派手な効果を持っていますが、魅力はそれぐらいなものですね。もっと効率よくドローできるカードは他にもありますし、X=(5)以上では過剰です。幸いにも実際には違いますが、もしこれがインスタントであれば、ここでの解説も違ったものになっていたでしょう。

《永遠の終焉》

永遠の終焉

ぜひとも活躍させたい1枚です。ただ、どのような展開をイメージしてみても、《煤の儀式》《肉儀場の叫び》に劣っているような印象が拭えません。確かに《永遠の終焉》の方が柔軟性がありますが、費用対効果は大きく損なわれてしまいます。

《暴君の嘲笑》

暴君の嘲笑

《燻し》がまたやってきました!総合的に見た場合、現状のスタンダードでは《喪心》の方が良いでしょう。クリーチャーデッキで使用される可能性もあると思いますが、コントロールが唱えてきた除去に対して自軍のクリーチャーを手札に戻せるのは、《喪心》にはできない芸当です。

《永遠神の投入》

永遠神の投入

あらゆるアグロデッキにとって悪夢を「投入」するとでも言うべきでしょうか。この怪物級の呪文を赤単相手に唱えることができたのなら、僕はすっかり安堵に包まれることでしょう。最初にこのカードを見たときは、何度もテキストを読み返しました。4点ダメージ、4/4軍団トークン、墓地シナジーを運用していれば有用な4枚の墓地肥やし。これらを1枚で達成してしまうのです。

もし呪文を回収するようなことがあれば、アグロデッキは悲鳴を上げるに違いありません。これだけの利点があるのですから、ローテーションするまで、青黒のあらゆるデッキで使われるのではないでしょうか。今こそディミーア完全復活のときです。

エスパーコントロール

解説もある程度しましたので、最新版のエスパーコントロールのデッキリストをご紹介しましょう。

ドビンの拒否権戦慄衆の将軍、リリアナ時を解す者、テフェリー

《ドビンの拒否権》は明確に《否認》からの改善点です。さしあたり《戦慄衆の将軍、リリアナ》はメインデッキに2枚入れる構築にしてみました。相手の脅威を対処し、6ターン目に《戦慄衆の将軍、リリアナ》を展開できれば、どんなクリーチャーデッキでも非常に苦しむことでしょう。

相手のクリーチャーを2体だけにしてから《戦慄衆の将軍、リリアナ》を出すのは、そこまで難しくないはずです。場合によっては、警戒した相手が戦場に2体目のクリーチャーを並べてこないかもしれませんが、それはそれでコントロール側のプレイヤーからすれば全く問題ありません。《戦慄衆の将軍、リリアナ》をプレイし、+1能力を使えば良いだけですからね。どちらのシナリオでも、相手にとって非常に不都合なものとなります。

《時を解す者、テフェリー》は万能で手堅いカードだと思います。クリーチャーデッキに対しても悪くない働きをするでしょうが、最も活躍が期待できるのは《荒野の再生》デッキやコントロールとの対戦です。

『灯争大戦』注目のカード ~その2~

《永遠神バントゥ》

永遠神バントゥ

5マナ域はライバルが多く、極めて強力な5マナ域のカードと枠を争うことになります。ミッドレンジやコントロールで居場所を見つけないだろうと考えていますが、《忘れられた神々の僧侶》を使ったアリストクラッツがフィニッシャーとして運用する可能性はあるでしょう。

《ボーラスの城塞》

ボーラスの城塞

確信を持って言いますが、スタンダードで何か悪さをできるカードです。デッキビルダーであるアリ・アントラージ/Ali Aintraziに使い道を考えて欲しいところですね。プロフェッショナルレベルで使われる可能性は低いと思います。

《永遠神ケフネト》

永遠神ケフネト

さて、やってきました。僕が期待している神です。マナレシオ、除去への耐性、一風変わったカードアドバンテージ。ただ、どういったデッキにピッタリのカードなのかわからずにいます。グリクシスやエスパーはインスタントやソーサリーを多く採用していますが、相手の脅威に対応するものが大半です。

ドロー呪文と組み合わせることによって、大きなアドバンテージに繋げたいものですね。《荒野の再生》デッキやイゼットドレイクは《永遠神ケフネト》の本領を発揮させることができるかもしれません。果たしてどこで使われることになるのか、目が離せません。神サイクルの中で一番強力なのではないでしょうか。

《戦慄衆の侵略》

戦慄衆の侵略

まずは《苦花》と比較してみましょう。《苦花》がかつてのスタンダードで活躍したのは、複数のトークンを並べることで単体除去にめっぽう強かったからです。対して《戦慄衆の侵略》は1体の軍団トークンを育てるものであり、単体除去への耐性が大きく下がってしまっています。相手は何度か攻撃を受けながらも、トークンを3/3や4/4まで成長を許しますが、除去を1度打たれれば再び軍団を育て上げなければなりません。

こちらのライフを狙ってこない相手には間違いなく有効な1枚ですが、それでも活躍まで時間を要します。このカードを機能させるには、更なるシナジーを取り入れると良いでしょう。たとえば、ゾンビに呪禁を与えたり、1/1の軍団トークンを毎ターン生け贄に捧げる手段を用意しておくなどですね。

《煌めく監視者》

煌めく監視者

噂をすれば、ゾンビに呪禁を与えるカードが。《煌めく監視者》がいれば、「侵略」を安全に、守られた状態で推し進めることができます。威迫も馬鹿にできません。終盤に大きく育った軍団トークンをチャンプブロックすることすら困難にするのです。2ターン目《戦慄衆の侵略》、3ターン目《煌めく監視者》、5ターン目《永遠神の投入》という動きは、大きな可能性を感じますね。

《魂の占者》

魂の占者

2/3というサイズは、単色のアグロデッキに対して有効です。《戦慄衆の侵略》と並べれば、まるで《ファイレクシアの闘技場》を設置しているような状況になります。今挙げた長所だけでも十分なポテンシャルですね。何かデッキが作れそうな予感がします。

《永遠衆の監督官》

永遠衆の監督官

構築で採用するレベルではないでしょう。タップ状態で戦場に出るのもアグロデッキに対して好ましくないですし、墓地から回収する能力も時間がかかりすぎます。基本的に《墓地の司令官》の下位互換ですね。

《鮮血の刃先》

鮮血の刃先

評価が難しい除去呪文です。「動員2」がさほど意味を持たない一般的なデッキであれば、-2/-2修正は弱すぎます。ただ、ゾンビにフィーチャーしたデッキでは採用に値するかもしれません。

青黒ゾンビ

忘れられた神々の僧侶どぶ骨墓地の司令官死が触れぬ者、リリアナ

上述のシナジーをいくつか採用したプロトタイプです。《魂の占者》や追加のプレインズウォーカー・除去を入れる構築もアリですが、今回は《忘れられた神々の僧侶》《どぶ骨》を使いました。《忘れられた神々の僧侶》《戦慄衆の侵略》と相性が良いのです。

《忘れられた神々の僧侶》を使えば《墓地の司令官》の能力に必要なマナも、墓地のクリーチャーも確保できますし、ゾンビを供給することで《死が触れぬ者、リリアナ》の-2能力も強化できます。《肉儀場の叫び》が環境に多いと思われるなら、《忘れられた神々の僧侶》ではなく《魂の占者》の方が合理的です。

上記のデッキリストは、それぞれのカードの採用枚数が最適でないのは間違いありません。ですが、デッキの方向性は良いものだと感じています。アグロデッキと戦う際は、絆魂を持った大きなサイズの軍団トークンを作ったり、序盤のブロッカーやカードアドバンテージによって消耗戦を制しても良いでしょう。ミッドレンジやコントロールに対しては、サイドボードを駆使して立ち向かうことになりますが、十分に戦えるマッチアップだと思われます。まずはサイドボードを以下のようなものにしています。

サンプルサイドボード

強迫

4

喪心

2

鮮血の刃先

2

漂流自我

2


戦慄衆の将軍、リリアナ

2

アルゲールの断血

1

魔術遠眼鏡

1

死が触れぬ者、リリアナ

1

『灯争大戦』注目のカード ~その3~

《神秘を操る者、ジェイス》

神秘を操る者、ジェイス

今回のジェイスは、堅実な仕上がりになっています。+1能力から入れば、忠誠度5のカードアドバンテージ源ですからね。ただ、青のトリプルシンボルなのは不運でした。《ウルザの後継、カーン》《薬術師の眼識》がライバルになりますが、その唱えづらさから敗北を喫してしまうでしょう。

《夢を引き裂く者、アショク》

夢を引き裂く者、アショク

残念ながら、以前の《悪夢の織り手、アショク》に遠く及ばないものです。現在のスタンダードには、墓地に大きく依存するデッキがほとんどないですし、ライブラリーからサーチすることも滅多にありません。サイドボードを含め、全く使われないのではないかと予想しています。

《龍神、ニコル・ボーラス》

龍神、ニコル・ボーラス

『灯争大戦』のディミーアカラーのカードだけに言及するつもりでしたが、このプレインズウォーカーに触れないわけにはいかないでしょう。自身が神話的、伝説的な存在。《龍神、ニコル・ボーラス》です。

ニコル・ボーラスの名に恥じないデザインになっています。基本的に《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》の強化版。常在型能力がどれほど影響力を持つのかを評価するのは難しいですが、嬉しいボーナスであることに違いありません。+1能力は、歴代プレインズウォーカーのプラス能力の中でも屈指の性能で、歴代最強の可能性すらあるでしょう。

グリクシスコントロール

新環境のスタンダードで最強のデッキは、このようなものかもしれません。

破滅の龍、ニコル・ボーラス龍神、ニコル・ボーラス

まとめ

デッキをご紹介したところで今回はおしまいにしたいと思います。とても楽しい執筆になりました。みなさんにも僕のディミーア考察を楽しんでいただけたのなら幸いです。

それではまた次回お会いしましょう。

アーネ・ハーシェンビス

この記事内で掲載されたカード

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Arne Huschenbeth

Arne Huschenbeth ドイツの若きプロプレイヤー。スタンダードへの造詣が深く、グランプリ・リミニ2016優勝、プロツアー『破滅の刻』では構築ラウンド10勝0敗など数々の実績を誇る。 他にも3度のGPトップ8経験を持つ彼は、2017-2018シーズンでも安定した成績を残し、41点ものプロポイントを獲得。見事ゴールド・レベルに到達した。 Arne Huschenbethの記事はこちら