Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/06/06)
はじめに
みなさんこんにちは。前回に引き続き『灯争大戦』をドラフトしていきましょう!
1パック目の8手目までをシミュレーションし、4人のHareruya Prosたちに何をピックするか聞いてみました。
この度の記事に参加してくれた親切なプレイヤーたちを紹介しましょう。
彼らについてもっと詳しく知りたい方はHareruya Prosの選手ページをご覧ください。
プロの中でもどれだけ意見が分かれるのか。要注目です!
1手目
ブランコ・ネランク
『灯争大戦』なら、同じ強力なカードであっても単色より多色を取ってしまって構わない。でもボロスには本当にガッカリさせられてきたから、ここは《オブ・ニクシリスの残虐》でいこう。
セバスティアン・ポッツォ
《オブ・ニクシリスの残虐》だね。《贖いし者、フェザー》はとても強いけど、この環境のボロスはあまり好きじゃない。色拘束も厳しくてタッチしづらいしね。だから初手は優秀な除去を取ることにするよ。
ジョン・ロルフ
《オブ・ニクシリスの残虐》を取りますね。除去としての質も、タッチのしやすさも素晴らしいです。『灯争大戦』の環境では、黒は青に次いで好きな色ですから、そういう意味でも筋が通ります。インスタントタイミングでタフネス5のクリーチャーを除去できるので、他の除去とは一線を画しますね。
ドミトリー・ブタコフ
パックの中で群を抜いて強力なのは《贖いし者、フェザー》だが、多色のカードであり、『灯争大戦』ではあまりやりたくないボロスカラーだ。プレインズウォーカーが溢れる環境では、アグロデッキの攻撃先がプレイヤー本体とプレインズウォーカーに分散してしまい、デッキの方向性にばらつきが出てしまう。他方、《オブ・ニクシリスの残虐》はセット内でも1、2を争う除去だ。悩ましいところではあるが、安全な除去を取っておこう。
2手目
ブランコ・ネランク
残念ながら1手目に続く、優良な黒のカードはない。しかし幸いなことに、『灯争大戦』のトップアンコモン候補がいるから簡単なピックだね。《盾魔道士、テヨ》はギリギリ使えるレベルのカードだ。《役割交代》は特定のデッキでなら機能するね。緑は初手の黒と相性が良いのも嬉しい。
セバスティアン・ポッツォ
ジョン・ロルフ
大分弱いパックですね。選択肢は《進化の賢者》か《役割交代》になるでしょう。《進化の賢者》はカードパワーが高く、2手目として受けの広い1枚です。一般的にはこの緑のクリーチャーを取るのが正解なのかもしれません。
ですが、黒緑は私の好きな色ではないですし、《役割交代》は抜群の働きを見せる展開があります。1/1のクリーチャーが「神」と交代したり、忠誠度が低くなってしまったプレインズウォーカーが忠誠度の高いプレインズウォーカーと交代したりするのです。というわけで、私の好みや期待の点から《役割交代》を取りましょう。
ドミトリー・ブタコフ
ボムアンコモンだ。黒緑なら「増殖」のメカニズムも非常に使いやすい。パック内の他のカードとは比べ物にならないな。
3手目
ブランコ・ネランク
取りたい黒のカードがまた回ってこなかったから、少なくとも黒をメインカラーにしないだろう。《瓦礫帯の暴動者》は質も高いし、この環境でアグロデッキを作るなら赤緑はベストな色だ。それ以外なら《テヨの光盾》も良いね。実質3マナ1/4というステータスだけど、実際には+1/+1カウンターを載せて「増殖」を使いやすくしてくれるから、見た目より遥かに強いんだ。
セバスティアン・ポッツォ
第一印象から評価が上がったカードだ。忠誠度が高くて除去しづらいし、マナ加速にもなるし、ドローもできるからね。消耗戦を狙うスゥルタイカラーのデッキも視野に入れていこう。
ジョン・ロルフ
『灯争大戦』の環境を支配するカードと言えば、飛行クリーチャーもいますが、それ以上に何といってもプレインズウォーカーでしょう。《ビヒモスを招く者、キオーラ》はプレインズウォーカーの中で最強というわけではないですが、シナジーを期待してピックしようと思います。初期忠誠度が7のプレインズウォーカーは非常に珍しいですし、パック内に見るべきカードもあまりないですね。
ドミトリー・ブタコフ
《ビヒモスを招く者、キオーラ》はかなり弱いカードだろうと思っていたのだが、使うたびにパフォーマンスが上がっていった。大抵は《繁茂》になるのだが、緑を含むデッキならマナコストが重いカードや、マナの注ぎ込み口となる《ビビアンの灰色熊》のようなカードも多く入っているだろう。常在型能力でドローできることもあるが、1ゲームにつき1枚ドローが関の山だ(それでも十分だがね)。
相手からすれば、こちらのデッキにパワー4以上のクリーチャーやマナコストが重いクリーチャーが入っているか分からないため、相手の注意を《ビヒモスを招く者、キオーラ》が引き付けてくれることもある。このパックの他のカードについては、《ヴラスカの懐刀》や《轟く角獣》が注目に値する。
4手目
ブランコ・ネランク
残念なパックだ。どれもイマイチなカードだけど、緑のカードを取って下家のプレイヤーに主張していこう。
セバスティアン・ポッツォ
《進化の賢者》をピックしているから、「増殖」デッキに行く理由もある。その他のカードは微妙なものばかりだね。
ジョン・ロルフ
これも弱いパックですね。《ソリンの渇き》をピックすることにします。プレインズウォーカーや飛行クリーチャーが重要な環境においては、できるだけ《ソリンの渇き》や《チャンドラの螺旋炎》といった2マナの除去を普通は取りたくありません。相手のプレインズウォーカーが猛威を振るっているのに、2マナの除去が手札で腐ってしまうことも少なくないですからね。
それでも《ソリンの渇き》をピックしたのは、他の選択肢が《ギデオンの勝利》しかなく、白に参入するきっかけになるほどのカードではないからです。現状はドラフトの方向性に若干不安がありますね。まだデッキの形が何も見えてきません。
ドミトリー・ブタコフ
《ソリンの渇き》か《瀬戸際の勇気》だろう。『基本セット2012』では《ソリンの渇き》は強かったが、『灯争大戦』では平均を下回るカードだ。アグロデッキが負け組であることからライフ回復効果の価値も低いし、2点ダメージで倒せるクリーチャーもあまりいない。悪くないカードではあるが、サイドボード向けの除去だ。
「増殖」は個人的にとても好きなメカニズムだ。2ターン目《ラゾテプの肉裂き》、3ターン目《瀬戸際の勇気》といった動きはシンプルでありながら、開幕から非常に速いクロックを形成できる。
5手目
ブランコ・ネランク
《怒り狂うクロンチ》は《クロンチの世話人》に+1/+1カウンターを載せられるから、赤緑には重要な1枚だ。後で《クロンチの世話人》を取れると嬉しいね。
セバスティアン・ポッツォ
悩ましいパックだ。《怒り狂うクロンチ》はパック内でベストカードだろうし、《ビヒモスを招く者、キオーラ》とも相性が良い。でも、赤緑だと「増殖」をサブテーマにしてもあまり機能しない。ここまでのピックと色を合わせるなら《ヴラスカの懐刀》があるけど、黒緑では使いたくないクリーチャーだ。
《執行官のグリフィン》を取って、白緑への受けを作る選択肢もある。だけどここは《怒り狂うクロンチ》を取ることにするよ。平凡なデッキに終わってしまった場合、ミッドレンジよりもアグロの方が可能性が見込めるからね。
ジョン・ロルフ
注目に値するカードは他にないですし、3マナ4/3は優秀なマナレシオです。このドラフトの救世主は赤かもしれませんね。
ドミトリー・ブタコフ
「増殖」デッキの実現に向け、今後《ラゾテプの肉裂き》をピックしたいところだ。《ヴラスカの懐刀》は《ラゾテプの肉裂き》がいれば使いやすくなる。
6手目
ブランコ・ネランク
理想的なカードではないけど、2マナ域としては実に優秀だ。2マナ2/2で「増殖」の対象にもなり、中盤以降もサイズを大きくして唱えることができる。
セバスティアン・ポッツォ
単体ではそこまで強くないけど、マナカーブを埋めてくれるし、《ビヒモスを招く者、キオーラ》のドロー効果も期待できる。それに、相性が良い「増殖」のカードもすでに2枚ピックしている。ここでピックできたのはとても嬉しいね。
ジョン・ロルフ
《ウギンの召喚体》一択でしょう。どんなデッキでも入りますし、シナジーも見込めます。未だに色が絞り込めていない現状では、無色であることもありがたいですね。大満足のピックになりました。
ドミトリー・ブタコフ
先ほど解説したように、このカードがメインデッキに入ることになるかはわからない。だが、少なくともサイドボードカードとして取っておきたい除去だ。
7手目
ブランコ・ネランク
及第点の2マナクリーチャーだ。占術は非常に重要で、特にマナフラッドしたくない終盤戦では活躍が期待できる。赤緑という色では、サイズ修正や除去などの呪文をかなり採用することになるからね。
セバスティアン・ポッツォ
《退路無し》が入ったパックだ。《燃え立つ預言者》は赤緑向けのカードではないけど、この中で一番強いと思う(最終的にはデッキに入らないと思うけどね)。
ジョン・ロルフ
《燃え立つ預言者》は優秀な2マナ域です。占術は見た目より遥かに強いですからね。直近の2パックを見る限りでは、赤が若干空いているようです。《退路無し》も悪くないですが、《燃え立つ預言者》を取ることにします。このカードはもっと評価されるべきだと思いますね。
ドミトリー・ブタコフ
青黒で使うのが望ましいが、《ビヒモスを招く者、キオーラ》を取っているので、クリーチャーとの2枚回収も夢じゃない。
8手目
ブランコ・ネランク
赤緑の枠を埋めるカードだ。「増殖」を得意とする緑なら+1/+1カウンターを置く効果にも価値があるし、パワーが4であることも《クロンチの世話人》にカウンターを載せられる点で意味がある。
セバスティアン・ポッツォ
赤緑なら良いカードだし、《ビヒモスを招く者、キオーラ》のドロー効果も誘発させられる。「増殖」カードもピック済みだから、ここは悩むことはないね。
ジョン・ロルフ
最高のカードではないものの、デッキに入り得るカードです。生け贄に捧げても良し、プレインズウォーカーへの攻撃に使っても良しです。いずれにせよ現時点で黒赤になりそうですし、《ゴブリンの突撃隊》も黒赤なら本領を発揮してくれます。
しかし、まだ青赤になる可能性もあります。グリクシスカラーのカードを取ってきていますから、いずれは2色に絞り込む必要があるでしょう。良いスタートではなく、パックにも恵まれていませんが、少なくとも多少の方向性がようやく見えてきました。
ドミトリー・ブタコフ
黒緑では最弱レベルの2マナ域だ。ただ、色が合っているカードは他に《ダブリエルの影忘》しかない。この環境はリソース勝負になるため、仮に《精神腐敗》がカードプールに存在していれば強かっただろう。しかし、類似の効果を持つ《ダブリエルの影忘》は4マナであり、マナコストが重すぎる。
まとめ
What is your pick ? p1p1 (draft with pro article on https://t.co/0OBLzoetW4 )
— Jérémy Dezani (@JDezani) 2019年5月15日
"Picture of the pack in the comment"
Pros: @BrancoNeirynck @sebastianpozzo @JRolfMTG and @butakov_mtg #hareruyapros #draft #mtg #WarOfTheSpark #MTGArena
今回参加してくれた4人のプロたち全員が、初手で多色のレアよりも単色の除去を優先しました。《贖いし者、フェザー》のような色拘束が厳しい多色カードが結局デッキに入らないことも多々ありますから、初手の段階で受けを広くしておくことは非常に重要です。
もし環境が2色の組み合わせのアーキタイプ全10種で構成されるならば、2色の多色カードが使われる確率は1/10ですが、単色カードは4/10の確率で使えます。それだけでなく、単色のカードは3色のデッキなら容易にタッチできるのです。プロたちの選択にも納得がいきますね。多色カードがあまりにも強いなら、最終的にデッキに入らないリスクを背負ってでもピックしますが、今回はそのケースに該当しなかったのです。