Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/06/28)
長い物には巻かれろ
『モダンホライゾン』のカードが公開されるとともに、いくつものオリジナルデッキを脳内で考えていました。(現在はお蔵入りになっていますが、いつの日か記事でご紹介できると良いですね。)ですが、『モダンホライゾン』がMagic Onlineでリリースされてすぐ、ホガークヴァインはモダン最高のデッキへと急遽躍り出ることになりました。おそらくモダンでも最も強力な動きなのではないでしょうか。
《屍肉喰らい》と《狂気の祭壇》、そして《甦る死滅都市、ホガーク》がデッキパワーを格段に上げました。
ここ数週間は、ホガークヴァインを含め、目的を明確にした調整をルームメイトと行い、グランプリ・ダラス2019に備えていました。本来はホガークヴァインを倒す方向性の記事を書こうと画策していたのですが、私自身もこのデッキを使うべきだと気づくまで時間はかかりませんでした。正直なところ、デッキの動きは非常に面白く感じています。そういうわけで、今回はホガークヴァイン側に立っての記事になります。
デッキの構造
はじめに、現在のデッキリストをご覧いただきましょう。
2 《血の墓所》
2 《神無き祭殿》
2 《血染めのぬかるみ》
2 《湿地の干潟》
2 《汚染された三角州》
2 《新緑の地下墓地》
4 《黒割れの崖》
1 《宝石鉱山》
-土地 (19)- 4 《屍肉喰らい》
4 《墓所這い》
4 《傲慢な新生子》
4 《縫い師への供給者》
1 《墓所破り》
4 《恐血鬼》
4 《復讐蔦》
4 《甦る死滅都市、ホガーク》
-クリーチャー (29)-
《墓所破り》を除き、メインデッキの呪文40枚は固まりつつあるようです。登場初期は「発掘」持ちのカードも多く、《恐血鬼》や《復讐蔦》を採用していないリストもありました。今は落ち着いており、たまに《恐血鬼》が削られるくらいですね。
呪文以外の枠については、土地の枚数が18~20枚、自由枠が0~2枚となっています。自分のメインデッキの構成は非常に気に入っていますし、サイドボードも様々な形を試してきていますが、現在のものにかなり満足していますよ。さて、ここからは各カードの役割について書いていきましょう。
潤滑油
《信仰無き物あさり》、《傲慢な新生子》
お気付きの方も多いかと思いますが、赤のカードはこれらしか採用されていません。とはいえ、間違いなくそれだけの価値はあります。デッキには捨てたいカードも多く、《復讐蔦》や《黄泉からの橋》は墓地に落ちなければ役に立ちませんから、信用できるディスカード手段は必要なのです。《信仰無き物あさり》は《傲慢な新生子》よりも強力とはいえ、《傲慢な新生子》も《復讐蔦》や《黄泉からの橋》とのシナジーがあります。
《縫い師への供給者》
『モダンホライゾン』以前は1マナ域の中でも最弱かと思っていましたが、《甦る死滅都市、ホガーク》のおかげで《縫い師への供給者》頼りのハンドでも喜んでキープするようになりました。「探査」の助けになりつつ、黒いクリーチャーとして「召集」のコストにもなります。このカード1枚で《甦る死滅都市、ホガーク》のコストを半分以上も払うことができるわけですね。おかげで、2ターン目に《甦る死滅都市、ホガーク》を唱えられる可能性がかなり高くなります。
加えて、《甦る死滅都市、ホガーク》が追加されたということは墓地で働くカードが4枚増えたということになります。《縫い師への供給者》の山札を削る能力はランダム性を伴いますが、以前よりも安定するようになったのです。ゾンビという種族には《墓所這い》と相性が良いという利点がありますが、今ではそこに《墓所破り》が加わりました。
《狂気の祭壇》
大半のゲームにおいて、新生ホガークヴァインの最高の潤滑油となります。厳密には1枚コンボではありませんが、多種多様な手札と噛み合うため、ほぼ1枚コンボです。《甦る死滅都市、ホガーク》、《黄泉からの橋》とのコンボは、無限ではないものの相手の山札を削りきるまで続けられます。
詳しくない方のために説明しておくと、戦場に《狂気の祭壇》と《甦る死滅都市、ホガーク》が、墓地に《黄泉からの橋》が2枚がある状況を考えてみてください(墓地に《黄泉からの橋》が1枚しかなくても、墓地にもう1枚《甦る死滅都市、ホガーク》があり、戦場には黒か緑のクリーチャーがいれば問題ありません)。
まず《狂気の祭壇》で《甦る死滅都市、ホガーク》を生け贄に捧げ、自分の山札を8枚墓地へ送ります。次に、アンタップ状態の黒いクリーチャー2体を「召集」コストに使いながら、先程墓地に肥やしたカード8枚中の5枚を「探査」コストに充てて《甦る死滅都市、ホガーク》を再び唱えます。
このプロセスを繰り返していくと、追加の《黄泉からの橋》が墓地に落ちるはずです。そして最終的には墓地2枚と、アンタップ状態のクリーチャー5体(《黄泉からの橋》4枚によるゾンビともう1枚の《甦る死滅都市、ホガーク》)だけで《甦る死滅都市、ホガーク》を唱えられるようになり、相手の山札を8枚削っていく段階へ移行します。同時に、ほとんどの場合に最低でも合計でパワー50以上のゾンビの群れが生まれてきますね。
1ターン目の《縫い師への供給者》の効果次第では2ターン目にもありえなくはない動きですが、3ターン目にはかなりの確率でコンボを始動することができます。このカードが絡んだ試合では、まさに《クラーク族の鉄工所》かと思わせるような動きをしますね。盤面に《狂気の祭壇》さえあれば、単純な《恐血鬼》とフェッチランドのコンボでさえとんでもない量のリソースへと変化するのです。やがては《甦る死滅都市、ホガーク》と《黄泉からの橋》を見つけ、勝利することができるでしょう。
本当に強力なカードですから、相手のデッキがわからない1ゲーム目では《縫い師への供給者》と《狂気の祭壇》、そして土地5枚の手札でもキープするべきです。
主役
《復讐蔦》、《黄泉からの橋》
未だに強力なカードですから、早めに墓地に落とす必要があるとはいえデッキの中心となっています。1ターン目から高速スタートを可能にしていた《歩行バリスタ》のようなカードが採用されなくなったため、《復讐蔦》のカードパワーは低下し、《黄泉からの橋》もやや弱体化しています。ですが、デッキに入れるだけの強さはありますね。
そうは言ったものの、このデッキのカードを強さ順で並べると《復讐蔦》の順位は今や下の方です。一方《黄泉からの橋》はコンボパーツでもありますから、従来より高い順位まで登り詰めています。
《甦る死滅都市、ホガーク》
「マジックでフリースペルを刷るとどういうことになるか」というのは常に語られていますよね。そこで、ウィザーズは8/8トランプルのクリーチャーをマナで唱える選択肢をなくし、墓地から唱えられるというデザインにしたのです。《縫い師への供給者》と《墓所這い》、そして2枚のフェッチランドだけで2ターン目にこのカードを唱えることができます。墓地の枚数には注意し、《黒割れの崖》などの土地よりもフェッチランドを優先する場合もあることを覚えておいてください。
このデッキの動きは、ただ《甦る死滅都市、ホガーク》をできるだけ早く戦場に出すことが狙いです。このデッキがここまで強い理由のひとつは、8/8トランプルを《安らかなる眠り》よりも先に着地させられることにあります。
《墓所這い》、《恐血鬼》
これらのカードはかなり強化されましたね。生け贄に捧げる能力を持つパーマネント(以下、サクり台)が今や8枚もあり、それらで生け贄に捧げるには最適のカードたちです。《黄泉からの橋》が1枚以上あれば非常に容易く驚くほどのゾンビを生成できますが、《黄泉からの橋》がなくとも《狂気の祭壇》で自分の山札を削ったり、《屍肉喰らい》を成長させたりと十分役割を果たしてくれます。
また、《甦る死滅都市、ホガーク》を唱えるために黒のクリーチャーを探さなければならないことも多々あります。ですから、墓地から帰ってくるこれらのカードは、全体除去や多くの単体除去に直面したときに、さらなる強みを発揮してくれるというわけですね。
《屍肉喰らい》
《狂気の祭壇》と《甦る死滅都市、ホガーク》は『モダンホライゾン』の中でも、まさにこのデッキの根幹を成す「ぶっ壊れ」カードであることは間違いないでしょう。ですが、《屍肉喰らい》も驚くべきカードなのです。『モダンホライゾン』前、ホガークヴァインには《大いなるガルガドン》や《臓物の予見者》を採用していましたが、《屍肉喰らい》は段違いの強さですね。恐ろしいスピードで成長し、《復讐蔦》との相性も良く、ゾンビであるため《墓所這い》や《墓所破り》とのシナジーさえあります。
《墓所這い》と《屍肉喰らい》、そして黒マナ……この単純なコンボが最もフェアな動きですね。とはいえなかなかに強力で、複数枚の《外科的摘出》など、こちらに効果的なカードと対面する際には頼りになるかもしれません。
《墓所破り》
現在自由枠に採用しているカードです。対策カードに直面している状況で真価を示すクリーチャーですから、サイドボードにも数枚採用しています。それを差し置いても、1マナ、黒でゾンビのクリーチャーというだけで《甦る死滅都市、ホガーク》や《復讐蔦》、《墓所這い》の助けになりますね。この枠を《稲妻の斧》や《虚空の力線》にするのも筋の通った選択ですが、能動的に使えるカードを選びました。
マナベース
調整に調整を重ね、かなり気に入ったマナベースになっています。計算はそこまで得意ではないため他人に頼っていますが、19枚が好みですね。このデッキリストで何度も対戦を行い、それ以上に一人回しもしてきましたが、現在は19枚が正しい枚数のように「感じて」います。
また、平均的にライフを高く保てる2枚目の《沼》と《宝石鉱山》は好感触です。2ターン目が終わってすでにライフが14や15になっているようなゲームが余りにも多く、これではリソース勝負を行う長いゲームになった際、困ってしまいますからね。《宝石鉱山》を1枚入れておいてもそこまで困ることはないかと思いますよ。最初にプレイする土地として、《宝石鉱山》を当てにするような展開はそこまで起きないはずです。
《神無き祭殿》の2枚目を採用するのも大事です。サイドボード後はエンチャントへ対処しなければいけないのですが、1枚目の《神無き祭殿》が墓地へ落ちてしまったり、破壊されてしまう場合もありますからね。その一方《血の墓所》を2枚に減らしたのですが、そこまでとがめられることもありませんでした。2枚とも墓地に落ちることは珍しく、《黒割れの崖》を引いてしまえば《血の墓所》は1枚もいらないことも多々あります。このデッキのフェッチランドは《甦る死滅都市、ホガーク》や《恐血鬼》と相性が良く非常に強力ですが、私には8枚でちょうど良く、9枚目の代わりに入れた《宝石鉱山》が良い働きをしてくれました。
サイドボード
《薄れ馬》 3枚、《摩耗/損耗》 2枚
《虚空の力線》と《安らかなる眠り》に対する解答として現在採用しているカード群であり、白マナを使う理由にもなっています。
《薄れ馬》は、対策カードに対面していない状況下で引き込んでも足枷にならないため、非常に気に入っています。というのも、《復讐蔦》や《黄泉からの橋》が墓地にあれば、1マナですぐに死亡するクリーチャーとして十分な役割を果たすのです。とはいえ、エンチャントによる墓地対策以外の方法を運用してくる相手には心許ない側面もあります。
そこで《摩耗/損耗》を2枚サイドボードに採用し、《虚空の力線》だけでなく(X)=1の《虚空の杯》にも対処できるようにしました。《虚空の杯》は墓地対策ではありませんが、ホガークヴァインに対して特に有効な解答です。エンチャントによる対策が大流行するならば、これらのカードを都合6枚は採用したいと感じています。
《墓所破り》 2枚
先ほど言及しましたが、サイドボード後に真価を発揮します。アイアンワークスの《練達飛行機械職人、サイ》ほど強力ではありませんが、そこまで遜色ないと思います。除去されなければ、対策カードが設置された状況でも莫大なアドバンテージをもたらすでしょう。《練達飛行機械職人、サイ》より除去耐性が低いとはいえ、妨害されない展開では本来のゲームプランに非常に噛み合ったカードでもあります。
《虚空の力線》 4枚
1枚も採用しない構築を試してみたこともありますが、全くの的外れな考えではありません。ミラーマッチではエンチャント除去を入れたいため、サイドインするカードは多く、《墓所破り》も入れるとなるとさらに入れ替えが多くなります。
ですが、ミラーマッチを何度か練習した結果、必要であると判断しました。というのも、相手は《虚空の力線》への解答がない手札を我慢してキープすることもありますし、相手自身の手札に《虚空の力線》があったり、これ以上マリガンできない状況でこちらが《虚空の力線》を持っていないことを祈ってキープするゲームもあるのです。
このカードがホガークヴァインに対して最も有効なカードであることに疑いの余地はありませんし、このデッキがベストデッキであることも明白ですから、サイドボードの枠を4つ割く価値はあると思います。
《致命的な一押し》 2枚、《集団的蛮行》 1枚
除去枠として現在採用しているものです。最も除去の必要性が高い《献身のドルイド》や、昨今採用率が高まってきている《イクスリッドの看守》を対処できるものとなっています。また、《致命的な一押し》は《氷の中の存在》も対応可能です。
《稲妻の斧》よりも《致命的な一押し》を優先させる大きな理由はありませんが、デッキの潤滑油を抜いてまで《稲妻の斧》をサイドインしたいとは全く思いません。《致命的な一押し》は大きなサイズになった《漁る軟泥》や《タルモゴイフ》を除去できるうえに、手札を1枚捨てなくて済むため、相手に妨害されている状況では手札にカードを温存しておける強みもあります。
1枚採用されている《集団的蛮行》はデッキに柔軟性を与えてくれるだけでなく、ライフ回復という役割も担います。2枚目の《沼》と《宝石鉱山》を採用した理由のところでも述べたように、特定のマッチアップにおいてライフは重要であり、特にこのデッキに入っているクリーチャーの大半はブロックに参加できないため、ライフ回復には大きな意味があるのです。
《真髄の針》 1枚
特に《献身のドルイド》コンボに強力な対策です。軽量でありながら《ルーンの与え手》をすり抜けられますし、1枚目の《献身のドルイド》を除去した後に2枚目を抑えるという単純な使い方でも良いでしょう。また、頭角を現しつつあるソプターコンボにも多少有効に働きます。
さらに面白い使い方もあり、2ゲーム目で《虚無の呪文爆弾》や《トーモッドの墓所》を何度も見かけたら、3ゲーム目に《真髄の針》でこれらのアーティファクトを指定するのです。そうすればプランAが遂行しやすくなります。
その他のサイドボードカード
ここから紹介するのは私が実際に試した、あるいは見かけたカード群であり、どれも理に適っているものばかりです。ただ、サイドボードの枠には限りがあり、現在のリストに満足しているため、これらのカードの採用は見送っています。
《スレイベンの守護者、サリア》
何度か目にしたことがありますが、とても合理的な選択です。ホガークヴァインは大半がクリーチャーで構成されているため、《スレイベンの守護者、サリア》の能力を相手にだけ押し付けられる傾向にあり、特定のマッチアップでは大きな影響を与えます。また、相手にマナがない状態であれば、《外科的摘出》や《貪欲な罠》を使われない安心感を得ることができるのです。
《炎族の先触れ》
このカードには一目惚れしましたし、ぜひとも使いたいのですが、《虚空の杯》への耐性を高めるために《摩耗/損耗》に枠を使うことにしました。《炎族の先触れ》で《虚空の杯》を除去するには《鋳塊かじり》を能動的にサーチしなければなりませんが、特定の状況下ではやや難しい印象でした。
《自然の要求》、《暗殺者の戦利品》、《突然の衰微》
採用するならば、白のサイドボードと入れ替わる形になるでしょう。私が《薄れ馬》を選択しているのは、サイドインした際のリスクが非常に低く、対策カードへの解答として望ましいと考えているからです。
緑を使うことで《復讐蔦》を素出しできるのは魅力的ですが、私のマナベースをコピーし、《神無き祭殿》を《草むした墓》にしただけでは緑マナが11しかありません。これでは緑のダブルシンボルを捻出するのは厳しいでしょうし、《草むした墓》が山札から墓地に落ちてしまった場合にはさらに難しくなります。《自然の要求》のライフ回復もゲーム展開に大きくかかわってきます。というのも、サイドボード後はタイトなダメージレースになることが多いからです。
《稲妻の斧》
先ほど述べましたが、《致命的な一押し》の方が優れているかは確信できません。ですが、今のところ私は《致命的な一押し》の方が好みです。このデッキは赤マナよりも黒マナの方が多いですし、さらに攻めてくる相手に対してはフェッチランドから《沼》をサーチすることでライフを温存できます。
《鋳塊かじり》
《薄れ馬》がデッキと非常に噛み合っていると言いましたが、《鋳塊かじり》にも全く同じことが言えます。しかし、アーティファクトよりもエンチャントの方が破壊したいタイミングが圧倒的に多いですから、《摩耗/損耗》を採用することでサイドボードの枠を節約することにしました。
《悪ふざけ》
こちらもアーティファクトへの有効な解答であり、ピン挿ししても良いカードです。プリズンデッキにとっては悪夢のような存在であり、《墓掘りの檻》が設置されていても「発掘」できます。
《思考囲い》
概して強力な呪文。墓地対策への解答になるとも言えますし、コンボデッキに対しても有効です。ですが、今現在はそこまでサイドボードに欲しいとは思いません。
プレイングガイド
1ゲーム目は潤滑油となるカードとそれを唱えるためのマナを最優先で確保しましょう。土地が2枚でも問題なく回るデッキですが、さらなる土地も有効活用できるデッキでもあります。ですから、初手に土地が4枚あったとしても、《信仰無き物あさり》、《縫い師への供給者》、特に《狂気の祭壇》のような山札を掘り進めていくカードがあるならば恐れずキープしましょう。
メインデッキに墓地対策を積む傾向もますます強まってきていますから、それを念頭に置いたプレイをすべきです。1ゲーム目に《虚空の力線》や《安らかなる眠り》が設置されてしまうと判断の余地があまりありませんが、《外科的摘出》のようなものは判断次第で十分にケアできます。
たとえば、遅めのデッキに対しては山札を削るコンボをせず、《外科的摘出》をされないようにするために《甦る死滅都市、ホガーク》を場に出したままにしておくのです。難しい判断になりますが、焦点となるのは、相手が《甦る死滅都市、ホガーク》を含む軍勢を倒せるのか、あるいはコンボに踏み切って《甦る死滅都市、ホガーク》が《外科的摘出》されても脅威的なクロックを形成できるのか、です。
メインデッキの墓地対策以外にも、1ゲーム目の大きな懸念点はもうひとつだけあります。それは早々にライフを削りきられてしまうことです。ライフを争う展開において予防できることもあるため、クリーチャーをブロッカーに回し、盤面を広げ、最終的に相手に一斉に攻撃することが正しい場合もあります。
ただし、クリーチャーを相打ちにすると《黄泉からの橋》が追放されてしまいます。ですが、サクり台があれば、ブロックしてからクリーチャーを生け贄に捧げることも可能です。それにサクり台と《墓所這い》や《恐血鬼》を組み合わせれば、ブロックに使用する以上の数のゾンビを出せるため問題ないでしょう。
とはいえ、相手に適度なプレッシャーをかけるには、思い切ってクリーチャーを相打ちにし《黄泉からの橋》を追放することも必要になります。ホガークヴァインはロングゲーム、リソース勝負ができるデッキですが、モダンのデッキの多くは即死コンボを持っていたり、どれだけゾンビトークンを並べようとも直接的にプレイヤーを狙ってくるのです。
さて、ここからは詳細な解説、サイドボードに関するアドバイスをしていきます。取り上げるマッチアップは、ホガークヴァインを使ううえで最も警戒すべきものです。
各種マッチアップ
ミラーマッチ
特別面白い試合というわけではありませんが、相手に差をつけられるプレイもいくつか存在します。サクり台を利用すれば、相手の《黄泉からの橋》を追放できるため、1ゲーム目は相手のコンボをやや達成しづらくすることが可能です 。
ところが、こちらの墓地に《黄泉からの橋》があり、盤面が強固でサクリ台がいる場合、こちらから生け贄に捧げ始めることもあります(特にこちらのサクリ台が《狂気の祭壇》、相手のサクリ台が《屍肉喰らい》の場合)。先手を打つことで、相手にも生け贄を強要させ、互いに生け贄捧げ続けることで有利な状況を作り出すのです。
対 ミラーマッチ
サイドボード後に《恐血鬼》3枚よりも《墓所破り》3枚の方が良いのかは不確かですが、《黄泉からの橋》に頼るのは安定しないと思っています。ですから、《狂気の祭壇》はコンボパーツではなくなり、1ゲーム目ほど強力ではなくなるのです。
また、上記のサイドボーディングであれば、早いターンに《復讐蔦》や《甦る死滅都市、ホガーク》を出せる手札が大きく弱体化することもありません。《虚空の力線》が設置されていない場合、あるいは破壊できた場合には積極的に狙うべきでしょう。
お互いに《虚空の力線》を引いたゲームでは、《墓所破り》はぜひドローしたいカードとなります。盤面を適度に作りながらも、エンチャント除去にたどり着きやすくなるからです。
青白コントロール
メインデッキに《安らかなる眠り》が入っていない限り、1ゲーム目は非常に有利でしょう。大抵は《外科的摘出》が2枚採用されており、青白コントロール側にもチャンスがありますが、メインデッキの《外科的摘出》を私は何度も乗り越えてきましたし、時には複数枚使われたこともありました。ホガークヴァインは盤面を作る速度が速く、脅威も蘇ってきます。まさにコントロールと戦う際に夢見る要素でしょう。
相手の土地が全てタップされている状態で《狂気の祭壇》が唱えられるならば、おそらくコンボをスタートすべきです。コンボから生み出されるアドバンテージを青白コントロールが耐えるのは相当難しいでしょう。
このマッチアップで覚えておきたいテクニックは、できるだけ手札にゾンビクリーチャーを1体抱えておくことです。全体除去を撃たれても《墓所這い》が墓地にいれば、手札の1マナゾンビクリーチャーを唱えてから《墓所這い》を戦場に戻せます。そうすれば、墓地にいる《甦る死滅都市、ホガーク》や《復讐蔦》も復活するのです。
対 青白コントロール (先手)
対 青白コントロール (後手)
サイドボード後は非常に戦いづらくなります。2ゲーム目は相手が《安らかなる眠り》を4枚入れてくる想定でサイドボーディングを行うようにしていますね。
後手では《安らかなる眠り》を対処して《狂気の祭壇》プランを継続しますが、同時にビートダウンというまともな方法で相手にプレッシャーをかけます。先手では、2ターン目に《甦る死滅都市、ホガーク》を出す確率を最大化し、相手には1ターン目《流刑への道》、2ターン目《安らかなる眠り》という動きを要求する狙いです。
《復讐蔦》は様々な対策への耐性が低く、デッキ内で最弱になりやすいカードです。ホガークヴァインを使っていくなかでわかったのですが、《復讐蔦》が墓地から戻せる場合、《甦る死滅都市、ホガーク》を唱える条件も整っていることが大半でした。このような経緯から、サイドボーディングするうえでは《復讐蔦》は《甦る死滅都市、ホガーク》に明確に劣っていると考えています。
何らかの理由で相手が対策カードを引き込めなかったとしても、ここでご紹介したサイドボーディングが過剰に感じるようなことはないでしょう。《安らかなる眠り》を見つける時間をたっぷりと相手に与えるのは確かに危険ですが、対策カードを引かれていないのならば、手札に多少の不純物があったとしても強力な動きを素早く達成できるはずです。相手の《安らかなる眠り》の採用枚数が4枚より少なさそうであれば、それに応じたサイドボーディングを検討しましょう。
《否定の力》、場合によっては《石のような静寂》を多く見かけた場合には、《狂気の祭壇》を多めにサイドアウトするのもアリです。
《献身のドルイド》コンボ
恐ろしい相手です。《献身のドルイド》が生き残った状態でターンを迎えられれば、大抵は勝てるような構成になっているのが一般的ですからね。毎回2ターン目に《献身のドルイド》を出してくるわけでもないですが、出てきてしまった場合にはターンを返すことなく勝利を目指すことが必要になるでしょう。
《献身のドルイド》は意図的に自壊して《黄泉からの橋》を墓地から追放できるため、山札を削るプランを妨害することも可能です。ですが、《献身のドルイド》がいなくなるので、喜んでこのリソースの交換を受け入れましょう。
対 《献身のドルイド》コンボ
《薄れ馬》3枚が過剰なサイドボーディングである可能性はありますが、相手のサイドボードに3~4枚の《安らかなる眠り》が採用されているのが一般的です。初手は高速展開ができることが重要となります。この条件を満たす初手には《狂気の祭壇》を含むことが多いですが、《甦る死滅都市、ホガーク》でも相手に圧倒的なプレッシャーをかけられるでしょう。高速展開に加え、サイドボードの除去や《真髄の針》でコンボを数ターン遅らせられると理想的です。
ここでは3つのデッキを取り上げましたが、その他のマッチアップに関しては詳細に解説しません。包み隠さず言えば、ホガークヴァインにとって負ける確率が最も高いのがこの3つのデッキであり、その他の多くのデッキには負けないだけのデッキパワーが備わっています。
《安らかなる眠り》を使うデッキとの一戦で、エンチャントへの解答が手札にあるならば、普通は1ターン中に大きく畳みかけるようにした方が良いでしょう。つまり、墓地にキーカードを肥やしたターンに、それらのカードを活用するのです。《安らかなる眠り》は戦場に出たときに墓地を追放するだけでも大きな役割を果たすため、可能ならばその被害を最小限に抑えることが勝利のために非常に重要になります。
さいごに
みなさんがホガークヴァインを使う側に立つのか、使われる側に立つのかはわかりませんが、今回の記事がお役に立てば幸いです。デッキ内の何かしらのカードが近いうちに禁止される可能性は非常に高いでしょうし、ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019に先立って実現されることを個人的には望んでいます。『モダンホライゾン』がMagic Onlineで実装されてからというもの、成功を収めてきたのはホガークヴァインと墓地対策を多く搭載したデッキだけでした。現在のモダンがひとつのデッキで大きく歪んでしまっているのは本当に残念なことです。
私の考えでは、《狂気の祭壇》や《甦る死滅都市、ホガーク》を禁止にしないなら、少なくとも《黄泉からの橋》が禁止になると思います。発売したばかりの『モダンホライゾン』から禁止カードを出すようなことはウィザーズ社としては避けたいことでしょう。《信仰無き物あさり》が禁止になっても私は構いませんが、そうなれば青白コントロール系がさらに支配力を強めることになってしまうのではないでしょうか。毎度のことですが、ホガークヴァインに関する質問がある方は気兼ねなくTwitter(@jacobnagro)でお尋ねください。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
ジェイコブ・ナグロ (Twitter)