Translated by Ryosuke Igarashi
(掲載日 2019/07/12)
はじめに
皆さんこんにちは!
先々週は『基本セット2020』がモダンに与える影響について記事を書きましたが、今回はスタンダードの新デッキについての記事になります。
『基本セット2020』の加入により、現在のスタンダードでは8つものセットが使えるようになりました。数多の可能性が広がっていますね。『灯争大戦』、そして『基本セット2020』は今までの基本セットに比べ段違いに強い、というのは皆さんもご存知の通りでしょう。これら最新セットの設計思想としては、非常に衝撃の大きいセットを作り、ローテーションのように環境を動かすことでゲームを新鮮に思ってもらおう、という考えがあるのではないでしょうか。
さて、設計思想についてあれこれ考えていては時間がなくなってしまいますね。今回最初に取り扱いたいカードは……《風景の変容》です。
あれ、《風景の変容》って『基本セット2019』じゃなかったっけ?
その通り!多くのプレイヤーはなぜ《風景の変容》が『基本セット2019』で刷られたのか、疑問に思っていたことでしょう。ウィザーズはお高いカードを何枚か収録することで、基本セットを売りたかっただけなのでしょうか?『モーニングタイド』で初めて《風景の変容》が収録されたときのことを思い出すと、当時は使い道もなくしょうもないレアでしたね。
2年後、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が『ゼンディカー』で刷られ、《風景の変容》はエクステンデッド、そしてモダン(《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の解禁以降)でトップメタの一角へと登りつめたのです。独特で使えそうな効果を持ったカードが「デッキの中心となるカード」へと変わった、いい例ですね。ですが《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と《風景の変容》はスタンダードで同居していたことはありませんでした。
では『基本セット2020』で何が変わったのか?
モダンでの《死者の原野》の可能性は以前言及しましたが、スタンダードのパワーレベルを考えると、こちらでは単に勝ち手段として採用することができますね。増え続けるゾンビの群れを対処できなければ、相手は《死者の原野》の犠牲者となることでしょう。
こちらが仮組みしてみたリストです。
2 《森》
1 《平地》
2 《繁殖池》
2 《神聖なる泉》
2 《寺院の庭》
2 《神秘の神殿》
1 《天啓の神殿》
1 《疾病の神殿》
1 《氷河の城砦》
1 《内陸の湾港》
1 《陽花弁の木立ち》
1 《花咲く砂地》
1 《茨森の滝》
1 《平穏な入り江》
1 《アゾリウスのギルド門》
1 《シミックのギルド門》
1 《セレズニアのギルド門》
4 《死者の原野》
-土地 (28)- 4 《樹上の草食獣》
4 《ハイドロイド混成体》
4 《エルフの再生者》
4 《不屈の巡礼者、ゴロス》
-クリーチャー (16)-
非常に単純なプランの、コンボデッキです。(《時を解す者、テフェリー》の力を借りて)エンドステップに《風景の変容》を唱えて十分なゾンビトークンを作り、次のターンに決着をつけるのが狙いですね。
このデッキは土地が28枚、呪文が32枚という構成になっています。呪文も20枚は土地を伸ばすもので、どれも多くの土地を場に出し、《死者の原野》を最速で誘発させることを狙いとしています。
マナ加速呪文
《樹上の草食獣》/《成長のらせん》
追加の土地を場に出すことのできる、最も軽い呪文2種類です。このデッキには基本的に入ることになりますね。28枚土地があることを考えると、ほぼ間違いなく解決時に土地を置けるでしょう。
《迂回路》
2枚土地を伸ばせる中で最も軽く、効率がいい呪文です。4ターン目に《死者の原野》を含んだ5種類の土地が戦場にあれば2回誘発させることもできますし、1ターン目に《樹上の草食獣》を唱えていれば3ターン目の誘発も夢ではありません。
《エルフの再生者》/《不屈の巡礼者、ゴロス》
このデッキの問題の1つとしては、《風景の変容》を引けない場合ですね。そういった場合でもデッキが機能するように組みたいものです。最も簡単なのは《死者の原野》を見つけ、普通のマナ加速呪文から2/2のゾンビを生み出していくプランでしょう。《エルフの再生者》と《不屈の巡礼者、ゴロス》はどちらもこのサブプランの助けとなります。
それ以外の呪文
《風景の変容》
土地が十分場にあれば、1枚コンボですね。異なる名前の土地が7枚あれば、X体のゾンビをY回分(Xは持ってくる土地の枚数、Yは《死者の原野》の数)生み出すことができます。
基本的なプランとしては土地が8枚ある状況で《風景の変容》を唱える、というものなのですが、全体除去を採用していないデッキでは5~6ターン目に襲い掛かる16体ものトークンを止めることはできないのではないでしょうか。
《時を解す者、テフェリー》
《時を解す者、テフェリー》のおかげで、打ち消し呪文はあまり見なくなりましたね。1ゲーム目に《風景の変容》を解決し、ゲームを決めるのはそこまで難しいことでもありませんが、解決後に《ケイヤの怒り》で一掃されてしまってはたまったもんじゃありません。全体除去への対策が必要なのです。
ゾンビたちに速攻を与えようと《暴君潰し、サムト》を採用しているリストも目にしましたが、腐っていた《灯の燼滅》や火力呪文を有効活用させてしまうでしょう。それに《風景の変容》を引けていなければ何もできませんから、かなり厳しいカードです。
《時を解す者、テフェリー》の[+1]能力は非常に噛み合っており、相手のエンドに《風景の変容》を唱え、アンタップフェイズで召喚酔いが解け……という動きができるのです。前のめりなデッキ相手には、[-3]能力で時間を稼ぎつつダメージを受け止めてもくれます。仮に対処されたとしても、アドバンテージを失うことはありません。
《ハイドロイド混成体》
《ハイドロイド混成体》は今でも《ハイドロイド混成体》のままです。最初数ターンでマナ加速した後は、巨大な飛行クリーチャーを唱えつつドローしたり、ライフを得たりするのが一番ですね。マナカーブの観点から見ても、非常に柔軟に扱うことができます。
マナベース
《死者の原野》を誘発させるため、最初の土地7枚は全て異なった土地を置きたいものです。マナベースについては、この考えが基になっています。ぜひともプレイしておきたいので、もちろん《死者の原野》は4枚ですね。
他の土地に関しては、どれほどマナの供給に長けていたり、何らかの能力を持っていたりしたとしても3枚以上は採用しないようにしました。最後に偉大なフランク・カーステン/Frank Karstenに従って各呪文と色マナをチェックし、完成です。
ごちゃごちゃしているように見えるかもしれませんが、どの土地にも理由があります。また、《不屈の巡礼者、ゴロス》の起動型能力のために赤マナ源と黒マナ源を1枚だけ忍び込ませています。100試合のうち1試合くらいは役に立つときがくるでしょう。
スタンダードで《実物提示教育》しよう!
次に、”でたらめに”『基本セット2019』で再録された神話レアがもう1枚。《全知》です。
《全知》はこれまでレガシーのオムニテルでしか見られてきませんでしたが……知らない方もいるかもしれませんね、『基本セット2020』には《実物提示教育》が収録されているんですよ。
仮組みしたデッキがこちら。
4 《都市の楽園》
1 《アズカンタの探索》
4 《楽園の贈り物》
4 《全知》
4 《ギルド球》
3 《時を解す者、テフェリー》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《伝承の収集者、タミヨウ》
1 《神秘を操る者、ジェイス》
-呪文 (31)-
このデッキのプランは簡単。(4つ以上の土地、トークンでないパーマネントをコントロールしているときに)《涙の氾濫》を唱え、《全知》を場に出すのです。
《全知》が場にあれば《伝承の収集者、タミヨウ》が《涙の氾濫》を手札に戻し続け、あとは《都市の楽園》や《ギルド球》、《覆いを割く者、ナーセット》や《時を解す者、テフェリー》といったキャントリップできるパーマネントと組み合わせて無限にドローすることができます。
最終的には、《神秘を操る者、ジェイス》で勝利します。相手の干渉手段を止められるため、《時を解す者、テフェリー》はこちらのコンボ中、非常に大切ですね。
かなり直線的なデッキで、《涙の氾濫》で《実物提示教育》するためにも4つの土地、トークンでないパーマネントをコントロールしておくことが大事です。ほとんどのカードは見て分かるでしょうから、ここでは詳しい解説は行いません。もっとキャントリップ出来るパーマネントが欲しかったのですが、残念ながらスタンダードに《アーカムの天測儀》はありませんでした……。
このデッキにとっては占術もドローに近い効果を発揮してくれるため、《マナ晶洞石》も選択肢の1つですね。《モックス・アンバー》を1~2枚採用する可能性もありますが、安定してマナを生み出せるかは疑問です。
5ターン目、もしかしたら4ターン目にでも、勝負を決められるのではないかと信じています。4ターン目にデッキを引き切れるなんて、スタンダードでそんなことができたら最高ですね。このデッキがスタンダードで戦っていけるのかをもっと試してみようと思います。
まとめ
さて、これらが『基本セット2020』の新カードにより生まれた新たなコンボデッキ2つです。私に似て、悠長なマジックよりもこういった壊れたことをしたい!という方には気に入ってもらえると思いますよ。