Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/07/17)
(編注: Red Bull Untapped予選は、2019/07/08の禁止制限告知前に開催された大会です。)
はじめに
みなさんはじめまして!私はリカルド・ベージャ/Ricardo Beja。ポルトガル出身でHareruya Hopesに所属しています。先日、ベルギーのブリュッセルで開かれたRed Bull Untapped予選で準優勝しました。
We'll see Brussels champion Anton de Smet along with finalist Ricardo Beja at the #RedBullUntapped finals, onsite in London and worldwide at https://t.co/Wk4joQfN0I, on August 4! pic.twitter.com/cOCLwp6u0e
— Play-MTG.eu (@Play_MTG_eu) July 7, 2019
「ベルギー予選を優勝したアントン・デ・シュメット/Anton de Smetと準優勝のリカルド・ベージャは本選への参加権利を獲得。現地のロンドンや、Twitchチャンネルで彼らの活躍を目撃しましょう!」
このイベントは選ばれた226名のプレイヤーしか参加できませんが、幸運にも私はその一人に選ばれました。大会の形式は『モダンホライゾン』シールド3回戦、モダン構築5回戦、トップ8は再びモダン構築です。いずれのフォーマットにもロンドンマリガンが適用されました。そこで私は決勝まで進出し、8月4日にロンドンで開催されるRed Bull Untapped本選への出場権利を得たのです。
デッキ選択
調整プロセス
『モダンホライゾン』発売前は主にトロンを使っていました。しかし、発売以降は立ち位置が悪くなったように思えたので、イゼットフェニックス・赤単フェニックス・バーン・青白コントロールなどを試すことにしたのです。
時間の経過とともに、ホガークヴァインが予選における仮想敵であることが明白になってきました。
当初からホガークヴァインのミラーマッチはやりたくないと心に決めていたので、このデッキに勝ちつつ、その他のデッキにも有利に戦えるデッキが理想でした。
ホガークヴァインは影響力が大きく、いくつかのデッキは環境から締め出されていたので、普段よりもメタゲームが閉鎖的なものとなっていました。まさに青白コントロールが真価を発揮する状況です。ホガークヴァインのような墓地戦術への対抗策もあるうえに、予想されるメタゲームでは狙った相手に勝てるような調整を施すことができます。
調整期間に参加したMagic Onlineのリーグでは好成績を収め続けました。Red Bull Untapped予選の前週に開催されたミシックチャンピオンシップ予選では、準々決勝で負けたものの、スイスラウンド8-1でトップ8に入賞したのです。
Red Bull Untapped予選で使用したデッキリストをご紹介しましょう。
2 《平地》
2 《神聖なる泉》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《汚染された三角州》
3 《天界の列柱》
2 《氷河の城砦》
4 《廃墟の地》
-土地 (24)- 4 《瞬唱の魔道士》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
-クリーチャー (5)-
4 《流刑への道》
2 《外科的摘出》
1 《失脚》
1 《呪文嵌め》
1 《論理の結び目》
1 《マナ漏出》
1 《機を見た援軍》
2 《否定の力》
3 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
1 《拘留の宝球》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
2 《時を解す者、テフェリー》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (31)-
青白コントロールの新戦力
《時を解す者、テフェリー》
「信じられないほど強い」ーースイスラウンドでベストカードだった《時を解す者、テフェリー》に向けて放った言葉です。相手はソーサリータイミングでしか動けなくなるため、ゲームをコントロールしやすくなります。エンチャントやアーティファクトなどの対処しづらいパーマネントをバウンスし、再び唱えてきたら打ち消すことができます。
《覆いを割く者、ナーセット》
カードアドバンテージ源でありながら、手札に加えるカードを選ぶことができます。場合によっては常在型能力で追加のドローを妨害してくれることもあるでしょう。
特定のマッチアップで必要となる大半のカードは《覆いを割く者、ナーセット》で手札に加えやすくなります。また、ナーセットがいる状態ならば《ヴェンディリオン三人衆》の効果で相手はドローすることもできません。
《否定の力》
ゲーム序盤では問題となるクリーチャー以外の呪文を打ち消し、それ以降ではプレインズウォーカーをタップアウトして出しつつも彼らを守るために使えます。青白コントロールはプレインズウォーカーでアドバンテージを獲得することができるため、ピッチスペルとして使う際の手札消費もそこまで気になりません。クリーチャーを使わないコンボデッキに強いのはもちろんのこと、「追放」の文言も《信仰無き物あさり》に対して大きな意味を持ちます。
《ドビンの拒否権》
優秀なカードではありますが、発売から間もなくして《否定の力》というライバルが出現したため、お目にかかる機会があまりありません。ですが、《否認》の上位互換としてサイドボードに少なくとも1枚は採用しておくと良いでしょう。
カード選択
ポルトガル人プレイヤー、ジョアン・モレイラ/Joao MoreiraはMagic Onlineのグラインダーです(アカウント名はDo0mSwitch)。彼は青白コントロールを用い、Magic Onlineのプレミアイベントで多くの功績を残しています。私は彼の洗練されたデッキをスタート地点とし、細部にいくつかの変更点を加えました。
ここからはカード選択について解説していきましょう。
《外科的摘出》
1ゲーム目からホガークヴァインへの対抗手段となり、かつその他のデッキにも有効あるいは悪くないカードが必要でした。《外科的摘出》はホガークヴァイン・青赤フェニックス・赤単フェニックス・スケープシフト・トロン・ドレッジに対して有用であり、ミラーマッチにおいてもそこそこのカードです。
《機を見た援軍》
アグロやホガークヴァインとの一戦で心強い1枚です。ホガークヴァインに対しては墓地利用を封じるだけでは不十分で、盤面のクリーチャーも止める必要があります。そこでこのカードに白羽の矢が立ちました。
《至高の評決》
《終末》よりも《至高の評決》を優先させたのは、《覆いを割く者、ナーセット》の[-2]能力が手札に加える効果であり、手札に来て嬉しいのは《至高の評決》だからです。《終末》を山札の上に戻す手段は、2枚しか採用されていない《精神を刻む者、ジェイス》しかありません。
《神の怒り》という選択肢もありますが、《至高の評決》は青のカードであり、《否定の力》のコストになります。
《神の怒り》
サイドボードに採用した全体除去が《至高の評決》でなく《神の怒り》であることを疑問に思う人もいるでしょう。これは、カードを散らすことで5色人間の《翻弄する魔道士》に完封されないようにするのが狙いです。また、《溶接の壺》や《最後のトロール、スラーン》といった「再生」に強い側面もあります。
《僧院の導師》
相手はサイドボード後に、全てとは言わないまでも、除去の枚数を減らしてくるので《僧院の導師》の出番が回ってきます。コンボデッキや、トロン・スケープシフトなどの土地デッキに時間を与えず、素早くゲームを終わらせることが可能です。
《安らかなる眠り》
ホガークヴァインが仮想敵でしたので、4枚必須のエンチャントでした。《黄泉からの橋》が禁止になったことで、2~3枚まで抑えられるようになるのではないでしょうか。
《天界の粛清》
《炎のアリア》・《レンと六番》・《弧光のフェニックス》・《甦る死滅都市、ホガーク》など、青白コントロールにとって厄介なパーマネントが環境に存在しています。《天界の粛清》はこれらを対処する役割を期待しての採用です。
大会レポート
シールド(『モダンホライゾン』)
7 《沼》
1 《灼陽大峡谷》
1 《誘惑の洞窟》
-土地 (17)- 1 《変わり身ののけ者》
1 《ルーンの与え手》
1 《屑肉スリヴァー》
1 《暴食するナメクジ》
1 《第六隊の騙し屋》
1 《ザルファーのおとり》
1 《群れの王》
1 《有毒な変わり身》
2 《変容の軍勢》
1 《生臭い士官》
1 《ロウクスの古参兵》
1 《新月の忍者》
1 《第一球層のガルガンチュア》
-クリーチャー (14)-
シールドは当日にならないとカードプールがわからないため、構築よりもやや不安が残りました。しかし蓋を開けてみれば、本番のプールは満足いくものでした。トークンを生成するカードが5枚、「多相」が5枚、全体強化が3枚、そして《ルーンの与え手》。質の高い白黒デッキを組み上げることができました。除去の枚数こそ心許なかったものの、マナベースに恵まれていたため《強打のらせん》の「フラッシュバック」も可能でした。
《自然の詠唱》は1回戦、2回戦で活躍したサイドボードでした。対戦相手のデッキには《筋腱と鋼鉄の剣》や《美徳の力》といったレアが入っていただけでなく、《農場の収穫者》などのアーティファクトクリーチャーがいたため、決して手札で腐ることがなかったのです。
3回戦まで全てを2-1で勝利し、シールド部門を全勝で切り抜けることができました。
モダン
大会で使用したサイドボードプラン
ホガークヴァイン
対 ホガークヴァイン
イゼットフェニックス
対 イゼットフェニックス
青白コントロール
対 青白コントロール
エルドラージトロン
対 エルドラージトロン
5色人間
対 5色人間
赤単フェニックス
対 赤単フェニックス
黒緑系ミッドレンジ
対 黒緑系ミッドレンジ
グリクシスウルザ
対 グリクシスウルザ
バント感染
対 バント感染
バーン
対 バーン
トロン
対 トロン
おわりに
大会が始ってみると、メタゲーム的に最も立ち位置の良いデッキを持参できたのだと確信できました。ありがたいことに決勝に進出できるほどの出来栄えだったのです。8月4日にロンドンで開かれるRed Bull Untapped本選に参加できるのは、この上ないほど喜ばしく思います。本選のフォーマットはMTGアリーナによるスタンダードであり、Red BullのTwitchチャンネルで配信されながら、その他の参加者7名と争います。今からこの挑戦にウズウズしています!
今後の青白コントロールの構成については、メタゲームの変化次第です。ですが、サイドボードの《安らかなる眠り》は少なくとも1枚は減らすことになるでしょう。アーティファクトデッキやビッグマナデッキが人気を博すようなら、空いたスロットに《石のような静寂》・《減衰球》のいずれか、または両方を数枚入れるはずです。
これらのカードに割くスロットが足りないときは、《僧院の導師》や《ヴェンディリオン三人衆》といった3マナ域のクリーチャーを不採用にすることも考えられます。メインデッキの《外科的摘出》の採用・不採用もメタゲームの変化を見守ることになるでしょう。
ジョアン・モレイラが青白コントロールに関する知識を授けてくれたおかげで、とても調整が捗りました。また、晴れる屋と友人のサポートにも感謝しています。
みなさんがこの記事を楽しんでくれたことを願って。
リカルド・ベージャ