Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/08/09)
英雄とともに立て
みなさんはじめまして!私のことをご存知でない方もいらっしゃると思いますので、自己紹介させてください。名前はマティアス・レヴェラット/Matias Leveratto、アルゼンチン出身で32歳のプレイヤーです。6月にはミシックチャンピオンシップ・ラスベガス2019(MC3)に参加していました。私が優勝した大会ですね。
マジックとの付き合いが始まったのは随分と昔のことです。1999年に地元のカードショップで友人たちとプレイし始めました。ただ、当時はプロツアーなどの大会の存在を知らず、カジュアルに卓上のマジックで遊んでいただけでした。そして約2年後に一度マジックをやめることになります。
それからマジックに復帰することになったのは2007年でした。競技大会を行脚することを知り、すっかり夢中になったのです。アルゼンチンの強豪プレイヤーと時間をともにし、多くを学び、そしてグランプリに何度か参戦しました。そして、ワールド・マジック・カップ2012やホノルルで開かれたプロツアー『タルキール覇王譚』の参加へとつながっていったのです。ハワイから帰国してきたときが私の最盛期でしたが、プレイし続ける時間を確保できなくなり、再びマジックから身を引くことになりました。
近年になって、かつてのチームメイトであるルイス・サルヴァット/LuisSalvattoやセバスティアン・ポッツォ/Sebastian Pozzoらがプロツアー常連となり、優れた結果を出していました。その事実が私が再起をはかる大きなモチベーションとなったのです。
ラテンアメリカ出身のプレイヤーが競技レベルで戦うことはそれまで困難なことでした。グランプリや、プロツアーの権利を得る機会はあったとしてもごくわずかであり、仮に参加権利を得たとしてもその大会を孤独に戦う確率が高く、決して理想的な環境ではなかったのです。しかし今は訳が違います。アルゼンチンの2人の友人がプレミアイベントに頻繁に顔を出すようになり、私たちにとって競技マジックがより魅力的なものへと変化しているのです。
依然として時間を確保する難しさは残っていましたが、MTGアリーナが私にとっての転機となりました。プレイをするに当たって大きな犠牲を払うことなく、無理せず自分の時間に組み込めるようになったのです。私はミシックチャンピオンシップに参加することを決意し、最初のシーズンでミシックランクの1000位以内に入ることを必死に目指しました。そして何とか参加権利を手にし、再び表舞台への道を切り開いたのです。
MC3での優勝は想像を超えるものでした。私にとって偉業であり、今も大きな幸福感に包まれています。これから待ち受ける未来に期待せずにはいられません。現在はマジック(と大学の心理学の勉強)に存分に身を投じる時間も想いもありますから、私のマジックの物語の新章がどんな展開になっていくのか楽しみです。尊敬する多くのプレイヤーたちと対戦できること、そしてマジックへの強烈なモチベーションがあることは最高ですね。まだまだ学んで成長していく余地はあると思いますので、きっと輝かしい未来が待っていることでしょう。
ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ(MC4)の調整
MC3のMTGアリーナ予選を通過した翌週、私はアルゼンチンで開催されたMC4の予選も通過。この週は脅威的な一週間となり、競技プレイを再開する私にとってこの上ない好スタートとなりました。ラスベガスから帰国し、たった3週間でモダン構築と『モダンホライゾン』リミテッドを練習し、大学の試験を受け、仕事の計画を立てなければなりませんでした。モダンはプレイしてきていませんでしたが、パワフルで面白いデッキが多く存在するフォーマットだと当初は思っていたのでワクワクしていました。
しかし、突如として状況が一変します。モダンを知ることは予想よりも遥かに難しく、思うような結果が出ないのです。一番好きだったデッキはマスターするのに時間が足りず、私は色々なデッキをとっかえひっかえしていました。
そんな中、ありがたいことにHareruya Prosのメンバーから調整のお誘いを受けました。彼らとの調整は素晴らしい経験となり、多くの学びを得ることができたのです。本番前にチームで顔を合わせることは叶わなかったため、練習とコミュニケーションは全てオンライン上で行われました。おそらく理想的な形式ではないのでしょうが、他になす術がなかったのです。チームはホガークヴァインと青白コントロールで半々に分かれ、各々のデッキに絞った調整となりました。
私は大のコントロール好きなのですが、今回は墓地デッキを選択しました。チームの狙いは2ターン目に《甦る死滅都市、ホガーク》を出す確率を最大限に高めることでした。《叫び角笛》は私たちが考え出したテクノロジーであり、ホガークヴァインで使っているプレイヤーは他にいなかったように思います。4色のタイプではなく《叫び角笛》を優先させたのは、マナベースに大きなテコ入れをしたくなかったからです。《面晶体のカニ》が「召集」のコストに使えないのも一因でした。
除去枠の選択は非常に悩ましく、チーム内でも《稲妻の斧》か《致命的な一押し》かで分かれる結果となりました。ホガークヴァインの使用率が高いことは想定していましたが、まさかあれほど人気だとは思っていませんでしたので、メインデッキから《虚空の力線》を採用することは夢にも思いませんでした。ホガークヴァインが最大勢力であったことや、デッキリストが公開されることを踏まえれば、この厄介なエンチャントをメインデッキから入れるべきだったのかなと思います。
チームとして試したカードには《ロッテスのトロール》や《傲慢な新生子》も含まれています。いずれも悪くありませんでしたが、最終的なデッキリストでは使わないことにしました。そしてこちらが本番で使用したデッキリストになります。
3 《草むした墓》
2 《血の墓所》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《汚染された三角州》
4 《新緑の地下墓地》
-土地 (19)- 4 《屍肉喰らい》
4 《墓所這い》
4 《縫い師への供給者》
2 《墓所破り》
4 《恐血鬼》
3 《ゴルガリの凶漢》
3 《サテュロスの道探し》
4 《復讐蔦》
4 《甦る死滅都市、ホガーク》
-クリーチャー (32)-
MC4本番
初日
ドラフト(2-1)
初日のドラフトは厳しい卓に入りました。百戦錬磨のジョン・フィンケル/John Finkelやラファエル・レヴィ/Raphael Levyがいたのです。ですが、ミシックチャンピオンシップのような大舞台であれば、楽勝な卓などないのでしょう。私がドラフトしたのは忍者が少なめの青黒忍者でしたが、良い動きを見せてくれました。唯一負けたのは2回戦のレヴィとの一戦で、彼は冠雪デッキを駆使して3-0していました。
モダン(2-3)
あまり脇道に逸れたくありませんが、4回戦(モダン構築の1回戦)についてちょっとしたエピソードをご紹介します。対戦相手はコーレイ・バウマイスター/Corey Baumeisterであり、「この対戦は個人的なものだね」などと冗談を交わし合いました。というのも、彼はMC3の決勝で私が打ち負かしたブラッド・ネルソン/Brad Nelsonの兄弟として敵討ちの機会が巡ってきたからです。
コーレイは圧倒的な強さでリベンジに成功。マッチを通して勝てる見込みは全く見えませんでした。ミラーマッチでしたが、1つだけ小さな違いがありました。彼はメインデッキに《虚空の力線》を入れていたのです。1ゲーム目はこのエンチャントに完封されました。2ゲーム目はダブリマリガンをした後、互いに《虚空の力線》をゲーム開始時から並べる展開となりましたが、彼だけがエンチャントへの解答を持っていました。
試合では負けてしまいましたが、彼と出会えて本当に嬉しかったです。彼は終始とても和やかに、そして楽しそうにマジックをやっていましたが、こういった姿勢は非常に重要だと考えています。これほどまでハイレベルな大会であっても忘れずにいたいものです。
1日目 モダン | |||
---|---|---|---|
Round 4 | ホガークヴァイン | 負け | |
Round 5 | 5色人間 | 勝ち | |
Round 6 | エルドラージトロン | 負け | |
Round 7 | ジャンド | 勝ち | |
Round 8 | イゼットフェニックス | 負け |
モダン構築は2-3であり、初日の総合成績は4-4となりました。2日目に進出できたのは喜ばしいことでしたが、好成績を出すにはもう少し腕を磨かなければならないという自覚も同時にありました。
2日目
ドラフト(2-1)
自分のパックからは《疫病を仕組むもの》が出て、《殺到》が立て続けに流れてきたので、黒は確定させました。もう1色には緑を選択し、弱めの3パック目を終えて黒緑デッキが完成しました。
ドラフトラウンド終了時点での成績が6-5で残る5回戦を迎えることになりました。ミシックポイントや賞金の上乗せをするにはモダン構築で何度か勝たなければなりません。しかし無念にもその願いはかないませんでした。
2日目 モダン | |||
---|---|---|---|
Round 12 | エルドラージトロン | 負け | |
Round 13 | 青白コントロール | 勝ち | |
Round 14 | ホガークヴァイン | 負け | |
Round 15 | ゴブリン | 負け | |
Round 16 | ホロウワン | 負け |
さらなる飛躍
私が紙のマジックを離れて大分時間が経っていましたし、昨年に参加した数少ないイベントもミシックチャンピオンシップとはレベルが異なるものでした。今回のような大会では研ぎ澄まされた集中力と強靭なメンタルが要求されます。それこそ今大会の私に最も欠けていた要素でした。
ホガークヴァインは好きになれませんでした。デッキとしての質が低いというわけではなく(むしろベストデッキだったのではないでしょうか)、このデッキのゲーム運びがただ好きになれず、使い心地が全く良くなかったのです。私はオンライン上でしか調整してこなかったので、全ての誘発を見落とさないことは困難であり、結果としてミスを何度かしてしまいました。
ミシックチャンピオンシップ・リッチモンド(MC6)の権利はまだないので、本大会で良い成績を出さなければならないというプレッシャーを感じていましたし、その重圧を上手く管理することもできませんでした。この手のイベントでの経験不足がものを言う場面にも何度か遭遇しましたが、間違いなく上達につながる要素を多く発見することができたので、次回はもっと上手くやれる自信があります。
最後になりますが、今大会を通じ、私は今後消化しなければならない新たな知恵・経験を持ち帰ることができました。同じ過ちを繰り返すつもりはありません。MC6の権利に向けて最善を尽くすつもりですが、参加が確定している2つの晴れ舞台、ミシックチャンピオンシップ・ロングビーチ(MC5)と世界選手権2019に今は集中したいと思っています。
ここまで読んでいただきありがとうございます。またみなさんにお会いできることを楽しみにしています。
マティアス・レヴェラット (Twitter)