現在のスタンダード環境について

John Rolf

John Rolf

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/08/19)

移り行くスタンダード

スタンダード環境は『基本セット2020』の発売からせわしなく変化しています。なかでも、オルゾフ吸血鬼や《風景の変容》デッキ(スケープシフト)は支配的な力を見せました。

傲慢な血王、ソリン風景の変容

2週間前、マジック・プロリーグ(MPL)ではオルゾフ吸血鬼を選択するプレイヤーが散見されました。ところが、その翌週には吸血鬼は全く見向きもされなかったのです。トップレベルのプレイヤー間でさえもデッキ選択が流動的である現状では、スタンダードのデッキを正しく選び出すのは困難でしょう。

しかし心配無用です。今回は4つのデッキをご紹介しますが、どれもTier1であり素晴らしい選択になると自信を持って言えるものばかりです。さらにそれぞれのデッキを使うべき理由を3つずつ掲げていますので、選択肢を絞り込む際に参考にしてみてください。

現環境に存在する4つのTier1デッキ

1) エスパーコントロール

思考消去ボーラスの城塞ドミナリアの英雄、テフェリー

エスパーコントロールを使うべき理由:

1) あらゆるデッキに対して手堅く戦える。汎用性の高い優秀なカードを取り扱うデッキであるため、大きく不利になるマッチアップはないはずである。

2) (単独のトップでないにしても)スタンダードでトップクラスの呪文である《思考消去》が使える。また、驚くほど強力なプレインズウォーカーを3種類も使用でき、いずれも頻繁に勝利をもたらしてくれるカードだ。

3) メタゲーム予想に自信がある場合。エスパーという色の組み合わせは、飛びぬけてサイドボードが強い。青、黒、白はカードの層が厚く、優れた解答が揃っている。環境を読む力があれば、エスパーという色の強みを活かしやすくなる。

2) バントスケープシフト

風景の変容死者の原野時を解す者、テフェリー

バントスケープシフトを使うべき理由

1) ゲームプランが強いだけでなく安定しているため魅力的である。盤面から十分なプレッシャーをかけられないデッキを打ち砕く。

2) 《時を解す者、テフェリー》のポテンシャルを存分に活かせるデッキである。

3) 1ゲーム目に異常な勝率がありつつ、サイドボード後の対策を戦い抜く力があるデッキ。両者の強さが合わさることで、マッチ単位の勝率も高い数値を誇る。

3) 赤単

ゴブリンの鎖回し舞台照らし実験の狂乱

赤単を使うべき理由:

1) 攻撃的なデッキであり、相手にろくな動きをさせずに勝つことが多々ある。

2) 《実験の狂乱》《ゴブリンの鎖回し》が使える(前者はスタンダードトップクラスのカードであり、後者はオルゾフ吸血鬼と《ラノワールのエルフ》を使ったランプデッキに強力)。

3) エスパーコントロールやエスパーヒーローと相性が良い。

4) オルゾフ吸血鬼

漆黒軍の騎士アダントの先兵傲慢な血王、ソリン

オルゾフ吸血鬼を使うべき理由:

1) クリーチャーとプレインズウォーカーを巧みに操るデッキであるため、対処しづらい能動的なデッキである。赤単と同様に大きな強みがあり、相手を速攻で倒す動きが可能。

2) 攻撃的なクリーチャーとプレインズウォーカーを、スタンダードで最強のサイドボードカードである《強迫》でバックアップできる。

3) 《傲慢な血王、ソリン》

環境を定義するカードとその倒し方

冒頭でもお話した通り、上記の4つからデッキを選択すれば道を誤ることはありません。惜しくも今回の4つには入りませんでしたが、バントランプエスパーヒーロージェスカイプレインズウォーカーも注目のデッキです(ただ、デッキの格付けという点ではジェスカイプレインズウォーカーはバントランプとエスパーヒーローに遅れを取ると思います)。

先週のFandom Legendsではジェスカイプレインズウォーカーを使用してトップ4に入賞しましたが、スケープシフトに弱いことがわかりました。1ゲーム目は勝つことがほぼ不可能なので、サイドボードの枠をスケープシフト用に多く割かなければなりません。

バントランプ、エスパーヒーロー、ジェスカイプレインズウォーカーの3つは、適切な調整を加えれば今のスタンダードで結果を出せると思います。ただ、今回紹介した4つのデッキには及ばないことでしょう。

時を解す者、テフェリー覆いを割く者、ナーセット

おすすめのデッキ4選を解説し終わったところで、スタンダードのメタゲームがどうして現在のような様相になっているのかを簡単に解説しましょう。《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》がこの話のキーマンです。

この2種のプレインズウォーカーは、その常在型能力によってスタンダードに絶大な影響を与えています。《時を解す者、テフェリー》はインスタントの価値を大きく減じ、《覆いを割く者、ナーセット》も同様にドロー効果に対して歯止めをかけています。彼らがスタンダードのカードプールにかける制約は非常に大きいのです。

これらのプレインズウォーカーを印刷したことはゲームデザイン上でミスをした好例であるとさえ言っても良いでしょう。強力なカードが存在することは問題ありません。ただ、多くのカードや戦術の活躍の場を奪うべきではないのです。

《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》はミッドレンジやフェアデッキを窮地に追いやっています。カードアドバンテージをもたらすだけでなく、その後も意味のあるパーマネントとして場に残るからです。3マナで並外れたマイナス能力と強力な常在型能力を持っている結果として、これらを運用するデッキをアドバンテージで圧倒することは難しくなりました。ミッドレンジのデッキを組もうとするなら、この2種をぜひとも入れたくなることでしょう。他のフォーマットで人気の戦略(黒緑、黒赤、白緑、グリクシスなど)は彼らの存在によって立場を失っています。

漆黒軍の騎士遁走する蒸気族世界を揺るがす者、ニッサ死者の原野

このプレインズウォーカーたちを倒すため、オルゾフ吸血鬼や赤単などのアグロデッキで短期決戦を挑む戦略が見受けられます。相手のアドバンテージ源が動き始める前に勝ってしまおうという魂胆です。ライフが低下し過ぎて盤面を支えられないようであれば、手札にカードが何枚あろうが関係ありません。

また、バントランプやスケープシフトなどを用いて長期戦で相手を凌駕する戦略を取ることもあります。《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》でどれだけ”アドバンテージ”を稼ごうとも、眼前に《死者の原野》から出てきた20体の2/2クリーチャーが並んでいたら意味がありません。望むカードを全て手にしても、対策カードがなければマナ加速から繰り出される《死者の原野》《風景の変容》を耐えられないでしょう。ゾンビトークンの軍勢がとめどなく襲ってくるのですからね。

特にスケープシフトは、全体除去を何度かされたとしても《死者の原野》を4枚戦場に並べることが可能です。そうなれば、土地や土地をサーチする呪文をドローしてもトークンを生成する素晴らしいカードとなります。つまり、デッキ内に引いて困るカードがほとんどない状態を作り出しているのです。

目覚めた猛火、チャンドラ聖堂の鐘憑き

これらの両極端な戦略は、いずれも結果を残してきています。その結果、メタゲームは異なる2つの方向に引き裂かれ、分極化はますます進んでいる状態です。そのため、アグロデッキにもランプデッキにも有効なカードが評価を高めるのではないかと予想しています。たとえば、《目覚めた猛火、チャンドラ》《聖堂の鐘憑き》が該当するでしょう。この2枚はどちらの戦略に対しても活躍が期待できます。

現在のスタンダードで好きな点を1つ挙げるならば、どんなデッキも倒そうと思えば倒せることです。《覆いを割く者、ナーセット》《時を解す者、テフェリー》はスタンダードの健全性を害していると思いますが、圧倒的な支配力を見せるデッキがないことは素晴らしいことです(かつてのカウブレードや《霊気池の驚異》を思い出してみてください)。意識すればどんなデッキも倒せるということは、メタゲーム予想の精度を上げ、週ごとに適切なデッキ選択をしていくことがいつも以上に重要だということです。

さいごに

このように考えれば、今回の記事はみなさんのデッキ選択の旅路に役立てられるはずです。ご武運をお祈りしています 😁

ジョン・ロルフ (Twitter / Twitch)

この記事内で掲載されたカード

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John Rolf

John Rolf アメリカ出身のプロプレイヤー。2017-2018シーズン、《熱烈の神ハゾレト》を相棒にプロツアー『イクサラン』トップ8入賞。それだけには留まらず、グランプリ・プロツアーともに安定した成績を残し続け、ブロンズ・レベルからプラチナレベルまで登り詰めるとともに、自身初の世界選手権出場を成し遂げた。同郷の親友であり、チームメイトでもあるブランドン・エアーズと共に、2018年10月Hareruya Prosに加入。 John Rolfの記事はこちら