モダンのジャンドを分析しよう

Dmitriy Butakov

Dmitriy Butakov

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/09/06)

はじめに

みなさんごきげんよう。

禁止改定が発表され、モダンは大きく動こうとしている。《甦る死滅都市、ホガーク》《信仰無き物あさり》が姿を消し、久しぶりに「王者不在」の時期が巡ってきた。

甦る死滅都市、ホガーク

メタゲームが移り行く状況であれば、私はモダンにおける6つ目の鉄則、「何を使えば良いのかわからないなら、ジャンドを使え」に従うようにしている。黒緑系(黒緑に1色をタッチしたもの)はいつの時代も環境のアーミーナイフのような存在だったが、ホガークヴァインは墓地デッキとしてこのうえなく墓地対策に耐性があり、動きも速すぎた。

弧光のフェニックス信仰無き物あさり若き紅蓮術士

また、《信仰無き物あさり》の退場はジャンドにとって天敵である2つのデッキを弱体化させてくれた。その2つのデッキとは《弧光のフェニックス》デッキマルドゥパイロマンサーだ(必ずしもひどい相性ではないし、ジャンドのリスト次第ではあるものの、良くても五分といったところだ)。

75枚が全く同じのジャンドには滅多にお目にかからない。デッキの核は同じであっても、出場する大会に対する予想に応じてカスタマイズできる枠が多いのだ(逆に言えば、安定して勝ってきたお気に入りの構築があったとしても、大会の前には実際に手ごたえを確かめてみるのも良いだろう。モダンは急速に変化するフォーマットであり、デッキテクのなかには陳腐化しているものが含まれている可能性があるのだ)。

本稿では、今我々に用意された選択肢を検討したうえで、75枚のデッキにまとめていこうと思う。

では早速1枚1枚の選択肢を見ていこう。

メインデッキ

《思考囲い》《コジレックの審問》

思考囲いコジレックの審問

黒緑系の古典的な初動だ。未知のメタゲームでは5~6枚メインデッキに入れておきたい。サイドボードに1~2枚入れる構築を見かけるが、サイドボード向けのカードではないと感じる。それならば《集団的蛮行》の方が柔軟性に優れていて良いだろう。

また、私は《コジレックの審問》よりも《思考囲い》の方が断然好みである。アグロなゲームプランを展開することがほとんどであり、2点のライフ損失は致命的にならないが、緑トロン、エルドラージトロン、4色ウルザ、コントロールと戦う際に《思考囲い》は大きな強みとなるのだ。バーンや人間には《コジレックの審問》の方が良いが、このような相手にはサイドボードから容易に対応することができる。

《稲妻》《致命的な一押し》

稲妻致命的な一押し

ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019(MC4)では《稲妻》を4枚にし、《致命的な一押し》は0枚とした。これは「続唱」で確実に有効な呪文を唱えられるようにするためであり、《致命的な一押し》《突然の衰微》はハズレになってしまう可能性があるからだ。今後も同様の戦略を採用しても間違いではないだろうが、未知の環境ならば《致命的な一押し》を数枚採用しておきたいところだ。

《タルモゴイフ》

タルモゴイフ

緑のベストクリーチャーを一から説明する必要はないだろう。少なくとも環境初期は装備品が墓地に置かれる機会が増え《タルモゴイフ》のサイズが上がることになるはずだ。

『モダンホライゾン』から追加されたカードともシナジーが見込める。《レンと六番》はデッキ内のプレインズウォーカーの枚数を増やし、《歴戦の紅蓮術士》《タルモゴイフ》を3ターン目に肥大化させてくれる。

《レンと六番》

レンと六番

《闇の腹心》と別れを告げるのは難しい判断だったが、《レンと六番》は異常に強い。このカードは典型的な質の高いプレインズウォーカーなのだ。

[+1]能力は莫大なアドバンテージをもたらす。回収する土地が単なる土地であっても、色事故を予防してくれる。また、《漁る軟泥》に必要な緑マナを十分に確保し、《ヴェールのリリアナ》《歴戦の紅蓮術士》で重要なカードを捨てずに済む。

さらには、回収された《怒り狂う山峡》プレッシャーをかけ続け《育成泥炭地》ドローを進め《幽霊街》相手のマナベースを攻めることもできる。

[-1]能力の1点ダメージも役割が多い。

そして言わずもがな、奥義はほぼ勝ったようなものだ。このように考察してみると、《レンと六番》を4枚採用しないメタゲームは非常に限定的であると言えるだろう。

《暗殺者の戦利品》《突然の衰微》

暗殺者の戦利品突然の衰微

MC4では《暗殺者の戦利品》が4枚、《突然の衰微》が0枚であったが、現在は状況が複雑になってしまった。両者それぞれに強みがあり、どちらが優れているのかはメタゲームだけで決まる。

《暗殺者の戦利品》を使う主な理由はウルザランドだ。MCでトロンに勝てたのは《暗殺者の戦利品》によるところが大きかった。トロンは黒緑系にとって昔から相性が悪い相手だったが、今は1ゲーム目からやり合うことができる。それだけでなく、エルドラージも対処できるようになったのだ。

青白コントロールとの1戦では、従来は《暗殺者の戦利品》に軍配が上がっていた。《精神を刻む者、ジェイス》《天界の列柱》を除去できるからだ。

精神を刻む者、ジェイス石鍛冶の神秘家否定の力

しかし現在は2ターン目の《石鍛冶の神秘家》《暗殺者の戦利品》で対処すると、《精神を刻む者、ジェイス》が1ターン早く着地してしまうため、良い選択肢だとは思えない。とはいえ、《石鍛冶の神秘家》は除去するのではなく、手札から捨てさせる方が理想的だろう。

ここまでの話をまとめると、《石鍛冶の神秘家》を搭載した新世代の青白コントロールが頭角を現してくるようであれば、《否定の力》で打ち消されない《突然の衰微》をぜひとも採用しよう。私は試験的に《致命的な一押し》に加えて両者を採用しようと思う。

《ヴェールのリリアナ》

ヴェールのリリアナ

《ヴェールのリリアナ》《最後の望み、リリアナ》を散らして採用してみたこともあった。今となっては《ヴェールのリリアナ》を4枚採用していないデッキなど考えられない。

冗談を抜きにして、その大会で必ずしも3ターン目に《ヴェールのリリアナ》を出したくないと予想するなら、別のデッキを使う可能性を考えた方が良い。それから、《否定の力》で打ち消される点は忘れないでおこう。

「一体どうしてホガークヴァインで溢れかえるMC4で《ヴェールのリリアナ》を4枚搭載したデッキを使ったんだ?」と思われる人もいるだろう。答えはシンプルだ。メタゲーム予想でしくじったのだ。

《コラガンの命令》

コラガンの命令

4色ウルザソプターと《石鍛冶の神秘家》の存在が《粉砕》のモードの価値を高めることだろう。メインデッキに2枚は採用したい。

《血編み髪のエルフ》

血編み髪のエルフ

ジャンドマスターであり、Jaberwockiとして知られるローガン・ネットル/Logan Nettles《血編み髪のエルフ》を3枚にすることもあるようだが、私にとっての適正枚数は4枚だ。

デッキの核

メタゲームが《石鍛冶の神秘家》に染め上げられるのであれば、手札破壊呪文を6枚採用すべきかもしれない。だが、私はデッキの核を以下のようにして始めようと思う。

これで合計31枚の呪文だ。《レンと六番》を4枚運用しているため、フェッチランドを8枚含む23枚の土地構成にするとして、残る枠は6つだ。その枠に入る候補たちを見ていこう。

《呪詛呑み》

呪詛呑み

採用しているリストをたまに見かけるが、個人的に好きなカードではない。4ターン目までは別のことにマナを使いたいし、それ以降であっても丸々2ターンをかけなければ適切な脅威へとならない。

《衝撃の足音》

衝撃の足音

こちらも楽観的な呪文だ。仮にこのカードのテキストがこのようなものだったとしよう。「コイン投げをして勝った場合、「続唱」から4ターン目に4/4のサイトークンを2体生成する、あるいは「待機」から5ターン目に4/4のサイトークンを2体生成する。」

実際にはこれよりも遥かに弱いが、この仮想の効果だとしてもモダンで通用するレベルだろうか?私にはそうは思えない。

《漁る軟泥》

漁る軟泥

墓地利用デッキはしばらく大人しくなりそうだが、《漁る軟泥》は数枚残しておきたい。墓地を活用するカードは《弱者の剣》《瞬唱の魔道士》《レンと六番》などの数少ない存在であるとはいえ、《漁る軟泥》はライフ回復マシーンであり、消耗戦で大きなサイズへと成長するクリーチャーであることに変わりはない。

《集団的蛮行》

集団的蛮行

驚くほど柔軟性に富んだ呪文であり、《レンと六番》との相性が抜群である。前環境では好きになれなかったが、活躍するタイミングが巡ってきたかもしれない。

ただし、デッキの枠に余裕があり、《集団的蛮行》をメインデッキとサイドボードの両方で使おうとしているなら、サイドボードに集中して採用することをおすすめする。大打撃を与えられる相手もいるが、その数は決して多くはなく、ひとつのモードだけでは十分な強さを確保することができないからだ。

《歴戦の紅蓮術士》

歴戦の紅蓮術士

このカードには複雑な想いを抱いている。3ターン目に唱えて強いか?イエス。「続唱」から唱えて強いか?絶対にイエス。トップデッキして強いか?最高のトップデッキのこともある。しかし、場違いな印象がわずかに残る。赤のダブルシンボルだからかもしれないが、《闇の腹心》《レンと六番》に入れ替えているため、マナ基盤に問題はないはずだ。

墓地から追放することでトークンを生み出す能力はマナコストが重いようにも思えるが、メインの効果ではなく質の高いおまけだと考えれば見方が変わってくる。ここまでは美点にしか言及していないし、MC4でも活躍してくれたクリーチャーであった。ただ、完全に納得したわけでないから、しばらく使い続けて様子を見ようと思っている。

《疫病を仕組むもの》

疫病を仕組むもの

《灰色オーガ》になってしまう相手もいるが、圧倒的な支配者として君臨するマッチもある。MC4ではメインデッキに1枚、サイドボードに2枚の体制であったが、手ごたえは良くなかった。とはいえ、サイドボードに数枚入れるに値するカードであろう。

《大渦の脈動》

大渦の脈動

もう一人のジャンドマスターであるリード・デューク/Reid Dukeは、少なくとも1枚は常に採用している。だが私は《暗殺者の戦利品》のプランに乗ろうと思う。

他の候補たち

炎の侍祭、チャンドラスランの医師、ヨーグモス稲妻の骨精霊発掘

今回の記事では”オーソドックスな”ジャンドを構築している。したがって、同じジャンドカラーのデッキでも《炎の侍祭、チャンドラ》《スランの医師、ヨーグモス》《稲妻の骨精霊》《発掘》などを使用したものは取り扱わない。確かに存在するデッキ群であり、強力でさえあるかもしれないが、別のアーキタイプだ。

最終決定

コラガンの命令歴戦の紅蓮術士漁る軟泥

私は《コラガンの命令》に信頼を置くと心に決めたので、残る6つの枠は追加の《コラガンの命令》1枚、《歴戦の紅蓮術士》3枚、《漁る軟泥》2枚にしよう。次点での選択肢としては、《歴戦の紅蓮術士》を1枚減らし、《コジレックの審問》を1枚追加して初動を強くする構成だ。

マナベース

では続いてマナベースだ。

特に目新しい要素はない。《流刑への道》が飛び交う環境であると予想されるため、基本土地は4枚で良さそうだ。以前ほど《漁る軟泥》に頼ることもなくなったうえに、《歴戦の紅蓮術士》を採用しているため、《山》1枚と(《草むした墓》2枚ではなく)《血の墓所》2枚の構成で間違いないだろう。

怒り狂う山峡育成泥炭地

お気づきかもしれないが、《レンと六番》の[+1]能力と大きなシナジーを形成する土地が少ない。《怒り狂う山峡》2枚と《育成泥炭地》1枚だけである。ただ、私が思うにこのプレインズウォーカーはそこまでせずとも異次元の強さなのだ。マナベースを崩してまでレモンのように搾る必要はない。

サイドボード

最後はサイドボードだ。

《疫病を仕組むもの》

疫病を仕組むもの

特定のデッキ群に対して桁外れの働きを見せるため、サイドボードに数枚確保したい。複数のクリーチャーを対応できるため、単体しか対処できない《ヴェールのリリアナ》とすんなりと入れ替えられるのは素晴らしい点だ。

《最後の望み、リリアナ》

最後の望み、リリアナ

申し訳ない。《疫病を仕組むもの》という新人が入ったのだ。

《溜め込み屋のアウフ》《古えの遺恨》

溜め込み屋のアウフ古えの遺恨

現状で《コラガンの命令》が3枚入っているため、《粉砕》効果はこれ以上必要ないだろうと思う。しかし、《溜め込み屋のアウフ》は数が多いトロンや4色ウルザソプターに強い。

墓地対策

虚空の力線虚無の呪文爆弾外科的摘出夢を引き裂く者、アショク

《漁る軟泥》の項でもお伝えしたように、生まれ変わった新環境では従来よりも墓地対策を必要としないと思われる。しかしだからといって、油断して良いという訳ではない。

今後は《外科的摘出》が最善の墓地対策になると睨んでいる。墓地のカード全てを追放する必要はなさそうであり、それならば《外科的摘出》が活躍できる。手札破壊呪文と相性がよく、相手の手札に関する情報も得ることが可能だ。

《夢を引き裂く者、アショク》は汎用性が高いなどと良いとの評判をよく耳にするが、3ターン目に唱える呪文であり、それまでに相手は多様な動きを実現してしまう可能性がある。

《集団的蛮行》

集団的蛮行

「増呪」で全てのモードを使用すればバーンと感染に致命傷を与えることができる。さらには、サイドボード後に除去を残しておきたくないコントロールやコンボとの1戦でも有効なサイドボードとなる。

《ゲトの裏切り者、カリタス》

ゲトの裏切り者、カリタス

アグロやミッドレンジとのマッチでのフィニッシャーである。生き残った状態でターンが返ってくるだけで良い。ただ、2枚以上を採用するとマナカーブをゆがめてしまうだろう。

《突然の衰微》《暗殺者の戦利品》《致命的な一押し》

突然の衰微暗殺者の戦利品致命的な一押し

サイドボードに追加の除去を採用するのはミッドレンジに良くあるパターンだ。2ゲーム目以降を除去多めの構成にすることができる。《暗殺者の戦利品》《致命的な一押し》はすでにメインデッキに入っているので、《突然の衰微》を追加しよう。

《大爆発の魔道士》《血染めの月》《高山の月》

大爆発の魔道士血染めの月高山の月

トロンとヴァラクート対策である。最近では《高山の月》がお気に入りだ。《大爆発の魔道士》は相手の土地を1枚減らし、《外科的摘出》と合わせれば絶望的なシナリオを描くこともできるが、3ターン目を丸々消費してしまう。その点、《高山の月》は1マナしかかからず、攻撃の手を緩めずに済むのだ。

《渋面の溶岩使い》

渋面の溶岩使い

墓地のカードをコストに使用する《渋面の溶岩使い》《レンと六番》《タルモゴイフ》の最善のパートナーとは言えない。だが《石鍛冶の神秘家》から始まる初動を妨害することができるのだ。また、その他のクリーチャーデッキに対しても活躍が見込める。

完成したデッキリスト

最終的に行き着いたデッキリストがこれだ。

この構成で何度かリーグに参加してみたが、Format Championshipにジャンドを持っていくことに85%の納得がいっている。ミッドレンジにとっての長い夜がとうとう明けるようだ。

今回の記事もお楽しみいただけただろうか。みなさんにとって有益だったことを願っている。

それではまた。リーグで会おう。

ドミトリー・ブタコフ (Twitter)

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Dmitriy Butakov

Dmitriy Butakov ロシアのプレイヤー。Magic Onlineを主戦場としており、オンラインプレイヤーの中で最強を決める大会である2012 Magic Online Championshipで優勝、翌年の2013 Magic Online Championshipでもトップ4に入賞して注目を浴びる。 2018年には2017 Magic Online Championshipで2度目の優勝を果たし、名実ともにMagic Online上で最強のプレイヤーとして堂々たる実績を残すと同時に、優勝の特典でプラチナレベル・プロとなる。こうした実績が認められ、2018年3月にHareruya Prosへと加入した。 Dmitriy Butakovの記事はこちら