(編注:この記事はグランプリ・ヘント2019の開催前に執筆されたものです。)
Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/09/16)
全盛期を迎えた古豪
みなさんこんにちは!
今回はリミテッドではなく、モダンについて書いていこうと思います。
私はグランプリ・ヘント2019(チームモダン)の調整をしなければならなかったのですが、チームの中央席に座ってアドバイスをする立場になる予定だったため、チームメイトのデッキの練習に重点を置くことにしました。
まず調整し始めたのはボロスバーンでしたが、最初から大当たりのデッキを引いたと言わざるを得ませんでした。どれほど手ごたえがあったかというと、Magic Onlineのミシックチャンピオンシップ予選(MCQ)で使おうと思ったほどです。
本番も非常に調子がよく、411名が参加するなかでトップ8に入賞しました。プロツアー予選/MCQに出場するのは8年ぶりでしたが、新システムになって参加する必要が出てきたのです。先日のミシックチャンピオンシップ予選はレベルが極めて高く、市川 ユウキやグランプリ・ラスベガス2019の覇者であるサイモン・ニールセン/Simon Nielsenといった強豪を倒さなければなりませんでした。
バーンはモダンの黎明期から存在していたデッキですが、今現在の立ち位置を非常に良くしている大きな要素が3つあります。
以上の理由から、バーンは最大の問題点を2つ解消し、非常に強力なデッキへと変貌しました。1ターン目の初動から、終盤の最後の一押しまで大きな安定性を獲得したのです。
デッキリストとMCQ
デッキリスト
MCQで使用したデッキがこちらになります。
対戦成績
そして、対戦結果はこのようになりました。
ラウンド | 対戦相手のデッキ | 対戦結果 |
---|---|---|
Round 1 | ストーム | 2-0 |
Round 2 | トロン | 2-1 |
Round 3 | タイタンシフト | 2-0 |
Round 4 | バーン | 2-0 |
Round 5 | ネオブランド | 2-1 |
Round 6 | ウルザソプター | 2-1 |
Round 7 | ウルザソプター | 0-2 |
Round 8 | バント石鍛冶 | 0-2 |
Round 9 | ウルザソプター | 2-1 |
Round 10 | ジャンド | 2-0 |
ラウンド | 対戦相手のデッキ | 対戦結果 |
---|---|---|
準々決勝 | 青白石鍛冶 | 1-2 |
Here is the list I played at the MCQ
— Jérémy Dezani (@JDezani) September 9, 2019
Lost vs UW blade, Bant Blade and Whirza
Win vs 2 x Whirza, Tron, Valakut, Burn, Jund, Storm and griselcombo. pic.twitter.com/2abydqMIgS
サイドボードの変更とサイドボードガイド
現在のウルザソプターの人気・強さを鑑みた場合、サイドボードに少し手を加えた方が良いと感じています。次回に使うとすれば以下の構成になるでしょう。
最新版のサイドボード
ここからは、重要性の高いマッチアップについてサイドボードプランを示すとともに、戦ううえでのアドバイスもお教えしましょう。
ウルザソプター
このマッチアップは難しく、プレッシャーをかけると同時に相手を妨害しなければなりません。《大歓楽の幻霊》は3マナ以下の呪文が多いウルザソプターに効果抜群ですが、1マナのクリーチャーやアーティファクト破壊呪文も良い仕事をします。
大抵の場合、相手は《集団的蛮行》しかサイドインするものがないので、《頭蓋割り》はコンボに介入できませんが2戦目以降も残した方が良いでしょう。《流刑への道》は《最高工匠卿、ウルザ》の対処手段として気に入っています。《破壊放題》はインスタントタイミングで唱えられないものの、《オパールのモックス》とその他のマナアーティファクトを一挙に破壊する手段として運用可能です。相手は《大歓楽の幻霊》によるダメージを食らわないために、アーティファクトを先出ししてくることが普通ですからね。
対 ウルザソプター
バーン
ミラーにおいては《大歓楽の幻霊》がデッキ内で明らかに一番弱いカードです。反対に《コーの火歩き》は明確なキーカードであり、相手の《コーの火歩き》を対処するために《流刑への道》をサイドインします。《コジレックの帰還》も投入する人もいますが、重そうな印象がありますし、あまり汎用性があるとは言えません。
相手が《稲妻のらせん》を4枚採用していると想定するなら《頭蓋割り》を残しても良いでしょうが、そうでない場合は2マナの《溶岩の撃ち込み》になるだけです。クリーチャーがいない手札をキープしてコントロールとして立ち回ることもありますが、その場合はクリーチャーを除去できる火力呪文が必要になってきます。
対 バーン
ジャンド
ジャンドには《漁る軟泥》や《集団的蛮行》といったライフを回復する呪文がメインデッキに入っているため、《頭蓋割り》が有効です。とはいえ、序盤は墓地にクリーチャーがあまり溜まらない展開になるので、《漁る軟泥》はサイズが非常に小さく、3点分の火力呪文で対処できるでしょう。
本当に問題なのは、急速に大きなサイズになる《タルモゴイフ》です(インスタントが墓地にない状態でインスタントを唱えると《タルモゴイフ》のサイズが1つ大きくなるので注意しましょう)。そのため、《流刑への道》を対抗手段としてサイドインします。
ジャンド相手には《跳ね返す掌》が好きになれません。相手は手札破壊呪文でこちらの手札を見透かしてきますし、《ヴェールのリリアナ》に非常に弱いのです。《ヴェールのリリアナ》を対処する一番良い方法は、手札を空にし、奥義が決められるとしても存在を無視することです。余分な土地は手札に抱え、彼女の[+1]能力から火力呪文を守るようにしましょう。
対して《溶鉄の雨》は好きな呪文です。ジャンドはマナベースがそこまで強くないため、《血編み髪のエルフ》を出させない、《ヴェールのリリアナ》に必要な黒2マナを捻出させない、《漁る軟泥》の能力に使用する緑マナを多く確保させないなどの役割が《溶鉄の雨》には期待できます。
対 ジャンド
青白石鍛冶
タフな戦いになります。相手には《コーの火歩き》、《神聖の力線》、《機を見た援軍》、そしてご存知の通り《殴打頭蓋》があるのです。《機を見た援軍》を活躍させない方法は、フェッチランドとショックランドを使ってできるだけ自分のライフを減らしておくことです。フェッチランドから《聖なる鋳造所》をサーチしておくメリットは他にもあり、基本土地をデッキに残しておけば《流刑への道》や《廃墟の地》を使われた際にサーチする基本土地がないという事態を防ぐことができます。
《神聖の力線》は厄介な存在ですが、最近はサイドボードで見かける機会が非常に少なくなりました。とはいえ、対処できるカードを少なくとも1枚は採用したいところです。そう言った意味で《摩耗/損耗》は有用であり、同時に《殴打頭蓋》も破壊できます。
《殴打頭蓋》のマナコストを踏み倒させないために《石鍛冶の神秘家》は確実に除去しなければなりませんが、その過程で火力呪文を1枚消費することとなり、相手にとっては非常にありがたい展開となってしまいます。だからこそ、《焼尽の猛火》はぜひとも4枚残すべきです。《瞬唱の魔道士》や、ときには《ルーンの与え手》がクリーチャー枠に採用されていますから、《焼尽の猛火》は十分に機能します。
- 2019/01/21
- ゲーム展開の掌握
- マッティ・クイスマ
インスタントタイミングで動けるのなら、打ち消し呪文にまんまと引っかかってしまうようなプレイは避けましょう。全ての火力呪文を温存し、相手が《殴打頭蓋》などのためにマナを使い切るターンを待つのです。
対 青白石鍛冶
トロン
対 トロン
タイタンシフト
非常に相性が良いと思いますので、サイドボードで大きく変更する必要はないでしょう。《焼尽の猛火》は《桜族の長老》のブロックを許さないため2本目以降も悪いカードではありません(《焼尽の猛火》に対応して《桜族の長老》を生け贄に捧げられても、対戦相手にはダメージを与えられます)。しかし、総じてみれば《溶鉄の雨》や《高山の月》の方が当然優秀なので、《焼尽の猛火》と入れ替えます。
対 タイタンシフト
マルドゥシャドウ
このマッチでは、相手のクリーチャーを片っ端から除去する必要があります。相手には《ルーンの与え手》や《潮の虚ろの漕ぎ手》といったタフネスが3以下のクリーチャーがいますので、《焼尽の猛火》は素晴らしい活躍を見せるでしょう。
しかし難儀なのはここからです。というのも、両者とも同じゲームプラン、すなわちマルドゥシャドウ側のライフを減らすことを狙いとしているのです。では、火力呪文がバーン側の勝利に結びつくタイミングはどのように見極めれば良いのでしょうか?
《死の影》が厄介な存在であるため、火力呪文を使う際は頭を使わなければなりません。互いのライフ総量に気を配り、タイミングを見極めて相手のターン終了時に火力呪文をいくつか唱え、返しのこちらのターンで一気にライフを削りきり、相手に《死の影》で攻撃させる前に勝つのです。《跳ね返す掌》は大打撃を与えられるカードですが、マルドゥシャドウも手札を確認できるため評価を下げます。
対 マルドゥシャドウ
グリクシスシャドウ
グリクシスカラーは《焼尽の猛火》の格好の的となるクリーチャーが少ないです。さらに都合の悪いことに、火力呪文では到底対処できないような《グルマグのアンコウ》を擁しています。そのため、相手がダメージレースをしてくる場合に備えて、《跳ね返す掌》を2枚入れるようにしています。
対 グリクシスシャドウ
エルドラージトロン
このデッキはバーンにとって一番嫌なカードの1枚、《虚空の杯》を使ってきます。ただ、2~3マナの火力呪文も多く採用されていますので、(X)=1の《虚空の杯》が着地したとしてもゲームオーバーではありません。サイドボードからは《虚空の杯》を破壊する手段を複数投入でき、《破壊放題》も「複製」が打ち消されないため対抗策のひとつとなります。
エルドラージトロンはクリーチャーを多く採用していて、アグレッシブなゲームプランをとってくる可能性があるため、《大歓楽の幻霊》はそこまで強くありません。《流刑への道》と《跳ね返す掌》は《現実を砕くもの》や《難題の予見者》と対峙したときに重要となります。
対 エルドラージトロン
アミュレットタイタン
ウルザソプター戦と同様で、プレッシャーをかけつつ相手を妨害します。妨害方法としては、《精力の護符》を破壊する、相手のキーとなる小型クリーチャーを火力呪文で除去する、土地を破壊するなどです。《高山の月》はバウンスランドに対して有効ですが、《原始のタイタン》に速攻を付与させないために《処刑者の要塞》を指定することも考えられます。
対 アミュレットタイタン
5色人間
数を減らしてきているデッキですが、いつか対戦することもあるでしょう。相手には《霊気の薬瓶》があるため、《大歓楽の幻霊》はあまり意味がなく、むしろバーン側に不利に働いてしまうことがあります。4枚の《霊気の薬瓶》に対抗するために《粉々》を1枚入れておくと良いのではないかと思います。
対 5色人間
さいごに
グランプリ・ヘントで使うデッキは確定していませんが、バーンが史上最強になっているのは確かです。みなさんの大会でも素晴らしい選択肢となるでしょう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。