みなさんこんにちは。
今月はアメリカでSCGO Syracuseとグランプリ・アトランタ2019が開催され、レガシーのイベントが充実していました。来月には日本国内でもBig Magicのイベントが開催されるので楽しみですね。
さて、今回の連載では上記ふたつの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Syracuse
レガシーの環境を激変させた『モダンホライゾン』
2019年9月14-15日
- 1位 4C Snow Control
- 2位 ANT
- 3位 4C Loam
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Elves
- 6位 Jeskai Mentor
- 7位 Hogaak
- 8位 Naya Loam
Aiden Brier
トップ16のデッキリストはこちら
『灯争大戦』『モダンホライゾン』『基本セット2020』、そしてロンドンマリガンの導入によって変化し続けているレガシー環境。特に、ここ最近でリリースされたセットの影響力には目を見張るものがあります。
久々に開催された個人戦のレガシーイベントということもあり注目を集めていた本大会。Temur Delverや4C Snow Controlといった《レンと六番》を活用したデッキが、高い2日目進出率を出していました。
SCGO Syracuse デッキ紹介
「4C Snow Control」「Jeskai Mentor」
4C Snow Control
1 《冠雪の沼》
1 《Bayou》
1 《Badlands》
1 《Tropical Island》
1 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
1 《新緑の地下墓地》
1 《血染めのぬかるみ》
2 《不毛の大地》
-土地 (20)- 3 《瞬唱の魔道士》
2 《悪意の大梟》
2 《疫病を仕組むもの》
-クリーチャー (7)-
Temur Delverに次いで人気のある《レンと六番》デッキがこの4C Snow Controlです。《死儀礼のシャーマン》が禁止カードに指定されて以来、マナ基盤に不安を抱えていましたが、『モダンホライゾン』から加入した《アーカムの天測儀》のおかげで安定性が向上しました。
《悪意の大梟》や軽い除去が多く、Delver系を始めとしたフェアデッキに強い構成です。コンボが少ないと想定していたようで、コンボ対策は《意志の力》4枚と《思考囲い》が2枚と少なめになっています。
☆注目ポイント
《アーカムの天測儀》の恩恵で必要なマナにアクセスが可能になり、《不毛の大地》や《基本に帰れ》、《血染めの月》といったアンチ特殊地形が刺さってあっさり負けることも少なくなりました。キャントリップが付いているので、デッキの安定性の向上にも貢献しています。
《レンと六番》はアドバンテージを稼ぎつつ、《不毛の大地》を再利用することで特殊地形に頼ったデッキをロックすることができます。そして、このデッキが『モダンホライゾン』から得たのは《アーカムの天測儀》と《レンと六番》だけではありません。
メインから採用されている《疫病を仕組むもの》は、《真の名の宿敵》に対する明確なアンサーとなります。また、 《僧院の導師》や《若き紅蓮術士》のトークンやDeath and Taxes、Elvesなどに効果的で、《タルモゴイフ》や《グルマグのアンコウ》に対しても相打ちを取ることができる優秀なクリーチャーです。
《暴君の嘲笑》は、《タルモゴイフ》など環境に存在する多くのクリーチャーに効く除去です。最大の注目ポイントは、バウンスモードでマリッドレイジ・トークンにも触れるところです。最近では《輪作》+《カラカス》パッケージも採用されており、Dark Depthsデッキ対策が徹底しています。
《夏の帳》がサイドに採用されています。ANTのハンデスや《苦悶の触手》ルート対策になり、青いフェアデッキとの同型やShow and Tell系とのマッチアップでもカウンター合戦で有利になります。
Jeskai Mentor
2 《冠雪の平地》
1 《冠雪の山》
1 《Tundra》
1 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《虹色の眺望》
2 《沸騰する小湖》
-土地 (20)- 3 《瞬唱の魔道士》
3 《僧院の導師》
-クリーチャー (6)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《呪文貫き》
2 《否定の力》
2 《議会の採決》
4 《意志の力》
2 《マグマの陥没孔》
1 《基本に帰れ》
3 《アーカムの天測儀》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
2 《時を解す者、テフェリー》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (34)-
《レンと六番》とクリーチャーによる多角的な攻めに対応することは難しく、Miraclesなど青白系のコントロールは減少傾向にあります。しかし、コントロールマスターのZach Allen選手は、今大会の前の週に開催されたMOのFormat Playoffで現環境向けに調整されたJeskai Mentorを使用しプレイオフに入賞していました。
Allen選手は今大会でも同様のJeskaiを使用し、見事にプレイオフ進出を果たしました。彼がデッキをシェアしたDrake Sasser選手とHarlan Firer選手もトップ16以内に入賞していたことから、デッキの完成度の高さがうかがえます。
現環境の脅威はTemur Delverの《タルモゴイフ》やDark Depths系のマリッドレイジ・トークンなどが主流なので、それらを対処できる《剣を鍬に》が使えるのは青白系の明確な強みです。
☆注目ポイント
《否定の力》はモダンだけでなく、レガシーでも追加の《意志の力》として使われています。2種類のピッチスペルを採用することによって、《僧院の導師》のためにタップアウトしても除去から守りやすくなりました。
《マグマの陥没孔》は環境の主要な除去のひとつとして定着しているスペルです。青白にとって対処が困難だったプレインズウォーカーに触れるのは大きく、《レンと六番》に対するアンサーとしても有効です。特にソフトカウンターを多用するDelver系とのマッチアップでは、インスタントであり1マナで唱えることができるのは重要なポイントです。
タッチ赤のマナ基盤を支えるため《アーカムの天測儀》が採用されています。《Volcanic Island》をサーチする必要が少なくなり、《不毛の大地》などに対する耐性も上がります。このデッキでは《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力によって再利用することでアドバンテージを得られます。
メインにスイーパーが採用されていないのが気になりましたが、最近の環境は横に並べる戦略は少なくTemur Delverのように《タルモゴイフ》や《戦慄衆の秘儀術師》など脅威を1~2体展開してくる戦略が主流なので、《瞬唱の魔道士》+軽い単体除去の組み合わせの方が効率よく対処できます。しかし、《真の名の宿敵》のように単体除去に耐性があるクリーチャーも存在するので、同様のデッキでトップ16入賞を果たしたDrake Sasser選手は、《至高の評決》をメインに1枚採用していました。
グランプリ・アトランタ2019
ANTマスターがレガシーのプレミアイベントを制する
2019年9月21-22日
- 1位 ANT
- 2位 Temur Delver
- 3位 Golgari Depths
- 4位 Burn
- 5位 Jeskai Mentor
- 6位 Temur Delver
- 7位 Golgari Depths
- 8位 Hogaak Bridgevine
Cyrus Corman-Gill
トップ8のデッキリストはこちら
グランプリ・ナイアガラフォール2019以来、久々に開催されたレガシーのプレミアイベントということで参加者が1000人を超える大盛況で幕を閉じた本大会。
その頂点に立ったのは、ANTマスターとして知られるCyrus Corman-Gill選手でした。優勝こそANTに譲ったものの、《レンと六番》デッキは上位64名中25名と多数の入賞者を出していました。
グランプリ・アトランタ2019 デッキ紹介
「Temur Delver」「Golgari Depths」「Hogaak Bridgevine」
Temur Delver
3 《Volcanic Island》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《樹木茂る山麓》
2 《汚染された三角州》
1 《霧深い雨林》
1 《沸騰する小湖》
1 《焦熱島嶼域》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
2 《呪詛呑み》
4 《タルモゴイフ》
1 《戦慄衆の秘儀術師》
2 《真の名の宿敵》
-クリーチャー (13)-
グランプリ・シアトル2015でも優勝経験のあるJarvis Yu選手は、今大会ではTemur Delverで結果を残していました。Jarvis選手は同様のデッキで2週間前に開催されたMOのFormat Playoffでも優勝しており、前回の記事でもご紹介した《もみ消し》や《敏捷なマングース》が採用されていないNo Bad Cards Temur Delverは現在最もポピュラーなDelver系のスタイルです。
Temur Delverは《レンと六番》を最も有効活用できるデッキです。《秘密を掘り下げる者》や 《タルモゴイフ》といった軽いクロックでプレッシャーをかけつつ、《不毛の大地》を毎ターン再利用することで相手をロックする動きが最も強力な動きです。《稲妻》との組み合わせによって、タフネス4のクリーチャーも対処しやすくなりました。
☆注目ポイント
《戦慄衆の秘儀術師》は、軽いスペルを多用するDelver系の主力クリーチャーとして定着しています。最近は《呪詛呑み》が採用されたリストも見られるようになりました。
《呪詛呑み》は一度レベルアップしてしまえば、除去されにくい信頼性の高いクロックとして活躍します。序盤に出すと《レンと六番》で簡単に除去されてしまうので、中盤以降に出して一気にレベルアップさせる方が安全です。能力の性質上複数出してもあまり意味がないため、2枚の採用となっています。このクリーチャーの明確な強みは、墓地の状況に依存しないことです。《安らかなる眠り》や《虚空の力線》といった墓地対策カードの影響を受けないので、サイド後は信頼性の高いフィニッシャーとして機能します。
Golgari Depths
1 《森》
3 《Bayou》
4 《新緑の地下墓地》
1 《樹木茂る山麓》
1 《霧深い雨林》
1 《ボジューカの沼》
1 《セジーリのステップ》
3 《不毛の大地》
4 《演劇の舞台》
4 《暗黒の深部》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (27)- 4 《エルフの開墾者》
4 《闇の腹心》
4 《吸血鬼の呪詛術士》
-クリーチャー (12)-
日本人プレイヤーも数名参加しており、第14期ヴィンテージ神の冨澤 晋選手が見事にプレイオフ入賞を果たしました。
Golgari Depthsも最近強化されたデッキで、先月開催されたEternal Weekend Asia 2019でも優勝も含めて多数の上位入賞者を輩出していました。《レンと六番》デッキの代表格であるDelver系に強く、アメリカでも人気があるデッキのひとつです。
☆注目ポイント
《エルフの開墾者》は《暗黒の深部》+《演劇の舞台》コンボ戦略をさらに強化しました。このクリーチャー1体でコンボを揃えることができ、コンボが決まった後も《セジーリのステップ》をサーチすることでマリッドレイジ・トークンの攻撃を確実に通すことができます。
《突然の衰微》と《暗殺者の戦利品》が両方メインに採用されているリストを多く見かけますが、現環境トップメタのDelver系に対してはカウンターされない《突然の衰微》の方が除去としての信頼性が高いため、《突然の衰微》の4枚目が優先される傾向にあります。
《闇の腹心》と《森の知恵》の2種類のカードアドバンテージ源とハンデス、軽い除去を搭載しているのでコンボによるプレッシャーをかけつつ中速デッキとしても振舞うことができるのがこのバージョンの強みです。
Hogaak Bridgevine
3 《Bayou》
3 《Underground Sea》
4 《汚染された三角州》
4 《新緑の地下墓地》
3 《血染めのぬかるみ》
-土地 (19)- 4 《縫い師への供給者》
4 《面晶体のカニ》
3 《屍肉喰らい》
3 《墓所這い》
4 《恐血鬼》
4 《復讐蔦》
4 《甦る死滅都市、ホガーク》
-クリーチャー (26)-
モダンでは禁止になった《甦る死滅都市、ホガーク》ですが、早くもレガシー環境で結果を残すほどの強さだったことを証明しました。
Hogaak Bridgevineで入賞を果たしたPatel Tariq選手は、今大会の前週に開催されたSCGO Syracuseでもプレイオフに入賞しており、2週連続でのプレイオフ入賞を遂げています。
墓地を使った戦略は異なる軸から攻めるため《レンと六番》を無視することが可能で、Delver系に強く現環境では有力な選択肢のひとつとなります。ハンデス以外に妨害要素が少ないため、ANTなどコンボデッキに対しては苦戦を強いられます。
☆注目ポイント
モダンで猛威を振るっていたHogaak Bridgevineをアップデートしたバージョンですが、モダンにはない強力なカードが使えるようになりました。《陰謀団式療法》は、《墓所這い》や《恐血鬼》といった墓地から復活するクリーチャーを使用したこのデッキでは強力なハンデススペルとして機能し、相手のプランを崩壊させます。モダンバージョンと同様に、《甦る死滅都市、ホガーク》や《復讐蔦》などによるビートダウンや、《狂気の祭壇》によるライブラリーアウトを狙う多角的な攻めは健在です。
《面晶体のカニ》のために青をタッチしているので、《信仰無き物あさり》の代わりに《入念な研究》を採用しています。「フラッシュバック」できなくなるのは残念ですが、マナ基盤の負担を考慮した結果だと思います。
《安らかなる眠り》や《虚空の力線》といった墓地対策が刺さるので、《恭しき沈黙》や《活性の力》といった置物対策がサイドに多めに用意されています。
総括
レガシーでは新セットが環境に影響与えることは稀ですが、『モダンホライゾン』や『灯争大戦』『基本セット2020』の影響は非常に大きく、環境が激変しました。
グランプリ・アトランタ2019ではトップ64中25名が《レンと六番》を使ったデッキだったようですが、上位入賞デッキを見る限りでは特定のデッキが環境を支配している様子はないようです。《レンと六番》が環境を定義するカードであることは明確なので、今後も《レンと六番》を使うデッキ(Snow Control、Temur Delverなど)とそれを無視できる戦略(Hogaak、ANT、Reanimatorなど)が中心になりそうです。
以上USA Legacy Express vol.158でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!