コントロールフリークが考える、新しいコントロールの形

Gregory Orange

Translated by Nobukazu Kato

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(掲載日 2019/10/02)

コントロールにとっての『エルドレインの王権』

環境が新しくなると、私はゆったりとしたコントロールをいくつか組んでみるようにしています。ただ、どのようなデッキと対戦するかが正確にわからないタイミングですので、完成度の高いデッキを構築するのは少々難しい面があります。さらに言えば、仮想敵が明確であるときでさえ、遅くて受動的なコントロールが極めて強力なレベルに達しないことは十分に考えられるのです。

ロークスワイン城

コントロールの視点から『エルドレインの王権』を見てみると、少々心配になってしまいます。コントロールで活躍しそうなカードが多くないうえに、質が高く、コントロールが対処しづらいカードがずいぶんと存在しているのです。ひとつ例をあげるならば、《ロークスワイン城》は非常に目障りなカードでありながら、コントロールでは使いづらいものとなっています。コントロール側が相手のライフを削りに行かなければ、《ロークスワイン城》からの大量ドローを実現されてしまうことでしょう。

ジェスカイプレインズウォーカー

時を解す者、テフェリー謎めいた指導者、カズミナ主無き者、サルカン

現在の環境では、カードパワーが高いものが多く、コントロールに対して多種多様な方法で攻めてきます。この問題を解消するひとつの方法は、より能動的な構築にすることです。ゲームに勝てるなら、相手の脅威をことごとく対処する必要はありません。しかし、私からするとちょっとした”逃げ”なのではないかと思ってしまいます。そのようなデッキをコントロールと呼べるのでしょうか。ジェスカイプレインズウォーカーは現環境で強い可能性がありますが、私が理想に描くコントロールデッキを他に探してみても良いように思うのです。

寓話の小道次元間の標王家の跡継ぎ砕骨の巨人

ジェスカイプレインズウォーカーは、マナ基盤の安定のために《寓話の小道》を上手く使えるデッキです。プレインズウォーカー以外のあらゆる呪文が同一色のダブルシンボルを要求しないからです。また、プレインズウォーカーに関しても《次元間の標》で唱えやすくなっています。環境初期はアグロデッキが活躍しやすい時期ですから、《次元間の標》がもたらすライフ回復は価値があるでしょう。

このデッキにおける《王家の跡継ぎ》には多様な役割を期待できるわけではないですが、少なくとも《主無き者、サルカン》の[+1]能力でクリーチャー化する軽量のプレインズウォーカーになります。《砕骨の巨人》はアドバンテージ付きの除去として一定の働きを見せることでしょう。

厚かましい借り手

《厚かましい借り手》がこのタイプのデッキで強いのかは確信が持てません。ジェスカイプレインズウォーカーがバウンス呪文に大きな価値を見出せるほどアグレッシブなのかも不確かですし、《厚かましい借り手》はブロッカーとして心許ないのです。残念なことではありますが、ジェスカイプレインズウォーカーで活躍できないのであれば、《厚かましい借り手》がさらにゲームスピードが遅いコントロールで機能することは考えづらいでしょう。

エスパーコントロール

残忍な騎士

エスパーコントロールにとっての朗報は、非常に強力な《残忍な騎士》が登場し、エスパーコントロールがそれを採用できるデッキだということです。このクリーチャーはゆったりとしたコントロールにとって一番の収穫だったのではないでしょうか。《英雄の破滅》に2/3の絆魂クリーチャーが付いてくるのですからね。今の環境にプレインズウォーカーが溢れているのも追い風です。

欲を言えば、《覆いを割く者、ナーセット》の[-2]能力で《残忍な騎士》を手札に加えたかったところです。これができれば最高だったでしょうね。

聖堂の鐘憑き覆いを割く者、ナーセットケイヤの怒り

エスパーコントロールは大いに納得がいく仕上がりになるポテンシャルを持っているでしょう。ただ、マナベースが少々心配です。ローテーション前から、適切なタイミングで呪文を唱えることは必ずしも容易ではありませんでした。厳しい色拘束があるため、《寓話の小道》はマナ基盤の安定にあまり寄与しません。《島》が1枚あるだけでも、《聖堂の鐘憑き》をドローした際に大きな影響をもたらします。

3ターン目に《覆いを割く者、ナーセット》、4ターン目に《ケイヤの怒り》という動きは以前から難しかったですし、《氷河の城砦》などのチェックランドを失った今はさらに難易度が上がっています。また、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を失ったのも痛手です。ゲームに勝利するまでの道のりが困難なものとなったことでしょう。前環境のお気に入りのコントロールに少々肩入れしすぎているかもしれませんね。

ディミーアコントロール

悪意ある妨害残忍な騎士

打ち消し呪文を搭載した、より古典的なコントロールはどうでしょうか。エスパーカラーのなかで、しいて色を切り捨てるならば白になるかと思います。もちろん私としても青白コントロールの出来が良いなら使いたいところですが、この色の組み合わせには採用に値する単体除去が不足している印象があります。青黒ならば《残忍な騎士》《覆いを割く者、ナーセット》を採用できますし、両カラーのダブルシンボルを支えられるマナベースを構築できます。

《悪意ある妨害》《残忍な騎士》の「出来事」である《英雄の破滅》と相性が良いでしょう。どちらの呪文も相手のターンに構えておくのにうってつけものだからです。

神秘を操る者、ジェイス魔法の鏡

《神秘を操る者、ジェイス》は既存のカードですが、《ドミナリアの英雄、テフェリー》がいなくなったために活躍のチャンスが巡ってきたように思います。《ドミナリアの英雄、テフェリー》の方が断然優れているのは明白ですが、両者は[+1]能力でドロー可能で、最終的にゲームに勝てるという共通点があります。《神秘を操る者、ジェイス》少なくともゲームが長引けば勝利につながるという意味で高評価です。

言うまでもなく、ディミーアコントロールは特に能動的なデッキではないですが、ゲームプランがシンプルなものとなっています。困難であるとはいえ、ライブラリーのカードを全てドローしさえすれば良いのです。《魔法の鏡》はそのプラン達成に資する力があり、このデッキならば十分な頻度で3マナで唱えられると思われるので、試してみる価値はあると思います。

ヴァントレスのガーゴイル魔女の復讐霊気の疾風

《ヴァントレスのガーゴイル》は優秀なブロッカーであり、75枚のどこかに入る可能性があります。ただ、コントロール要素が強い戦術にはあまり役立たないのではないかという思いは拭えません。黒に魅力的な全体除去が収録されることを待ち望んでいましたが、《魔女の復讐》しかありませんでした。除去対象が狭すぎて私が満足できるものではなかったのです。

また、青黒はアーティファクトとエンチャントの対処にやや難があり、『エルドレインの王権』の伝説のアーティファクトサイクルを考えると問題として顕在化する可能性があります。《実験の狂乱》も悩みの種となることでしょう。サイドボードから《霊気の疾風》を投入すれば緩和されるかもしれませんが、それほど強力なカードではありません。ディミーアコントロールに対する《夏の帳》ほどの活躍は期待できないでしょう。

正直なところ、ディミーアコントロールに関する一番の心配事は、他のスタンダードのデッキと競い合えるだけのデッキパワーにならない可能性があることです。若干のコントロール要素を含む戦術が現環境で構築可能かもしれませんが、おそらく最終的には一定の能動的な要素を兼ね備えたデッキになるのではないかと予想しています。そうすれば、必ずしも相手の全ての脅威に対処しなくても済むからです。

グレゴリー・オレンジ (Twitter)

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Gregory Orange アメリカ出身のプロプレイヤー。HotSauceGames.comの一員であり、ゴールド・レベル・プロとしてプロシーンの第一線で長年戦っているアメリカの強豪。グランプリ・サントニオ2017優勝のほか、プロツアーでも安定した成績を残し続けている。2018年8月に開催されたマジック25周年記念プロツアーでアレン・ウー、ベン・ハルと共に優勝。さらなる研鑽を積むべく、チームメイトたちと共にHareruya Prosに加入した。 Gregory Orangeの記事はこちら