Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/10/07)
新しいリミテッドの物語
やぁみんな!マジック・プロリーグ(MPL)プレイヤーのマルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalhoだ。今回もリミテッドについて話そうと思う。テーマは、直近のセットである『エルドレインの王権』の第一印象だ。
ではメカニズム(「一徹」、「食物」、「出来事」)の分析から”物語”をはじめることにしよう。その後に全ての色の組み合わせを検証していく。
メカニズム
「一徹」
「一徹」を持つ呪文は、それを唱えるために特定の色マナが3点以上支払われていると一定のリターンをもたらす。特定のボーナス効果を”アンロック”したり、効果を付け加えたりするんだ。デッキの大部分を1色で固める理由になるわけだね。
正直なところ、このメカニズムの評価は高くない。そもそも、自分の席から見て流れが良い色をドラフトしようとする場合、最終的に「一徹」と同じ色のプレイアブルなカードがどれだけ手に入るかは検討がつかない。にもかかわらず、「一徹」はいわばトリプルシンボルであり、その色を濃くすることを必要とするんだ。それから、「一徹」による追加効果は元々のカード効果と大して差がない。
こういった考えがあるから、おまけの効果がないものとしてドラフトやカード評価をすることがほとんどだ。「一徹」を達成しなくても優れているなら、ぜひデッキに入れたいカードであると言えるね。
「食物」
知っているかもしれないけど、「食物」は黒と緑を中心にした能力だ。食物トークンの生成も消費も行うカードは大抵はこの色に属している。ドラフトするときは念頭に置いておこう。とはいっても、食物トークンはアーティファクトでもあるから、他にもシナジーがある。
もうひとつ重要なことがある。食物トークンを使って強力な効果を発揮するカードがデッキ内にある場合は、マナ効率が良いからといってむやみに食物トークンを食べるのはやめよう。食物トークンを使うカードはかなり強いから、温存しておけば良かったということになりやすい。
「出来事」
「出来事」はフレーバー的に歴代でトップクラスだけど、リミテッドでも最高だ。リミテッドで唯一求めるものは選択肢であり、「出来事」には正にそれが備わっている。「出来事」として使うことも選べるし、盤面を作ることが最善だと思うならクリーチャーとして唱えることもできるんだ。
墓地からクリーチャーを回収する“《グレイブディガー》効果”やバウンス効果は「出来事」と絡むと一層強くなる。1枚ではなく、2枚分の再利用になるんだ。
「出来事」カードのほとんどは大きなアドバンテージをもたらす。しかしだからといって、必ずしもデッキに自動的に入るわけではないんだ。場合によっては、両方の効果が弱すぎることもあるから、そういったものはピックの点数を高くしてはいけない。たとえば、《豆の木の巨人》とか《夜の死神》みたいなカードだ。
これで新セットの3つのメカニズムを分析し終わった。じゃあ次はアーキタイプ / 戦略をいくつか見ていくことにしよう。
アーキタイプ / 戦略
青赤ドロー
MTGアリーナのアーリーアクセスイベントで使ったアーキタイプだ。いうなれば、ぶっ壊れた強さがあったね!もちろんシールドデッキだったというのもあるけど、実際のゲームでその強さを確認できたのは大きな収穫だった。2枚目のドローを実現するカード、そして2枚目のドローで効果を誘発するカード。そのどちらも環境に多く存在している。だから屈指の人気を誇る色の組み合わせになるんじゃないかな。卓で何人がドラフトできるアーキタイプかはまだわからないから、実際にドラフトしてみて他のプレイヤーの反応に目を凝らしてみようと思っている。
ひとつ意識しておきたいのは、2枚目のドローで効果を誘発するカードの多くがクリーチャーであり、《選択》・《胸躍る可能性》・《谷の商人》などを駆使すれば簡単にインスタントタイミングで能力を誘発させられるということだ。つまり、相手からすればかなりブロックしづらい。ドロー呪文は温存しておき、相手が実際にブロックしてきたときに唱えるようにしよう。
アーリーアクセスイベントで使ったシールドデッキはこれだ。
8 《山》
-土地 (17)- 2 《血霞のクズリ》
1 《フェアリーの荒らし屋》
1 《惑乱スプライト》
1 《義賊》
1 《秘本の略奪者》
1 《機械仕掛けの召使い》
1 《老いたる者、ガドウィック》
1 《砕骨の巨人》
1 《狂ったネズミ飼い》
1 《ミストフォードの亀》
1 《湖のドラゴン》
2 《鋼睨みのグリフィン》
1 《勇敢な騎士、カラ卿》
-クリーチャー (15)-
騎士
騎士はマルドゥカラーに割り当てられたアーキタイプだ。だけど、青と緑に騎士がいないということではない。騎士シナジーがあるカードがマルドゥカラーに集中しているということだね。
ウィザーズは”騎士の土地”として《試合場》を収録したけど、ドラフトの3色デッキはおすすめしない。その理由のひとつは、さっき「一徹」で解説したものと同様だ。そしてもうひとつの理由は、騎士はかなりアグレッシブなデッキであり、マナカーブ通りに動いて一気に相手を圧倒したいということ。3色にしてしまうと、このプランは成り立たないだろうと思うわけさ。アンコモンである《試合場》を数枚ピックできていたら別だろうけどね。
《恋に落ちた剣士》は注目しているカードの1つだ。一般的にこの類の効果はとても弱いんだけど、騎士で固められたデッキならば強力なフィニッシャーになり得る。状況次第では序盤から唱え、リソースの交換に使っても良い。《真夜中の騎士団》・《永遠の若さ》・《墳丘の魔女》とかで結局は墓地から回収できるからね。
第一印象としては、騎士をドラフトするなら白や赤よりも黒を優先させたいと思っている。この3色のなかでは一番持久戦に強いからね。白赤の方が爆発力があるけど、終盤で多少苦労しやすいはずだ。
黒緑 「食物」
黒緑はいつも通りアドバンテージ戦に強いデッキになりそうだ。この色の組み合わせは何らかの形でアドバンテージをもたらすものがほとんどなんだ。食物トークンを生成したり、それを使って効果を発揮したり、あるいは黒緑の十八番である墓地回収であったりね。さらに、質が高いクリーチャーが多く、環境でトップクラスの除去が揃っている色でもある。文句なしのアーキタイプさ!セット内で最強カードであろう《呪われた狩人、ガラク》については言うまでもないだろうね!
これまでの経験から判断すると、この色の組み合わせは採用に値するカードが多く、『エルドレインの王権』リミテッドで最も層が厚い。卓でとても人気のデッキになるだろうから、カードパワーが特に高いものは多色であっても序盤からピックするようにしよう。
白緑 「出来事」
このアーキタイプはいまだにミステリアスだ。「出来事」が満載のデッキは通常のミッドレンジプランになりそうだけど、上記3種のアンコモンはすぐに手を付けられなくなる速度を持っている。これらのアンコモンをピックし、デッキの大部分が「出来事」(少なくとも10~12枚)になれば、大満足の結果が出せるはずだ。でも形にならなかった場合は平均を下回るデッキになってしまうだろう。
冒頭で話したとおり、「出来事」はその全てがプレイアブルなわけではない。だから、このアーキタイプはドラフトすると失敗する確率が高いと言えるんだ。今後の練習でこのデッキの謎を解いていくことにしよう。結論はそれからだ。
白青 / 赤緑 / 青緑
この3つのアーキタイプをひとまとまりにしたのは、他と違って明確なゲームプランがないと感じているからだ。
白青はアーティファクトとエンチャントをテーマにしている。でもこの色を使いたいと思わせるだけのアーティファクトやエンチャントの数が不足しているんだ。この戦略が脆いことは言うまでもないしね。おそらくありがちな白青飛行デッキに落ち着き、エンチャントは除去として、アーティファクトはアドバンテージをもたらすものとして使うに留まるだろう。
赤緑のテーマはデッキ内に人間を含めないことだ。だけど、このテーマに沿うためだけに人間をピックしないほどのものでもない。この色の組み合わせの魅力はわからないままだから(後述の)青黒の評価次第では一番評価が低いアーキタイプになるかもしれない。
青緑はかなり強い多色カードを有している。とはいえ、この2色だけではゲームプランがないように思う。青の飛行クリーチャーやボムレアを数枚入れた古典的なミッドレンジをドラフトすることになるだろう。
青黒 (コントロール / ライブラリー破壊)
最後に解説することにしたのは青黒だ。早めの段階で話さなかったのは、この色の組み合わせの立ち位置が良くないと思っているからだ。どういうことか説明しよう。
まず、明確な方向性を指し示す多色カードが1枚もない。唯一あるのは、ライブラリー破壊というマイナーなサブテーマだ。マイナーと表現した理由は、直接的に相手のライブラリーを削ったり、コモンやアンコモンに繰り返しライブラリーを破壊するカードが少なく、信頼に足るゲームプランにならないからだ。
さらに、多くのアーキタイプは「食物」・「出来事」・シナジーでアドバンテージを獲得するため、コントロールデッキが機能しづらい環境になっている。もしかしたら、このアーキタイプを成功に導くドラフト方法がまだ見つかっていないだけかもしれない。そうだとしたら、いずれわかることだろう。
おわりに
今回はここまでだ。『エルドレインの王権』リミテッドの分析はどうだったかな。この記事を参考に大会で勝ち星を重ねてくれたら嬉しい!また近いうちにリミテッドの記事を書くよ!またね!