トロン王国物語 ~むかしと今~

Cristian Ortiz Ros

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/10/23)

モダン最恐

みなさんこんにちは!

またお会いできて嬉しいです。私の知識を共有できる日を楽しみにしていました。今回の記事を通じてみなさんの理解が深まれば幸いです。

ウルザの鉱山ウルザの魔力炉ウルザの塔

今日は、モダンで最も恐れられているデッキのひとつを扱います。そのデッキとは……トロンです!ウルザ土地3種を揃えれば、6マナ/7マナの呪文を3ターン目に唱えられる。まるで無色の王のような気分になってみたいと思ったことがみなさんにもあるのではないでしょうか?土地3種を揃えるだけで良いのですからアンフェアな印象もありますが、紛れもない現実なのです

ワームとぐろエンジン解放された者、カーン

まずは、時の流れとともにトロンがいかに進化してきたのかを少しお話しましょう。進化の過程で私はグランプリトップ8を懸けたマッチを3度経験してきました。そして3度とも栄光につながる最終ラウンドで負けてしまったのです!もっとも、私に勝った3人の相手は例外なく優勝したので、多少の慰めにはなりましたが。

むかしむかし、トロンという王国がありました

ウギンの目

トロンの黄金時代といえばこのころでしょう。《ウギンの目》はまだ禁止されておらず、フィニッシャーを何度もサーチできたのです。今はこれほどのカードを使えないのが残念ですが、禁止によって《ウギンの目》は良き思い出になりました。

紅蓮地獄焼却

当時は赤をタッチしていました。メインデッキに《紅蓮地獄》を4枚、サイドボードに《焼却》を採用し、クリーチャーへの耐性を高めていたのです(《焼却》は人気と歴史を持つ《欠片の双子》コンボへの対策でした)。

時は流れ、王国内では緑単が勢力を強めていきました

デッキリストを見ての通り、赤をタッチすることはやめ、緑単になり始めたころです。ゲームプランをよりスムーズに遂行しようという意図であり、今日まで最も成功してきたアーキタイプと呼べるまでになりました。

濃霧呪文滑り

このころのメタゲームでは、《死の影》デッキが攻撃的なデッキとして頭角を現し、《ギタクシア派の調査》があった青緑「感染」は無慈悲なまでの強さを示していました。メインデッキに《濃霧》《呪文滑り》が入っているのはそういった経緯からです。

2年後……

難題の予見者世界を壊すもの絶え間ない飢餓、ウラモグ約束された終末、エムラクール

ここでの注目ポイントは、お馴染みの《絶え間ない飢餓、ウラモグ》に加えて、エルドラージが増量されている点です。《エルドラージの寺院》を採用し、サイドボード後に3ターン目から《難題の予見者》をプレイしやすくしてあります。この動きはしばしば重要となる動きです。また、《エルドラージの寺院》はエルドラージ呪文ならば2マナを生み出すため、大型のエルドラージを唱える場合も追加の《ウルザの魔力炉》《ウルザの鉱山》のような働きをします。

先ほどお伝えしたように、ここからは緑単が最も成功に近い構成となっていきます。

数か月後……

大祖始の遺産外科的摘出

上記のデッキリストはチームモダンで行われたグランプリで使ったもので、チーム内で同名カードは一人しか使用できませんでした。そのため、このデッキリストはメタゲームを完全に反映したものではないですが、当時よく使用していた75枚とほとんど違いはありません。ドレッジ、人気の《クラーク族の鉄工所》コンボ、新たに登場したイゼットフェニックスといったデッキが存在していたため、墓地対策を多く採用せざるを得なかった時代です。メインデッキには3枚の《大祖始の遺産》、サイドボードには3枚の《外科的摘出》が搭載されています。

そろそろ現代までさかのぼってきました。トロンがフルパワーになった時代です。

ロンドンマリガン法の成立

ロンドンマリガンがトロンに大きな恩恵を与え、私にとって間違いなくナンバーワンのデッキになることは容易に想像がつきました。その恩恵を示すわかりやすい例をご紹介しましょう。

古きものの活性探検の地図解放された者、カーン
ウルザの鉱山ウルザの塔ウルザの塔ウルザの塔

最初の初手がこの7枚だったら確実にキープしますよね?3ターン目に《解放された者、カーン》を出せるのですから!これは間違いようがありません。では、トリプルマリガンで3枚をライブラリーに戻すとしたらどうでしょう?何を戻すか考えましたか?そうですね、3枚戻しても3ターン目に《解放された者、カーン》をプレイできます!

探検の地図解放された者、カーンウルザの鉱山ウルザの塔

さらにマリガン回数を増やし、4枚をライブラリーに戻す場合はどうでしょうか?それでも3ターン目にウルザ土地を揃えられますね。この場合は《解放された者、カーン》も戻すことになりますが、何らかの脅威を引き込むことはさほど難しくないですし、4回マリガンして3ターン目にウルザ土地を揃えられるのならば十分でしょう。このように、マリガンを重ねても7枚からカードを選択できるロンドンマリガンはトロンにとってあまりにも大きな恩恵をもたらしたのです。

探検の地図ウルザの鉱山ウルザの塔

トロン王国のいま

さぁ、とうとう現在まで追いつきました!

大いなる創造者、カーン

上記のデッキリストが今のおすすめです。《大いなる創造者、カーン》を搭載し、異なる角度から勝利できるようになっています。たとえば、《マイコシンスの格子》を[-2]能力で手札に加え、この2枚が戦場に揃った瞬間に相手の選択肢を奪い去ります。極めて有効な戦略ですが、《大いなる創造者、カーン》の魅力はこれだけにとどまりません

マイコシンスの格子三なる宝球液鋼の塗膜

3ターン目にウルザ土地を揃えて《大いなる創造者、カーン》を展開すれば、[-2]能力で手札に加えた《三なる宝球》を余った3マナで青赤ストームにつきつけることができます。同様に、速い戦略に対しては《液鋼の塗膜》を手札に加え、相手のアップキープにその効果で土地をアーティファクトにしてしまえばマナを縛ることが可能です。

4枚の《解放された者、カーン》だけでも強いのですから、8枚にしない理由はないですよね?

新戦力、《むかしむかし》

むかしむかし

先ほどのリストの解説はまだ終わりません。ぜひ注目していただきたいのが《むかしむかし》なのです!

これまで私は《むかしむかし》の熱狂的なファンであると公言してきました。このカードはみなさんが思う以上のものです。このサンプルハンドを見ていただければ、いかにトロンに合う呪文かわかっていただけるでしょう。

むかしむかし彩色の星森の占術
スラーグ牙解放された者、カーン解放された者、カーンウルザの塔

この7枚の初手であれば、3ターン目にスムーズにウルザ土地が揃う確率は十分にあります。まずは《むかしむかし》をマナコストなしで唱え、不足しているウルザ土地を探します。そして2ターン目に《彩色の星》から緑マナを捻出し、《森の占術》で残るもうひとつのウルザ土地を手札に加えるわけです。

しかし疑問に思った方もいるでしょう。ライブラリーの上から5枚のなかに土地がなかった場合はどうするのかと。仮に見つからなかったとしても、ライブラリーの上から5枚を掘り進めた状態で2ターンの通常ドローや《彩色の星》のキャントリップを迎えられます。つまり、《むかしむかし》によって7枚のなかから土地を見つける機会を作れたわけです!もし後手ならば1ターン目にもドローできるため、掘り進められる枚数は8枚になります!

《むかしむかし》のマナコストを踏み倒せる場面もありますが、通常のマナコストを支払ってプレイしても悪くありません。土地だけではなく、インスタントタイミングでクリーチャーを確保する手段にもなるからです。《ワームとぐろエンジン》《スラーグ牙》《歩行バリスタ》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》など、その時々に応じて必要なクリーチャーを手札に加えられます。

一言でいえば、《むかしむかし》はトロンのメインデッキに確実に必須だというのが私の結論です。

ここからは、この75枚で多様な相手とどうやって戦うのかを解説しましょう。

サイドボードガイド

青白コントロール

流刑への道否定の力精神を刻む者、ジェイス

対 青白コントロール

Out

ワームとぐろエンジン ワームとぐろエンジン ワームとぐろエンジン
歩行バリスタ 歩行バリスタ
忘却石

In

スラーグ牙 スラーグ牙
自然の要求 自然の要求
夏の帳 夏の帳

バーン

ゴブリンの先達ボロスの魔除け批判家刺殺

対 バーン

Out

大いなる創造者、カーン 大いなる創造者、カーン 大いなる創造者、カーン 大いなる創造者、カーン
忘却石 絶え間ない飢餓、ウラモグ

In

自然の要求 自然の要求 スラーグ牙 スラーグ牙
次元の歪曲 ワームとぐろエンジン

ジャンド

タルモゴイフレンと六番ヴェールのリリアナ

対 ジャンド

Out

歩行バリスタ 歩行バリスタ
絶え間ない飢餓、ウラモグ 絶え間ない飢餓、ウラモグ
大いなる創造者、カーン

In

スラーグ牙 スラーグ牙
夏の帳 夏の帳
四肢切断

トロン

古きものの活性ワームとぐろエンジン解放された者、カーン

対 トロン

Out

精霊龍、ウギン
精霊龍、ウギン

In

自然の要求
自然の要求

エルドラージトロン

虚空の杯難題の予見者現実を砕くもの

対 エルドラージトロン

Out

彩色の宝球 彩色の宝球 彩色の宝球
精霊龍、ウギン 精霊龍、ウギン

In

スラーグ牙 スラーグ牙 四肢切断
自然の要求 自然の要求

タイタンシフト

桜族の長老風景の変容原始のタイタン

対 タイタンシフト

Out

歩行バリスタ 歩行バリスタ
精霊龍、ウギン 忘却石

In

スラーグ牙 スラーグ牙
自然の要求 自然の要求

グリクシスシャドウ

思考囲い死の影瞬唱の魔道士

対 グリクシスシャドウ

Out

歩行バリスタ 歩行バリスタ
絶え間ない飢餓、ウラモグ

In

スラーグ牙 スラーグ牙
四肢切断

アミュレットタイタン

精力の護符迷える探求者、梓原始のタイタン

対 アミュレットタイタン

Out

スラーグ牙 スラーグ牙
ワームとぐろエンジン ワームとぐろエンジン

In

自然の要求 自然の要求
四肢切断 次元の歪曲

ドレッジ

ゴルガリの凶漢ナルコメーバ秘蔵の縫合体

対 ドレッジ

Out

解放された者、カーン
解放された者、カーン

In

スラーグ牙
スラーグ牙

人間

教区の勇者サリアの副官カマキリの乗り手

対 人間

Out

ワームとぐろエンジン ワームとぐろエンジン ワームとぐろエンジン
絶え間ない飢餓、ウラモグ

In

スラーグ牙 スラーグ牙 次元の歪曲
四肢切断

ウルザソプター

アーカムの天測儀ゴブリンの技師最高工匠卿、ウルザ

対 ウルザソプター

Out

スラーグ牙 スラーグ牙
ワームとぐろエンジン ワームとぐろエンジン

In

自然の要求 自然の要求
四肢切断 次元の歪曲

トロンのパワーカードランキング

この格付けでは、盤面に出たときのインパクトだけでなく、環境での立ち位置や安定度も含めた基準で判断しています。

順位 カード名
1位 《解放された者、カーン》
2位 《大いなる創造者、カーン》
3位 《ワームとぐろエンジン》
4位 《歩行バリスタ》
5位 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
6位 《スラーグ牙》
7位 《精霊龍、ウギン》

小技集

おわりに

ここまでが今回の内容となります。みなさんにとって有益で、プレイに役立つものとなったでしょうか(もっとも、トロンは極端に難しいデッキではないですけどね)。

ふたたび晴れる屋で記事を書く機会に恵まれ、本当にうれしく思います。またみなさんに近いうちにお会いできることを楽しみにしています。

何か疑問点がありましたら、SNSで喜んで答えさせていただきます

それではこれにて。めでたしめでたし。

クリスティアン・オルティス・ロス (Twitter / Twitch)

この記事内で掲載されたカード

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Cristian Ortiz Ros クリスティアンはスペイン出身のベテラン選手。モダンに精通しているプレイヤーで、特にエクステンデッド時代から研究を続けている《死せる生》デッキへの造詣が深い。グランプリ・コペンハーゲン2017で同アーキタイプを使用して準優勝に輝くと、その年末に開催されたグランプリ・マドリード2017では青赤ストームを使いこなし見事に優勝を収めている。マジック・オンライン上でもその実力を遺憾なく発揮しているプレイヤーで、1サイクルの間に38個ものトロフィーを稼ぎだし世界にその名を轟かせた。 Cristian Ortiz Rosの記事はこちら