Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/10/04)
はじめに
ここ数か月はスタンダードを中心にプレイしてきた。Fandom Legendsとか、マジック・プロリーグとか、自分自身の配信とかがあったからだ。正直に言うと、最後にモダンをプレイしたのは《甦る死滅都市、ホガーク》が環境を支配していたころだ。ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019で自分もホガークヴァインを使っていたけど、しばらくはモダンをする気にならないだろうなと思っていた。しかしこのニュースで事情が変わったんだ。
俺と言えば《サイカトグ》を連想する人が多いらしい。世界選手権2002で優勝に導いてくれたカードだからな。でも《石鍛冶の神秘家》も大好きなカードの1枚なんだ!マジック史上で最強の装備品たちを状況に応じて使い分けることができる。真っ先に思いつくのは《梅澤の十手》だけど、残念ながらモダンでは使えないね。
《殴打頭蓋》と《饗宴と飢餓の剣》を見ると、世界最高峰の舞台で使えて嬉しかったデッキのことを思い出す。プロツアー・パリ2011で使用したカウ・ブレードだ。大会全体でミラーマッチは5回(そのほとんどが2日目)であり、良い結果が出せなかったのは残念だったけど、《石鍛冶の神秘家》と《精神を刻む者、ジェイス》の抜群の相性を目の当たりにすることになったんだ。
《石鍛冶の神秘家》がモダンで使用できるのはフォーマット創設以来はじめてのことだ。禁止改定直後から彼女の居場所を探そうとする人は一定数いるだろうと予測していた。しかしそれは見当はずれだった。第1週からあらゆる白のデッキがその可能性を確かめるべく採用し始めたんだ。《石鍛冶の神秘家》入りのトロンすらあったほどさ!
今日は《石鍛冶の神秘家》を使ったデッキをいくつか紹介しよう。
青白石鍛冶
ここ数年、青白コントロールは環境のトップデッキであり続けている。その功績の多くは偉大なプレイヤーたちによるものだった。たとえば、ルイス・サルヴァット/LuisSalvattoやグジェゴジュ・コヴァルスキ/Grzegorz KowalskiといったHareruya Prosの仲間たちだ。
- 2018/09/27
- 美しき青白コントロール
- Luis Salvatto
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- Grzegorz Kowalski
青白コントロールが《石鍛冶の神秘家》ほど強いカードを組み入れるのはごく自然なように思えた。禁止改定後の数週間の結果を見てみると、最も歴史あるコントロールが6枚の枠を作って《石鍛冶の神秘家》のパッケージを入れただけで結果を出していることがわかる。ジョセフ・バーナル/Joseph Bernalは好成績を収めたプレイヤーの一人であり、以下のデッキリストでグランプリ・インディアナポリス2019を準優勝している。
デッキリストを見ての通り、先ほどお伝えしたような構成をジョセフは使用していた。《覆いを割く者、ナーセット》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》といったカードを削減し、《石鍛冶の神秘家》パッケージを入れたんだ。強そうに見えるだろう?でも正直に言うと、俺は強そうだとは思っちゃいない。
俺に石を投げつける前に少し説明させて欲しい。こういった構築で勝てないと言っているわけじゃない。俺が言いたいのは、コントロール戦略と《石鍛冶の神秘家》戦略を共存させるのは難しいということなんだ。ここからはその理由を解説しよう。
1. 除去の使いどころを作ってしまう
青白コントロールのひとつの強みは、特に1ゲーム目において相手のカードの多くを腐らせることにある。通常、青白コントロールはごくわずかしかクリーチャーがいない。一度足りとも攻撃せずに勝つことだって簡単にできるんだ!ところが《石鍛冶の神秘家》を採用し、クリーチャーの攻撃で勝つ方向性にシフトしてしまうとどうなるか。本来はこちらのゲームプランに介入することのなかったカードたちに使い道がある状況を自ら生み出してしまうんだ。
2. 解答が減る
《神の怒り》と類似した効果を持つ全体除去や《ドミナリアの英雄、テフェリー》などのプレインズウォーカーは、手を付けられなくなった盤面や触りづらいパーマネントを対処し、青白コントロールがゲームの流れを切り返すのに役に立つ。《覆いを割く者、ナーセット》でさえ、その常在型能力によって相手の行動を封じ、いくつかの戦略に対する解答になることがある。こういったカードたちを削減し《石鍛冶の神秘家》を採用すれば、デッキ内の解答を減らしてしまうことになる。切羽詰まった状況で《石鍛冶の神秘家》をプレイして《殴打頭蓋》をサーチしても、遅すぎる/ゲーム展開に影響しないことがあるのは言うまでもないだろう。
3. クリーチャー数が不足している
「剣」(特にインスタントタイミングの妨害が満載のこのデッキでは《饗宴と飢餓の剣》)は非常に強力なものの、装備させるクリーチャーが必要となる。《石鍛冶の神秘家》に装備させるのはひとつの手だが、相手の行動に対して打ち消し呪文を構え続けながら、《石鍛冶の神秘家》に装備させようとしたタイミングで除去されないことまでケアするのは非常に難しいだろう。
その他の装備先のクリーチャーとしては《瞬唱の魔道士》がいる。ただ、攻撃だけが目的でこのクリーチャーをプレイするわけにはいかない。《瞬唱の魔道士》には適切なタイミングで強力な呪文を「フラッシュバック」するという重大な役割があるからだ。ここまでの話を踏まえると、《石鍛冶の神秘家》をプレイしても「剣」をサーチすることはほとんどない。では、なぜ《石鍛冶の神秘家》のパッケージを採用しているのだろう?
バント / ジェスカイ石鍛冶
コントロール戦略と石鍛冶戦略の共存がベストな選択ではないことは理解してもらえたと思う。ではどうすべきだろうか?
《石鍛冶の神秘家》を使いたいなら、最善のアプローチはこのクリーチャーをサポートする体制が整っているデッキを見つけることだ。つまり、装備品を最大限に活用し、クリーチャーを守れる構成にすべきだ。先月にチーム戦で行われたグランプリ・ヘント2019には、この条件を満たした良いデッキが2つ存在していた。
バント石鍛冶
このバント石鍛冶は装備品を使うには理想的なデッキリストだ。ありあまるクリーチャーを採用しているし、《石鍛冶の神秘家》で装備品をサーチしておけばマナクリーチャーは終盤に脅威へと変貌する。「剣」は少なくとも1枚、あるいは上記のデッキリストからさらに増量しても良い(《殴打頭蓋》を1枚増やすのもアリだ)。そうすればゲームを決定づけやすくなるだろう。
ジェスカイ石鍛冶
バントカラーよりも打ち消し呪文が多いが、勘違いしてはいけない。ジェスカイ石鍛冶はコントロールというよりもテンポデッキと呼ぶべき動きをする。相手の妨害を打ち消しつつ攻撃し、火力呪文で相手のライフを削りきるんだ。ジェスカイカラーでも《精神を刻む者、ジェイス》は勝ち筋となるが、決してメインのゲームプランではない。
どちらのデッキリストも《時を解す者、テフェリー》と《呪文捕らえ》の強力コンボを用いている。《時を解す者、テフェリー》が戦場にいる限り、《呪文捕らえ》が除去されたとしても、その常在型能力によって追放されていた呪文を再び唱えられないんだ。今後のモダン環境でもっと見る機会が増えてもおかしくない、とても強力なシナジーだ。
おまけ : 純正青白コントロール
もし《石鍛冶の神秘家》を使う気がないのなら、青白コントロールは依然として選択肢に入るデッキだろうか?
結論は青白コントロールに精通したHareruya Prosにお任せするとしても、グランプリでパフォーマンスの高かったデッキはいくつか見つけた。それらはほぼ同じデッキリストであり(使用者がすべてフランス人だから一緒に調整したのだろう)、非常に良く調整されているように思える。試してみたい人のために、チームとして10位に入賞したデッキリストを紹介しておこう。
2 《平地》
2 《神聖なる泉》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
3 《天界の列柱》
2 《氷河の城砦》
4 《廃墟の地》
-土地 (25)- 3 《瞬唱の魔道士》
-クリーチャー (3)-
4 《流刑への道》
2 《呪文嵌め》
1 《失脚》
2 《論理の結び目》
3 《否定の力》
1 《機を見た援軍》
3 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
1 《拘留の宝球》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
2 《時を解す者、テフェリー》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
2 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (32)-
おわりに
モダンの現環境はとても健全なようだ。研究しがいがあるデッキは絶対にもっとたくさんあるだろう!コントロールであれテンポデッキであれ、青が好きなプレイヤーにとっては素晴らしい時代だ。そして最後のアドバイス。石鍛冶かコントロールか、どちらの戦術を使うのかハッキリさせること!二兎を追う者は一兎をも得ずだ!
ここまで読んでくれてありがとう!