Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/11/05)
(編注:この記事は2019/11/05の禁止告知の前に執筆されています。この禁止告知により、《守護フェリダー》、《豊穣の力線》、《ニッサの誓い》が禁止となります。)
新フォーマット、パイオニア
みなさんこんにちは。リー・シー・ティエン/Lee Shi Tianです。
先日、ミシックチャンピオンシップ・ロングビーチ2019で赤単を使用してトップ8に入賞しました。ですが、その翌日に《死者の原野》が禁止されてしまい、赤単を選択する主たる理由はなくなってしまいました。いまさらデッキ解説をしても仕方ないでしょう。
いつものように新エキスパンションからモダンで使えそうなカードをピックアップする記事も考案していましたが、ウィザーズが新フォーマット、パイオニアを告知しました。モダンについて語るのも適切なタイミングではないでしょう。そこで、Magic Onlineのパイオニア チャレンジの結果を待ち、環境について研究することにしました。
パイオニアで実現可能なことを知りたい方は、こちらのリーグの結果を見てみると良いでしょう。パイオニアはまさに自由自在。好みに合うものがあるはずです。Magic Onlineでパイオニアが実装され、そのたった数日後に137ものデッキがリーグで5-0を達成しました。しかしなかには情報が多すぎたり、環境上位に入らないデッキを精査したりすることが手間に感じる方もいるでしょう。そんな方に朗報があります。史上初のパイオニア チャレンジの結果を参照すれば、環境のトップデッキたちが見えてきます。
主要なアーキタイプ
パイオニア チャレンジでトップ16に入ったアーキタイプは以下の通りです。
順位 | デッキ名 |
---|---|
1位 | スゥルタイミッドレンジ |
2位 | イゼットフェニックス |
3位 | スゥルタイミッドレンジ |
4位 | 青単信心 |
5位 | 4色サヒーリ |
6位 | 4色サヒーリ |
7位 | イゼットフェニックス |
8位 | イゼットフェニックス |
9位 | スゥルタイミッドレンジ |
10位 | 黒単信心 |
11位 | ジェスカイサヒーリ |
12位 | 緑単信心 |
13位 | ジェスカイサヒーリ |
14位 | 緑単信心 |
15位 | 4色サヒーリ |
16位 | 緑単信心 |
これは驚きですね。
初のパイオニア チャレンジのトップ16には、主に4つのアーキタイプしかありません!つまり、スゥルタイミッドレンジ、イゼットフェニックス、サヒーリコンボ、「信心」です。ここからはそのひとつひとつをチェックし、その強さに迫ることにしましょう。
スゥルタイミッドレンジ
2 《島》
2 《沼》
4 《草むした墓》
2 《繁殖池》
2 《湿った墓》
4 《寓話の小道》
4 《花盛りの湿地》
2 《植物の聖域》
-土地 (24)- 4 《金のガチョウ》
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
2 《クルフィックスの狩猟者》
1 《不屈の追跡者》
-クリーチャー (11)-
4 《思考囲い》
4 《突然の衰微》
2 《湖での水難》
1 《暗殺者の戦利品》
2 《時を越えた探索》
3 《最後の望み、リリアナ》
3 《王冠泥棒、オーコ》
2 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》
-呪文 (25)-
典型的な”黒緑ミッドレンジスタイル”のデッキ。強力なミッドレンジの哲学は、軽量の妨害、質の高いクリーチャー、プレインズウォーカーです。
《思考囲い》と《致命的な一押し》は、ローテーションなしの他のフォーマットと同様に、ここでも環境を定義しています。厄介なパーマネントは《突然の衰微》が対処してくれることでしょう。
クリーチャーについては、《金のガチョウ》と《ヴリンの神童、ジェイス》を4枚採用。いずれも戦場に残ればアドバンテージを毎ターンもたらします。《クルフィックスの狩猟者》と《不屈の追跡者》は環境を定義するアドバンテージ源です。
アドバンテージといえば、プレインズウォーカーこそ典型的なアドバンテージ源です。新たな仲間である《王冠泥棒、オーコ》はここでも採用されており、どのフォーマットでも極めて強力であることを知らしめています。《最後の望み、リリアナ》は質の高い脅威を回収したり、奥義による勝利をちらつかせたりするため、ただただ素晴らしいカードです。
珍しさはないですが、シンプルに強いデッキです。ミッドレンジがお好きなあなたにうってつけでしょう。
イゼットフェニックス
イゼットフェニックスも親しみのあるアーキタイプでしょう。このデッキが重視しているのは、ありあまるキャントリップ呪文がもたらす安定感により、状況に応じて常に最善の呪文にアクセスできることです。
《弧光のフェニックス》と《氷の中の存在》が元々キャントリップ呪文と相性が良いという事実がこのデッキの核となっています。《魔力変》による爆発力こそないものの、パイオニアはモダンより速度が遅いです。このフォーマットでも優秀なキャントリップ呪文や手札を捨てる手段が多いですし、何よりも《宝船の巡航》が禁止されていません!
1マナのキャントリップ呪文は多くないですが、2マナのキャントリップ呪文は墓地を2~3枚肥やせるようになっています。3ターン目に《宝船の巡航》を唱え、実際のカードアドバンテージに変換することも十分に可能でしょう。
《信仰無き物あさり》がない?ノープロブレムです。
サヒーリコンボ
4 《繁殖池》
3 《寺院の庭》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《植物の聖域》
3 《感動的な眺望所》
1 《ヤヴィマヤの沿岸》
3 《霊気拠点》
1 《マナの合流点》
-土地 (21)- 4 《金のガチョウ》
3 《エルフの神秘家》
2 《ラノワールのエルフ》
2 《反射魔道士》
2 《ならず者の精製屋》
1 《厚かましい借り手》
4 《守護フェリダー》
-クリーチャー (18)-
4 《神聖なる泉》
4 《蒸気孔》
1 《聖なる鋳造所》
2 《灌漑農地》
4 《氷河の城砦》
4 《硫黄の滝》
2 《断崖の避難所》
1 《ヴァントレス城》
-土地 (24)- 4 《守護フェリダー》
-クリーチャー (4)-
4 《検閲》
4 《イゼットの魔除け》
1 《削剥》
3 《至高の評決》
2 《ヒエログリフの輝き》
3 《時を越えた探索》
3 《拘留の宝球》
4 《サヒーリ・ライ》
4 《時を解す者、テフェリー》
-呪文 (32)-
3 《呪文捕らえ》
2 《敬虔な命令》
2 《神秘の論争》
2 《安らかなる眠り》
1 《削剥》
1 《試練に臨むギデオン》
1 《思考を築く者、ジェイス》
-サイドボード (15)-
パイオニア界のコンボデッキです。2枚の即死コンボを狙い、その他の52枚はそれまでの時間を稼ぐために存在しています。
サヒーリコンボは2つの形があります。ひとつはジェスカイカラーであり、除去と軽量のキャントリップ呪文で生き残りを目指します。《時を解す者、テフェリー》はこのデッキにすんなりと入るプレインズウォーカーです。色が噛み合っているだけでなく、コンボへの妨害をシャットアウトし、《守護フェリダー》の「明滅」能力とも相性が良いのです。
もうひとつの形は4色で構成したもので、旧スタンダードで見慣れたものに近しいです。戦場に出たときにアドバンテージを獲得するクリーチャーを多く採用し、《サヒーリ・ライ》のコピー能力や《守護フェリダー》の「明滅」能力を活かせるようにしてあります。緑を足すことで《王冠泥棒、オーコ》を使うことが可能です。
《欠片の双子》コンボが好きだったプレイヤーが好むデッキと言えるでしょう。
信心
環境でアグロの立ち位置にあるのは「信心」です。パイオニアではクリーチャーを真っ当な方法で唱えるのは、アグロがとるべき道ではないようです。トップ16には緑単、青単、黒単が存在しており、いずれも「信心」を最大限に利用しようとしています。
青単信心
4 《変わり谷》
-土地 (24)- 4 《セイレーンの嵐鎮め》
4 《潮流の先駆け》
4 《マーフォークのペテン師》
4 《厚かましい借り手》
4 《大嵐のジン》
4 《海の神、タッサ》
4 《波使い》
-クリーチャー (28)-
青単信心には《海の神、タッサ》と《波使い》があります。《海の神、タッサ》は除去耐性の高い脅威であり、《波使い》は1ターンでも生き残ればあっさりとゲームを支配できるでしょう。その他のカードは回避能力を活かしてダメージを稼ぎます。
黒単信心
4 《ロークスワイン城》
4 《変わり谷》
2 《ニクスの祭殿、ニクソス》
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (24)- 4 《漆黒軍の騎士》
4 《才気ある霊基体》
3 《流城の死刑囚》
3 《マラキールの解放者、ドラーナ》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
4 《薄暮の勇者》
4 《アスフォデルの灰色商人》
-クリーチャー (24)-
黒単信心が擁する《アスフォデルの灰色商人》は大量のライフをドレインし、ライフレースを有利に運びます。1ターン目に《思考囲い》、2ターン目に《群れネズミ》という懐かしの動きが搭載されていないのは少々残念ですが、毎ターンネズミを1体だしているだけではパイオニアで通用しないのかもしれません。吸血鬼のパッケージはカードアドバンテージを獲得したり、「信心」を稼ぐという点で素晴らしいように思います。
緑単信心
4 《ニクスの祭殿、ニクソス》
-土地 (20)- 4 《歩行バリスタ》
4 《エルフの神秘家》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《炎樹族の使者》
4 《森の女人像》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
1 《狩猟の神、ナイレア》
1 《探索する獣》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
-クリーチャー (25)-
最後に紹介する形になりましたが、決して軽視できるデッキではありません。緑単信心こそ、私が最も気に入っているデッキです。《豊穣の力線》はマナコストなしで1ターン目から緑の「信心」を2つも稼ぎます。また、《ニッサの誓い》と《むかしむかし》により、《ニクスの祭殿、ニクソス》を見つけやすくなっています。
1マナのマナクリーチャーが8枚、加えて《炎樹族の使者》がいるため、3ターン目に(ときには2ターン目に!)《世界を揺るがす者、ニッサ》を唱えることができます。2ターン目に《世界を揺るがす者、ニッサ》、3ターン目に《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を出せたら最高ですよね!ときに「信心」は手を付けられないほどの勢いを生み出すのです。
期待の新フォーマット
環境初期に目立った4つのデッキをご覧いただきました。それぞれを一言で表現するなら、ミッドレンジ、キャントリップ、コンボ、アグロでしょうか。今後何が禁止されるのかわかりませんが、今のところ他の構築フォーマットよりもはるかに健全であると思います。《思考囲い》や《致命的な一押し》を使うデッキが複数存在し、何があろうと《王冠泥棒、オーコ》を展開するだけのデッキもいるかもしれません。それでも、少なくとも勝利条件という点では他のフォーマットよりも明らかに選択肢が多いはずです。
みなさんもパイオニア環境に革命を起こしましょう!