Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/10/28)
ノー ホガーク、ノー プロブレム
自分で構築した青黒《復讐蔦》の記事を書くつもりはあまりありませんでした。しかし、私がマジックフェスト・ユトレヒトのPTQで優勝してからというもの、このデッキを使用するプレイヤーが増加し、配信で目にする機会が増え、みなさんにこのデッキのフルパワーを味わってもらうにはユーザーマニュアルを書くべきだろうと考えるようになりました。
特にデッキの動かし方やサイドボーディングは難しいはずです。例えて言うなら、ピカピカに磨かれたフェラーリでドライブに出かけていると思うこともあれば、太陽光に反射した車に見惚れている間にバックミラーをハンマーで壊され、バックで壁に突っ込んでしまうようなこともあるのです 🙂
このデッキの難しさは一見わかりづらく、私自身も何度もミスをし、何ゲームも取りこぼしてきました。
デッキの変遷
《復讐蔦》デッキはほぼ全ての型を試してきました。一年ほど前の《大いなるガルガドン》や《ゴブリンの奇襲隊》を搭載したブリッジヴァインに始まり、その後は《黄泉からの橋》を使ったフルパワー時代のホガークヴァイン、グランプリ・バルセロナ2019では《ティムールの激闘》を入れたジャンドホガーク(当時はまだ《面晶体のカニ》の魅力が理解できていませんでした)、グランプリ・バーミンガム2019では4色カニホガーク、そして禁止の直前には理想の極致であった《不可思の一瞥》ホガークを使用していました。
《甦る死滅都市、ホガーク》は猛威を振るい、ウィザーズは鉄槌を下しました。当時は本当に残念な気持ちでした。しかし、どうやってこのカードは出来上がったのか今でも不思議で仕方ありません。
愛用してきたアーキタイプから複数の禁止カードが出るという不幸に見舞われたため、《復讐蔦》デッキを競技レベルにとどめておくには、独創的な解決策を出さなければなりませんでした。そしてその努力の結晶が“ノガーク”(Nogaak:《甦る死滅都市、ホガーク》なしの意)と呼んでいる最新の構成です。
《甦る死滅都市、ホガーク》が禁止になったことで墓地対策は数を減らすと予想し、グランプリ・ヘント2019の調整時期になったらこのアーキタイプを再訪することにしました。何度も何度も構成を練り直し、エリアス・クロッカー/Elias Klockerと私はようやくチームグランプリで使用するデッキを完成させたのです。
デッキの動き
理想の動きは、《面晶体のカニ》や《縫い師への供給者》で自分のライブラリーを削り、2ターン目に《復讐蔦》や《秘蔵の縫合体》を展開すること。あるいは2ターン目に《不可思の一瞥》で準備を整え、3ターン目に圧倒的な動きを実現することです。 そして残りの数点のライフを《這い寄る恐怖》で削りきります。
ノガークは3ターンキルを達成する、あるいは2~3ターン目に手に負えない盤面を作るために最適化されています。妨害してこない相手であれば、3ターンキルはおよそ20%の確率で発生します。2ターンキルは理論上可能ですが、そこまでの幸運が巡ってきたことは一度もありません。妨害がないという前提ならば4ターンキルあたりが平均値でしょう。
《復讐蔦》デッキのなかでノガークが最もプレイの難易度が高いと思います。その次に難しいのは原点のブリッジヴァインです。《甦る死滅都市、ホガーク》を搭載したタイプははるかにプレイが簡単で、なおかつデッキパワーの高さゆえにある程度ミスを犯しても勝敗に影響しませんでした。一見したところでは、ノガークのゲームプランはわかりやすく見えますが、直観に反する回し方が多く、とても些細なミスでさえ敗北に直結する傾向にあります。本番にまでにできるだけ練習を重ね、デッキの回し方をいつも振り返る癖をつけると良いでしょう。
カード選択
メインデッキ
墓地を肥やすカード
墓地を肥やすカードのなかでも特に強力なのが《面晶体のカニ》と《不可思の一瞥》です。もし《面晶体のカニ》が2枚揃えば爆発的な初動をきめることができます。《不可思の一瞥》は2マナで相手に6点ダメージを与え、自分を6点回復させ、さらに2ターン目に4以上のパワーを並べる呪文になることがあります。
しかし、《不可思の一瞥》の2枚目よりも《記憶の放流》の1枚目の方が断然良い展開もあります。《記憶の放流》ならば3ターン目に墓地を8枚肥やせるだけでなく、《復讐蔦》を墓地から戻す可能性を残しつつ《ナルコメーバ》を「共謀」のコストに充てて有効活用できるのです。そういった意味で《記憶の放流》は上記の2種に次いで強力な墓地肥やし呪文だと思っています。また、「共謀」で《記憶の放流》をコピーすれば、打ち消し呪文を一度使われたとしても4枚は墓地を肥やせるので覚えておきましょう。
墓地を肥やす枚数という点では《縫い師への供給者》が最も劣っていますが、デッキを円滑に動かすためにはゾンビとクリーチャーの枚数を十分に確保すべきです。
墓地に落としたいカード
墓地を肥やす意義となるカードたちを説明する必要はあまりないでしょう。《復讐蔦》は最速の勝利を実現し、《這い寄る恐怖》はバーンにとって悪夢のカードです。《秘蔵の縫合体》と《ナルコメーバ》は《不可思の一瞥》の当たりを増やし、特に《秘蔵の縫合体》は《墓所這い》を墓地から唱える架け橋となります。
脇役
《墓所這い》と《屍肉喰らい》は純粋に上記の2つのカテゴリーに入るものではないため、独自の分類を設けました。《墓所這い》は墓地に送りたいカードですが、同時に《秘蔵の縫合体》と《復讐蔦》を墓地から呼び戻す役割(デッキを回す役割)を持ち合わせているため、2つのカテゴリーをまたぐカードと言えます。
《屍肉喰らい》はどちらかと言えばデッキを回すためのカードですが、その他にも多岐に渡って細かな役割を果たします。このカードを抜きにしたリストで試行錯誤したものの、《屍肉喰らい》がいた方がデッキの動きが円滑になるとわかり、絶対に外せないと思うようになりました。このデッキにとって不可欠なゾンビと1マナクリーチャーの数を高水準に保ってくれますし、《墓所這い》で《復讐蔦》の効果を誘発させること、特に繰り返し誘発させることは《屍肉喰らい》なしでは難しいでしょう。
また、《屍肉喰らい》には特定の状況で持つ役割が多くあります。たとえば、戦闘に参加したクリーチャーを生け贄に捧げれば《ワームとぐろエンジン》や《殴打頭蓋》、《夜明けの宝冠》などの絆魂によるライフ回復を防げますし、《精霊龍、ウギン》や《拘留代理人》や《流刑への道》などの追放効果に対応して効果を起動すればクリーチャーを墓地に送ることができます。《反射魔道士》などのバウンス効果にも同様に有効でしょう。
《墓所這い》と複数の《秘蔵の縫合体》が揃えば、《屍肉喰らい》が巨大なサイズまで成長することもあります。そうなればもはや手を付けられなくなるでしょう。
マナベース
土地の枠は争いが激しく、調整中に多くの議論を呼んだ箇所です。実際、さまざまな構成を試しました。フェッチランドを減らして《宝石鉱山》や《闇滑りの岸》を入れてみたり、フェッチランドの種類を散らして《繁殖池》を使ったり、赤のタッチを決めたときは《蒸気孔》と《血の墓所》を採用した構成さえ選択肢になっていました。
上記のマナベースにもいくつか問題点があるものの、これが最善の構成だろうと結論づけました。理想を言えば、青マナを生む土地だけにしたいのですが、黒マナを生まない土地を採用するとマナカーブ通りに動けなくなることが多々あるため受け入れられません。《沼》と《草むした墓》は確実にデッキ内で最弱の土地であり、《草むした墓》については1枚だけの構成も検討しましたし、サイドボードの緑のカードを諦めて0枚にしようと思うこともありました。2枚目の《沼》は、バーンのような攻撃的なデッキに対して有効なサーチ先となるだけでなく、《流刑への道》や《廃墟の地》でサーチする土地を確保しやすくなります。
《面晶体のカニ》を最大限に活用したいと考えた場合、フェッチランドでない土地はデッキパワーを少々弱体化させると言えます。フェッチランドは7枚未満にはしたくないところです。
《真髄の針》を擁するウルザデッキは《汚染された三角州》を4枚採用しているため、こちらも4枚採用するフェッチランドを《汚染された三角州》にするのが理想的だと思います。
サイドボード
《復讐蔦》デッキのなかでも青黒というカラーを使う理由のひとつは、サイドボードから《否定の力》を投入できることです。デッキ構築の初期段階では、《否定の力》を運用するに足るだけの青のカード枚数が保たれるように常に意識していました。この打ち消し呪文は相性が厳しいマッチアップのいくつかを改善し、多様な対策カードへの解答にもなります。
上記のリストはチームグランプリのメタゲームを想定して構成しているので、サイドボードは調整した方が良いかもしれません。グランプリではウルザソプターが最大勢力だと予想しており、赤をタッチしたのは主にウルザソプターを対策するためでした。《古えの遺恨》と《悪ふざけ》があれば《墓掘りの檻》や《罠の橋》を乗り越えて勝つことができます。
採用しなかったカード
全ては列挙していませんが、(少しでも)採用を検討したものや実際に試したものをご紹介しましょう。順序に特に意味はありません。
この他にもまだまだたくさんあります。《農民の結集》を搭載したリストも使いましたが、結果についてはノーコメントでお願いします 🙂
最も質問を受ける機会が多いのは《恐血鬼》の不採用についてです。当然の疑問だと思います。最初のころは欠かさずに4枚採用し、ときには《ナルコメーバ》と合わせて使っていましたから、不採用にするのは本当に難しい決断でした。最終的に不採用に踏み切った理由のひとつは、土地の枚数が少ないデッキであり、必要とあらば土地2枚だけでも機能するように構築されていることです。
このデッキは2ターン目の爆発力を最大限まで高めることを狙いとしています。《不可思の一瞥》で《ナルコメーバ》と《秘蔵の縫合体》を掘り当てれば、ゾンビクリーチャーをドローできていなくても《墓所這い》を3ターン目に唱えることができます。《恐血鬼》は依然として実に強力なクリーチャーですが、残念ながらこの動きを実現できません。もっと遅く、長期戦に向いたカードなのです。
《忌まわしい回収》は堅実な墓地肥やし呪文ですが、《不可思の一瞥》にやや見劣りします。また、マナベースに負担がかかり、《否定の力》のピッチコストにも充てられません。
手札を捨てるためのカードがデッキを強化するとは思えません。こういったカードは初手以外で欲しくないものを増やしてしまいますし、手札を捨てるカードがなくとも機能する初手をふだんはキープしているはずです。そしてこれらを実際に引いてしまった場合や、《面晶体のカニ》や《不可思の一瞥》でライブラリーから落とした際に有効活用する術もありません。
知っておくべきテクニック
先ほどお伝えしたように、このデッキの回し方は非常に難しく、直観的ではありません。しっかりと時間をかけ、ターン全体の動きを考え抜いてからプレイするようにしましょう。ここでは回すコツをいくつかをお教えいたします。これを知れば、デッキのポテンシャルを最大限に引き出せるようになるはずです。
マリガン基準
マリガンの判断は必ず厳格に行うようにしましょう。このデッキを使ううえで特に避けなければならないのは、平凡な手札をキープしてしまうことです。積極的なマリガンを心がけることがポイントで、手札が5枚、ときには4枚になっても気にすることはありません。今回のPTQでは、準決勝と決勝のそれぞれで4枚の手札から2ゲームをものにしました。
ロンドンマリガンはライブラリーから直接墓地に送りたいカードをライブラリーに戻せるため、ノガークは新マリガンルールを最も悪用できるデッキのひとつと言えます。おかしな話ではありますが、平均的な7枚の初手よりも平均的な5~6枚の初手の方が優れており、5枚になったとしても非常に爆発力のある動きが可能です。
大まかな指針ですが、極めて特殊な状況でない限り、墓地を肥やす手段が2枚を下回る初手は大抵マリガンになります。ただし、墓地肥やし手段が2枚の《縫い師への供給者》だけの場合は基本的にマリガンです。《縫い師への供給者》2枚でもキープするとすれば、手札に《屍肉喰らい》がいたり、その対戦がゆったりとしたゲーム展開になるとわかっていたり、あるいは《縫い師への供給者》が死亡する可能性が高いマッチアップだと知っていたりする場合です。
すでに初手が4~5枚になっているなら別ですが、土地が1枚しかない初手はほぼマリガンになります。そのような手札ではデッキがまともに機能しません。
1マナ域をプレイするタイミング
あまり深く考えずに1ターン目に1マナのクリーチャーをプレイする人をよく見かけますが、2ターン目や(《不可思の一瞥》を2ターン目に唱える予定なら)3ターン目まで温存した方が一般的に良いです。手札に抱えておけば、クリーチャーがあと1枚手札にあるか、《墓所這い》が墓地に1体でも落ちていれば《復讐蔦》を墓地から戻せる可能性を高められます(手札に1マナのクリーチャーが3体いる場合を除く)。
《面晶体のカニ》は効果を誘発することなく除去されることがないように基本的に最初ターンには出しません。ただし、手札の状況によって(たとえば手札に《不可思の一瞥》や複数の《面晶体のカニ》がある場合)、あるいは相手が打ち消しや手札破壊を使ってくるかによって、最初のターンに出すこともあります。
《面晶体のカニ》と《不可思の一瞥》が手札にある場合は、ほぼ間違いなく1ターン目に《面晶体のカニ》を出します。
《面晶体のカニ》とフェッチランド
通常、フェッチランドを置いて《面晶体のカニ》の能力が誘発したら、それにスタックしてフェッチランドを起動しません。この状況で最善のプレイは、まず誘発能力を解決し、《ナルコメーバ》が墓地に落とされたら《ナルコメーバ》の誘発能力にスタックしてフェッチランドを起動させることです。こうすることで、《面晶体のカニ》の2回目の誘発能力で墓地に落ちる可能性がある《秘蔵の縫合体》を《ナルコメーバ》で戦場に戻せるようになります。
ただしここでも例外はあります。《復讐蔦》や《墓所這い》などの《秘蔵の縫合体》を誘発させられる手段がすでに確保されていたり、フェッチランドからサーチできる土地がライブラリーに少なくなっていたりする場合です。このような場合は《面晶体のカニ》の誘発能力にスタックでフェッチランドを起動させ、フェッチランドでサーチできる土地がなくなるリスクをケアします。
《復讐蔦》を生け贄に捧げる
そのターンに2つ目のクリーチャー呪文を唱えるつもりならば、《屍肉喰らい》で《復讐蔦》を忘れずに生け贄に捧げるようにしましょう。《外科的摘出》のような対策カードがあると予想する場合は例外です。
全体除去に備えてゾンビを手札に温存
全体除去を使ってくる相手に対しては、手札にゾンビクリーチャーを1体は抱えておきましょう。盤面が一掃されたとしても、《墓所這い》と《秘蔵の縫合体》を蘇らせることができます。
ライブラリーに残っている土地を意識
《草むした墓》がすでに1枚墓地に落ちている場合、最後のもう1枚をフェッチランドでサーチする意味はありません。それでもサーチするとすれば、サイドインした緑の呪文を唱えたいとき、あるいは《湿った墓》や《沼》をライブラリーに残すことで土地破壊等から守りたいときです。
《草むした墓》を深く考えずにサーチしない
ときおりですが、3ターン目に《面晶体のカニ》と《ナルコメーバ》をプレイするために青マナが2つ必要になることがあります。そのため、《湿った墓》が1枚すでにあるからといって思考停止で《草むした墓》をサーチするわけではないので要注意です。
クロックとゲーム展開を予想する
2ターン目に《復讐蔦》を墓地から戻すか、あるいは《不可思の一瞥》を唱えるかという選択を迫られることがあります。そうなった場合、クロックとその後のゲーム展開を十分に考慮し、すぐに《復讐蔦》で攻撃するよりも《不可思の一瞥》ルートの方が優れたプランになるにはどんなカードが墓地に落ちれば良いのかを把握しましょう。
墓地のクリーチャーを温存
《墓所這い》などのクリーチャーは、墓地よりも手札から唱えることを優先させた方が基本的に良いです。墓地のものを優先させてしまうと、後々になって《秘蔵の縫合体》を誘発させるものが墓地にいなくなってしまう可能性があります。
《秘蔵の縫合体》に関連したテクニック
《秘蔵の縫合体》の扱い方を少し変えると、相手のターンに《秘蔵の縫合体》を墓地から戻し、リソースを消費することなく《屍肉喰らい》のサイズを上げることが可能です。
《屍肉喰らい》が戦場に存在し、自分のターンのエンドフェイズに複数の《秘蔵の縫合体》の能力が誘発した場合、1体ずつ戦場に戻し、即座に生け贄に捧げ、最後の《秘蔵の縫合体》が戦場に出るに先立って残りの《秘蔵の縫合体》を墓地に送っておきます。すると相手のエンドフェイズに《秘蔵の縫合体》の能力が誘発するため、《神々の憤怒》や《至高の評決》といった除去を意識した立ち回りができます。盤面の状況次第ではこの動きをさらに推し進めることができ、相手のエンドフェイズに再び《秘蔵の縫合体》を生け贄に捧げて《屍肉喰らい》のさらなるサイズアップを図れます。
マリガン判断とデッキの回し方
マリガン判断
ここまで理論を解説してきましたので、実践に移すとしましょう。いくつかの手札を例に挙げ、私なりの考えを示していきます。
サンプルハンド 1
マリガンです。《縫い師への供給者》への依存度が高すぎます。《縫い師への供給者》で《ナルコメーバ》や《墓所這い》を墓地に落とせなければ、「共謀」で《記憶の放流》を唱えられず、墓地を肥やせる枚数が限られてしまいます。6枚にした方がはるかに機能するでしょう。もし1マナのクリーチャーがもう1体いればキープしていたと思います。
サンプルハンド 2
理想的ではないものの、キープして3ターン目の展開にかけた方が良いと思います。ただ、(特に後手であれば)マリガンと判断する人がいてもおかしくないでしょう。
サンプルハンド 3
この上なく際どい手札です。使い物にならないカードはないですが、墓地を肥やす呪文は1枚のみ。7枚ならマリガンし、6枚ならキープするでしょう。クリーチャーを全て展開することにはなりますが、《屍肉喰らい》がいれば「共謀」の《記憶の放流》を唱えつつ《復讐蔦》を3ターン目に展開できる可能性があります。
サンプルハンド 4
サンプルハンド2と似ていますが、こちらはマリガンだと思われます。1マナのクリーチャーか墓地を肥やす呪文がもう1枚必要です。
デッキの回し方
以下では、特定の手札と盤面を想定していきます。練習だと思ってどうやって回していくか考えてみて下さい。
サンプルハンド 5
私が考えた動きは、1ターン目に《湿った墓》をタップイン。続いて2ターン目に《湿地の干潟》から《沼》をサーチして《不可思の一瞥》を唱え、3ターン目に《復讐蔦》を戻す動きを狙います。
サンプルハンド 6
先ほどと同様に、1ターン目に《墓所這い》はプレイしません。まず《湿った墓》をタップインで処理し、将来的に《面晶体のカニ》を引いた場合に備えて優先的に《沼》を置いて《不可思の一瞥》で墓地を肥やします。3ターン目は1回目の《不可思の一瞥》で墓地に送られたカード次第で最善のプレイが変わるでしょう。
サンプルハンド 7
やや難しい手札ですが、《縫い師への供給者》を1ターン目にプレイしないのは変わりありません。《縫い師への供給者》を1ターン目に出すメリットは、3ターン目に《記憶の放流》を「共謀」で唱えたうえで、墓地に送られた《復讐蔦》を戦場に戻せる可能性があることです。ただしこの動きを実現するには、3ターン目までに手札に1マナ域のクリーチャー1体と墓地に《墓所這い》1体を揃える(あるいは手札に1マナ域のクリーチャー2体か、墓地に《墓所這い》2体を揃える)必要があります。
1ターン目に《縫い師への供給者》をプレイするプランは、上手くいけば「共謀」コストに充てられる《ナルコメーバ》を墓地に落とし、《墓所這い》を後続として展開したりできます。
ただし、このプランには裏目もあります。1マナ域のクリーチャーや《墓所這い》を2体分確保できなかった場合、あるいは相手が即座に《縫い師への供給者》を除去してきた場合に計画が破綻してしまうことです。3ターン目の《縫い師への供給者》の能力がスタックにあるときにインスタント除去が飛んでくる可能性もありますが、その場合は2ターン目の《不可思の一瞥》で《ナルコメーバ》と《秘蔵の縫合体》が墓地に落ちていればある程度問題ないですし、もう1枚だけ1マナのクリーチャーが引けていれば《復讐蔦》を戦場に戻せます。
仮に《縫い師への供給者》が《屍肉喰らい》だったら悩ましい判断になっていたでしょう。《墓所這い》が1枚だけでも見つかっていれば3ターン目に《復讐蔦》の効果を誘発できたからです。とはいえ、それでも1ターン目には《屍肉喰らい》をプレイしないはずです。
サンプルハンド 8
この2ターン目をどのように動きますか?
このターンに《復讐蔦》を戦場に戻すと、上手くいけば3ターン目に致死量のダメージを与えられます。まず《沼》をフェッチランドでサーチして、《屍肉喰らい》を展開。2枚目の《復讐蔦》か《秘蔵の縫合体》が墓地に落ちることを期待して《縫い師への供給者》を生け贄に捧げ、《墓所這い》を後続としてプレイします。もし2枚目の《復讐蔦》か《秘蔵の縫合体》が落ちていれば、3ターン目に《不可思の一瞥》で《這い寄る恐怖》が1枚落ちると、あるいは単純に《這い寄る恐怖》が2枚落ちると相手のライフを削りきれます。
各種マッチアップ
サイドボードの入れ替えは基本的に軽めに抑え、できるだけデッキの動きを損なわないようにします。数枚だけサイドアウトし、相手が使用してきたカードを参考に調整を施すのです。《安らかなる眠り》や《虚空の力線》を使ってくることがわかった場合は、《否定の力》と《暗殺者の戦利品》のいずれか/両方を上乗せで投入しましょう。
ボロスバーン
実に相性の良い相手です。ノガークは高速で盤面を構築し、《這い寄る恐怖》でたたみかけるデッキですから、バーンが勝つのは非常に難しいでしょう。そのバーンが現在の一大勢力であるという点もノガークを選択する理由になっています。
このマッチアップでは《草むした墓》は明確に一番弱い土地です。《湿った墓》と2枚の《沼》をサーチできれば十分で、《復讐蔦》を唱えられる/唱えなければいけないような状況には決して持ち込みたくありません。
対 ボロスバーン
2戦目以降では《致命的な一押し》を投入しますが、1ターン目の《ゴブリンの先達》や《僧院の速槍》に即刻使わないことが一般的です。ダメージを余計にもらうことになりますが、2ターン目に《大歓楽の幻霊》の有無を確認するまで辛抱しましょう。《大歓楽の幻霊》の方が圧倒的に深刻な被害をもたらします。
何の事前情報もないのであれば、ふつうは《否定の力》をサイドインしませんし、入れるとしても1枚だけです。相手のデッキを事前に知っていたり、実際に《安らかなる眠り》を確認した場合は例外です。
テーブルトップの大会では、サイドボーディング時の相手のふるまいに注意を向けておくと情報を得られることがあります。今回のチームグランプリで人生初のグランプリ参加者と当たりました。彼はサイドボーディングの時間になると、迷わず数枚のカードをデッキに混ぜ、それからチームメイトと残るサイドボードのカードについて念入りに相談していました。この光景から感じ取ったのは、彼のサイドボードには明らかに強力な対策カードがあり、グランプリ経験のない相手でもそれが容易にわかったということでした。私はその対策カードが《安らかなる眠り》だと想定し、《否定の力》を4枚サイドインしたところ、2ターン目に《安らかなる眠り》を打ち消すことに成功したのです。
この例は「サイドボーディングを分かりやす過ぎる形でやるな」という戒めでもあります。最初に15枚のサイドボードを全てメインデッキに混ぜるなどしてわかりづらくすると良いでしょう。
トロン
対 トロン(先手)
対 トロン(後手)
《屍肉喰らい》の価値が高い一戦となります。《ワームとぐろエンジン》と戦闘を行うクリーチャーを生け贄に捧げれば絆魂によるライフ回復を防げますし、《精霊龍、ウギン》の[-X]能力に対応して生け贄効果を起動すれば自軍のクリーチャーを追放せずに済みます。《屍肉喰らい》を1枚サイドアウトするプランが誤っている可能性も否定できないので、墓地に落としたいカード群から1枚、あるいは後手なら《否定の力》か《古えの遺恨》の投入枚数を1枚減らして《屍肉喰らい》を全て残すプランを試してみるのも大いにアリです。
《古えの遺恨》は早いターンの《ワームとぐろエンジン》と渡り合う手段であるだけでなく、こちらが先手のときの《探検の地図》を破壊したり、《大祖始の遺産》の使用を強制させたりできます。《否定の力》はウルザランドを揃える呪文を妨害する、あるいは《墓掘りの檻》や《大祖始の遺産》といった対策カードを打ち消す役割を担います。トロンがマリガン回数を重ねるほど《否定の力》を積極的に使うようにしましょう。
ジャンド
対 ジャンド
《レンと六番》が手札から出てくる可能性があるので、《屍肉喰らい》のタフネスを1のままで晒してはなりません。《致命的な一押し》は《タルモゴイフ》が大型のアタッカー/ブロッカーになっていない限り、《漁る軟泥》や《疫病を仕組むもの》のために温存します。相手が《虚空の力線》を使ってくる場合(私は使ってこないことを想定したサイドボーディングにしていますが)、《暗殺者の戦利品》で対策を講じます。
ウルザソプター
対 ウルザソプター
《最高工匠卿、ウルザ》デッキは種類が豊富ですが、今回ご紹介しているサイドボードはもともとウルザソプターを想定して構成したものです。上記の入れ替えのように、サイドボーディングする際は《ゴブリンの技師》を意識しましょう。《虚空の力線》を設置できれば、相手はどんなことをするにもかなり苦戦するはずです。《罠の橋》でゲーム展開を停滞させるプランには《古えの遺恨》が最善の選択であり、《悪ふざけ》は《墓掘りの檻》の拘束を抜け出す手段となります。
逆説ウルザ
対 逆説ウルザ
グランプリ・ヘントのころは存在していなかったデッキなので、徹底的にテストしたことがない相手です。やや不利ではないかと思っていますが、《ジェスカイの隆盛》、《逆説的な結果》、《崇高な工匠、サヒーリ》を打ち消す《否定の力》が頑張りを見せてくれるはずです。
タイタンシフト
対 タイタンシフト
エルドラージトロン
対 エルドラージトロン(先手)
対 エルドラージトロン(後手)
先手ならば《暗殺者の戦利品》のようなカードを入れる余裕があり、相手の対策カードやクリーチャーを対処しやすくできます。対して、後手では《否定の力》をサイドインした方が良いはずです。《虚空の杯》、《墓掘りの檻》、《大祖始の遺産》、《大いなる創造者、カーン》などをテンポを大きく損なうことなく対処できます。
青白コントロール
対 青白コントロール(先手)
対 青白コントロール(後手)
後手ですと《安らかなる眠り》を破壊せざるを得ない状況に追い込まれやすいですが、先手であれば《安らかなる眠り》が着地する前に対処困難な盤面を作れることが多々あります。
《安らかなる眠り》が設置された場合、青白コントロール側をライブラリーアウトさせることもたまにあるので、このゲームプランも念頭に入れておきましょう。
青白石鍛冶
対 青白石鍛冶(先手)
対 青白石鍛冶(後手)
青白石鍛冶があっけなく勝利するひとつのパターンは《殴打頭蓋》を早々に展開することなので、後手では《古えの遺恨》を2枚とも投入します。こちらが後手で、相手が《安らかなる眠り》を入れているとわかっている場合は《否定の力》の増量の検討が必要です。
人間
対 人間(先手)
対 人間(後手)
後手のみ《不可思の一瞥》を減らしているのは、《スレイベンの守護者、サリア》を搭載したデッキに対して複数枚引きたくないからです。とはいえ、特に強力な墓地肥やし呪文を削減することが正しいのかはいまだにわかりません。人間デッキへのアドバイスになりますが、通常は《翻弄する魔道士》で《墓所這い》を指定した方が良いです。
ドレッジ
対 ドレッジ
妨害がないときの早さはこちらが上なので、やや有利だと思っています。《否定の力》で《安堵の再会》を打ち消せば、相手の速度を落とすことが可能です。
「ノガークはドレッジよりも強いのか?」という質問をよく見かけます。まず両者は異なるデッキであるという断りをしたうえで回答しますが、全体としてみればノガークの方がより良いデッキだと確信しています。理論上のキルターン数がより少なく、対策カードへの耐性も強い。盤面の構築速度も圧倒的に上で、絶望的な状況下でもクリーチャーを手札から唱えてビートダウンするというプランが取れる。さらには、《否定の力》の採用によってより効果的なサイドボードを構築できます。
対するドレッジは「発掘」カードを墓地に落とすカードと「発掘」カードの両者を引き込んだうえで、さらなる「発掘」カードを掘り当てて行かねばなりません。その点、ノガークは墓地を肥やす呪文を一定数確保できれば十分です。
ドレッジがより良い選択となるとすれば、《燃焼》や《壌土からの生命》が強いという非常に限定的なメタゲームでしょう。より長いゲーム、消耗戦を戦うことが環境で求められているならば、ドレッジの方が適しています。
ドルイドコンボ
対 ドルイドコンボ
厳しい戦いになります。ドルイドコンボはこちらよりも早いうえに、《ルーンの与え手》による「プロテクション」でブロッカーを用意してきます。
アミュレットタイタン
対 アミュレットタイタン(先手)
対 アミュレットタイタン(後手)
ネオブランド
対 ネオブランド
《否定の力》を4枚投入しても最も相性の悪い相手のひとつです 。ネオブランドの方が早いのは明らかで、こちらの初手は《否定の力》がありつつ本来のゲームプランを展開できるという厳しい条件が突きつけられます。《否定の力》があっても遅い手札ですと、《夏の帳》でコンボを押し通されかねません。
序盤から相手のライフを削ることを優先しましょう。そうすれば《グリセルブランド》の能力を起動する回数を減らすことができるため、《滋養の群れ》を見つけづらくなります。
スピリット
対 スピリット
《硬化した鱗》
対 《硬化した鱗》
感染
対 感染
盤面を築きつつ、コントロールしていくプランです。《ナルコメーバ》は感染に対する優れたブロッカーですので、ブロックを許さない《荒廃の工作員》や《ひずみの一撃》で負ける展開だけ避けるようにしましょう。
親和
対 親和
呪禁オーラ
対 呪禁オーラ
アドグレイス
対 アドグレイス
アドグレイスは時間を稼ぐことに長けているので、難しいマッチアップになります。主に狙うべきは《ファイレクシアの非生》を打ち消す/破壊することです。
グリクシス / ジャンドシャドウ
対 グリクシス / ジャンドシャドウ
《這い寄る恐怖》は全て残します。《死の影》デッキは自身のライフを少なくせざるを得ない状況によく追い込まれるからです。《疫病を仕組むもの》をケアした立ち回りをすること、そして《虚空の力線》を見たら《暗殺者の戦利品》をサイドインすることがポイントです。
赤緑ポンザ
対 赤緑ポンザ
《血染めの月》の存在に気をつけ、《沼》をサーチするようにします。そうすれば、《否定の力》で《血染めの月》を打ち消せなかったとしても、ある程度デッキの機能は保てます。
デッキのアップデート
直近のセット『エルドレインの王権』には、ノガークにとって気になるカードが何枚か収録されています。そのカードとは、《マーフォークの秘守り》、《むかしむかし》、《王冠泥棒、オーコ》です。これらのカードについては、グランプリまでに試す時間が十分に確保できなかったので、考えを巡らせるだけにとどまりました。私が思うに、どのカードも現在のメインデッキの枠に割って入るほどではありません。
マナベースの関係上《マーフォークの秘守り》がやや唱えづらい展開がある点は、甘く見られがちです。《屍肉喰らい》3枚+《マーフォークの秘守り》1枚という構成は考えられますが、デッキを安定させ、動きをスムーズにするには《屍肉喰らい》の4枚目は必要だと思います。《マーフォークの秘守り》は呪文のおまけとしてクリーチャーが付いていますが、4枚しか墓地を肥やせません。同じ1マナで色拘束が弱く、8枚も墓地を肥やせる《記憶の放流》には敵わないでしょう。
《むかしむかし》は後々引きたくないカードを増やすことになりますし、マナベースに多少の負担がかかります。また、《面晶体のカニ》を除けば、手札に加えたいほど影響力が大きいクリーチャーは多くありません。こういったデメリットを踏まえれば、初手で土地か1マナのクリーチャーに成り代わるメリットだけを考えるわけにはいかないでしょう。
もしも《面晶体のカニ》に匹敵する2種類目の墓地肥やしクリーチャーが登場すれば、この考え方が変わる可能性はあります。とはいえ、現時点で私の《むかしむかし》の評価が間違っている可能性も否定できず、むしろデッキに入れるべきカードですらあるかもしれません。
『エルドレインの王権』のなかで最も可能性を感じる1枚です。ただ、絶対に入れようとまでは思えていません。メインのゲームプランに噛み合っていないですし、基本的に活躍が期待できるのは展開につまづいている/対策カードに直面しているときだけです。《王冠泥棒、オーコ》にいて欲しいマッチアップというのは、現状でも相性が良いものでしょう(青白コントロールなど)。そう考えると、真価を発揮するのは《墓掘りの檻》を搭載したエルドラージトロンのようなデッキとの戦いかもしれません。
他に変更する可能性がある部分ですが、ミラーマッチが増えると予想するならば、サイドボードに墓地対策を追加すると同時に《虚空の力線》への解答を増やすでしょう。それらのカードを入れる枠については、逆説ウルザがウルザソプターの立場を奪うと思う場合は、赤のタッチをやめて枠を作ります。サイドボードにある赤のカードは主に《発明品の唸り》デッキを意識して採用したからです。
新しいカードをデッキに入れるとき、特にノガークのようなアーキタイプに入れるときは、Magic Onlineででたらめにゲームをこなすよりも前に、一人回しでできるだけ多種多様な手札を試し、新カードの感触をつかむことをおすすめします。そうすれば試行回数を増やすことができ、新カードのパフォーマンスや特定のプレイパターンの変化をより深く理解できるようになるのです。
そして新たな構成をテスト段階まで持っていく場合は、特に重要だと思うデッキとの対戦を行い、テストで確かめたい一連の事項をリストにして対戦に取り組みます。そのリストに掲げた疑問点にほぼ答え終わってはじめてMagic Onlineで練習する意味が出てきます。というのも、疑問点を解消すればデッキをテストする段階からもう少し使い込んでいく段階へと移行していますし、この2つの段階は同時にやるべきものではないからです。
おわりに
ノガークは決して常軌を逸した強さではないですが、墓地対策が数を減らし、相性の良い相手がメタゲームに多いため、長きに渡って良い立ち位置にいます。他のプレイヤーたちに意識されていると立場を若干悪くする可能性はあるものの、ノガークは本質的に強力なデッキであることに変わりはありません。
お付き合いいただきありがとうございました。何か疑問点があればお気軽にお知らせください。
アンドレアス・ガンツ (Twitter)