Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/11/22)
はじめに
みなさんこんにちは!クリスティアン・オルティス・ロス/Cristian Ortiz Rosです。
本日お届けする内容は、私が”ミニ・モダン”として愛している新フォーマット、パイオニアです。現時点でのメタゲームを解説し、そう遠くない未来に起こり得る禁止について言及していきます。また、先日環境から追放された1枚のカードにも焦点を当てます(ご存知だと思いますが、年内は毎週月曜日にパイオニアの禁止制限告知が行われる予定です)。特殊な扱いですが、時間が経てば慣れるはずです。それでは内容に入っていきましょう!
《夏の帳》の禁止は本当に必要だったか?
多くの方はこんな疑問を持ったかもしれません。サイドボードにしか採用されていないカード を禁止にするほど、このカードは環境を壊していたのかと。その疑問に対する答えは、YESです。
しかし、なぜそう言えるのでしょう?《夏の帳》はたったの1マナで《謎めいた命令》に匹敵する効果を備えています。相手の打ち消し呪文を無力化するだけでなく、ドロー効果まで付いているからです。加えて、相手が青か黒の呪文を唱えれば「サイクリング」するという選択肢が生まれるため、腐ることは滅多にありません。こういった強みによって、緑を含むデッキはサイドボード後に抜群の安定感を手に入れていたのです。青や黒がDNAレベルで刻み込まれた全てのデッキにとって極めて大きな悩みの種となっていました。
私見ですが、ウィザーズ視点で見れば《夏の帳》を禁止にしたことは環境のために良かったことだと思っています。この呪文は他のフォーマットですら大きな脅威となっているため、私も禁止の方が良いだろうと思っていたからです。
現環境のトップ5
では、直近の禁止制限告知後の現在のメタゲームを考察していきましょう。私がパイオニア環境を見る限りでは、Tier1のなかで特に際立っているものが5つあるように思います。
緑単信心
4 《ニクスの祭殿、ニクソス》
2 《ギャレンブリグ城》
-土地 (21)- 4 《歩行バリスタ》
4 《エルフの神秘家》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《炎樹族の使者》
3 《漁る軟泥》
4 《大食のハイドラ》
4 《翡翠光のレインジャー》
-クリーチャー (27)-
このアーキタイプは単色デッキとして上位層に食い込んでおり、低コストで極めて強力なカードを擁しています。《ニクスの祭殿、ニクソス》を悪用して莫大なマナアドバンテージを一気に獲得できるだけでなく、《むかしむかし》を唱えればほぼ間違いなく1マナのマナクリーチャーからスタートできます。
4枚ずつ採用された《アーク弓のレインジャー、ビビアン》や《世界を揺るがす者、ニッサ》がデッキの主たる骨格となっており、息切れもしづらくなっています。また、《大食のハイドラ》と《歩行バリスタ》がいるため、相手の脅威を何度か対処する手段もあります。(以前まではここに《夏の帳》まで加わっていました。)
黒単アグロ
4 《ロークスワイン城》
4 《変わり谷》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (24)- 4 《血に染まりし勇者》
4 《漆黒軍の騎士》
4 《夜市の見張り》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《残忍な騎士》
2 《悪ふざけの名人、ランクル》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
-クリーチャー (24)-
デッキランキング1位の座をかけて争う、単色で強力なアーキタイプは他にもあります。《密輸人の回転翼機》《残忍な騎士》《悪ふざけの名人、ランクル》など、この黒単アグロには相手にプレッシャーをかけつつアドバンテージをもたらすカードが搭載されているのです。
《致命的な一押し》や《思考囲い》といった強力でマナコストの軽い呪文は、黒単に並外れた安定度をもたらしています。さらには、墓地からクリーチャーを唱えられますし、サイドボードに搭載されたカードもあなどれないものばかりです。
バント《死者の原野》
上記の2つのデッキにはやや劣るものの、強力なアーキタイプ。土地が主役であり、なかでも《死者の原野》が紛れもないキーカードとなっています。ゲームプランは《至高の評決》《残骸の漂着》《時を解す者、テフェリー》といったカードで相手の脅威を排除しながら、《成長のらせん》《エルフの再生者》《約束の刻》によって7種の土地をいち早く揃えることです。
コントロール、アドバンテージ、アンフェアなゲーム。こういった要素が好きな方に自信を持っておすすめするデッキです!
イゼットフェニックス
ここまでにご紹介したデッキ群には及びませんが、私がパイオニアで特に好きなデッキは間違いなくイゼットフェニックスです。以前にモダンで活躍していたものに非常に近しいものになっており(《魔力変》がないのは本当に残念ですが)、パイオニアでも勝ち方に変わりはありません。2ターン目に恐るべき《氷の中の存在》を展開したり、いつものように墓地に送った全ての《弧光のフェニックス》を墓地から一挙に復活させたりして勝利を目指します。
ドロー呪文も慣れ親しんだものが多く、《選択》《航路の作成》《イゼットの魔除け》が採用されており、特に注目すべきは何と言っても《宝船の巡航》でしょう。
赤単アグロ
4 《ラムナプの遺跡》
1 《エンバレス城》
-土地 (18)- 4 《ボーマットの急使》
4 《ギトゥの溶岩走り》
4 《僧院の速槍》
4 《損魂魔道士》
4 《大歓楽の幻霊》
2 《熱烈の神ハゾレト》
-クリーチャー (22)-
3 《灼熱の血》
2 《ゴブリンの鎖回し》
2 《粉々》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《熱烈の神ハゾレト》
1 《レッドキャップの乱闘》
1 《実験の狂乱》
-サイドボード (15)-
Tier1としては最下位に位置づけましたが、ポテンシャルの高いデッキだと思います。創設から間もないフォーマットでは、最序盤から大きなプレッシャーをかけてくるアーキタイプと渡り合うのは困難だからです。また、序盤の動きが速いだけでなく、《ボーマットの急使》や《舞台照らし》といったカードアドバンテージをもたらす呪文も採用されています。
このデッキのキーカードとして注目していただきたいのが、《大歓楽の幻霊》です。多くのマッチアップにおいて大活躍するキーとなるカードでしょう。
直近の禁止制限告知について
今後数か月の禁止について言及する前に、今週の禁止制限告知で何も変更がなかったことを強調しておこうと思います。
先ほどもお伝えしたように、パイオニアは生まれて間もないフォーマットですので、継続的に圧倒的な力を示すカードが禁止されることになってもおかしくありません。ですが、毎週の禁止制限告知のなかでも心を落ち着ける時期があるべきですし、より正確にメタゲームを読み取るためには一切手を加えないという選択肢もあるべきです。
今後の禁止展望
長い目で見た場合に(あるいはそう遠くない未来に)禁止される可能性があるカードを列挙してみました。
これら全ては禁止の可能性が高いものです。採用率に差があるので、一足早く禁止されるものも出てくるかもしれません。しかし全体的に言えば、これらが確実に危険な存在であるという私の見解は見当はずれではないでしょう。
おわりに
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。今回も自分の知識や考え方をみなさんに共有できる機会に恵まれ、この上ない喜びです。いつものようにこの場を設けてくれた晴れる屋にも感謝を。
今回の記事では、多大なる喜びを感じながら執筆させていただきました。そして、みなさんのご質問やご意見に対応することも、同じくらい光栄なことです。ぜひお気軽にSNSでコンタクトをとってください。ではまた近いうちに!