Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/11/26)
次期スタンダードを占う
もう王冠を奪われる心配はない。泥棒は捕まった。
11月18日、スタンダードに禁止カードが出た。大きな影響が出るのは間違いないだろう。
上記の3種が禁止となり、今や環境トップの座は空位となっている。
これらのカードがいなくなったため、今回の記事では次期スタンダード環境の予想を概観していこうと思う。禁止されたカードを個別に見るのではなく、全体として環境への影響を考えていく。
個人的な意見を言うなら、何らかの変更は必要だったと思う。さらに率直に言えば、もっと早い段階で変更されても良かったと思う。とはいえ、今はこうして変更が行われ、久方ぶりにスタンダードが活気を取り戻しそうだ。
というわけで、自分なりに禁止による影響を解説していこう。
勝者
ここから紹介するデッキ/カードは、禁止告知による恩恵が最も大きいと思われるものだ。
デッキ
ゴルガリアドベンチャー
ゴルガリアドベンチャーは《むかしむかし》を失い、デッキを円滑に動かす《エッジウォールの亭主》を多少手札に加えづらくなった。とはいえ、少なくとも「食物」をテーマにしたミッドレンジと張り合ってきたデッキだ。最大の悩みの種がライバルのデッキからいなくなったことで、ゴルガリアドベンチャーはミッドレンジの王として王冠を戴くかもしれない。
ゴルガリアドベンチャーのサンプルデッキとして素晴らしいものがある。これはマイク・シグリスト/Mike Sigristが先日行われたTwitch Rivalsで使用し、鮮烈な印象を残したものだ。
6 《沼》
4 《草むした墓》
3 《寓話の小道》
3 《疾病の神殿》
1 《ロークスワイン城》
-土地 (25)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《穢れ沼の騎士》
4 《楽園のドルイド》
3 《真夜中の騎士団》
4 《恋煩いの野獣》
4 《残忍な騎士》
2 《真夜中の死神》
4 《探索する獣》
2 《悪ふざけの名人、ランクル》
-クリーチャー (31)-
ラクドス / ジャンドサクリファイス
ゴルガリアドベンチャーと同様、このアーキタイプは禁止前にフードと争う実力があった。環境のトップデッキがいなくなるのは、サクリファイスがトップの座を奪うためにまさに必要としていたことである。ジャンドカラーをベースにするのは合理的だと思うし、ミッドレンジとしてより強力になるだろう。
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ここではマテウス・ヤナギウラ/Matheus Yanaguiraのリストを紹介しよう。こちらもTwitch Rivalsで突出した成績を残している。
イゼット / シミックフラッシュ
イゼットであれシミックであれ、いくらか立場を良くしそうなデッキだ。どちらのカラーも序盤の《王冠泥棒、オーコ》を倒すのに苦心していたが、実はその他の多くのデッキに対して上手く戦えていたアーキタイプであった。
イゼットフラッシュがどのような構成なのか、PercsalertがTwitch Rivalsで使用したものを見てみよう。
ジェスカイファイアーズ
2 《山》
1 《平地》
4 《神聖なる泉》
4 《聖なる鋳造所》
4 《蒸気孔》
2 《寓話の小道》
3 《天啓の神殿》
3 《凱旋の神殿》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (27)- 2 《砕骨の巨人》
2 《予見のスフィンクス》
4 《炎の騎兵》
3 《風の騎兵》
1 《帰還した王、ケンリス》
-クリーチャー (12)-
1 《裁きの一撃》
4 《轟音のクラリオン》
1 《抽象からの抽出》
2 《時の一掃》
2 《牢獄領域》
4 《創案の火》
3 《時を解す者、テフェリー》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
-呪文 (21)-
「騎兵」を多少使いづらくしていた《王冠泥棒、オーコ》がいなくなり、《むかしむかし》の禁止によって環境デッキの初動は従来よりも安定しなくなった。ジェスカイファイアーズが環境を席巻する準備は整ったと言えるかもしれない。環境にミッドレンジが増えるほどその可能性は高まるだろう。
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アグロ
《王冠泥棒、オーコ》はアグロデッキにとって悩みの種だった。その他の「食物」パッケージと組み合わさることで、その深刻さは加速していた。しかし今や「食物」戦略のなかでも特に厄介であったプレインズウォーカーが環境からいなくなった。赤単、ラクドス、その他の低マナカーブのアグロデッキは日の目を見るチャンスが巡ってきたと言えるだろう。
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- Goncalo Pinto
上記のデッキ全てに言えることであるが、いずれも《王冠泥棒、オーコ》を使ってこなかったデッキである。彼なき世界でアグロの立場が改善されるのは当然だろう。ただし、前環境からいたグルールやセレズニアアドベンチャーといったデッキは例外だ。《むかしむかし》の禁止によって二次的に大きな被害を受けている。
カード
禁止を受けて人気を博しそうなカード/サイクルがいくつか存在している。個人的に最も立場を良くすると考えているのがこれだ。
《騒乱の落とし子》
長らくの間、あと一歩で採用するに足る立場に甘んじてきた。極悪なミッドレンジデッキがいなくなった今、《騒乱の落とし子》が然るべき立場を得て、アップキープに相手を倒すときがとうとうやってきたかもしれない。
《探索する獣》
誰もがその存在と効果を知っている。《探索する獣》はこの上なく強力なカードだ。ところが、《王冠泥棒、オーコ》によってこの凶暴なクリーチャーは自信を損ない、ときには全く使い物にならなくなっていた。しかしもはや大鹿にされることはなく、即座に《害悪な掌握》で除去される機会も減るだろう。スタンダードのクリーチャーとしてはこれほど多くの能力を持ったものはいなかったのではないだろうか。今こそ凶暴な獣が目覚めるときだ。
《グレートヘンジ》《永遠の大釜》
どちらも元々のカードパワーは高いが、通常は着地してすぐにゲームに影響を与えないため、《王冠泥棒、オーコ》が支配するメタゲームでは安心してデッキに入れることができなかった。デッキの中心となり得る高マナのアーティファクトたちが波乱を巻き起こす可能性は十分にあるだろう。
《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》
この2種のプレインズウォーカーは《王冠泥棒、オーコ》に非常に弱く、《王冠泥棒、オーコ》と《むかしむかし》が作り上げたデッキに対しても平凡な働きしかしなかった。《探索する獣》がいない時代であれば、環境を支配していたかもしれない。
大型クリーチャー
《王冠泥棒、オーコ》がいることで脇に追いやられていたクリーチャーは数多く存在していた。具体的には「騎兵」サイクルや《パルン、ニヴ=ミゼット》といったフィニッシャーだ。これらは(マナコストが重いとはいえ)明らかに期待以上に強力なカードであったが、大鹿にされてしまう裏目があるため昨今は採用を見送られる傾向にあった。多大なマナコストを支払って3/3の大鹿にされるのは明らかに見合っていないからだ。
敗者
勝者がいれば敗者がいる。それは避けられない事実だ。禁止告知で立場を非常に悪くし、かつての栄光には戻れない可能性があるカードやデッキが存在している。
デッキ
《王冠泥棒、オーコ》を使っていたあらゆるデッキ
少し現実と向き合ってみよう。枚数に差はあれど《王冠泥棒、オーコ》を使ってきたデッキはもう彼に頼ることができなくなった。少なくともメインデッキに抜本的な変更を加えなければ、生き残るチャンスはほとんど得られないだろう。デッキの核である《王冠泥棒、オーコ》がいなくなくなったのだ。
それだけでなく、このプレインズウォーカーを使ったデッキのほとんどが《むかしむかし》と《夏の帳》の両方を運用し、ゲームプランをスムーズに運びながら相手の妨害を免れてきた。オーコデッキが形を変えて禁止後も生き残ったらかなり驚きだ。
グルール
私見では、グルールは今回の禁止で大損害を被るだろうと思っている。失ったのは《むかしむかし》と《夏の帳》だけだが、グルールを使用/対峙した経験から言えば、これほど《むかしむかし》を上手く使っていたデッキはなかったはずである。このデッキは1ターン目に1マナ域を展開できるかどうかで雲泥の差が出るのだ。《むかしむかし》があれば《生皮収集家》を実質8枚体制にできていた。《むかしむかし》がなくなったことで強力な初動を実現する機会は大きく減るため、それに伴って結果も悪くなっていくことだろう。《夏の帳》も痛手ではあるが、《むかしむかし》ほどの影響はないだろうと踏んでいる。
- 2019/11/01
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カード
《金のガチョウ》
《金のガチョウ》と《王冠泥棒、オーコ》はコンビのようなものだった。いずれかだけ採用するデッキはほぼ存在しなかったが、それはもっともなことだった。両者は互いに補い合っていたため、《金のガチョウ》だけを禁止にして《王冠泥棒、オーコ》を放置する措置もあり得るのではないかという主張さえ多く見かけたほどだ。繰り返し「食物」トークンを生成する相棒を失った今、《金のガチョウ》は以前とは違って0/2の《水蓮の花びら》のような存在になってしまった。
《意地悪な狼》
《金のガチョウ》とほぼ同じ理由で、《王冠泥棒、オーコ》の禁止を受けて《意地悪な狼》を見かける機会はめっきり減るだろう。「食物」トークンが希少なリソースになったことから、《意地悪な狼》のポテンシャルを最大限に引き出すことは相当に困難であり、素のサイズが3/3という比較的小さいサイズを穴埋めするのは骨が折れるはずだ。
《世界を揺るがす者、ニッサ》
《世界を揺るがす者、ニッサ》は弱体化するだろう。彼女が持てる力を存分に発揮するのは、本来よりも早いターンに着地し、強力な後続でバックアップすることだ。《むかしむかし》が禁止されたことで、マナ加速から唱える機会は減るだろうし、3~4ターン目に着地した《世界を揺るがす者、ニッサ》がゲームを支配する場面はさらに減るだろう。
おわりに
というわけで、今回の禁止告知がもたらす影響について個人的な見解を示してきた。何か重大な影響を見落としているだろうか?もっと正しい禁止内容があったと思うだろうか?私が個々のカードについて述べてきた見解は間違っているだろうか?みなさんが思う禁止の影響をTwitterで教えてくれると嬉しい。
ではまた。
カスパー・ニールセン (Twitter)